同和対策審議会答申(昭和40年8月) 第3部第1章

更新日:2023年6月21日

第3部 同和対策の具体案

 これまでの同和対策は、明治維新の際の太政官布告を拠りどころとするものであって、それはそれなりに無視することのできない意義をもっていた。けれども現時点における同和対策は、日本国憲法に基づいて行われるものであって、より積極的な意義をもつものである。その点では同和行政は、基本的には国の責任において当然行うべき行政であって、過渡的な特殊行政でもなければ、行政外の行政でもない。部落差別が現存するかぎりこの行政は積極的に推進されなければならない。
 したがって同和対策は、生活環境の改善、社会福祉の充実、産業職業の安定、教育文化の向上及び基本的人権の擁護等を内容とする総合対策でなければならないのである。
 以上の諸施策は、各々その分野において強力に推進されなければならないが、同時に、総合対策として統一的に把握され、有機的かつ計画的に実施されなければならない。  なお、この際とくに次の諸点に留意する必要が認められる。
〔1〕 社会的、経済的、文化的に同和地区の生活水準の向上をはかり、一般地区との格差をなくすことが必要である。このためには、生活環境の改善、社会福祉の充実、産業職業の安定、教育文化の向上等の諸施策を積極的かつ強力に実施しなければならない。なおこの場合、地区住民の自覚をうながし、自立意識を高めることが強く要請される。
〔2〕 地区住民に対する差別的偏見を根絶することが必要である。このためには、学校教育、社会教育を通じて同和教育の徹底をはかるとともに、人権擁護活動を活発に展開しなければならない。なおこの場合、部落差別は古い因習や迷信と無関係ではあり得ない。したがって、このような弊風を温存する非合理性の強い、おくれた地域社会の体質を改善し、その近代化をはかるためにも適切な対策を講ずることがきわめて大切である。
〔3〕 同和問題を社会開発および経済開発の中に正しく位置づけ、前進する日本の政治態勢の中でその解決をはかることが必要である。たとえば多年の懸案である生活環境の改善や就職の機会均等などの諸施策は、このような現在の前向きの姿勢の中で積極的に推進させなければならない。

1.環境改善に関する対策
(1)基本的方針  同和対策としての環境改善対策は、健康で文化的な生活を営むため、その生活基盤である環境を改善し、地域にからむ差別的偏見をなくすことである。すなわち、住むところが違うという意識を醸成する劣悪な環境を改善することは、社会福祉の充実、経済生活の確立及び教育水準の向上などの諸施策の基底となるもので、特に重要な意義をもっている。
 したがって、この対策の実施推進にあたっては現行の制度や施策にとらわれることなく、前向きの姿勢で積極的に取りくむ必要があり、とくに、社会開発の重要な課題として計画的に推進されなければならない。
(1) 立地条件の改善  部落が劣悪なる生活環境におかれている原因は、河川敷、堤防下、崖の上、谷間、低湿地、浜辺といったような大風雨や豪雨によって、たちまち災害を受けるようなことが多いからであり、中には人間の住むところではないといったような地域もみられる。すなわちこのような居住地域については、その実態を調査し、抜本的に改善する対策を樹てる必要が認められる。
(2) 同和地区環境の改善  同和対策としての環境の改善は、現在の地区の実態を根本的に解消するというねらいを持つものでなくてはならない。その方針としては、地区整理を実施する必要性が認められる。住宅地区改良事業、土地区画整理事業などの現行制度による改善が行われるにしても、特別な基準または、特別な手法で行う必要がある。
(3) 小部落地域の改善  農山漁村の中の特に戸数の少ない地区の環境改善は、特別の配慮を必要とする。地理的条件はもちろん、経済的、社会的条件にも欠けているこれらの地区は、農政が曲がり角にきたといわれる中で取り残される実情の下にある。それは地区が経済的にゆきづまってきたことや、青少年が都会に流出しつつあることによってうかがわれる。その意味ではこれらの地区においては、住民の移住、転居をも考慮した適切な環境改善が必要である。
(4) 環境改善対策の総合性  環境改善対策は、社会福祉の充実、経済生活の確立および教育水準の向上などの諸施策と相まって実施されなければならない。住宅、道路、水道、下水などの基本的な施設はいうまでもなく、隣保館、保育所、診療所、集会所、共同浴場、共同作業場、児童遊園等の福祉施設もそれぞれの地区の実情に即して適当に設置される必要がある。
(5) 環境改善と国の責任  環境改善対策は、その歴史性と社会性に鑑みて、基本的には国の責任において実施されなければならない。現行制度の諸施策は府県や市町村など、地方公共団体の財源難のために、ゆきづまっているものが多い。いわんや用地の確保、造成に対する特別措置等、地区整理の目的を達成するような対策は、原則的には国の責任において実施することが必要である。

(2)具体的方策
(1) 地区整備対策  市街地地区及び農山漁村地区の抜本的な環境改善をはかるため、住宅の建設、改修及び移転、道路及び上下水道の設置、集会所、保育所、隣保館等の施設の建設などを総合的に行なう基本計画の作成を含む地区整備の制度を設けること。
 その際、災害危険区域その他立地条件の劣悪な地域については、防災的施設の整備、要すれば部落の移転についても行ないうる制度とすること。
(2)住宅対策
一)公営住宅及び改良住宅の建設を積極的に行うこと。
二)住宅または宅地のための長期低利融資制度を充実すること。
三)住宅改修のための長期低利融資制度を充実すること。
四)農山漁村向住宅の特殊性を考慮した制度を検討すること。
(3)生活環境の整備
一)地方改善事業対策  地方改善事業については、対象地区の実態に即した環境改善事業が推進できるように更に一層拡充強化をはかること。
 特に地区道路、下水排水施設、橋施設等の整備拡充、隣保館、共同作業場の共同利用施設の整備拡充、その他共同井戸、共同炊事洗濯場、共同便所、墓地移転、納骨室、火葬場、ごみ焼却炉、し尿貯溜糟、と場移転等の各種施設の整備拡充をはかること。
二)上水道普及の促進  都市的地域はもとより、中小都市、農村地区における上水道の普及率はきわめて低い、全般的には水道の共同利用ないし井戸利用の形態が多い。したがって、都市、農村地区を問わず、普及率のいちじるしく低い地区に重点をおき、上水道、簡易水道の敷設、普及をはかる。ことに傾斜地、山間などの立地条件の悪い部落では、水資源の確保、給水能力の向上をはかること。
三)下水 し尿 塵芥処理  下水設備の未整備、し尿、塵芥などの公的機関を通じての衛生的な処理のおくれや、公的な環境衛生施設の未整備については都市、農村地区とともに早急の解決をはかること。
四)公害対策  都市的地区ないしは近郊農村地区に屡々集中してみられる零細な部落産業、家内工業の諸設備は完全な整備をみる場合が殆どない。ことに河川、下水の汚濁、騒音、悪臭などの非衛生的な生活環境は、周密な部落の生活環境を阻害し、健康を害するおそれがでている。地区内の零細な諸産業の密集とともに、こうした公害問題の発生をみる。これに対しては、地区の公害問題の検討を促し、その防除を可能にする助成措置を保健福祉の面から積極的にすすめること。
五)公園 緑地 児童遊園等  部落内には、公園、緑地、児童遊園等の諸施設の設置が不十分であるので積極的にこれらの施設を整備すること。

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府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画グループ

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