令和5年度職員採用試験〔行政・警察行政(大学卒程度)〕の問題 論文 【法律・経済分野】

更新日:2024年3月1日

※令和6年度より試験科目を変更します
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※ユニバーサルデザインの観点から、体裁や符号の使い方などについて、実際の出題とは異なる表記に変更している部分があります。 

憲法

以下の事例を読んで、設問に答えなさい。

事例
 Y県庁舎に隣接して、約3,000平方メートルの空間(以下「本件空間」という。)が広がっている。本件空間は、壁や塀で囲まれておらず、誰もが自由に出入りでき、大木の下にベンチが置かれたその外観は、通常の公園と変わらない。しかしながら、Y県は、本件空間をあくまで県庁舎の一部と位置づけ、「Y県庁舎管理規則(以下「本件規則」という。)」を本件空間にも適用してきた。
 本件規則によれば、県知事の許可を条件として、本件空間を一般利用に供することができる。ただし、特定の政策に対する賛成・反対を内容とする示威行為、拡声器の使用等により騒音を生じさせる行為、プラカードや立て看板を持ち込む行為は禁止される。加えて、本件規則に反した者は、以後、3年間、本件空間の利用許可を得られなくなることが明記されている。
 県民Xは、「Y県の未来を語ろう!」というイベントを企画し、本件空間の利用許可を得た。その際、本件規則の上記内容について、本件空間の管理担当職員Zによる説明が行われた。にもかかわらず、Xは、ことごとく本件規則に反する行為に及んだ。具体的には、Y県による海面埋立事業への反対を大書したプラカードを本件空間へ持ち込み、大音量の拡声器を用いてこの反対活動への支持を聴衆に訴えた。
 Y県庁舎内で業務に従事していたZは、かかる大音量の演説を耳にして、ただちに現場へ向かった。本件規則に明らかに反した集会の状況を現認したZは、その証拠を残すべく、手持ちのスマートフォンで動画撮影を行った。撮影時間は約5分間で、この映像は、拡声器を手に大声で演説するXの容貌・姿態を鮮明に捉えていた(以下「本件撮影」という。)。Zは、その映像をもとに本件規則に反していることをXに伝えた。なお、本件撮影にあたって、Xの同意を求めることはなかった。
Xは、本件撮影について、憲法上の権利ないし自由を不当に侵害する行為であるとして、旧知の弁護士に相談を持ちかけた。

《設問》
 Xによる主張の内容を憲法13条の観点から具体的に述べたうえで、当該主張の適否を詳しく論じなさい。
 なお、参考となる最高裁判所の判例があれば、論述にあたって適宜言及すること。

行政法

以下の事例を読んで、1から3の問いに答えなさい。

事例
 Aは、P県内において延べ面積2,800平方メートルの中層マンション(以下「本件マンション」という。)の建築を計画している。本件マンションの建設予定地の敷地(以下「本件敷地」という。)の前には、幅員7mの県道(道路法上の道路。以下「本件道路」という。)が走っているが、本件敷地と本件道路が接している部分の長さは6mとなっていた。Aが、各種申請手続についてP県建築局建築審査指導課へ問い合わせを行ったところ、延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物の場合、建築基準法第43条第3項の委任を受けたP県建築安全条例の定める接道要件を満たす必要がある旨、もっとも同条例第4条第3項の安全認定をP県知事から受ければ、当該要件は適用されない旨の指摘を受けた。そこで、Aは、P県知事に対し、同条例第4条第3項に基づき安全認定の申請を行い、P県知事は、Aに対し、2020年12月22日付けで安全認定(以下「本件安全認定」という。)を行った。その後、AはP県の建築主事に対し建築確認の申請を行い、2022年7月31日付けで建築確認(以下「本件建築確認」という。)がなされた。これを受けて、同年9月26日、Aは本件マンションの建築工事を開始した。なお、安全認定は建築確認を受けるためだけに予定されている処分であり、それ単独で固有の法効果を有するものではないと解されている。また、安全認定の通知は建築主に対してのみなされ、公示や、工事予定地等における表示等も予定されていない。
 Xは、本件敷地の近隣に建物を所有し、居住する付近住民である。Xは、本件建築確認がなされたことを、工事が開始された2022年9月26日に知り、その際に本件安全認定についても知るに至った。Xは、本件安全認定には瑕疵があること、また本件マンションの建築工事が完了すると、受忍限度を超える日照権侵害が生じることを理由に工事に反対している。そこでXは、2022年11月6日、本件安全認定及び本件建築確認の各取消訴訟(以下、本件安全認定の取消訴訟を「本件取消訴訟(1)」といい、本件建築確認の取消訴訟を「本件取消訴訟(2)」という。)及び、Xの日照権が違法に侵害されるおそれがあるとして、人格権に基づく本件マンションの建築工事の差止めを求める民事訴訟(以下、「本件民事差止訴訟」という。)を提起した。

1 本件取消訴訟(1)につき、本件安全認定に処分性が認められること、Xに原告適格が認められることを前提に、その他に訴訟要件上問題となる点について、簡潔に論じなさい。
2 仮に本件取消訴訟(1)の提起が訴訟要件を満たさず不適法となる場合、Xは、本件取消訴訟(2)において、本件安全認定の違法を主張することが許されるか、詳細に論じなさい。
3 本件取消訴訟(2)とは別に、本件民事差止訴訟を提起し、本件マンションの建築工事の差止めを求めることは許されるか、「建築確認の法効果」と「取消訴訟の排他的管轄」というキーワードに触れつつ、論じなさい。

〔参考条文〕
〇建築基準法
 (建築物の建築等に関する申請及び確認)
第6条 建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合・・・・・・においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。(略) 
 一・二(略)
 三 木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの
 四(略)
2〜7(略)
8 第1項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築・・・・・・の工事は、することができない。
9(略)
(道路の定義)
第42条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員4メートル(・・・・・・)以上のもの(・・・・・・)をいう。
一 道路法(昭和27年法律第180号)による道路
二〜五(略)
2〜6(略)
(敷地等と道路との関係)
第43条 建築物の敷地は、道路(・・・・・・)に2メートル以上接しなければならない。(略)
2(略)
3 地方公共団体は、次の各号のいずれかに該当する建築物について、その用途、規模又は位置の特殊性により、第1項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を十分に達成することが困難であると認めるときは、条例で、その敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係に関して必要な制限を付加することができる。
 一〜三(略)
 四 延べ面積(・・・・・・)が1,000平方メートルを超える建築物
 五(略)

〇P県建築安全条例
(建築物と敷地と道路との関係)
第4条 延べ面積(・・・・・・)が、1,000平方メートルを超えると建築物の敷地は、その延べ面積に応じて、次に掲げる長さ以上に接しなければならない。
 一(略)
 二 延べ面積が2,000平方メートルを超え、3,000平方メートル以下のもの 8メートル
 三(略)
2(略)
3 前2項の規定は、建築物の周囲の空き地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては、適用しない。

民法

以下の事例を読んで、(1)、(2)の問いに答えなさい。

事例
 AとBは、2023年5月1日、Aが所有する動産(甲)を代金10万円でBに売却するという内容の契約(以下「本件第一売買契約」という。)を締結した。同日、BはAに対して10万円を支払ったが、B宅に甲を設置するためのスペースを確保する必要があったことから、甲の引渡しは、同年7月1日に行われることになった。そこで、AとBは、本件第一売買契約の締結に際して、「Aは、2023年7月1日まで、Bのために甲を預かる。」という内容の合意をした。
 Aは、同年5月18日、Cから、甲を買い受けたいという申出を受けた。当初Aは、Cからの申出を断る気であったが、Cから提示された金額が15万円であったことから、甲をCに売却することにした。そこで、AとCは、甲を代金15万円でCに売却するという内容の契約(以下「本件第二売買契約」という。)を締結し、CからAに対して15万円が支払われた。なお、Cは甲の所有者はAであると信じており、かつ、そのように信じたことについて過失もなかった。

(1)本件第一売買契約を締結した時点で、Bは甲の所有権を第三者に対抗することができるか論じなさい。
(2) 本件第二売買契約を締結した際に、AとCは、「Aは、2023年7月1日まで、Cのために甲を預かる。」という内容の合意をした。この時点でCは、Bに対して、Cが甲の所有権を取得したと主張することができるか論じなさい。

経済原論

 次の(1)から(3)の問いに答えなさい。

(1)マクロ経済の投資水準は、名目利子率の変化よりも実質利子率の変化により強く影響すると考えられる。名目利子率と実質利子率の定義に言及しつつ、その理由を説明しなさい。
(2)名目利子率、実質利子率及び期待インフレ率が満たすフィッシャー方程式を書きなさい。また、この方程式が成立する理由を説明しなさい。
(3)名目利子率がゼロのとき、景気刺激のための金融政策にはどのような手段があるか、フィッシャー方程式に基づいて説明しなさい。

財政学

次の(1)から(3)の問いに答えなさい。

(1)公共投資の役割について論じなさい。解答にあたっては、財政3機能(資源配分、所得再分配機能、経済安定化機能)と対応させ、論じること。
(2)中央政府から地方政府へ交付する一般補助金と特定補助金の違いについて論じなさい。その上で「特定補助金の一般補助金化が望ましい」という見解について論じなさい。
(3)「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(財政健全化法)の考え方と仕組みについて、以下の語句を全て用いて論じなさい。
   「健全化判断比率」  「財政健全化団体」  「財政再生団体」

経済政策

令和5年度 [PDFファイル/288KB]

経営学

次の文章を読み、(1)、(2)の問いに答えなさい。

 業界の収益性を分析するためにM.E.Porterは、「業界の構造分析(five forces)」と呼ばれる分析枠組みを提示した。この分析枠組みでは、業界内での競合他社との競争に加え、部品や原材料などの供給業者の価格交渉力、最終消費者や卸売・小売業者のような買い手の価格交渉力、潜在的な新規参入や(a)代替品・サービスの存在のように、業界内の競合他社以外のプレイヤーも業界の収益性に影響を与えるものとして位置づけられた。その後、上記の分析枠組みでは想定されていなかった(b)補完財の存在も、業界の収益性に影響を与えうる要因として指摘されている。

(1)太字(a)に関して、代替品・サービスによる業界への影響と、影響を受けた企業の対処の仕方について具体例を挙げて論じなさい。
(2)太字(b)に関して、補完財とは、ある財やサービスが他の財やサービスと組み合わせられることで、より効用がもたらされるような財やサービスのことである。補完財にはどのようなものがあるか、補完財を生産する企業間の関係にはどのような特徴があるか、具体例を挙げて論じなさい。


このページの作成所属
人事委員会事務局 人事委員会事務局任用審査課 任用グループ

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