第9回みどりのまちづくり賞(愛称:大阪ランドスケープ賞)の受賞作品について

更新日:2020年7月31日

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 1.ランドスケープデザイン部門 (まちが美しくなるみどりづくり)

  【大阪府知事賞】 大枝公園 (守口市) 

    [事業主] 守口市
    [設計者] 株式会社空間創研、株式会社安井建築設計事務所、株式会社SEN環境計画室
    [施工者] 株木建設株式会社大阪支店、岩田地崎建設株式会社大阪支店、奥アンツーカ株式会社近畿支店、株式会社エコ・テクノ守口支店、矢野建設株式会社守口営業所、大勝建設株式会社  

        大枝公園の写真その1   大枝公園の写真その2 

●講評

昭和27年の開園以降、春の花見をはじめ市民の憩いの場として、また少年野球で賑わう市民球場の場として親しまれてきた守口市唯一の地区公園が、5ヵ年の再整備を経て生まれ変わった。機能分散気味で未利用地が散在していた従来の状況は、敷地全体を見据えた明確な計画思想のもと大々的に刷新された。東側園地に子供の遊び場を、西側園地にスポーツ施設を集約させることで、当該敷地の持つ広がりがより顕在化し、かつ個々の機能も明瞭となり大いに強化された。結果、いずれの施設も連日盛況を呈しており、特に東側園地では、想定以上の親子連れが訪れ、水遊びや遊具で楽しむ子供の笑い声と安心して見守る保護者の語らいが、連日明るい活気をもたらしている。さらに特筆すべきは、このような日常的な公園機能と共に、敷地全体に渡って徹底的な防災・減災の視点と設備が随所に埋め込まれており、両者が違和感なく融合している点である。惜しむらくは、近年の台風被害により打撃を受けた緑のボリューム不足だが、この点は、今後公園が育っていくなかで、漸次充実していくことを期待したい。公園が、日常時も非常時も地域住民の「暮らしの味方」になるオープンスペースであること、その重要性を改めて想起させるランドスケープデザインである。

 (審査委員 井原 縁)

  【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】 Lieuvenir (四條畷市)

    [事業主] 株式会社ナカタコーポレーション
    [設計者] 積水ハウス株式会社大阪南シャーメゾン支店
    [施工者] 積水ハウス株式会社大阪南シャーメゾン支店   

       Lieuvenirの写真その1   Lieuvenirの写真その2

●講評

自宅の広いお庭を地域の方々に解放し、お花見会などを開催されていた、オーナー様。その庭を集合住宅に作り変えるにあたり、地域コミュニティに配慮した空間と設えを考慮し、積極的に実施した開発事例である。敷地は地域の主要道と、そこから分岐している小道に面しており、その小道は小中学校の通学路にもなっている。主要道と小道が辻󠄀を形成している角地の部分を広く一般に解放、石のベンチや広い石階段、緑豊かな植栽を施し、地域の人々や子供達がゆったり集える場として提供している。また、さらには玄関ファサード内の庭園にも自由に立ち入ることができ、子供達が中で遊べるような配慮もなされている。旧庭に使われていた既存石を階段や景石としてうまく活用し、歴史を継承していることも意義深い。大型集合住宅の開発物件では、公園や遊歩道を提供するなど、地域に対する配慮が行われているプロジェクトを多々見かけるが、このような小規模開発では稀少である。小規模な開発においても、このような地域への配慮が少しでも多く具現化されることにより、地域コミュニティの絆がより深まっていくに違いない。地域愛溢れるオーナー様に深く敬意を評したい。

(審査委員 當内 匡)

 

  【一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会関西支部長賞】 関西外国語大学御殿山キャンパス・グローバルタウン (枚方市)

    [事業主] 学校法人関西外国語大学
    [設計者] 株式会社日建設計
    [施工者] 株式会社竹中工務店   

         関西外国語大学御殿山キャンパス・グローバルタウンの写真その1  関西外国語大学御殿山キャンパス・グローバルタウンの写真その2

●講評

本施設は、外国人留学生と日本人学生が「学」、「食」、「住」をともにすることでグローバルな人材を育成するための「まちのようなキャンパス」が目指されており、あたかも留学したような素敵な風景がそこには広がっている。雁行型の空間構成によって、Stage・1のWelcome PlazaからLearning Plaza、Central Plaza、Terrace Plazaを経て、自然風景に溶け込むようなStage・5のForest Step Plazaまで奥へ奥へと誘うシークエンシャルな風景づくりが洗練された風景の中で、心地良さを生み出している。各々のStageは教室や食堂、カフェなどのVILLAと呼ばれる低層の建築群に囲われたPlazaを中心にそれらの建築群がランドスケープによって有機的につながり、各々のPlazaでそれぞれ特徴のある風景が創出され、統一されたイメージの中に適度な変化が組み込まれている。また、教室やゼミ室はガラス面で大きく開放され、Plazaの風景の一部となっており、学生が学ぶ姿が魅力的である。複数の屋外や回廊の移動ルートが大小様々なスケールのパブリックスペースを繋げるように準備されており、高い回遊性を生み出している。そこでは、サロン的な空間や各種の居場所が提供されており、多様な出会いと交流を予感させる風景となっている。

 (審査委員長 増田 昇)

 

  【奨励賞】 アサヒファシリティズ蛍池寮 楓 (豊中市)

    [事業主] 株式会社アサヒファシリティズ
    [設計者] 株式会社竹中工務店大阪一級建築士事務所
    [施工者] 株式会社竹中工務店大阪本店

         アサヒファシリティズ蛍池寮 楓の写真

●講評

 建物の維持管理を担う企業の若き社員たちが生活をともにする独身寮。寮室とシェアキッチンを組み合わせたユニットごとに、二人一組で暮らす。単身者が多数を占める時代を迎え、これからの共同居住と建物管理のスタイルを模索し洗練させていくうえでも、価値あるプロジェクトだ。そこに展開されているランドスケープが注目を集めた。チャレンジングなコンセプトを形にするために、プライベートとパブリックの程よい関係性を生み出す仕掛けとして、分節された建築と中庭や外構の植栽が一体的に構成され、生活の舞台としてのシークエンスが丁寧に演出されて心身を和ませる。また、周辺に広がる成熟した住宅街の佇まいと、さらに遠い昔、蛍狩りの名勝地であった土地の記憶を接続し、再生をイメージしたプランニングに好感が持てる。ハード・ソフト両面で、波及効果に期待したい。

 (審査委員 弘本由香里)

 

  【奨励賞】 プレミストタワー大阪新町ローレルコート (大阪市西区)

    [事業主] 大和ハウス工業株式会社、近鉄不動産株式会社
    [設計者] 株式会社SKM設計計画事務所、株式会社大林組大阪本店一級建築士事務所
    [施工者] 株式会社大林組大阪本店

         プレミストタワー大阪新町ローレルコートの写真  

●講評

 近年、タワーマンションにおける公開空地のランドスケープデザイン事例が急増し、様々な工夫がみられるようになってきました。本デザインでは、水面を持つアプローチが特徴的ですが、緑地は敷地の四周それぞれに展開されています。南側の新町南公園や東側の公開空地との連続性をもたせることが意識的に行われ、かつそれぞれに品格がある点が本作品の評価されるところでしょう。また「新町演舞場跡地」記念碑は、かつてはなやかな難波踊りが演じられた新町の歴史文化を顕彰するもので、大正時代の「新町座」の窓装飾の一部が再利用されています。歴史文化を継承する緑のランドスケープがさらに育成管理されていくことを期待します。

 (審査委員 仲 隆裕) 

 

 2.ランドスケープマネジメント部門 (まちが笑顔になるみどりづくり)

 【大阪府知事賞】 なんばパークス (大阪市浪速区)

    [活動者]南海電気鉄道株式会社、
                    株式会社高島屋 高島屋の高ははしごだか

     なんばパークスの写真その1   なんばパークスの写真その2

●講評

 なんばパークスは、地上から9階まで段丘上に連なる日本最大級の屋上庭園である。ここでは、大阪の郷土種をはじめ約500種、10万株以上の多種多様な植物が配植され、平成15年10月の開業以来、農薬を使用しないなど、総合的病害虫管理(IPM:Integrated Pest Management)によって良好に維持管理されてきている。28種の鳥類や152種の昆虫類が確認されており、都心部にあって豊富な生物相を生みだしている。また、このような緑を良好に維持するばかりでなく「人、都市、自然がもっと一つになるために」をコンセプトに樹木や草花と店舗や広場が一体となって「おもてなしの場」を創出している。常駐の女性専属ガーデナーが単に維持管理作業をするばかりでなく日常的に緑を介して訪問者と積極的なコミュニケーションに取り組んでおり、安心して自然と触れ合える環境を提供するとともに人々を緑への関心へと誘っている。さらに、ガイドツアーやプランツマーケットをはじめ、各種の植物に係るイベントが定期的に実施されており、都心部では貴重な自然との触れ合いの機会を提供している。大阪市の緑化リーダーの育成や地域の小学生が校内で育てたホタルの幼生をガーデン内のせせらぎに放流するなど環境教育の場としての役割も担っている。

(審査委員長 増田 昇) 

  【公益財団法人 国際花と緑の博覧会記念協会長賞】 「新・里山」・「希望の壁」(大阪市北区)

    [活動者] 積水ハウス株式会社

      「新・里山」・「希望の壁」の写真その1  「新・里山」・「希望の壁」の写真その2  

●講評

 平成5年、大阪の都心・梅田の一角に「新梅田シティ・梅田スカイビル」がオープンして、四半世紀以上になる。当開発を手掛け、継続して所有・管理に当たる企業が推進する環境・CSRの理念が、明確に示され追求されているのが、平成18年に同エリアに整備された「新・里山」と「希望の壁」だ。
「新梅田シティ」にそびえる「梅田スカイビル」の足元に広がる8,000平方メートルの敷地に、日本の里山を手本にした在来樹種と低灌木や草花の雑木林をつくり、棚田や畑を設け、都心に働き暮らす人々の手による「新・里山」の生態系と景観を生み出している。その東側に、チョウの来訪を促す草花を配した、巨大な緑化モニュメント「希望の壁」が並ぶ。
「新・里山」も「希望の壁」も、都心の環境のなかで生物多様性をいかに回復し、その重要性をいかにオフィスワーカーや地域住民や来場者と共有していくかに、関係者の力が結集されている点が最大の特長といっても過言ではない。同社の環境・CSR・広報・総務部門、ビル管理会社・緑地管理会社等による「新・里山/希望の壁活用委員会」の組織、有機・対処的減農薬利用を原則とし、敷地内で発生した枯葉等は堆肥化させる循環型の管理、オフィスワーカーによる農作業ボランティアや、周辺の幼稚園・小学校やシニアと連携した継続的な環境学習プログラムの実施、園芸高校の生徒や専門家とともに継続している生態系調査など持続的な協働管理と情報共有が徹底され、都心における人と生き物の共生と景観やライフスタイルの創造に、新たな展望を開いている点は高く評価できる。

 (審査委員 弘本由香里)

 

 【一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会関西支部長賞】 大泉緑地「ふれあいの庭」 (堺市北区(大泉緑地内))

    [活動者] 大泉緑地指定管理グループ

     大泉緑地「ふれあいの庭」の写真その1   大泉緑地「ふぃれあいの庭」の写真その2        

●講評

まだユニバーサルデザインという言葉が使われ始めたばかりの平成9年、大泉緑地の一角に、高齢者も障がい者も含むすべての人々が五感で楽しむヒーリングガーデン「ふれあいの庭」が生まれた。丁寧なヒアリング結果に基づく巧みなデザインが細部に至るまで施され、その思想と技術は高く評価され話題をよんだ。この比類ない庭を着実に継承しつつ、その魅力を広く共有していくために専門家集団が日々重ねているマネジメントの創意工夫が、今回の受賞対象である。野外シネマやガーデンコンサート等のイベント開催、街歩きアプリを活用した多言語音声ガイドの導入等、来園者層の開拓にも繋がる新たな取組みを積極的に行っているが、何より高く評価されるのは、その一方で緻密で丁寧な植栽管理を日々積み重ね、豊かな花と緑の風景を着実に保ち続けている点である。個々の植物の形態や生理生態的特性、さらに様々な来園者の楽しみ方も熟慮したきめ細やかな植栽管理は、この庭に当初から付随している人と自然に対する優しいまなざしに通じ、固有の魅力を揺ぎないものとしている。その延長線上に、花の姿や香り、触感をより身近に感じることのできる可動式の展示植物の充実にも取り組み始めており、今後その魅力がより強化され、醸成していくことが大いに期待される。

 (審査委員 井原 縁)

 

  【審査委員長特別賞】 大阪府立園芸高等学校ビオトープ部 (池田市)

    [活動者] 大阪府立園芸高等学校ビオトープ部

     大阪府立園芸高等学校ビオトープ部の写真その1   大阪府立園芸高等学校ビオトープ部の写真その2

●講評

府立園芸高校ビオトープ部は、平成19年度末まで大阪府立城山高等学校によって取り組まれてきたバタフライガーデン活動を継承し、蝶の幼虫の食餌植物と成虫の吸蜜植物の育成栽培と無償配布を長らく行ってきている。ほとんどの植物が市販されていないため、近隣の野山で種子を最低限採取し、校内で育成栽培しているが、野生種のため発芽から成体まで多くの苦労を重ねている。また、これまで梅田スカイビルの「新・里山」や大阪市立長居植物園などをはじめ、多くの公園や昆虫館などの生態園づくりに大きく寄与してきている。現地審査当日も3名の高校生から活動紹介を受けたが、その真摯で熱心な姿に審査員一同感銘を受けた。

 (審査委員長 増田 昇)

 

  【奨励賞】 エリアマネジメントで育てる御堂筋コンテナガーデン (淀屋橋から本町までの御堂筋沿道)

    [活動者] 一般社団法人御堂筋まちづくりネットワーク

     エリアマネジメントで育てる御堂筋コンテナガーデンの写真

●講評

エリアマネジメントとは地域環境向上のための自主的取組を指し、都心業務地区では企業がその主体となりますが、「よい環境はあればよいが自分ごとでない」と各企業の都合が優先されがちです。その中で、御堂筋歩道に設置されたコンテナガーデンを沿道企業が自分ごととして日々管理し、沿道の魅力づくりに繋げていることが高く評価できます。さらに取組持続のための専門家サポート等の組織としての実施、デザイン面における各所の日照条件や各社の管理可能水準にあわせた品種や組み合わせの工夫も高く評価できます。今後は、他の緑化事業との連携や、歩道部の舗装仕上げとのデザイン調和など街路空間のさらなる高質化への貢献を期待します。

 (審査委員 松本邦彦)

  【奨励賞】プレーパークこうりがおか(枚方市)

    [活動者] ひらかたプレーパーク実行委員会

     プレーパークこうりがおかの写真

●講評

香里団地は入居開始から半世紀以上を経た郊外大規模住宅団地の先駆けです。開発以前の丘陵地が斜面緑地として残された一方で、利用されなくなった里山は、居住者の近くにありながらも使う場・集う場となっていませんでした。受賞団体の取組は、この斜面緑地を子どものプレーパークとするために、市民自らが整備方針や活動内容を決定・実行してきたこと、またそれを通じて多様な人が集う場に育てていることが高く評価できます。今後は、例えば現在の子どもが成長して次世代を教える側に回るといった持続的な仕組みや、竹林の拡大防止や里山林としての更なる機能回復を両立させる活動など、都市近郊緑地の再生モデルとなることを期待します。

 (審査委員 松本邦彦)

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都市整備部 公園課 企画推進グループ

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