イタリアの地方選挙制度
- 完全比例代表制による従前の制度の欠点
○多党連立で安定した政権基盤ができず、与党内のコンセンサスを得ることが困難。 ○与党となる連立パターンが固定し、首長・評議員(執行機関、いずれも議員による互選)ポストが政党間の取引の対象に。
↓ (統治能力の強化、行政効率の向上を目指して) - 首長の直接公選
- 自動的に与党に多数議席を確保し、安定した政権基盤を与える制度を導入。
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1 市町村長・市町村議会議員選挙(人口15,000人以下の市町村)
- 市町村長選挙は普通直接選挙、市町村議会議員選挙は比例代表性を加味した多数派プレミアム制。
- 市町村長選挙と市町村議会議員選挙は不可分のものとして実施。
○議員候補者名簿と市町村長候補者名を連結。
(市町村長候補者は選出すべき議員定数以下で、その3/4 以上の人数を記載した候補者名簿と連結する必要)
○有権者は、支持する市町村長候補者に一票を投じるが、これは同時に連結する議員候補者名簿への一票となる。
○さらに、議員候補者のうち1名を選択し記名する(名簿上、優先すべき候補者の特定)。
○市町村長候補者のうち最多得票をしたものが当選。
当選者に連結していた議員候補者名簿(与党会派)に対し全議席の2/3 を配分。
残りの議席は得票数に応じて、他の名簿に配分。
○名簿内の当選順位は、各議員の優先票の獲得数に応じて決定。優先票が同数の場合は名簿順位によって決定。
○評議員は市町村長による任命。
2 県知事・県議会議員選挙
- 県知事選挙は県をひとつの選挙区とする普通直接選挙、
県議会議員選挙は県を複数の選挙区に分けた比例代表性を加味した多数派プレミアム制。 - 議会議員選挙は選挙区ごとに議員候補者名簿を作成し、各名簿は県内を通じ同一の候補者グループを構成する。
県知事候補者は1以上の候補者グループと連結している。
○有権者は県知事候補者から1名、それに連結している議員候補者名簿のなかから1名を選択して投票。
(議員候補のみに投票された場合は、関係する県知事候補者との両方において有効)
○有効票の過半数を得た県知事候補者が当選するが、過半数を得票した候補者がいない場合は決選投票を行う。
決選投票は県知事候補のみを対象とするが、連結する議員の候補者グループの追加が可能。
○当選した県知事候補者に連結するグループ(与党会派)が60%以上を得票した場合には、ドント式で議席を配分。
60%に満たない場合には与党会派に60%を与え、残りの議席を他のグループに配分する。
○評議員は県知事による任命。
3 州知事・州議会議員選挙
- 州知事選挙は州をひとつの選挙区とする普通直接選挙、州議会議員選挙は県単位
及び全州を選挙区とする比例代表性を加味した多数派プレミアム制。 - 州知事候補者は、全州選挙区の議員候補者名簿(単一または複数の名簿によるグループ)と連結する。
○有権者は次のような投票を行う。
(1) 支持する県選挙区議員候補者名簿
(2) (1)のうち優先する候補者名を記名
(3) 州知事候補者名を選択
(4) (3)と連結した全州選挙区候補者名簿のなかから支持する名簿を選択(名簿が複数の場合)
○最高の得票数を得た州知事候補者が当選。
○州議会議員は各県選挙区から全体の約8割、全州選挙区から約2割の議員を選出。
○州知事候補者と連結したグループ(与党)が、少なくとも州議会で議席の55%以上を獲得できるよう比例配分していく。
○評議員は知事による任命。州独自の規定も可能。
- 〔参照〕
工藤裕子「イタリアの地方自治と地方選挙制度改革」、『選挙時報』第43 巻第9号。
自治体国際化協会編「ヨーロッパ各国の地方自治制度」1990 年。
同協会編「イタリアの地方自治」2004 年。
国立国会図書館調査及び立法考査局 芦田淳「イタリアにおける選挙制度改革」2006 年ほか。
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政策企画部 企画室連携課 連携グループ