第5回 大阪府広域自治制度に関する研究会 資料5

更新日:2016年8月17日

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地方分権改革推進委員会「中間的な取りまとめ」(平成19年11月16日)抜粋

4 国民・住民本位の地方分権改革

(1)法制的な仕組みの見直し等

(1) 義務付け・枠付け、関与の見直しと条例制定権の拡大

地方分権改革の推進にあたっては、分権型社会において基礎自治体が中心的な役割を担うことも踏まえつつ、法制的な観点から、次のとおり、地方自治体の自主性を強化し、政策や制度の問題を含めて自らの責任において行政を実施する仕組みを構築することが必要である。(このための作業等については別紙のとおり。)

〔義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大〕

(見直しの考え方)
地方自治体の自主性を強化し、政策や制度の問題を含めて自由度を拡大するためには、義務付け・枠付けを見直すことが必要である。
このためには、義務付け・枠付けについて、廃止・縮減、全部・一部の条例委任、又は条例による補正の許容などの見直しを行い、これらによって条例制定権の拡大をはかるべきである。
このうち、条例による補正の許容は、地方自治体による法令の「上書き」を確保しようとするものである。

(見直しの手法)
地方自治体の自主性を強化し、自らの責任において行政を実施する仕組みを構築する観点から、自治事務を対象として、そのうち、法令による義務付け・枠付けをし、条例で自主的に定める余地を認めていないものを対象とする。
次のとおり義務付け・枠付けの存置を許容する場合のメルクマールを設定し、これに該当しない場合に、義務付け・枠付けを原則として廃止することを、各府省に求めることとする。
各府省からは、1)メルクマールに該当するか否かの分類、2)該当しないものについては具体的な廃止のための案、3)該当しないが、なお存置する必要があるとするもの(条例で自主的に定める余地を認めたうえで存置する必要があるとするものを含む。)についてはその理由、について回答を得て、これを公表するとともに、その内容について当委員会として検証を行う。
なお、自治事務でありながら、義務付け・枠付けをしている場合についてここで何ら回答がなかったときは、義務付け・枠付けの必要がないものという前提で作業を進める。

義務付け・枠付けの存置を許容する場合のメルクマール

  1. 地方自治体が私有財産制度、法人制度等の私法秩序の根幹となる制度に関わる事務を処理する場合
  2. 補助対象資産又は国有財産の処分に関する事務を処理する場合
  3. 地方自治に関する基本的な準則(民主政治の基本に関わる事項その他の地方自治体の統治構造の根幹)に関する事務を処理する場合、及び他の地方自治体との比較を可能とすることが必要と認められる事務であって全国的に統一して定めることが必要とされる場合
  4. 地方自治体相互間又は地方自治体と国その他の機関との協力に係る事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合
  5. 国民の生命、身体等への重大かつ明白な危険に対して国民を保護するための事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合
  6. 広域的な被害のまん延を防止するための事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合
  7. 国際的要請に係る事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合

〔関与の見直し〕

地方自治体の行政に対する国等の関与(市町村の行政に対する都道府県の関与を含む。)は、市町村合併の進展等により基礎自治体の行政体制整備が進んでいること等を踏まえ、自治事務に対する関与の基本類型に該当しない同意、許可・認可・承認、指示等の特別の関与の見直し等、さらなる見直しを行う。

(2) 新たな義務付け・枠付け、関与についてのチェックシステムの検討

地方自治体の自由度を拡大し、責任をもって行政を実施する仕組みを構築するためには、義務付け・枠付けや関与を縮小していくことが求められるが、現実にはむしろ毎年の新たな法令の制定や改正を通じてこれらの新設が行われている。今般の地方分権改革において、義務付け・枠付け、関与の見直しの検討を進めているが、毎年の新たな法令により、引き続き義務付け・枠付け等の新設が行われるとすれば、
改革の実効性が担保されないこととなる。
このため、今後制定される法令が地方分権改革の推進後の新たな国と地方の役割分担等を踏まえた、義務付け・枠付け等に関する諸原則に沿ったものとなるよう、各府省及び政府全体としてのチェックシステムの整備について引き続き検討を進める。

(3) 都道府県から市町村への権限移譲の法制化の推進

平成12 年施行の地方分権一括法によって、地方自治法に、都道府県知事の権限に属する事務の一部を都道府県条例の定めるところにより市町村が処理することとすることができる制度(以下「条例による事務処理の特例制度」という。)が創設された。この制度の趣旨は、地域の主体的な判断にもとづき、市町村の規模能力等地域の実情に応じ地域において事務配分を定めることを可能とする制度を設けることによ
り、住民に身近な行政は、できる限りより住民に身近な地方自治体である市町村が行うことができるようにすることである。
市町村合併の進展等によって、基礎自治体の行政体制整備が進むとともに、「県内分権」意識の高まりもあって、この条例による事務処理の特例制度は各都道府県において積極的に活用されている。一部の調査によると総計200 以上の法律が対象となっているとされている。
この制度の対象とされている主な法律の状況を分野ごとに概観すると次のとおりである。

  • まちづくりに関係するものとして、例えば都市計画法の開発行為の許可、土地区画整理法の組合の設立認可や換地計画の認可関連の事務などは多くの都道府県において移譲されている。また、農地法の農地転用許可についても対象としているところが多い。
  • 環境関係では、大気汚染防止法のように、法令上一部の市に権限移譲されていても、さらに、都道府県の判断でそれ以外の一般市にも移譲している例もある。また、浄化槽法の浄化槽の設置や水質検査に関する事務も移譲している都道府県が多い。
  • 商工関係では、商工会法の定款変更の認可等の事務、工場立地法の特定工場の新設の届出受理等の事務などが比較的多くの都道府県で移譲されている。
  • 福祉関係については、老人福祉法の特別養護老人ホームの設置認可や介護保険法の介護保険サービス事業者の指定・監督に関連する事務を移譲対象としている都道府県もある。都道府県と市町村の「協議」によって進められるこれらの権限移譲は、住民の利
    便性の向上、住民の意向の的確な反映、地域の活性化等の観点から、大いに評価すべきである。引き続き活用され、都道府県と市町村の創意工夫が発揮されることを期待する。また、この制度により、複数の都道府県において、小規模な市町村も含め移譲がなされている事務は相当数に及んでいる。このような事務は、いずれの地域にとっても、本来市町村の事務として位置付けられるべきものと考えられ、基礎自治体優先の原則にもとづき、市町村の事務として法令上制度化することを検討する必要がある。

(別紙)法制的な仕組みの見直し等のための作業等について

義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大

一 義務付け・枠付けの態様の分類

○ 義務付け・枠付けの態様の分類は次のとおりとする。

1 義務付け(一定の課題に対処すべく、地方自治体に一定種類の活動を義務付けること。一定種類の活動に係る計画策定の義務付けを含む。)
− a 法令による義務付けをしない(単なる奨励にとどまる場合を含む)
− b 法令による義務付けをする

2 枠付け(地方自治体の活動について組織・手続・判断基準等の枠付けを行うこと。)
− a 法令による枠付けをおよそしない、又は、枠付けをするが、条例で、自主的な枠付けを設定し、若しくは法令による枠付けを補正することを認める
a-1 法令による枠付けをおよそしない、又は、必要事項を法令で定めるのではなくすべて条例に委任する
a-2 必要事項を法令ですべて定めるのではなく、一部を条例に委任する
a-3 法令の規定について条例による補正(補充・調整・差替え)を許容する
− b 法令によって枠付けをし、条例で枠付けをしたり法令による枠付けを補正したりする余地を認めない

二 見直しの「共通基準」

○ 地方自治体の自主性を強化し、自らの責任において行政を実施する仕組みを構築する観点から、自治事務を対象にして、そのうち、法令による義務付け・枠付けをし、条例で自主的に定める余地を認めていないもの(一 の分類のうち、1b、2b)について、法令による義務付け・枠付けを廃止するか、又は、枠付けに関し条例で自主的に定める余地を認める(一 の分類のうち、1a、2a)ことを原則とする見直しを実施する。(自治事務でありながら法令による義務付け・枠付けをし、条例で自主的に定める余地を認めていないものには、非権力的関与である協議等の義務付けも含むものとする。)

○ この見直しの実施にあたっては、次のとおり義務付け・枠付けの存置を許容する場合のメルクマールを設定し、これに該当しない場合については原則として義務付け・枠付けの廃止を求めることとする。

  1. 地方自治体が私有財産制度、法人制度等の私法秩序の根幹となる制度に関わる事務を処理する場合
  2. 補助対象資産又は国有財産の処分に関する事務を処理する場合
  3. 地方自治に関する基本的な準則(民主政治の基本に関わる事項その他の地方自治体の統治構造の根幹)に関する事務を処理する場合、及び他の地方自治体との比較を可能とすることが必要と認められる事務であって全国的に統一して定めることが必要とされる場合
  4. 地方自治体相互間又は地方自治体と国その他の機関との協力に係る事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合
  5. 国民の生命、身体等への重大かつ明白な危険に対して国民を保護するための事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合
  6. 広域的な被害のまん延を防止するための事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合
  7. 国際的要請に係る事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされる場合

○ 法定受託事務を除外し、自治事務を対象として見直しを実施するのは、自治事務については「国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない」(地方自治法第2条第13項)とされていること、他方、法定受託事務については、「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」(地方自治法第2
条第9項第1号)であり、国・都道府県は、都道府県・市町村が「法定受託事務を処理するに当たりよるべき基準を定めることができる」(地方自治法第245 条の9)とされていること、を踏まえたものである。法定受託事務であっても、その目的を達成するために必要な最小限度の義務付け・枠付けでなければならないことは当然である。

三 見直しの作業方針

○ 中間的な取りまとめ後、速やかに、各府省が所管する法令のうち、自治事務でありながら法令による義務付け又は枠付けをし、条例で自主的に定める余地を認めていないもの(一 の分類のうち、1b、2b)について、期限を切って、
(1)上記メルクマールに該当するもの、上記メルクマールに該当しないものに分類すること
(2)分類の結果、上記メルクマールに該当しないものについては具体的な廃止のための案を提示すること
(3)(2)にかかわらず、各府省において、上記メルクマールに該当しないが、なお存置する必要があると考えるもの(条例で自主的に定める余地を認めた上で存置する必要があると考えるものを含む。)についてはその理由を提示することを各府省に求めることとする。なお、自治事務でありながら、法令による義務付け・枠付けをしている場合についてここで何ら回答がなかったときは、委員会においては、法令による義務付け・枠付けの必要がないものという前提で作業を進める。

○ 各府省からの回答は公表するとともに、その内容について委員会として検証を行う。

関与の見直し

○ 第一次地方分権改革の当時と比較して、市町村合併の進展等により基礎自治体の行政体制整備が進んでいること等を踏まえて、主要行政分野における国と地方の役割分担の見直しに際しては、国・都道府県による個別的な関与についても、法定受託事務の自治事務化による関与の縮減、自治事務に対する関与の基本類型に該当しない同意、許可・認可・承認、指示等の特別の関与の見直し、自治事務・法定受託事務に対する基本類型に該当する関与でも必要な最小限度のものになっているかの検証を中心に検討する。基本類型に該当しない関与については、主要行政分野における国と地方の役割分担の見直しで取り上げられた事項以外の事項を含めて引き続き検討する。

○ また、地方自治体がした処分について、地方自治法等個別法の規定にもとづき国等が審査請求・再審査請求の手続を通じて関与する裁定的関与は、行使される場面は限定的であっても地方自治体の判断を直接に否定することもできる関与である。現在、行政不服審査制度について、新しい審査請求手続における対審的構造の導入や合議制の第三者機関の関与等により審査請求人の手続保障のレベルを上げる方向で行政不服審査法の改正が検討されている。この場合における裁定的関与としての審査請求・再審査請求の取扱いについて、当委員会としては、政府の法案取りまとめ状況を注視していくこととする。

このページの作成所属
政策企画部 企画室連携課 連携グループ

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