第1回 大阪府広域自治制度に関する研究会開催結果 概要

更新日:2016年8月17日

  • 日時 : 平成19年8月13日(月曜日)午後3時から5時
  • 場所 : 府庁本館2階 第4委員会室
  • 出席委員 :
     (座長)新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長
     山下 淳 同志社大学政策学部教授
     中井英雄 近畿大学大学院経済学研究科長
     玉岡雅之 神戸大学大学院経済学研究科准教授

1 開 会

●挨拶

(企画室長)

  • 最近、自民党や政府において道州制を巡る検討が急になっており、今年1月に設置された道州制ビジョン懇談会では、3年以内にビジョン策定に向けて議論を進めていくと伺っている。中間報告を取りまとめた自民党の道州制調査会も秋から再開と聞く。
  • このような中、この研究会を設置した趣旨は、大阪府としても全国知事会を通じて議論はしているが、やはり国主導で引っ張られていると強く感じており、国主導の道州制、国主導の分権改革になりかねないと日々危惧を持ちながら仕事を進めている。
  • ついては、もし道州制という方向性であるとしても、あくまでも地域主権を実現していく、分権改革を進めていくという観点からの道州制でなければ意味が無いのではないかと考える。大阪としてどうなのか、関西としてどうなのかを幅広く勉強して方向性を考えないといけないと強く感じている。
  • 職員の間にも幅広い意見があり、統一した考え方はない。ましてや他の府県の職員と話をしても更に違う意見があり、非常に難しいテーマで研究会を設置したと思う。
  • 先生方に議論して頂き、我々も勉強して一定の方向性あるいは国にも主張できる考え方をまとめたい。大きなテーマで先生方には負担を強いるが、宜しくお願いしたい。

2 議 事

(1)座長選出、会議公開の決定

→ 委員の互選により新川委員を座長に選出(以下、新川委員を「座長」という。)
→ 会議の原則公開について確認

(座長)

  • 研究会の進め方について、府の方針に従い、会議の傍聴、議事録の公開、場合によっては情報を提供していくことでよろしいか。議論の中で個人情報に関わること、議論の進め方に差し障りがある場合は改めて非公開の手続を採りたい。
    (一同異議なし)。
  • それでは、原則公開ということで進めていきたい。

(2)今後の進め方、論点について

(3)広域自治体改革が求められる背景等について

(事務局)

※ 資料に基づき、一括して説明

(4)自由討議

(座長)

  • 自由討議なので、ご自由にご意見、ご発言頂きたい。

(中井委員)

  • (委員構成は)二人が財政学、残りが法学系で立場が違う面があるので結構かと思う。正直、道州制の問題は財政が何処までコミットできるか不安な面もある。財政調整とか機能面の話になれば多少議論も出来る。そういう意味では、一旦財政学から離れて、
    皆と議論をしたいのは、道州制の議論が進んでいるが国主導の道州制はおかしいと思うこと。
  • 私が委員として関わった関経連のワーキングで企業の人達と議論しながら感じていた素朴な疑問として、道州制は何かの目的があっての手段だと認識しており、国のかたちを変えるようなかなり大きな話なのに、果たして目的に沿った手段なのかよく分からない。このワーキングでも、私は「目的は何なのか。その目的と広域連合なり道州制なりの手段が一致しているかどうかは、学者として多少コメント出来るかもしれない」と話した。
  • 企業さん達は、関西から逃げる気はなく、関西に居ることで良い面もあるので居続けたいと思っているようだ。しかし、どうも行政がしっかりしていない。関経連で行政と企業が一つのテーブルで議論することは、国主導ではなく、行政主導でもなく、非常に面白いことであるが、このワーキングの場では、行政の方々はそっぽを向いていたように思う。このことを批判する気はなく、企業の人達にも「行政マンは、知事にやれと言われればやるが、外に出て企業と話をする場ではこういう態度が普通だ」と言っておいた。
  • 今日の議題である「広域自治体改革が求められる背景」として挙げられている4項目はよく挙げられるものばかりである。例えば、道州制が手段として、(目的としての)関西全体のGRPを他のエリアより成長率が高くさせられれば、それで「適当」であると言える。皆が総合力を発揮して道州制は関西GRPを向上させたのであれば、それが証明となり、目的と手段が合致する。このようなことをはっきりさせておかないと議論が分散してしまう。
  • 国が関西の復権を保障してくれるのであれば、国主導でも構わないと思う。しかし、国の考えていることは、必ずしも関西の復権ではなく、関西エリアが多少落ちても東京エリアで上がって、国全体としてマクロで上がれば可とするのであろう。このようなことを目的と手段の関係としてチェックしたい。

(玉岡委員)

  • 広域自治体改革の背景について挙げてある4つの論点は経済社会面の問題であり、その解消手段として道州制が適当かどうかという議論だと思うが、(1)少子高齢化、(2)経済のグローバル化 は道州制と直接の関わりはない。恐らく、(3)生活圏の拡大と広域課題の増大、(4)関西の復権に向けて広域自治体改革への期待 が関係あることであろう。グローバル化という言葉が色んな問題の背景によく使われるが、この五文字さえ使っていれば許されるという、安易な考えも見受けられる。
  • 様々な改革を行うときに、変えたい人はそれによって得をする人であろう。改革をすることによって誰が得をするのか。答えとして「関西の人が得をする」ということであれば良いのだが、それほど単純な話ではない。大阪という視点から見れば、大阪府、府民が全体として道州制を導入して幸せになるのであれば、それでOKである。だが、そうでないならば検討するにも値しない。
  • 他方、国に押し付けられてどうしようもない大きな流れとなった時、次善の策としてどういう対抗策を取るかという場合は別の問題である。

(山下委員)

  • 道州制が目的でなくて手段というのはその通りである。こういう地方制度を導入することによって何を実現しようとしているのかをしっかりと押さえる必要がある。一体何を実現したいのかが必ずしもはっきりしていないのか、それとも、それぞれの立場によって目指すべきものが違うのか。そうだとすると、この研究会としてどのようなことを実現するために道州制を導入することはどうなのか議論して、まず目的をはっきりさせなければならない。
  • 道州制の議論をするときに、道州がどういうガバメントなのか、どういう組織形態でどのような仕事を担い、国との関係、基礎自治体との関係はどうなのかという議論がはっきりしない。このことには色んな考え方があるが、どのようなガバメントになるのかを想定しつつ、そのガバメントならばこのような機能なり役割を担えるし、担うべきというような議論になると思う。どちらが鶏でどちらが卵なのか分からないような議論になっているところもあるが。
  • 広域自治体改革の背景について、(1)から(3)に挙げられている少子高齢化、経済のグローバル化、生活圏の広域化は一般論としてはそうだと思うが、だから道州制でなくてはダメというポジティブな理屈付けにはならない。このような背景が有るから道州制じゃないとダメだという議論にはならない。この背景の問題と併せて議論しなければならないのは、「何故道州制なのか」という議論と同時に、「何故今の府県ではダメなのか。」ということがある。もっと言うと、「こういう問題点や傾向が指摘される中で今の府県ではそのような問題に適切に応え切れない。だから、道州制である。」というロジックになると思われるが、このロジックで議論してよいのかは気になる。
  • 関西の復権を言う前に、現状を考えたときに、東京の一人勝ち、東京の一極集中を是正すべきという視点が道州制の議論をするときに相応しいと思う。東京とその他の地域のバランスを回復させるには、関西だけでなく、日本全国を道州という新しい単位を作って自立させる他ないというところまで来ているのではないかという気がする。その上で、関西にとって独自のプラスα的なものを考えられるのではないか。いきなり関西というよりも、東京の一極集中の是正という視点をワンクッション入れて、更に関西の視点はどうかという発想の方が良い。

(座長)

  • 何のための道州制なのか、何のための中央政府の議論なのかがずっと気にかかってきた。地方制度をどうこうしようという時に、一番主役になって考えなければいけない府民・市民の間に議論がないのに新しいガバメントの議論をしなければならないことにやや矛盾を感じてきたが、我々なりにより多くの人にとって幸福な状態に近い制度の構築について議論できれば良いと考える。そのときに道州制の議論だけでなく、日本国政府、基礎自治体についてもこれまでの研究蓄積も踏まえて一定の議論が出来るであろう。
    そうすると、国と市町村の中間が要るのかどうか。そこに政府というレベルのものがどういう機能を持つべきかという山下委員の議論にも繋がってくる。政府論の感覚でここで皆と議論ができるかどうかと言うのが私の出発点である。目的も方向も定かでない新しいシステムをトータルでどのような位置付けで考えていけばよいのか。答えが出るか分からないが、このような観点で考えていきたいというのが今の思いである。
  • 色々な道州制の議論の背景として挙げられる論点について、玉岡委員の指摘どおり人口減少や少子高齢化という社会経済面の現象と道州制は直接結びつかない。生活圏の拡大だけ捉えても、道州制にしたら生活圏と合致するのかということも実は分からない。むしろポイントは、地域の社会経済の変化や経済のグローバル化が進んでいる中で、現行制度(国と地方含めて)に色々と問題が発生してきていることである。問題の捉え方について色々議論はあると思うが、全く問題無しに機能しているとは誰も思っていない。現状よりも効果的・効率的な代替オプションとして、道州制があるということではないか。
  • ここに示された背景が直接道州制を成り立たす議論にはならず、その前に制度問題があり、その解決手段の一つとして道州制があるぐらいの整理でよいと思う。府県制ではどうしてダメなのかという議論も今後しなければならないが、このような議論があって初めて道州制の議論ができるのではないかと改めて感じる。
  • 関西では、1960 年頃から地方制度としての道州制を財界が提案してきたという歴史的蓄積がある。このように、関西では、関西的な独創性とか、対東京として社会経済文化を体現するような関西地方政府のあり方などについて長い議論がある。しかし、ここ20 年で東京一極集中、関西の産業や経済構造の変化があって随分と変わった。東京を中心とした日本経済の圏域、その中で全国のほかの地方と変わらない一地方都市としての関西、という位置付けに変わってきた。このような危機感は関西にあってもおかしくはない。最近流行りの格差論で言うと、成長のある地域とそれ以外の地域、東京と名古屋、それらを除いた地域との展望は随分と違ってきている。この格差がこれからどんどん広がっていくことを前提にした時に、従来の国・都道府県のシステムで何処まで修正できるのか。この点について、関西の伝統を踏まえたときに、議論しておかなければならないある種客観的な条件、文化的な条件になってきていると思う。そのためには、正確に社会経済動向を検討して頂かないといけないので、今後の課題としたい。
  • ここのところ色んな制度改革の議論があり、国の方が先走りして、ガラガラポンで道州制導入ということもありえる。国は地方の意向を踏まえると言うが、あまり信用しない方がいい。国は都合のいい時に都合のいい様にやる。その時、やられ放題にならないように、どのように変えて、変わっていくか。国も一生懸命理論武装して、それなりに合理的なフレームで来るはずである。その論理に対抗できるようにならないと。最後は世論なので、世論をどちらが味方につけるか。このような意味でも制度改革の議論はちゃんとしていかないといけない。結論として道州制ありきではなく、色んなオプションがあってよいが、少なくともガラガラポンでいっぺんに出てくるような、地方制度改革何とか法のようなものに、常にきちんと対案を出せるように準備をしておく必要がある。
  • どのような観点で制度改革の議論を進めていくべきかについて、国で議論されている内容をきちんとチェックしておく必要がある。
    特に、これだけ政治情勢が流動化しているので不明な面もあるが、国の役割について重大な見方の変化が起こっているのではないか。小泉改革、社保庁改革もそうだが、単純に言うと官から民への流れの中で、国民生活、府民生活をどう位置付けるかという議論がある。結論から言うと、国民生活をいかに安上がりに抑えるかが、今の政府の狙いである。何か新しい法律が出来ると地方側に必ず一つ仕事をやらせるようになっている。このような仕組みで実質変わりつつあることを地方から再度捉え直しておかないと、
    このまま放置すれば、市町村、都道府県がどんどん大きな仕事をやらされて、かつ同時にプライマリーバランスを黒字化ということも言われ兼ねない。このような大きな制度改革の中で道州制の議論を考えていかなければならない。

(中井委員)

  • 大阪府と長く仕事しているが、企画室のことはあまり知らない。根本的な質問だが、企画室は何をしているところなのか教えて欲しい。

(事務局)

  • 一言で言うと、府政の総合企画・調整になるが、幾つかパターンがあり、(1)府として取り組まねばならないが担当部局が確定していないものや新しい課題などの引き受け(2)2つ以上の部局にまたがる案件の調整(3)トップの政策についての調査・研究活動などである。(1)の例では、人口減少問題や大都市行政問題、本日のテーマである広域自治制度も決まった担当部局がないので所管している。また、水資源など面的に広いプロジェクトや総合計画の策定など幅広く業務を担当している。大阪府として魅力ある施策を打ち出していくためには、どんな課題があるかを日々考え、仕事をしている。

(中井委員)

  • 我々学者は目的を設定されれば、(道州制が)それに対して手段として適切かどうかは或る程度検討できるが、府民の道州制に対する関心は高くない。かといって大阪府民は大阪のことは嫌いではない。恐らく関西の学生は関西本社の一部上場企業に行きたいと思っている。しかし、関西本社の上場企業が減っているので、就職は苦戦している。先日、堺へのシャープ・パネル工場の誘致というニュースがあったが、ようやくこのようなことができる段階に来た。太田知事の考えの中に、関西の復権として大阪に企業誘致をすることが府民との公約であったとしても、ここ10 年間はそのためのお金があまりなかった。ようやくそれが出来る段階になったので、まず大阪復権のためのプランを企画室として持っているなら、大阪府単独では取り込めない問題とは何か。分かり易い例では空港ではないか。大阪湾に3つの空港があって関空だけで上手くいくとすれば、道州制が二重投資を回避させ、余ったお金を企業誘致に向けられたのかどうか、ということである。財政が悪くなって行革しないといけないから二重投資を何とかするというネガティブなことだけでなく、もっとポジティブに2つあるものを一つにして余った財源を新しいものを作るというようなプランが企画サイドにあれば、教えて欲しい。
  • 府民の多くが納得するような錦の御旗がないと、何回会議を開いても道州制のような制度改革は無理である。錦の御旗がないと誰も見向きもしない。行政側もこんなものですとのが欲しい。大阪府の行政改革のように、このままでは「財政破綻になる」というような分かり易いことならば、それが錦の御旗になり、皆我慢する。但し、そんなネガティブな御旗だけではなく、ポジティブな御旗が欲しい。

(事務局)

  • 個人的な意見として、道州制は確かにそれ自体が目的ではない。国はもっと外交や防衛、国際金融などに力を入れるべきだし、内政に対して口を出し過ぎである。内政は自治体に任せるべきであり、なかんずく今では市町村が自治体として基本的に仕事するようになっている。大阪府には2つも政令市がある。このような客観情勢の中で、広域自治体は必要なのかどうか。必要ならば、都道府県の範囲でよいのか、もっと広く考えるのか。このような問題に我々都道府県の職員は直面しているので、一定の方針、指針を考えていかないといけない。今の都道府県の範囲、特に大阪府は狭すぎてここまで経済圏、生活圏が拡大する中で、大昔の枠組みのままでは非効率ではないか。だからといって、広域化した場合に、強大な道州制を考えるのか、もう少し緩やかなクラスター的な道州制を考えるのか。このことは問題意識として強く持っている。
  • 先ほど中井委員から大阪府の明るいこととして企業誘致の例を出して頂いたが、これまで国も都道府県も市町村もフルセットで同じテーマを抱えてきた。他の分野とのバランスがあり、企業誘致だけに集中することは出来ない。このとき、住民に身近な行政は市町村が行うので、広域自治体は企業誘致や国際観光など外から呼んでくることに特化できれば、もっと違う展開もあるのではないか。
    特定の事務に特化するような広域自治体の姿もあるのではないかと思う。

(山下委員)

  • 例えば、関西の中でも、これから人口減少社会が進んだとき、減少スピードは地域によってはまだらになるだろう。その時、社会保障の話も出てくるだろうが、では道州制になったときに、このような問題をどう解決するのか、という絵が描ききれていない。背景の話も大事だが、今のところ、どのような道州をイメージするのか、関西州なるものが出来たときに、それはどういう関西なのかという地域のイメージ、関西州というガバメントがどういう仕事をして地域を良くしていくのかという絵、ビジョンを示すことが出来ていない。
    それを示せないと府民が関心を持ち得ない。例示でも良いから、何か具体的な図式を示すことが出来るようにすべき。関西州がこのような権限と機能を持ち、このように関西という地域を展開していくという絵をシミュレーションでも良いから示すことが出来れば、
    住民も道州制になったらどうなるのかに対する関心が持てるようになる。

(座長)

  • どういう道州制がどのような役に立つのか、という理屈がなかなか立てられない。府県を残す理屈も立てられない。道州制の持つ目的、価値を逆算しながら、考えていくことは出来ないだろうか。だからといって、この研究会で結論的に道州制を導入せよと声高に言う必要もないと考える。研究レベルで良いので府職員の方々が理解しやすい幾つかの選択肢を提示できれば良いと思う。
  • 道州制の議論をする時に、地域とか物理的な空間ありきの議論をやらざるを得ない。政治や政策や行政について一定地域を区切ってそこに適するものを考えていかざるを得ない。現実の社会的経済的な活動の中で、政治や行政に期待されているものとして機能的な側面、つまり全ての国民に平等に関わってくるような側面がある一方で、地域的に限定して考えなくてはならない要素もあるのではないか。単純に広域行政の話をしていけば、それは日本全体、東アジア全体でやった方が良いという議論にすぐなってしまう。
    敢えて道州制の区域で政治、行政を行っていくことの意味、地域性をきちんと考えていくことが重要である。このことはこの地域でやっているので他の地域でやらなくても良いという考えに対し、“地域”ということを主張することになる。どのようなスタンスで話をしていくのかを煮詰めていきたい。政治、行政の単位をどう考えていくのかをもう一度検討した方が良い。そうしないと、府県か道州か、それとも全国かという単純な議論で済んでしまう。別次元で、政治や行政にどういう機能が期待されるのかを議論しないと、ややもすれば空間限定になってしまう議論の限界を感じている。

(玉岡委員)

  • 先ほど「官から民へ」という流れの話があった。「民で出来ることは民に」という命題もあるが、これはあまり意味がない。「官にしか出来ないこと」をはっきりしないと、「民で出来ることは民に」ということも定まらない。同じことが道州制の議論にもある。国、道州、基礎自治体のそれぞれの段階でしか出来ないことはないか。道州がどのようなガバメントでどういう役割を担当するのか意思疎通が取れていないので、制度が長く変わらなかったことに繋がっている。
  • シャウプ勧告のシャウプが58 年前、今日で言うところの補完性の原則を提唱した。市町村に出来ないことを都道府県が、都道府県では出来ないことを国が担う。それぞれが役割を発揮してそれに見合う財源を与えようというものである。この議論が欠けている。
    今後、論点の(3)と(4)で議論されるのであろうが、道州制のイメージが湧かない中で、分からないものを前提に議論しているのでなかなか結論も出ない。
  • 私も大阪生まれの大阪育ちなので、大阪府に対する愛情が有る。道州制が地方の復権のためだとすれば、一種の競争状態になる。企業誘致で言うと、関西に来れば、他の地域には来ないし、逆に関西が損することも有る。今は東京一人勝ちという状態があって、東京以外の地域が競り合って格差に繋がっている。関西の復権を考えるときに、他の地方の復権をどう考えるか。学者としてはこのことも考えたい。

(座長)

  • 地域間の利益をどう考えていくのかは悩ましい問題である。東京の利益を日本全国へ再分配する仕組みが出来ていれば良いかもしれないが、現実にはならない。むしろ、専ら集積のメリットを享受する仕組みになっている。
  • この研究会は何処まで期待されているのか。企画室に聞いてみたい。道州制の議論は、関西、大阪が良ければよいというものにするのか、全国で受け入れてもらえそうなものにするのか。悩ましい話だが。

(事務局)

  • 議論の立て方として、そのような選択肢はあると思うが、制度論としては関西の府県だけに資して他の府県に役に立たないという制度は考えにくい。何故わざわざ関西だけを切り出して考えるのかということについて、想定しうる道州制なり広域自治制度について関西に住む我々が当てはめたときに、関西にとってこのように良くなるという視点で議論しておく必要があるという問題認識であって、関西が良くなれば他がどうなっても良いということではない。単なる抽象論ではなく、関西に居る我々が具体的な課題を整理したときにあるべき自治制度が何で、それがどう役立つのか。この辺りまでは議論しておきたい。

(座長)

  • 例えば、一国多制度で北海道と沖縄では別制度にしようという議論が起こりつつあるなかで、関西は日本全国均一の制度を主張するのかそうでないのか。必ずしも全国均一の制度の議論だけをする必要もないが、違った制度の導入が地域間、経済、社会的構成などにどう影響を与えるのか。そこまで議論しなければならないのであれば結構大変。これらを含めて議論しなければならないのか。

(山下委員)

  • 制度論はあまり議論したいと考えていない。制度、体制についてはおおよそのスタンダードが出てきているのではないか。悩ましいのは、国・道州・基礎自治体間の役割分担のあり方で、抽象的な役割分担論はスタンダードが出来つつあるが、その先の具体的な権限配分は苦しい。
  • 関西でどのような仕事を道州が担わなくてはならないのかは詰めておかないといけない。その上で、組織とか体制はそれほど議論する必要は無いと思う。
  • 財政的な議論をどう考えるかは大事な部分である。つまり、国と道州と基礎自治体の間での関係とも絡むが、道州が財政的に自立可能な制度はどのように組み立てられるのかは必要である。それを関西で考えるのか、道州制という一般制度の導入で考えるのか。また、何のための道州制なのかを考えた時に、地域が元気になるための道州か、それとも中間レベルの政府がまともに自立することを目的とする道州を考えるのか。今の府県では自立した政府になりえないので、道州というかたちで自立した政府を創ること自体に意味があるかもしれない。
  • 今は東京以外には競争力はない。競争力を持たせることがまず先かなと思う。しかし、これからの時代、道州間競争はゼロサムゲームを考えるよりは、近隣諸国とのと繋がりとか、あるいは何で勝負するのか、売り物が違ってくることも含めて必ずしもゼロサムゲームいうことではないだろう。但し、この研究会では、関西州という政府として、何を売り物にして富を得るのかという議論までは出来ないだろう。
  • 府県の役割を定義する際、ポジティブに議論しがたいと思った。これは市町村、これは国という議論は可能だが。府県にしかできない仕事と言われても分からない。これは道州になっても同じことにならないだろうか。道州制をポジティブに位置づける。道州しか出来ない、道州制がないと出来んのだよ、というものがないのではないか。道州制にしないと自立したローカルガバメントしか出来ないのだよ、ということが議論できるのか。

(中井委員)

  • 中間政府は、当面日本において必要だと思う。
  • 大阪商工会議所と関西経済連合会は、一面は利益集団、一方ではNPOの顔を持つ。
  • 大阪府として、大商とアクセスすることが多いのか、それとも関経連とのアクセスが多いのか。関経連は少なくとも関西エリアの企業をターゲットにしており、大阪内の企業のウェイトは大きいがそれだけをターゲットには出来ない。大阪府でも関経連とお付き合いしないとやっていけない、府域だけではどうしようもないというのであれば、目的と手段を考える際の例示として分かり易い錦の御旗になる。大商なのか関経連なのかは非常に分かり易い例なので、企画室の意見をぜひ聞きたい。

(事務局)

  • 両方並び立っていることが多いので、一概に言えない。強いて言えば、商工労働部は大商との付き合いが深い。それ以外は包括的に関経連との付き合いが多い気がする。あくまで感覚的だが。

(中井委員)

  • よく分かる回答であった。今問題になっているのは、大法人に対する均等割の超過課税について50億円を3年お願いしていて、
    そのお金が何処に行くのかといえば、中小企業向け、ベンチャーの起業化のための基金に入っている。制度として構わないのかもしれないが、よく考えると大商マターの方にお金が流れている。
  • 均等割は今回が最後である。大企業も一番厳しいときに我慢して均等割を払うことになり、基本的にそうじゃなくなったら元に戻さなければいけない。たまたま外から来る企業は優遇し、前から大阪に居る企業はエネルギーばっかり使うことになる。大阪府は、府内、関西、全国、世界のどちらを向いていくのか。全方位からもしれないが、ターゲットは何処なのかを常に意識して欲しい。

(山下委員)

  • 背景の話は後ろの回でもう1 回やった方がよい。背景としては国中心の中央集権的なシステムでは対応しきれない背景なのか。
    それとも、現行府県のシステムでは対応しきれない背景なのか。抽象的には分からなくはない背景だが、もう一歩踏み込んだ検討が必要だし、道州のイメージを我々の中で共有した上で、一体道州がどのような役割や機能を果たせるかを検討していく中で、少子高齢化や経済のグローバル化、生活圏の拡大のこともイメージしていけるかなと思う。

(座長)

  • 次回は、都道府県制度が本当にダメなのか、メリットも含めて、とりあえず我々なりの道州制イメージを作れるとすればどういうイメージになるのか、ということについて議論したい。
  • 道州制を位置付けるとすれば、どんな観点で考えていけばよいのか。併せて、現行の府県制度がいいのか悪いのかも整理出来るのではないか。次回の資料として整理して頂きたいのは、大阪府が府として存在意義を感じていること、どんなところに目を向けて府政をやっているのか。府のこれまでの広域との関係などを具体的、事例的に出してもらうと有難いし参考になる。
(5)その他
→日程調整の結果、次回の研究会は次のとおり決定
● 第2 回研究会
  日時:9月13日(木) 午後3時から5時
  場所:大阪府市町村会館 会議室(大阪府庁別館6 階)

このページの作成所属
政策企画部 企画室連携課 連携グループ

ここまで本文です。


ホーム > 府政運営・市町村 > 政策 > 地域主権の推進 > 第1回 大阪府広域自治制度に関する研究会開催結果 概要