これからの地域福祉のあり方とその推進方策について/ III 地域福祉の推進方策

更新日:2023年4月12日

III 地域福祉の推進方策

  1. 重層的な健康福祉セーフティネットの構築に向けて
     大阪府は、健康福祉を支える人材の確保・育成や高度専門的相談への対応など、広域団体としての役割を十分に果たしつつ、地域・市町村がその創意と工夫による主体的取組みとして、健康福祉の諸活動を進めていくことにより、府域の福祉水準の向上を図っていけるよう取り組んでいくことが必要です。
     市町村地域福祉計画は、これまでの行政計画とは異なり、計画の策定からその実施、評価、見直しの各段階を通じ、住民主体原則で取り組む初めての計画です。これに取り組む府内の市町村をみた場合、それぞれ規模や人口、福祉活動などへの住民参加の状況、歴史、文化等に違いがあり、地域もまた同様です。
     このような実情を踏まえ、それぞれの市町村・地域にふさわしいモデル的取組み、先駆的取組みを府も一緒になって積極的に検討・実践を積み重ねることによって、それぞれの地域特性を活かした大阪らしい地域福祉の姿をつくり上げていくことが必要です。
     今日、障害者福祉サービスの支援費制度の導入や医療保険制度の改革など様々な制度改革が進む中、行政、府民、事業者などにとっても大きな変革期に直面している状況にあります。このような中にあって、全ての府民がどのような局面に出くわしても、健康で生きがいと誇りを持って自立した生活を送っていけるよう、部局の垣根を取り払い、全庁一丸となった府の強力なリーダーシップのもと、市町村、府民、事業者の連携・協力により、「重層的な健康福祉セーフティネット」の構築を図っていかねばなりません。
     こうした観点から、地域福祉支援計画の策定にあたって、大阪府として、当面重点的に取り組むべき事項を下記のとおりとりまとめました。
     とりわけ、地域における見守り・つなぎ・相談の地域ネットについては、その根幹をなすものであり、これまで築き上げてきた小地域ネットワーク活動や隣保館事業などを基盤としながら、地域の資源を活用した重層的な相談機能の整備等(地域健康福祉セーフティネット構想)が求められます。
     また、事業の推進に際し、将来を展望・模索する取組みを積み重ねていくことが重要であり、大学等教育機関、民間事業者や職能団体、行政の連携による人材育成と地域づくりを併せて行うモデル的事業の実施や活動を適正に評価し、次の取組みに活かすシステムの構築(地域福祉支援・協働サイクル構想)に取り組んでいくことが求められます。
     現在の大阪府は、きわめて厳しい、まさに危機的な財政状況にあり、 府内市町村の多くも同様の状況にあります。このような中、府においては地域福祉支援計画を、市町村においては地域福祉計画を策定し、大阪の地域福祉の向上に取り組んでいくには、非常に厳しい環境にあると思われます。
     しかしながら、このような時期であるからこそ、福祉分野をはじめ生活関連分野の施策を地域住民とともに「住民本位」に抜本的に見直す地域福祉計画の策定は意義があるのです。
     また、それを支援する府の役割は大変重要であり、次の8つの視点に立って、地域福祉支援計画への反映と効果的・効率的な施策推進を期待するものです。

    • 大阪府地域健康福祉施策の推進の視点
      地域・市町村支援の視点
      □ 地域の主体性、地域特性に基づく市町村の自主性・主体性の尊重
      □ 既存の資源・マンパワーの「小規模多機能化」、「再活性化」などによる有効活用
      □ 地域の住民、当事者の主体的参画の促進
      □ 画一的な給付ではなく、生活関連分野との連携による、一人ひとりの状況に応じた継続性のある支援システムの構築
      □ 先駆的取組みに対する評価、普及
      □ 効果的な事業推進サイクルの確立
      広域的な役割からの視点
      □ 広域的・専門的なサポート体制の構築
      □ 各種計画に基づく着実なサービス基盤整備
  2. 重点的な取組み方向
     地域福祉は、予防や健康づくりも含め一人ひとりの課題の発見・気づきとその共有化、解決への道筋、そしてそれらを支える住民活動や行政等によるサポート体制の整備といった一連の取組みが、螺旋階段を上っていくかのように繰り返されることによって推進されていくものです。
     この点を踏まえ、府として、以下の事項について、地域の実情に即した総合的・計画的な取組みが進むよう支援することが必要です。
    (1) 地域における課題の共有化の仕組み
     地域のつながりが薄れていく中にあって、一人ひとりの生活上の困難や地域の課題を発見し、共有することが不可欠であり、地域の計画や交流基盤づくりの支援等を進める必要があります。
    1. 地域福祉計画の策定促進
      □ 健康福祉セーフティネット構築に向けた市町村地域福祉計画策定に対する各種支援
      □ 府域の水準向上に向けた地域福祉支援計画の目標設定と市町村・地域の目標設定支援
    2. 地域住民・団体が交流する「プラットホーム」の形成
      □ 幅広い地域住民・団体が対等の立場で交流できるよう、社会福祉協議会のコーディネート機能の強化促進
    (2) 地域における総合相談・情報アクセス機能の確保
    福祉は相談に始まる。身近な地域において、誰もが必要な情報を得ることができ、気軽に相談のできる機能の整備と専門機関等への適切なつなぎ機能の強化を進める必要があります。
    1. 小地域における相談機能の強化
      □ 困ったこと、健康福祉活動に参加したいことなど、地域住民のニーズに応える気軽な相談機能の充実支援
      □ 民生委員の段階的・計画的な研修とサポート体制の充実、民生委員への在日外国人登用に向けた国への働きかけ
      □ 概ね中学校区における拠点的相談・情報提供機能の整備 (地域福祉センター的機能整備)
      □ 在宅介護支援センター、障害者生活支援センター、保健センター、 隣保館等の既存機能の活用
    2. 市町村の相談機能の充実
      □ 専門研修の実施、保健・福祉職能団体との連携による相談体制の充実
      □ インターネット活用による健康福祉情報のネットワーク化
    (3)地域における見守り・発見・つなぎ機能の確保
     地域の住民一人ひとりが抱える課題は多様であり、これらが見えにくくなっている現状において、地域で課題を抱えた人を把握し、必要な情報やサービスに適切につないでいけるような取組みを進めていく必要があります。
    1. 小地域ネットワーク活動の充実
      □ NPO、当事者団体など、多様な地域活動団体等とのネットワーク強化
      □ 余裕教室、空き店舗など、地域資源活用による活動拠点づくり支援
      □ 要援護者の適切な把握に向けた防災等の取組みとの連携や個人情報保護のルールづくり
      □ 高齢者を中心としている見守り・つなぎの対象者を全ての要援護者に拡大
      □ 市町村、市町村社会福祉協議会、NPO等による補完的取組み支援
    2. 福祉サービスの利用支援の充実
      □ 地域福祉権利擁護事業、成年後見制度等の充実・活用促進
      □ 府域における権利擁護関係機関のネットワーク強化及びその中核となる「大阪後見支援センター」機能の拡充検討
      □ 障害者支援費制度の導入等に対応するケアマネジメントの充実
      □ 福祉サービスにおける自己・第三者評価の促進と利用者への情報提供
      □ 市町村における苦情解決体制整備の促進
    (4)地域における課題解決のためのアプローチと継続的支援体制の整備
     深刻なケースにおける緊急対応を行政としてしっかり受けとめるとともに、予防も含め一人ひとりの課題に応じたサービスを専門的見地からコーディネートし、自立支援を基本に継続的な取組みとしていく ことが重要です。
    1. 個別支援プランの作成・指導
      □ 地域における既存機能の活用(地域福祉センター的機能整備) による、全ての要援護者を対象としたケア・ケース検討の実施支援
    2. 専門相談機能の充実と関係機関ネットワーク
      □ 相談機関のネットワーク構築と相談事例の集積による相談技術等の研究・開発の推進
      □ 民間相談機関をはじめとする権利擁護関係機関と各種職能団体のネットワーク強化による継続的支援の実施
    (5) 地域における様々な活動主体の支援と「つながり」を創出する場づ くり
    健康福祉の取組みは、個人レベルでの共通した課題への対処を端緒に、やがて、これらの活動が重なり合い、刺激し合う形で、その成果を生んでいくものであり、地域のこうした活動を活発化させていく必要があります。
    1. 身近な交流の場づくり
      □ 街かどデイハウスやその他の地域資源を活用した多様な交流の場づくり支援
      □ 相談、デイ機能など福祉作業所等の多機能化支援
      □ 道路、公園等の管理への住民参加の促進など様々な交流の輪づ くり支援
    2. 住民の主体的・自主的活動の促進
      □ 健康づくり、生きがいづくりや子育てなどの取組み支援
      □ 当事者組織や福祉NPO等の育成支援
    (6)地域における一人ひとりの状況に応じた自立生活の支援
     一人ひとりが、生きがいと誇りを持って、自立した生活を営んでいけるよう、介護等の福祉サービスとともに医療や就労・居住機能等の支援を行っていく必要があります。
    1. 医療・就労・居住へのつなぎの強化
      □ 無料低額診療事業の活用促進
      □ 地域における就労支援活動の支援
      □ 住宅施策と連携した要援護者の生活支援
    2. 地域における自立生活基盤の充実
      □ グループホーム、グループリビングなど、多様な居住機能の確保支援
      □ ホームレス自立支援策の検討
      □ 社会福祉施設の社会化、受入れ対象の拡大検討
    (7)地域福祉サポートの体制強化と仕組みづくり
    地域福祉の活動を支え、高めていく上で、幅広い人づくり、システムづくりが重要です。実践を通じた研修や交流、地域の新しい発見を支援する仕組み、当事者が参画した地域福祉支援計画の実施状況の評価を行う機能を整備していくことが必要です。
    1. 福祉マンパワーの育成
      □ 関係機関・団体の連携による地域での福祉学習・福祉教育の促進
      □ コミュニティ・ソーシャルワーカー育成に向けた大学等との実践的モデル事業の推進
      □ 健康福祉分野の担い手の確保・資質向上のための福祉カレッジの開講
    2. 循環発展型評価システムの構築
      □ 市町村がその役割を効果的に果たしていけるよう、地域の新しい発想を具体化できる市町村支援
      □ 第三者機関による事業推進サイクルの展開を評価・支援するシステムづくり
      □ 大阪府地域福祉支援計画の進行管理・評価の実施


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このページの作成所属
福祉部 地域福祉推進室地域福祉課 地域福祉支援グループ

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