5.Y事件(令和4年(不)第37号事件)命令要旨

更新日:2023年12月27日

1 事件の概要

 本件は、医療法人が、組合との団体交渉において、形式的な対応をし、誠実に交渉に応じないことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)組合は、団交において、医療法人が、団交前に組合員に離職票を送付した理由について、同組合員が以前に加入していた申立外組合Aとは和解が成立していないとの認識があるにもかかわらず、申立外組合Aと交渉した結果であると一方的な主張を行ったこと、が不誠実団交に当たる旨主張する。
 しかしながら、医療法人は、団交において、離職票を送付した理由について一定説明を行っていたといえる。
 また、医療法人は、組合に対し、和解条件として、退職金や社会保険料の医療法人負担等を提案し、組合が提案した和解案についても、持ち帰って検討する旨述べており、「申立外組合Aと交渉した結果である」などと一方的な主張に終始していたわけではないといえる。
 組合も、団交前に離職票が送付されたことについて抗議はしているものの、団交での組合の主な主張は、和解金の支払要求であったといえ、医療法人に対して、離職票の送付理由について具体的にくわしい説明を求めたとまではいえない。そうすると、医療法人は、組合の追及の程度に応じて回答したとみるのが相当であり、むしろ医療法人は合意達成の可能性を模索したといえることから、団交が不誠実であったとはいえない。

(2)組合は、団交において組合が提示した和解案について、後日組合が問い合わせたところ、医療法人は、労災認定の結果後に回答するという回答に終始したこと、が不誠実団交に当たる旨主張する。
 しかしながら、医療法人の理事会が、組合からの要求について、労働基準監督署による労災認定の判断が示された後に回答すると決定したことは、医療法人の意思決定機関である理事会の決定を踏まえた回答であり、労災認定の結果が同組合員との雇用契約の終了等について影響を及ぼす以上、一方的とまではいえない。また、そのことを電話で組合に伝えた医療法人の対応についても、実際に労災認定の結果が通知されたのは、医療法人回答から1か月後のことであるため、当時、医療法人は組合に対し、そのように回答する以外なかったとみるべきである。
 したがって、医療法人は、団交での合意に基づき、医療法人回答において、その時点でできる限りの対応をしているといえ、医療法人の回答は不誠実とはいえない。

(3)以上のとおり、医療法人の対応は、不誠実団交に当たるとはいえないので、本件申立ては棄却する。

3 命令内容

本件申立ての棄却

このページの作成所属
労働委員会事務局 労働委員会事務局審査課 運用グループ

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