8.U事件(令和4年(不)第5号事件)命令要旨

更新日:2023年1月24日

1 事件の概要

 本件は、組合が団体交渉を申し入れたが団交が開催されないこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)組合は、団交日時は双方協議の上で決定するとして本件団交申入れを行い、電子メールにて、団交の日時等について通知するよう求め、その後も会社からのメールに記載された内容にも返答し、繰り返し、団交日程の調整を求めたことが認められる。これに会社が応じなかったことは明らかで、会社が本件団交申入れに応じる態度を示さなかったため団交が開催されなかったというのが相当である。

(2)本件団交申入れの議題は、組合役員が勤務する事業所の閉鎖やこれに伴う組合役員に関する労働条件の変更についてであると判断される。
 一般に、事業所が閉鎖されれば、そこに勤務する労働者は異動の対象とされ、労働環境が大きく変わったり、場合によっては余剰人員とされる可能性もあるのであるから、事業所の閉鎖が労働条件に直接に影響を及ぼし得ることは明らかであって、本件団交申入れの議題は、組合員の労働条件に直接の影響を及ぼし得るものとして義務的団交事項に当たるというのが相当である。
 会社は、事業所の閉鎖は、純粋な経営的判断のみに基づき決定されており、組合活動に対する報復措置であるとの組合の主張は根拠を欠く旨主張する。しかし、閉鎖の理由如何によって、本件団交申入れの議題が義務的団交事項に当たるとする判断が左右されるわけではない。したがって、会社が事業所の閉鎖は経営的判断にのみ基づいたもので組合活動とは関係がないとするのならば、団交の開催に応じ、団交の場で、組合の理解を得られるようにその旨説明する義務を負うというべきものである。

(3)会社は、団交の実施により合意が成立する可能性がほぼない旨、また、組合役員個人に対し、幹部社員等を通じて、本件団交申入れにおける要求事項について、丁寧かつ十分な説明を行っている旨主張する。
 しかし、会社が合意が成立する可能性がほぼないと判断したことのみをもって団交応諾義務が免じられるものではなく、組合員個人への説明と団交での協議を同視することはできない。
 したがって、これらの会社の主張は団交に応じない正当な理由には当たらず、会社は、団交の場で、組合に対し自らの見解を明らかにし、これに関する組合からの質問があれば回答するなどして協議を行うべき立場にあるというべきである。

(4)以上のとおりであるから、会社は、義務的団交事項について協議を求めた本件団交申入れに正当な理由なく応じなかったというのが相当であって、かかる行為は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

3 命令内容

 誓約文の手交

このページの作成所属
労働委員会事務局 労働委員会事務局審査課 運用グループ

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