6.K事件(令和3年(不)第62号事件)命令要旨

更新日:2023年7月24日

1 事件の概要

 本件は、労働基準法に規定する労働者の過半数代表者であった従業員が退職した後、過半数代表者の選出に関して、(1)A組合員が、自分が過半数代表者を務める旨告げたのに対し、会社の人事課のB課長代理が、労働者の過半数で支持を得た者を選出するよう求める旨の電子メールを送信したこと、(2)会社の管理職に当たるD所長が、会社従業員に対し、労働者の過半数代表者の選出を選挙で選出することの可否を問う電子メールを送信したこと、(3)同所長が、労働者の過半数代表者選出に関して、会社従業員を参考送付の宛先に入れて、A組合員と電子メールのやり取りを行ったこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)B課長代理がA組合員に対し、労働者の過半数で支持を得た者を選出するよう求める旨の電子メールを送信したことについて

 B課長代理がA組合員に対し電子メールを送信した経緯からすると、A組合員が誰の意見も聞かずに自身一人で考えた方法により、自らが過半数代表者になると述べていることに対し、B課長代理が電子メールで、過半数代表者の選出には事業場の全ての労働者の過半数がその人を支持していることが明確になるような手続を要するという原則を述べ、また、その手続については選挙になろうかと思う旨述べることは、不自然ではないといえ、ことさらにA組合員の組合活動を妨害する行為であるとみることはできない。以上のとおり、当該電子メールに、A組合員を過半数代表者就任から排除する意図がうかがえない以上、当該電子メールの送信を会社による支配介入に当たるということはできない。

(2)D所長が当該事業場の会社従業員全員に対し、労働者の過半数代表者の選出方法についての賛否を問う電子メールを送信したことについて

 A組合員は当該事業場の会社従業員全員に対し、当該事業場内の3グループの意見集約担当社員の中で話合いを行い、協議の結果、過半数の支持を得てA組合員が過半数代表者となった旨を記載した電子メールを送信したが、当該A組合員の電子メールには、意見集約担当社員3名で話し合ったというだけで、何の根拠もなく、「過半数の支持を得て」と主張されており、しかも、話し合ったとされるうちの1名は当時既に出社していなかったことが認められる。そうした中で、A組合員の電子メールを読んだD所長が、同僚である当該事業場の会社従業員に対し意見を求めることを考え、当該電子メールを送信したことは、不自然でも不合理でもない対応であるといえ、ここに組合活動を妨害しようとする意図を読み取ることはできない。よって、会社がD所長をして、電子メールにより組合員であるA組合員の過半数代表者就任を恐れて妨害したとする組合の主張は採用できない。

(3)D所長が、労働者の過半数代表者選出に関して、当該事業場の会社従業員全員をCCの宛先として、A組合員と電子メールのやり取りを行ったことについて

ア D所長は当該事業場の会社従業員全員に対し、上記(2)の電子メールにより、労働者の過半数代表者の選出方法についての賛否を問うアンケートを行ったことが認められ、このことからすれば、D所長が、A組合員に対してアンケートの結果を送信するのと同時に、同アンケートに協力を求めた当該事業場の会社従業員にも結果を知らせるために電子メールを送信したことは、不合理な行動ではなかったといえる。
 また、その後のD所長の電子メールについてみれば、A組合員から同じく当該事業場の会社従業員全員をCCの宛先に入れた状態で、反論が返信されたことへの対応として送信されているのであるから、自然な流れでCCに入れ続けたものであったといえ、それ以外の意図はうかがえない。
 以上のことからすれば、D所長の電子メールが当該事業場の会社従業員全員をCCの宛先に入れた状態で送信されたことについて、組合の主張するような、過半数代表者をA組合員以外の者にする意図によるものとみることはできない。

イ 労働者の過半数が選挙を求めている状況はA組合員を労働者の過半数代表者と認めていない事と同じだと思う旨等を記載したD所長の電子メールをめぐるやり取りの経緯からすれば、D所長は、自分が過半数代表者であると主張するA組合員に対し、アンケートの結果に基づく主張をしているだけであるといえ、A組合員が過半数代表者に立候補することを妨げることを意図していたとみることはできないし、D所長の主張に特段の不自然、不合理な点は見受けられない。

(4)そもそも、組合が会社に対し、A組合員の過半数代表者選出に関して団体交渉を申し入れたことはないことが認められ、また、A組合員がB課長代理らに対し、自らが過半数代表者に就任する旨を主張する中で、そのことと組合活動との関係に言及したことは認められない。そのうえ、本件申立てにおける組合からの主張においても、A組合員が過半数代表者に選出されなかったことによる組合活動に対する影響について、なんらの具体的な主張もなく、会社が、A組合員が唯一の組合員であることを嫌ってその過半数代表者就任を妨害したとの主張のみが行われ、そう判断すべき具体的な根拠についての主張はない。

(5)以上のことから、会社は、上記B課長代理やD所長の行為により、A組合員の組合活動を妨害したとはいえず、組合の組織、運営に影響を及ぼしたものともいえない。よって、上記行為は、会社による組合に対する支配介入に当たるとはいえず、本件申立ては棄却する。

3 命令内容

  本件申立ての棄却

このページの作成所属
労働委員会事務局 労働委員会事務局審査課 運用グループ

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