15.Oほか2者事件(令和3年(不)第12号事件)命令要旨

更新日:2023年1月24日

1 事件の概要

 本件は、被申立人O、法人N及び被申立人Aが、組合が申し入れた団体交渉を拒否したことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 
2 判断要旨

(1)被申立人らの使用者性について

ア 組合員と被申立人らとの間に直接の雇用関係がないことについて、当事者間に争いはない。
 組合が団交申入れを行った書面であると主張する書面のうちの組合員の労働条件に多少なりとも関連する可能性があるとみられる事項について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるかという観点から、以下検討する。

イ Oについて

(ア)Oらが設置したセンター内の娯楽室等の施設に関して

 これら施設が、広く一般府民等が利用可能であることに、同センターがOらの設置した施設であることを併せ考えると、Oらは、これら施設を行政機関の立場で公共施設として設置したものとみるのが相当であって、集団的労使関係における使用者としての立場で設置したものとみることはできない。
 したがって、同センターに娯楽室等が存在することが、Oが福利厚生施設の設置について現実的かつ具体的に決定し得る地位にあることの根拠にはならない。

(イ)健康保険料について

 Oが組合員らの健康保険料を負担していたと認めるに足る事実の疎明はない。

(ウ)就労対策事業について

 当該就労対策事業は、Oが申立外法人Kに委託する形で実施している事業であって、その作業員は法人Kが雇い入れて賃金を支払っていることが認められ、作業員とOとの間に直接の雇用関係はないことが明らかである。

(エ)社会保険印紙の交付について

 社会保険印紙の交付という労働条件に係るOの使用者性については、組合の側から具体的な主張も立証もない。

(オ)以上のことからすると、上記主張事実をもって、Oが団交の相手となる使用者に該当するとの組合の主張は採用できないのであって、Oが、福利厚生施設の設置及び社会保険印紙の交付という組合員の労働条件について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえず、Oに係る組合の申立ては棄却する。

ウ 法人Nについて

(ア)法人Nは、当該就労対策事業において、その作業員を雇用主となる法人Kに紹介しているにすぎず、組合員の何らかの労働条件に直接影響を及ぼすものとはいえない。また、福利厚生施設の設置及び社会保険印紙の交付という労働条件に関して、組合の側からは、法人Nの使用者性についての具体的な主張も立証もない。

(イ)以上のとおりであるから、法人Nが、福利厚生施設の設置及び社会保険印紙の交付という労働条件について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえず、組合員らの労働組合法上の使用者であるとはいえないから、法人Nに係る組合の申立ては、棄却する。

エ Aについて

(ア)一時金をAが支給し、そこから別の労働組合の組合費をチェック・オフにより徴収しようとしたと認めるに足る事実の疎明はない。

(イ)福利厚生施設の設置及び社会保険印紙の交付という労働条件に関して、組合の側からは、Aの使用者性についての具体的な主張も立証もない。

(ウ)以上のとおりであるから、Aが、福利厚生施設の設置及び社会保険印紙の交付という労働条件について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえず、組合員らの労働組合法上の使用者であるとはいえないから、Aに係る組合の申立ては、棄却する。

(2)組合執行委員長が個人名で裁判所に提出した弁明書により、組合が被申立人らに団交申入れを行ったといえるかについて

ア 組合が当該弁明書を裁判所に提出した時点において、Oが、組合の存在を認識していたとはいえない。

イ 当該弁明書の形式及び内容のいずれからみても、これを労働組合として団交を申し入れた書面であるとみることはできない。

ウ 法人N及びAについては、そもそも、これらに対して直接書面又は口頭で団交申入れをした事実自体が認められない。

エ 以上のとおりであるから、組合執行委員長が裁判所に提出した弁明書により、組合が被申立人らに団交申入れを行ったとはいえない。

3 命令内容

 本件申立ての棄却

※ なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てたが、取り下げ、その後、大阪地方裁判所に取消訴訟を提起した。

このページの作成所属
労働委員会事務局 労働委員会事務局審査課 運用グループ

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