5.Hほか2社事件(令和2年(不)第7号事件)命令要旨

更新日:2022年1月11日

1 事件の概要

 本件は、組合員を雇用している申立外運送会社と製品運送契約を締結している2社を含む被申立人らが組合員の使用者に当たるとして、(1)契約相手方2社が、加入する協同組合において、労働組合に関する決議に賛成したこと、(2)契約相手方2社が、雇用先会社との製品運送契約を解除したこと、(3)雇用先会社が、正社員である組合員3名を解雇し、日々雇用労働者である組合員1名を就労させなくしたことが、それぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 
2 判断要旨

(1)労働組合法第7条にいう「使用者」については、労働契約上の雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、当該事業主は同条の使用者に当たるものと解するのが相当であって、雇用主以外の者が、単に請負契約等を通じて経営上の影響力を有していることを理由に、使用者の地位にあるということはできない。
 本件において、組合員である運転手は、輸送の現場において、契約相手方2社による業務上の指揮命令を受けていた部分はあるものの、労務提供の全てにわたって本件2社の指揮命令のもと、労務を提供していたとはいえない。また、雇用先会社が組合員の賃金水準を決定していたというのが相当で、この決定に本件2社が関与していたと認めるに足る疎明はない。
 本件2社と雇用先会社は密接な関係にあるとはいえるが、この密接な関係は経営上のものにとどまると判断され、本件2社が、雇用先会社の従業員の基本的な労働条件等について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできない。
 以上のとおりであるから、本件2社が、組合員の基本的な労働条件等について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできず、本件2社は、いずれも、組合員の労働組合法上の使用者には当たらないと判断される。

(2)さらに、組合が使用者に当たると主張する別の会社についても、当該会社の雇用先会社への関与は、経営面のものにとどまっていたというのが相当であって、当該会社が組合員の基本的な労働条件等について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったということはできず、組合員の労働組合法上の使用者には当たらないと判断される。

(3)被申立人らはいずれも組合員の労働組合法上の使用者には当たらないと判断されるのであるから、その余を判断するまでもなく、本件申立ては棄却する。

3 命令内容

 本件申立ての棄却
 
 ※ なお、本件命令に対して、組合は中央労働委員会に再審査を申し立てた。

このページの作成所属
労働委員会事務局 労働委員会事務局審査課 運用グループ

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