おおさか旧優生保護法を問うネットワーク・大阪障害フォーラム(ODF)・旧優生保護法被害大阪弁護団 要望書

更新日:2023年11月22日

要望受理日令和5年7月27日(木曜日)
団体名おおさか旧優生保護法を問うネットワーク・大阪障害フォーラム(ODF)・旧優生保護法被害大阪弁護団
取りまとめ担当課健康医療部 保健医療室 地域福祉課
表題優生保護法被害に対する全面救済に向けた要求書

要望書

 2023年7月27日

大阪府知事 吉村洋文 様

優生保護法被害に対する全面救済に向けた要求書

おおさか旧優生保護法を問うネットワーク
大阪障害フォーラム(ODF)
旧優生保護法被害大阪弁護団

 旧優生保護法被害は、日本国憲法下において他に類をみない人権侵害であると認める司法判断が大きな流れになっています。
 大阪府下で、旧優生保護法(以下、旧法)第3条・第4条・12条に基づいて障害を理由に優生手術(不妊手術)を強いられた被害者は、大阪府発行の『衛生年報』によれば1,237人以上とされ、都道府県別の実施件数は全国でも3番目に多いといわれています。保健所で優生相談を実施し、優生思想を普及させ、さらには、優生保護審議会で優生手術実行の決定を行ってきた大阪府の責任は免れることはできません。被害者数の多さは、兵庫県同様に「不幸な子どもの生まれない運動」を大阪府が積極的に担ってきたことを物語っています。
 大阪府の責任の重さを鑑み、徹底的に事実関係を把握し、なぜ、過ちが起きたのか、現時点では優生思想に基づく施策は存在していないのか、どう優生思想を乗り越えるのか、調査・検証を行う必要があります。
 また、旧優生保護法に基づく優生手術による被害は、戦後最大の人権侵害だと言われていますが、被害回復の道のりは遠いのが実情です。一時金法に基づく申請者数は少数であり、声をあげることができない方がまだ大勢おられます。被害者が高齢であることも考慮し、一刻も早い、人権回復に向けた取組が必要です。
 一人でも多くの方の被害回復に向けて、被害者に寄り添った取り組みが必要です。積極的な被害者の掘り起こし調査の実施、被害者へ有効に届く方法での周知や広報の取組、相談があった場合の障害の状況に配慮した丁寧な対応と支援を実施していただきたいです。
 私たちは、大阪府に対して、国と一体となって優生思想に基づく不妊手術や中絶を推し進めた責任を明確にし、一刻も早い被害者の人権回復に向けて尽力するよう以下の項目について要望します。

1 旧優生保護法被害等についての調査・検証の実施について
(1)大阪府は機関委任事務に基づき「手術の適否の判断」及び「優生保護相談所の運営」を行い、さらに、機関委任事務の範囲に留まらず、「不幸な子を生まない運動」を主体的に推進し、積極的に優生思想を伝播した責任は重大です。大阪府として、当該関係書類等の保全を図り、検証を行ってください。
(2)一時金に基づく申請は被害の甚大さに比して少数にとどまっています。少しでも多くの被害者を救済するために、優生保護法被害の周知に加えて、府独自に任意調査(法的根拠を有しない相手方の協力に基づき行われる調査)を行ってください。(厚生労働省は都道府県による独自調査の実施を認めていることに留意してください 2022年6月14日 優生保護法下の強制不妊手術について考える議員連盟への厚生労働省提出資料P5)
 また、大阪市など、すでに任意調査を実施している市に対して、可能な限りの協力を図ってください。
 さらに、優生保護法被害の実態を解明するために、一時金法の第21条に基づく国調査を徹底的かつ詳細に実施するよう国に要望してください。
(3)厚労省が2018年に行った「医療機関・福祉施設における優生手術に関する個人記録の保有状況調査」において、「個人記録がある可能性がある」と回答している、大阪府の4福祉施設、大阪市の4医療機関、枚方市の1福祉施設と1医療機関についての究明調査を実施するとともに、その後の検証経過、結果を明らかにしてください。
 また、「医療型障害児入所施設である旧府立大阪整肢学院に入所中の14才の時に、職員である看護師から勧められ子宮摘出手術を受けた」方が国家賠償請求を提訴されていることに鑑み、大阪整肢学院に被害者が他に存在していないのか、確認を行い、結果を明らかにしてください。

2 被害回復に向けての周知・広報の強化について
 一時金支給法が施行されて3年以上が経過しており、救済に向けての周知、広報が急がれます。被害者が高齢であることも考慮し、効果的な広報を実施してください。なお、実施にあたっては、聴覚障害者、知的障害者、精神障害者等へ届くように情報の提供にあたって十分な配慮をしてください。
(1)大阪府広報紙への掲載に留まらず、テレビ、ラジオ、デジタルサイネージ等、多様なツールを用いて広報を行ってください。
 医療機関、障害施設、児童施設、高齢施設への周知を継続してください。とりわけ、被害者の年齢を踏まえ、高齢者施設、療養型医療施設、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所等へ周知を強化してください。
(2)市町村へ協力依頼を行い、要介護認定調査や障害支援区分認定調査時にリーフレットを配付してください。
(3)調査、周知の結果、被害者の連絡先が判明した場合には、被害者が入所している施設等関係機関に対して、申請に係る情報提供を被害者に行うなど適切に申請の支援を行うように依頼してください。
(4)被害者は不良な子孫を出生させる可能性が高い存在として社会的に決め付けられたことによって、被害者であることを申し出ることが困難になっている状況がある。旧優生保護法に基づく施策及び命の価値に優劣をつける優生思想が誤りであったことを明確にして、周知啓発を行うことによって、被害者が申し出やすい環境を作ってください。
(5)一時金法の5年の申請期限が残りわずかとなっています。人権侵害の程度が著しく重たいということを考慮すれば、申請期限で区切られるのは不公正と言わざるを得ません。大阪府としても、申請期限の延長若しくは廃止を行うように国へ要望してください。

3 一時金の申請にかかる効果的な相談支援の実施について
 平成31年4月24日付子母発0424第1号厚生労働省子ども家庭局母子保健課長通知「『旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律』に基づく一時金の請求等に関する事務の取扱いについて」を踏まえ、被害者の障害者の状況に配慮し、相談・請求をしやすい体制整備を行ってください。
(1)申請にかかる診断書の記載を医療機関に求めたところ、作成拒否がありました。円滑な診断がえられるように、大阪府から各医療機関へ協力要請を行うとともに、相談者から依頼があれば、医療機関を紹介してください。 
(2)聴覚障害者にとっては、相談にいっても対応してもらえないかもしれないと感じざるを得ない現状は大きな障壁になっている。聴覚障害者の相談のための専用の窓口の設置をお願いします。
 また、聴覚障害者からの相談受付について、確実に手話対応可能な相談へつなぐように各市町村担当職員へ周知徹底願してください。
    
4 優生思想を乗り越える取組の強化 
 旧優生保護法下の施策展開の結果、誤った優生思想の伝播が長期に渡り、行政によって行われてきました。障害の有無によって命の価値や人間の尊厳に分け隔てしない正しい考え方を啓発し、インクルーシブな社会を形成する施策を展開する責務が行政にあると考えます。
(1)北海道江差町のグループホームで施設サービスを継続して受けるために不妊手術を選択させられてきたという強制不妊問題が現代にも生きている事件が明かになりました。本件に関わって、厚生労働省は「障害福祉サービス事業者における障害者の希望を踏まえた適切な支援の徹底等について」(令和5年1月20日事務連絡)において同様の事案があれば報告するよう求めています。そして、2023年5月3日の共同通信の報道によれば、東京都、京都府、兵庫県など全国13都道府県は同様の事例がないか調査を実施しています。
 大阪府においても、大阪府所管入所施設及びグループホームにおける実態把握を行ってください。また、各市町村の所管施設についても、調査を行い報告するように求めてください。
(2)厚生労働省事務連絡(前出)において、障害者が希望する地域生活の支援及びその子どもの養育を支えるために、資源の開発や連携の強化を含めた、地域の支援体制の構築、研修の実施等による障害者の意思決定支援を図る等関係する施策の充実に関する依頼があったところです。
 大阪府において、研修をはじめ関係施策の充実を図ってください。また、どのように検討されているのか明らかにしてください。

<大阪障害フォーラム(ODF)加盟団体>

一般財団法人 大阪府身体障害者福祉協会 (※)
一般財団法人 大阪府視覚障害者福祉協会
公益社団法人 大阪聴力障害者協会 (※)
NPO法人 大阪府中途失聴・難聴者協会
社会福祉法人 大阪府肢体不自由者協会
一般社団法人 大阪脊髄損傷者協会
大阪頸髄損傷者連絡会
社会福祉法人 大阪手をつなぐ育成会 (※)
大阪精神障害者連絡会 (※)
公益社団法人 大阪府精神障害者家族会連合会 (※)
ピープルファースト大阪
大阪府重症心身障害児者を支える会
公益社団法人 日本てんかん協会大阪支部
一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会大阪支部
一般社団法人 大阪知的障害者福祉協会
認定NPO法人 大阪精神医療人権センター
障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 (※)
障害者(児)を守る全大阪連絡協議会(障連協) (※)
きょうされん大阪支部
大阪「生活の場・事業所」連絡会
一般財団法人 大阪市身体障害者団体協議会 (※)
NPO法人 大阪市難聴者・中途失聴者協会
NPO法人 堺障害者団体連合会(堺障害フォーラム)
社会福祉法人 大阪市手をつなぐ育成会
NPO法人 大阪難病連 (※)
NPO法人 大阪盲ろう者友の会
NPO法人 デフサポートおおさか
公益財団法人 阪喉会

(※) は「大阪障害フォーラム世話人団体」  

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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