障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 要望書(2)

更新日:2023年4月10日

(1) (2) ※2ページに分割して掲載しています。

要望書

【地域移行・地域生活に関する要求項目】

 大阪府では2019年度「基盤整備促進ワーキング」において「施設入所者の地域移行推進に関する提言」を発出し今後の方策を打ち出しましたが、その後その具体化は何ら検討していません。昨年策定された「第5次大阪府障がい者計画」でも、最重点施策として「地域生活への移行の推進」を掲げ、「長期入所等の解消に向け、入所施設を緊急避難的な受け入れを担う場とし地域との循環を図るなど入所施設の機能・役割を整理・検討する」「今後の入所施設のあり方、果たすべき機能を検討する」と示しましたが、これも手つかずのままです。そうした状況から地域移行者数は年々減少傾向にあり、ここ数年は新規施設入所者が地域移行者の2倍以上に達し、退所者の多くは高齢施設・病院への移行や死亡が多いなど「一生施設」の状態に置かれ続けています。
 更にはこの間のコロナ禍により、入所施設や精神科病院からの地域移行はほぼ停止状態に陥り、より閉鎖的な環境となってしまっています。精神科病院ではコロナ病棟への転院拒否による死亡事例や入院患者に対する虐待事件が相次ぐなど、極めて厳しい状態に置かれています。府は「地域移行は市町村業務」としていますが、市町村では市域をまたがった施設入所等での取り組みにくさもあることから、「市町村まかせ」「施設まかせ」とすることなく、市町村が施設にアプローチするための課題と必要な仕組みを府が明らかにするなど、バックアップを強化することが必要です。
 また、相談支援事業に関する府の令和3年度実態調査では、昨年度からの報酬改定で運営が改善したと回答している事業所はわずか13%しかなく、各種加算についても事務が煩雑で大半が利用できない状態にあり、2020年度の廃止事業所は72カ所にものぼっています。これほど廃止が多い事業種別は他になく、決してこれ以上、事業廃止が増えないようその要因を分析し、国に更なる報酬改善を強く求めつつ、府としても急ぎ可能な対策を講じ、相談支援基盤を守らなければなりません。
 また、地域生活支援拠点等については、府内では昨年10月時点で「37市町村が整備済み」とされていますが、各市町村がどのような拠点・機能を持っているか、有効に機能しているかを検証し、家族の入院・死亡等により緊急対応を要するケース等でしっかり安全確保されるよう、更に機能の充実をめざさなければなりません。また、精神障害者の「日中の居場所」にもなっている就労支援B型の減算問題について、昨年から導入された「一律評価報酬体系」では何ら問題解決になっていないことをふまえ、改めて国に対して根本的な解決に向けて働きかけていかなければなりません。
 更には、近年激しさを増す豪雨災害に備えて、多様な垂直避難場所の確保を推し進めるとともに、昨年5月の災害対策基本法改正を受けて各市町村に対して福祉との連携による個別避難計画の作成、要支援者名簿の対象拡大を働きかけるなど、個々の避難対策を強化していかなければなりません。
 以上の認識に立ち、以下要求します。

1.地域移行の取り組みに関する国への要望
  地域移行支援について実態に見合った充実を図るよう、国に対して引き続き以下要望すること。
 ・地域移行支援サービス費について、重度障害者の地域移行での労力やスキルに見合った報酬の増額、体験加算15日制限の撤廃、施設・病院までの交通費保障を求めること。
 ・地域移行を進めるためには、地域移行支援契約前の「前段階支援」やコーディネートは不可欠であり、その明確な報酬・加算を設けるよう求めること。また重度障害者の地域移行の受け皿を増やすために、グループホームの地域移行特別加算の対象者や適用年数の拡大を求めること。
 ・地域移行支援には体験外出・体験宿泊も不可欠であり、体験支援制度の充実も求めること。

2.大阪府での地域移行取り組みの推進に向けて
 (1) 何十年もの長期入所、一生施設の状態の解消に向け、「第5次障がい者計画」で示している通り、「長期入所状態に至る前に地域移行できる循環型の仕組み」「今後の入所施設のあり方」を検討するために「基盤整備促進ワーキング」を再開し、具体方策の検討を進めること。
 (2) 地域移行の推進に向けて、基盤整備ワーキングで以下の方策を具体的に検討し実現すること。
 ・コロナ禍においても地域移行取り組みを止めないために、リモートを利用した施設と地域の定期交流や、感染防止に配慮した体験外出・体験宿泊を具体的に提案し実施を働きかけること。
 ・地域移行コーディネーターを各市町村の基幹相談支援センターや委託相談支援センターに配置するよう働きかけるとともに、府としてもその補助制度を検討すること。
 ・地域移行支援契約前の「前段階支援」の取り組みとして、今年大阪市で実施される体験外出事業を参考に、各市町村に同様の事業の実施、もしくは移動支援の活用を積極的に働きかけること。
 ・府の「重度知的障がい者地域生活支援体制整備事業」では地域移行は広がらないと考えられるため、これとは別に各市町村で地域移行希望者と地域をつなぐマッチングの仕組みや、受け皿に対するスーパーバイザーの派遣、重度障害・行動障害の受け入れ研修の実施を展開すること。
 (3) 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」について、地域移行・地域支援の基盤整備に向けて、「市各部局・住宅関係者・障害事業所が連携した有効な仕組み」を検討するとともに、住まいの確保等の課題を解決していくために、国・府補助金を活用して全市町村で居住支援協議会が設置されるよう働きかけるとともに、先行事例から課題を分析し好事例を発信していくこと。
 (4) 兵庫県・神出病院に引き続き今年、東大阪市・阪本病院でも意思表明が難しい人への複数職員による卑劣な虐待事件が相次いでいる。府はこの状況を重く受け止め、精神科医療機関療養環境協議会を一層充実し権利擁護システムを確立するとともに、国に対して精神科病院に虐待の通報義務並びに通報者の保護を早急に課すよう、関連法の改正を強く働きかけること。

3.相談支援事業について
 ・どの市町村も相談支援事業所がなかなか増えない一方、事業廃止が1年間で72件に急増している問題について、府として非常事態であるとの強い危機感をもって、事業廃止に至った要因を調査し、事業廃止の連鎖から相談支援基盤の崩壊までを食い止める対策を急ぎ講じること。
 ・廃止の要因としては、相談員1人事業所が多く、採算をとるために多くの件数を抱えてバーンアウトするという悪循環に陥っていることが考えられるため、高槻市で実施している初任者研修費の補助や新規開設補助について、府市で連携して実施するよう検討すること。
  ・併せて、府の相談支援専門員研修の受講枠を更に拡大するとともに、事業所・人員の増に向け、研修修了者が必ず相談支援業務に従事するよう、市町村とも連携して法人に働きかけること。
 ・国に対して、相談員を複数配置できる報酬への増額、障害ケース会議の法定化により行政各担当と連携できる仕組みの強化等、相談支援事業所を支えるために必要な対策を全て求めること。

4.地域生活支援拠点等について、各市町村の拠点機能と実際の利用状況を集約し明らかにするとともに、今後の機能強化に向けて、とりわけ地域の緊急事例・虐待事例等に迅速に対応できるよう、緊急時支援者派遣や入所施設等での緊急受入れ事業を整備するよう全市町村に働きかけること。

5.大阪府でのピアサポーターの養成について、各市町村・各障害団体とも連携し、今年度から受講枠を十分確保して研修講座を実施していくこと。

6.防災対策について近年の猛烈な台風・豪雨災害に備え、要支援者が直ちに上階に垂直避難できるよう、学校校舎、ホテル、府市有施設、物販店等の避難場所を市町村・業界団体とも連携して十分確保し、実際に利用できるよう現地検証を進め、必要な設備や備品の設置も働きかけること。
  昨年の法改正により個別避難計画の作成が努力義務化されたこと等を受け、要支援者名簿の中軽度者への対象拡大と併せ、福祉事業所と連携した個別避難計画の作成を府全域で推進すること。

7.就労支援B型の平均工賃月額体系による減算問題から国は昨年度、一律評価報酬体系を導入したものの、実際には殆どの事業所が利用できず全く問題解決にはなっていないことと併せて、国はますます成果主義に偏り「日中の居場所」としての存続が危ぶまれることから、府として問題点を集約し引き続き国に対して、障害特性等による少日数・短時間利用者を平均工賃月額体系での算定カウントから除外することや、一律評価報酬体系の抜本的な見直しを働きかけること。

【権利の実現に関する要求項目】

 昨年4月に大阪府差別解消条例が改正され、改正差別解消法の施行に先駆けて「事業者の合理的配慮」が義務化されました。しかし昨年度の府の差別解消取り組みは、コロナ禍の影響があったとは言え今までと変わらぬ啓発しか実施しておらず、差別事案を減らしていくためにこの間上がってきた相談事例を集約・分析し、事業種別ごとに「どんな場面でどんな差別が発生しどう未然防止すべきか」を具体的に示していくべきです。「事業者の合理的配慮」の義務化を含む法施行まで最長でも後2年(2024年6月)ですが、国に先駆けて府で義務化したことにより、合理的配慮の提供が広がっていることを証明してゆけるよう、一層取り組みを進め具体的な成果を上げていかなければなりません。
  また、府内市町村の差別解消協議会は未設置の所がまだ20程度も残っており、ここ数年全く進んでいません。既に設置している市でも事案の概要すら示されず、件数報告だけにとどまっている所もあります。各市町村が個々の事案にしっかり対応できる力をもてるよう、法令改正をテコに市町村に対して協議会設置と事案検討に取り組むなど、働きかけを一層強めていかなければなりません。
 障害者に対する入居差別は未だに根強く残っており、住宅を借りる際に断られる事案が続いています。障害者への差別意識だけでなく、家主が「漠然とした不安」を抱いて拒否される例も多くあり、家主の意向に沿って宅建業者や保証業者が拒否する動きも広がっています。大阪市内のマンションでは、長く平穏に暮らしてきたグループホームが住民から退居を求めて提訴され、一審で退居判決が下されるというとんでもない事態になっており、現在高裁で控訴審が始まっています。更には昨年末に北新地で起きた放火事件の後、精神障害者の支援団体が物件を借りようとしても貸してもらえなくなってきていることや、公営住宅で住民の高齢化によって自治会活動の継続が難しくなり、障害者が「自治会活動ができないなら入居できない」と拒否される事例が何件も発生するなど、入居差別は広がる一方です。これらは福祉政策・住宅政策にも影響する由々しき事態であり、福祉・住宅部局がもっと主体的に連携し、家主や関係業者、住民に対する啓発活動を一層展開していく必要があります。
  旧優生保護法に基づく強制不妊手術については、大阪・東京の高裁で「除斥期間を適用せず国の損害賠償を求める」という画期的な判決が下されましたが、国はどちらに対しても上告してしまい、今後の動きを注視する必要があります。一方、大阪府では少なくとも全国で5番目に多い619人(「同意」も含めると1,234人)に対して不妊手術が行われたにも関わらず、この間の一時金支給の認定件数は25件と非常に低調なままです。2018年に行われた国の医療機関・福祉施設への調査では、府内10施設が「個人記録がある可能性がある」と回答されただけで済まされ、ほとんど把握できていないに等しい状態です。一時金支給の請求期限まであと2年余りしかなく、このまま被害者を見捨てることなく一人でも多くの被害者を掘り起こすために、府として市町村とも連携して改めて医療機関や福祉施設ならびにこれまで調査されていない高齢者施設も含めて調査し直すべきです。
 生活保護については、コロナ禍での生活困難や昨今の物価上昇への対応に向けて、影響を受けた障害者が生活を維持できるよう積極的に活用することが必要です。また国では5年に1度の保護基準の見直し検討が進められており、5年前に引き続きまたしても級地区分が見直されようとしていますが、それにより保護費全体が決して引き下げられることのないよう、他の自治体等とも連携して国に対して強く働きかけていかなければなりません。
  また、府の障害者医療費助成は、「持続可能な制度への再構築」という名目で、昨年3月に中軽度の精神・難病の高齢障害者(約3万6千人)への助成がとうとう打ち切られてしまいました。大阪府は「いのち輝く未来社会」を掲げながら、障害者にとって必要不可欠である受診の機会を奪うようなやり方は決して許されるものではなく、打ち切りの影響を追跡調査し助成再開を検討すべきです。
 以上の認識に立ち、以下要求します。

1.府の差別解消条例、差別解消取り組みについて
 (1) 事業者の合理的配慮の義務化を受け、この間同様の差別的対応が複数発生している業種・場面を特定し、「何が不当な差別・合理的配慮の不提供にあたり、その未然防止のためにどう配慮すべきか」を具体的に示した媒体を作成し集中的に啓発すること。大阪市では銀行等での自署強要などの問題が続いたことから、金融機関向けの啓発チラシ・研修資料を作成し啓発しているが、府でも業種ごとの啓発取り組みを年間計画を立てて実施し、差別を確実に減らしていくこと。
 (2)  府内市町村の差別解消支援協議会は、いまだ19市町村が設置検討中であるなど全く進んでいない。障害者差別解消法の改正をにらみ、直ちに全市町村に協議会を設置させること。
    また府でも協議会設置市でも、事案に対してまだまだ適切に対応しきれているとは言いがたいことから、「当事者の立場に立って問題を解決できる人材」が確実に育成されるよう、府が「具体事例と適切・不適切な対応例」を示すなど、実践的な研修を実施・強化するとともに、市町村での対応に不備がある場合は、府が直接出向いて機動的に助言・指導を行うこと。

2.住宅の入居差別について
  障害者の入居拒否やグループホームに対する入居拒否・追い出しの差別が相次いでいるが、府では障がい福祉と住宅部局の連携が不十分なまま、効果的な取り組みが進められていない状態にある。高齢化問題への対応も含め入居差別は「待ったなしの課題」であり、その解決に向けて各部局が前向きに連携し、家主・宅建業者・管理会社・保証業者等に対して、「この間発生している問題事例、適切な合理的配慮の事例」を具体的に示す啓発媒体・研修資料を作成し差別を未然に防ぐとともに、差別が発生した際には、府として調査・指導に出向くなど毅然とした対応を行うこと。
  入居差別の背景には、まだまだ障害者の暮らしぶりが知られておらず、「漠然とした不安」だけが先行していることから、「障害者の地域生活やグループホームでの暮らしの様子」を紹介する媒体を作成するとともに、セーフティネット住宅や家賃保障等の制度、相談支援等福祉との連携の仕組み等を家主や関係業者に積極的に周知し、不安や懸念を具体的に払拭していくこと。

3.強制不妊手術の問題について
  強制不妊手術は優生思想に基づく極めて重大な人権侵害事案であり、府としてもその一端を担った事実を重く受け止め、被害者の掘り起こし、救済に向けて可能な方策を全て示すこと。
  府の被害者数は「形の上での同意」も含めれば1,234人おられるが、府の認定件数はたった25件に過ぎず、一時金の請求期限まであと2年余りしかなく、このままではほとんどの被害者が何の保証もされないまま見捨てられていくことになる。残された時間があまりないことを重く捉え、府として一人でも多くの被害者を掘り起こすために、周知啓発だけにとどまることなく、市町村とも連携して、医療機関・福祉施設への再調査を実施すべきである。大阪市で今年実施しているように、医療機関、障害児者施設、児童施設ならびにこれまで調査していない高齢者施設に対して、調査を実施すること。また国に対しても再調査の指示等、新たな対策の実施を強く要求すること。

4.生活保護の基準見直しについて
  この間国で検討されている「生活保護基準の見直し」について、5年前と同様に級地区分の引き下げが懸念されている。現行の級地区分6ランクを3ランクに大括りする方向のようだが、この間のコロナ禍での生活困難や生活必需品の物価上昇等の影響をふまえ、また保護基準の見直しは全ての低所得者対策にも大きく影響するため、決して級地区分、保護基準額を引き下げることのないよう、他の自治体とも連携して国に強く働きかけること。また、この間の保護の停廃止の問題や、障害者加算、介護加算、住宅扶助等も含めて、更なる締め付けにならないよう国に強く働きかけること。

5.障害者医療費助成について
  昨年3月末の経過措置終了に伴い、中軽度の精神・難病の高齢障害者への助成が打ち切られた問題について、その影響をどのように追跡調査していくのか明らかにすること。また調査結果を障害者団体に示すとともに、費用負担がかさむことで受診控えが決して起こらないよう、低所得者等に対する助成を復活させること。今後これらの検討を具体的に進めることを明言すること。

【交通・まちづくりに関する要求項目】

 関西万博2025のユニバーサルデザインガイドラインの作成が2021年7月に当事者抜きで行われ、内容もオリパラより後退したものであったために改訂作業が行われる事態となりました。改訂にあたっては、国土交通省移動円滑化評価会議近畿分科会委員を中心に、東京オリパラや国立競技場建設に携わった有識者、障害者等の参画により、今後大阪府が目指すべきバリアフリーの指標とすべきものが作られました。これを万博のみならず、大阪府福祉のまちづくり条例や府ガイドラインに反映させ、大阪全体のバリアフリーの発展につなげることが必要です。
 一方で、コロナ禍の外出自粛が続く中、障害者の意見を聴くことなく、人員削減、合理化によって無人駅が一方的に拡大しています。障害者だけが一方的に乗車のために長時間待たされることが常態化することは、公平性や移動の権利の保障の観点から重大な問題を孕んでいます。そのことは、府第5次障害者計画の基本理念である「全ての人間(ひと)が支え合い、包容され、ともに生きる自立支援社会づくり」に反することと懸念しています。無人駅問題の解決を鉄道事業者の責任にのみ帰するのではなく、社会生活の基礎である移動権の保障の課題として、自治体として、鉄道事業者と積極的に協議・連携し、解決の方策を障害当事者とともに具体的に検討することが求められます。
 交通の関連では、障害者が単独乗降できる駅舎等のバリアフリー化、ホームと段差の隙間解消、安全性の向上のためのホーム柵の設置の重要性がましています。昨年策定された「駅ホームにおける安全性向上の取組み」では、2025年度までの設置見込みは149駅(府内518駅中3割)となっていますが、東京都では2030年度までに全駅中6割設置の目標が示されています。バリアフリー加算による新料金制度開始も踏まえ、駅のバリアフリー化、安全対策の加速化を図ることが必要です。
 また、バリアフリー法の改正、建築設計標準の改定、都市公園ガイドラインの改定など国の取組に呼応する検討が必要です。劇場、スタジアムの特定施設化、小規模店舗・飲食店のバリアフリー化の取組、障害者が車椅子の状態や時間帯によって差別的扱いを受け不当な利用制限を強いられることなく安心して公の施設である府営公園を利用できる整備の促進などが今年度の重要な課題です。バリアフリー化の取組は、社会的障壁の除去の取組です。市民生活を送る上で、何が障壁なのかは、当事者である障害者がもっともよく理解しています。国のバリアフリー法やバリアフリー関連の施策の推進にあたっては、障害者の企画・設計段階からの参画、当事者目線での評価によるスパイラルアップが常識です。府におかれましては、実効性のある当事者参画の場を作り、各課題について、真摯に検討を進めて頂きますようお願いいたします。
 以上の認識に立ち、以下要求します。

1.駅ホームの安全・平等な移動の確保について
 (1) 「駅ホームにおける安全性向上の取組み」(2021年4月改定)で示されたホーム柵についての取組方針に基づき、利用実態、地域の実情等を勘案し、優先度が高い駅・番線での整備を推進できるよう、充分に予算措置を行うこと。なお府立福祉情報コミュニケーションセンターは視覚障害、盲ろう者など多くの障害者が利用する施設であり、最寄駅であるJR・地下鉄「森ノ宮」駅に優先して設置すること。
 (2) 終日無人、時間帯無人(一定時間駅員不在)、時間無人(「駅員配置」とされた時間内での一定時間駅員不在)、窓口無人(一部窓口のみ駅員不在)等、「無人駅」は様々な形で拡大してきています。駅の無人化は、鉄道利用にかかる障害者の負担の増大を招くものであり、障害者の移動の権利の侵害にもつながりかねないという認識の上に立ち、無人駅等の拡大を回避するよう鉄道事業者への理解を図ること。また、現在の無人駅等については、国土交通省が公表予定であるガイドラインを踏まえ、障害者の意見を充分に聴取し、対策の具体化を行うよう鉄道事業者へ働きかけること。また、地元自治体と鉄道事業者との連携による解決を図っている事例も参考にし、無人駅問題への取組を図るよう、府内市町村に対しても理解を求めること。

2.大阪府福祉のまちづくり条例(以下「条例」)関係
 (1) 国土交通省の建築設計標準の改正を踏まえた小規模店舗・飲食店にかかる府ガイドランの改正については、障害者の店舗利用における課題をしっかり把握し検討すること。またその際に、敷地との境界も含めた出入口や店内経路については、車いすで入店できるよう条例による義務化を検討すること。
 (2) 2022年3月バリアフリー法の改正により、劇場・スタジアムが建築物特定施設となったことを踏まえ、条例に車いす席の設置義務基準等を盛り込むこと。また、共同住宅の居室内のバリアフリー化についても検討を行うこと。

3.2025関西万博を機に大阪まるごとバリアフリーの実現について
 (1) 改定後のユニバーサルデザインガイドラインが具体化されるように、各パビリオン、催事施設、展示施設、その他敷地内施設(パブリックトイレ、飲食・物販店)の設計・整備にあたっては、当事者意見の反映を図ること。また、敷地内の園路、エントランス、入出ゲート、大屋根リング(すべてのパビリオンをつなぐ主動線となる遊歩道)、移動モビリティ、サイン表示、情報のユニバーサル化、サービス提供のあり方、共に体験できるコンテンツ作り等、今後の課題についても、当事者参画を基本として、障壁の除去、ユニバーサル化を目指すこと。
 (2) 万博へのアクセスのバリアフリー化について検討を行うこと。取り分け、鉄道やバス、タクシーなどの乗換点となるターミナル駅(弁天町駅、大阪駅、新大阪駅、難波駅等)、及び、パークアンドライド(自家用車)の駐車場・乗降場、水上輸送の船着き場、乗船経路など、現在、計画されている輸送手段について、確実にバリアフリー化を行うこと。
 (3) シャトルバス(新大阪駅、大阪駅、なんば等と会場連絡)によって全体の2割以上の輸送が計画されていることを踏まえ、東京都の「観光バスバリアフリー化支援補助金交付」などの取組みも参考に、車いすが乗車可能なシャトルバス車両の計画的導入を図ること。
 (4) 府ユニバーサルデザインタクシー普及促進事業だけでは、車いす利用者のタクシー利用は進まない。「流し」が利用できない、予約で車両指定ができない等の現状を検証し、事業者に対し障害者が利用できる環境整備を働きかけること。また、トヨタジャパンタクシーでは大型車椅子への対応が困難である為、府から国へ、真のユニバーサルデザインタクシー車両導入の検討を要請すること。
 (5) 万博を機に、ホテル、観光施設、商店街、飲食店などのバリアフリー化など、大阪のバリフリーの底上げを図り、障害者が取り残されることなく大阪の街を楽しめることをめざすこと。取り分け、バリアフリー客室があるホテル情報の提供については、ホテル任せでなく、行政として情報の整備を行い提供できるよう早急に取り組むこと。

4.府営公園のバリアフリーについて
 (1) 「移動等円滑化の促進に関する基本方針」に定める整備目標(園路及び広場のバリアフリー化70%)が達成できるように計画的に整備を進めること。また、その整備にあたっては、改正後の都市公園ガイドラインの基準に基づくこと。
 (2) 府・第5次障害者計画の基本理念にもある「誰一人取り残されない大阪」に向け、車いす利用者等が時間制限なく円滑に利用できるハートフルゲート以外の経路を確保すること。また、計画・設計段階からの当事者参画を担保すること。
 (3) 改正後の都市公園ガイドラインの基準に合致するよう「大阪府都市公園条例」を改正すること。なお、改正にあたっては、障害者等利用者の声を踏まえること。

【教育・保育に関する要求項目】

 新型コロナウイルスの影響は、今年度も学校生活に影響を与え続けています。「コロナの特別な状況で、ともに学ぶことを求めるのは本人・家族のわがまま」という差別や声が出たりすることが決してないよう、府教育庁から市町村教委、学校への指導・助言を適切に行うことが求められます。
  大阪では教育への政治介入が強化され、その結果できる・できないの基準で子ども達を分ける方向に大きく進みました。障害のある児童・生徒は、徐々に普通学級から支援学級へ、地域の学校から支援学校へと押しやられてきています。
  今年4月末、文部科学省から発出された通知「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」には、「特別支援学級に在籍している児童生徒については、原則として週の授業時数の半分以上を目安として特別支援学級において・・授業を行うこと」等、大阪の進めてきた「ともに学ぶ教育」を根底から覆す内容が示されています。普通学級で一緒に学ぶ時間を制限することは決して許さないという立場と態度を、はっきりと指し示すことが必要です。
  国連障害者権利委員会の政府報告書に対する「総括所見」を目前にしながらも、インクルーシブ教育とは正反対の方向に進む動きが強まっています。府教育庁として「ともに学ぶ」方向性を強く打ち出さなければなりません。
  知的障害児童・生徒数の将来推計を根拠に「知的障がい支援学校の新設」の予算が計上されています。また特別支援学校設置基準(省令)が公布され、増築が進んでいくことも明らかです。「希望者がいるからその希望に応じて増設する」のではなく、分けられることの弊害をふまえ、分けない教育=「ともに学びともに育つ大阪の教育」の推進に向けて、地域の学校で充実した学びができるよう環境を整えるのが府の責務です。府教育庁は一昨年度末、市町村の小中学校へ通うための補助制度(市町村教委が通学支援制度を作った場合1/2以内で費用を補助する)を新規に策定しました。「障害のある児童生徒が地域の小中学校で学びにくく支援学校を選択せざるを得ない」現状を正面から見据え、ともに学ぶ教育を進めるための具体的な施策を進めていかなければなりません。
  大阪府学校教育審議会において「今後の府立高校のあり方等について」の議論が行われましたが、今後の具体の方策ははっきりせず、結果として高等部を含め特別支援学校の新設・教室の増築ばかりが進んでいこうとしています。中学校卒業後の進路が支援学校に集中するのは、高校入学が閉ざされているからです。小中学校でともに学び一般高校への進学を希望しても、入試制度により支援学校高等部の選択を余儀なくされるのは、構造としての差別であり、「ともに学び・育つ」教育を掲げ続けてきた大阪府で解決すべき第一の課題と言えます。希望するすべての生徒が高校へ進むことができるよう、施策を抜本的に改めなければなりません。
 「バリアフリー法」が改正され、公立小中学校のバリアフリー整備が基準化されました。文科省から、既存の学校も含め「5年間に緊急かつ集中的に」整備を行うよう通知が出されましたが、府教育庁としても府立学校のバリアフリー整備を早急に進める必要があります。また市町村への働きかけは、単に校舎の改築の問題ではなく「ともに学ぶ教育」を進める視点から、伝えていくことが必要です。
 以上の認識に立ち、以下要求します。

1.就学における本人・保護者の意向尊重、および就学指導について
  障害児の就学にあたっては、地域で「ともに学び・ともに育つ」という原則に立ち、本人ならびに保護者の意向を最大限尊重した就学相談を実施するよう、また支援学級に在籍する場合「支援学級で学ぶ時間数を決める」等の条件付けを行わないよう府内各市町村教育委員会に徹底すること。これらについて府政だよりへの掲載など、府民全体に対して示すようすること。また引き続き就学通知を対象年齢児全員に対し年内に発出するよう、市町村教委に働きかけること。

2.義務教育段階の支援等について(小中学校)
 (1) 大阪府独自の市町村教委に対する通学支援補助について、全自治体で活用するよう働きかけるとともに予算増に努めること。また通学支援については乗り物等だけでなく、ヘルパー等人的支援による制度が実現するよう、障害福祉とも連携して検討するよう働きかけること。
 (2) 支援学級の設置は、同じ場でともに学ぶためであることを市町村に明確に示し、学習の少しのつまずきで普通学級から支援学級へ籍を移すなど、安易な分離が行われていないか検証すること。

3.医療的ケアが必要な児童・生徒について(小中学校)
 (1) 府内における医療的ケアが必要な児童生徒が、親の付添いなしで学校教育全ての活動(授業・校外活動・放課後活動等)に参加できているか、学びの場について希望通りに行われているかを調査すること。またその結果について私たちに示すこと。
 (2) 医療的ケアが必要な児童・生徒が在籍する学校で、全職員対象の医療的ケア研修を行うよう市町村教委を指導すること。また緊急時・災害時への備えも含め、看護師以外の医療的ケア実施者を増やすために、教員・支援員等、学校関係者が「府教育庁が実施する第三号研修」に参加できるようにするなど、実施主体の拡充を行うこと。

4.インクルーシブ教育を実体化するための、合理的配慮・環境整備について
  昨年4月医療的ケアが必要な生徒の合理的配慮について、全府立高校へ文書で通知された。知的に障害のある生徒など、他の障害についても府内のすべての公立学校で、校外学習・宿泊を伴う修学旅行等、すべての教育活動において「共に学ぶ教育」が受けられるよう、合理的配慮の好事例を集約し、広く府民に示すこと。

5.肥大化が続く特別支援学校に関する課題について
 (1) 学校の狭隘化等を理由に、知的障がい支援学校の新設や教室等の増築に一切歯止めがかからず進む一方であることは、「ともに学ぶ教育」と逆行している。この傾向が続く原因を示し、それに対する見解・対応策を明らかにすること。その上で「知的障がい支援学校の新設」の撤回・見直しを行うこと。
 (2) 地域の小中学校在籍者を増やすため、通学支援に続く具体的な手立てを示すこと。
 (3) 高校入学について、定員内不合格を出さない等を守りつつ、多くの障害をもつ生徒が、高校で学ぶことができる制度やシステムを検討し、高校で学ぶ障害生徒の拡大の方策を示すこと。

6.障害のある生徒の高校問題(入試・入学後)について
 (1) 合理的配慮の不提供は障害者差別であるという認識の下、障害のある生徒の受検に不利益が生じないよう最大限の配慮を行うこと。特に機器利用は積極的に認めるようにすること。
 (2) 府立高校入学後、看護師、学習支援員等が必要に応じて配置されるよう予算を拡充すること。特に学習支援員・介助員については、単価や登録について見直しをはかるよう検討すること。また在学する生徒に対して、福祉制度の活用による支援、卒業後の進路選択の可能性を拡げる情報提供などを行うため、地域の障害福祉事業所等との連携を図るよう高校に働きかけること。
 (3) 医療的ケアだけでなく、府立高校通学に支援が必要な生徒への制度創設を検討すること。

7.バリアフリー法改正による、小中高の整備について
 (1) 府立高校のエレベーターはまだ50校近く設置されていない。進路選択への影響も踏まえ、早期に全校に設置すること。またバリアフリートイレについても同様に早期に全校に設置すること。
 (2) 府内市町村小中学校のバリアフリー整備計画について、インクルーシブ教育を進めるという視点を踏まえ、全市町村で策定されるよう働きかけを行うこと。

8.大阪府教育庁における、障害者の法定雇用率が未達成であることについて、その理由を示すこと。また雇用率2.4%の早期達成に向け、全府立学校での採用等、抜本的な方策について検討すること。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

ここまで本文です。


ホーム > 令和4年度の団体広聴一覧 > 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 要望書(2)