大阪保育運動連絡会、大阪保育研究所、大阪自治体労働組合総連合 要望書

更新日:2021年10月7日

要望受理日令和3年9月9日(木曜日)
団体名大阪保育運動連絡会、大阪保育研究所、大阪自治体労働組合総連合
取りまとめ担当課福祉部子ども室子育て支援課
表題

保育現場におけるコロナ感染危機に対処するための緊急要請書

要望書

  

2021年9月9日 

大阪府知事 吉村 洋文 様
                                                                                 

大阪保育運動連絡会 会長
大阪保育研究所 所長
大阪自治体労働組合総連合 執行委員長

保育現場におけるコロナ感染危機に対処するための緊急要請書

 
 今年7月以降の第5波となる新型コロナウイルス感染拡大危機においては、感染力の強いデルタ株の影響から保育現場でも感染が拡大し、過去最多の臨時休園になるなど保育現場は危機的な状況となっています。
 既に大阪府内の市町村では、家庭保育の協力(登園自粛)要請を行うなど、感染防止にむけた取組みが行われています。しかし、今後の事態によっては、医療従事者をはじめ社会の機能を維持するために就業継続が必要な保護者の子どもなどに対する保育をどのように確保できるのかが大きな課題となってきます。
 とりわけ、保育施設内で感染者が確認されれば「臨時休園」となることから、現状では医療従事者等の子どもであっても保育の提供が困難な現状にあります。
 児童福祉法第24条第1項(※1) により、市町村に保育の実施責任があることから、災害発生・感染症流行時にあっても、保育を必要とする子どもに適切な保育の提供が求められているところです。
 感染急拡大となっている今こそ、これら保育実施義務を果たしつつ、安心・安全な保育を提供するための具体的な対応が必要となっています。
 私ども3団体は、公民の保育現場に携わるものとして、昨年より「公立施設の活用を考える研究会」により、公立保育施設としての社会的役割の果たし方などについて議論・研究を進めており、その知見と議論から、現状のコロナ感染危機への有効な対処方法を取りまとめたところです。
 つきましては、広域行政を担う大阪府として、府内市町村や国等の関係機関と協力し、至急対策を講じていただきたく以下の項目について要請いたします。
 なお、昨年9月に大阪保育運動連絡会から提出した「保育現場における新たなコロナ感染危機にむけた要望書」についても、引き続き対応いただきますよう重ねて要請いたします。

 ※各要請項目のあとの「*(アスタリスク)」に要請内容の具体的な考え方を記載しています。
 ※文中の「保育施設」とは「子ども子育て支援新制度における認可施設・事業」を、「臨時休園等」とは「臨時休園」及び「登園回避要請」を意味しています。

   ※1 児童福祉法第24条第1項:市町村は、この法律及び子ども・子育て支援法の定めるところにより、保護者の労働又は疾病その他の事由により、その監護すべき乳児、幼児その他の児童について保育を必要とする場合において、次項に定めるところによるほか、当該児童を保育所(認定こども園法第3条第1項の認定を受けたもの及び同条第11項の規定による公示がされたものを除く。)において保育しなければならない。

1.臨時休園等の対応について次のことに至急取り組んでください。
(1)臨時休園等に伴う代替保育の方針を確立し、代替保育事業(代替保育の実施及び相談等)を整備してください。
 *厚生労働省事務連絡「医療従事者等の子どもに対する保育所等における新型コロナウイルスへの対応に関する取扱いの徹底について」(2020年12月10日付)や厚生労働省事務連絡「保育所における災害発生時等における臨時休園の対応等に関する調査研究(周知)」(2020年7月17日付)により、臨時休園等(登園回避の要請等含む)の際の代替保育の必要性が示されているところです。しかしながら、国からは代替保育をどのような体制で確保するのか何も示されていないのが現状です。既に一部地方自治体(米子市、鳥栖市、鈴鹿市、酒田市、天草市)において臨時休園に伴う代替保育の事例や代替保育事業の整備事例もあることから、これらを参考としつつ、大阪府として代替保育の方針を確立し、府内市町村において必要なときに代替保育事業が実施できるように至急整備いただくことが必要です。
 *代替保育事業については、実際に代替保育を提供することも重要ですが、全ての代替保育の提供が無理な場合の相談や家庭保育に協力いただいた場合の支援含めた体制の確立が必要です。

(2)代替保育は公立保育施設及び公立保育施設職員を中心に計画することとし、公立保育施設の削減(統合・民営化)計画がある場合は計画を凍結させるよう府内市町村へ働きかけてください。
 *地方自治体による代替保育の実施・整備事例をみても、公立保育施設により対応・計画されていることから、代替保育は公立保育施設を活用し公立保育施設職員において対応することを中心に計画することが必要です。
 *研究会として私立保育園園長にヒアリング調査を行い、公立保育施設の役割や期待することについてたずねたところ「職員に感染者が出た場合の職員派遣や公立施設での代替保育」「(災害時・緊急対応事の)公立保育施設での臨時保育」「公立は緊急時に中心となって支援を行う役割がある」など、災害などの緊急事態対応の際には代替保育などの役割が求められています。個々の私立保育施設では担うことが困難な内容だからこそ、地域内の保育の継続のために公立保育施設としての役割を果たすことが必要です。
 *府内市町村の中には、公立保育施設の削減(統合・民営化)計画を進めているところがありますが、公立保育施設を減少させることで地域内での代替保育の確保に支障をきたすことも想定されます。また、この間、公立保育施設を削減することで保育需要に十分に対応できていない府内市町村もある状況です。コロナ禍により今後の保育需要動向への対応などが不透明なこともあることから、削減計画については一旦凍結させることが必要です。

2.感染急拡大への対策として次のことに至急取り組んでください。
(1)PCR検査を保育施設で定期的に実施するほか、施設関係者の感染が疑われる事案が生じた時は、対象者を絞ることなく、希望者が何度でも検査が受けられるように体制を整備してください。
 *感染急拡大の際に保育施設を継続的に運営するには、感染者の早期発見と迅速な対応こそが求められます。デルタ株では10歳未満の子どもへの感染が広がるなか、就学前児童(とりわけ乳児)については適切なマスク使用も困難であり、12歳未満へのワクチン接種については実施時期も未定の状況であることから、感染対策を行うにしても限界があります。また、仮にワクチン接種をしていたとしても、感染リスクがゼロではないことも明らかになっています。このため、保育施設における感染リスクを限りなくゼロに近づけるためには、保育関係者(子ども・保護者・保育職員)に対して、感染していないことを定期的に確認する検査と、いざ感染疑いが生じた時に、対象者を絞ることなく希望者が感染判定の検査を受けられる体制整備が必要です。
 *既に府内市町村の一部においては、保育施設内で感染者が確認された際に、濃厚接触者以外の希望者に対して感染判定の検査を行う事業を整備しているところもあることから、これら取組みからでも府内全域に広げることが求められています。

(2)ワクチン接種を希望する保育施設職員及び保育施設利用保護者が優先的に接種できるよう、府内市町村へ働きかけてください。
 *保育施設職員のワクチン優先接種については、市町村により対応が様々であり、全ての市町村で優先接種の取組みが必要です。
 *また、臨時休園等を回避するためには、保育施設職員だけでなく保育施設を利用する保護者へのワクチン接種も有効となることから、保育施設職員同様に優先接種の取組みが必要です。(○○は保育園の保護者を対象にワクチンの職域接種を行っていることが報道(9月5日付□□)されています。)

3.安心・安全な保育の実現にむけて次のことに至急取り組んでください。
(1)保育施設における「密」な環境を是正し、しっかりとした感染対策を行うためにも、施設基準と職員配置基準を抜本的に改善してください。
 *感染防止の基本とされる身体的距離の確保や「密」をさけることについては、現在の保育の基準や条件においては実現が困難です。職員配置基準では、日本の4・5歳児が子ども30人に保育士1人に対して、フランスでは3歳以上は15人に1人で、1人当たりの面積基準も、日本の2歳以上が1.98平方メートルに対して、フランス・パリ市では3歳以上は5.5平方メートルです。もともと日本の基準は諸外国と比べて貧しい状態です。
 *保育士が足りない、配置基準が現場の実態に合わず、増える事務仕事など、感染防止の対策に追われる前から保育施設の毎日はギリギリの状態でした。既に職員の使命感や犠牲がなければ普通の保育さえも維持できない、それが保育現場の実情です。
 *そのため、コロナ禍のような緊急事態になったら、この体制はいつ崩れてもおかしくありません。保育施設はコロナウイルスの感染を防ぐために子どもたちを閉じ込めておく場所ではありません。声をかける、話を聞く、体を動かす、一緒に過ごす、そのどれもが人が人として生きていくうえで欠かせない営みです。子どもたちの生活からそうした営みが奪われることは、子どもの権利の侵害となります。
 *保育士1人あたりの子どもの人数が今の半分だったら、子どもたちが過ごす遊ぶスペースがいまよりもずっと広かったら、子育て世帯の家庭が広々とした場所でゆっくり過ごせる環境とプログラムがあったら、保育士が必要な時にいつでも休める体制があったら、いくら頑張っても感染が防げるかどうかわからない今の状態より、そういう環境ができれば疲労度は減り安心度は増えるに違いありません。
 *各地で頻発している地震や豪雨などの災害の備えとしても、保育の基準の引き上げは急ぐべき課題です。どのような状況にあっても、安心して安全に質の高い保育を格差なく保障できるよう保育の最低基準を抜本的に引き上げることが求められます。

(2)現行の施設・職員配置基準に基づいた保育施設整備計画を改め、改善基準に対応した保育施設整備をすすめてください。
 *現在の子ども・子育て支援法に基づく都道府県子ども・子育て支援事業支援計画(大阪府子ども総合計画(後期事業計画))は、現行の施設基準や職員配置基準をもとに計画されていることから、3.(1)により改善をはかるためには、事業計画そのものを見直すことにより、保育需要に対応することが必要となります。

(3)すべての保育施設で保育以外の業務を行う職員配置ができるようにしてください。
 *保育施設では子どもが直接触れる物(おもちゃ、絵本など)や場所(机、床、扉、手すりなど)の消毒に神経をとがらせる状況が続いており、保育士が疲労困憊することから、保育そのものに影響しかねない状態です。この状態は、公立・私立に関わらず同じです。例えば、施設内の清掃消毒や環境整備を担う職員を配置すれば、保育職員の負担軽減がはかられ保育に専念することができます。保育以外の業務を行う職員を配置することができる十分な助成金など整備することが必要です。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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