障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議 要望書(1)

更新日:2023年4月10日

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要望受理日令和3年6月18日(金曜日)
団体名障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議
取りまとめ担当課府民文化部 府政情報室広報広聴課
表題要求書

要望書

2021年6月18日


大阪府知事  吉村  洋文 殿

障害者の自立と完全参加を
目指す大阪連絡会議(障大連)


要求書


 貴職におかれましては、障害者の自立と社会参加の推進に日々尽力しておられることと存じます。
私達、「障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議」(障大連)は、1980年に府下の障害者団体、親の会、労働組合、民主団体が集まり結成され、障害者自身の立ち上がりを基礎に、すべての障害者の自立と完全参加をめざし活動を進めてまいりました。
 昨年から新型コロナウイルスの蔓延が1年以上も続き、とりわけ今年3月からの第4波ではこれまで以上に感染が拡大し、大阪では連日1000人を超える感染が発生し続けました。第4波での変異株は感染力が強く重症化率も高いと言われており、医療体制・病床は一気に逼迫したため、重症化してもなかなか入院できない「医療崩壊」の状態にまで至り、大阪での死者は全国最多となりました。
 障害者は基礎疾患等を有する者も多く、感染すれば重篤化する恐れもあるため、自由な外出等が制限された暮らしの中、我慢しながら過ごしてきました。また介護・支援の現場ではどうしても「密な接触」を避けられないため、障害者・支援者共に感染の恐れをもちながら、何とか日々の業務をこなしてきたと言えます。そのような福祉現場特有の状況もあり、どれだけ感染予防を徹底していても、一人でも感染すれば瞬く間に感染が広がる恐れがあり、実際にクラスターが発生した事業所も相次ぎ、府でも外部からの応援職員の仕組みを設け、団体も協力して派遣して頂いたケースもありました。
 もはやいつどこで誰が感染してもおかしくはなく、クラスターにでもなれば一法人だけではどうにも対応できない状態、特に第4波では病床の逼迫により感染しても入院できない状態に陥り、命を落としかねない危険な状況に対して、どの法人も非常に強い危機感を抱き続けてきました。
 そのような中、個々の事業所の頑張り、事業所同士での連携だけでなく、行政によるバックアップが必要となります。昨年来、私たちは厚労省・大阪府・各市町村に対して、クラスター防止策として、(1)支援の現場で一人でも感染者が出れば即時に全員のPCR検査を実施できるようにすること、(2)陽性となった当事者は速やかに入院できるようにすること、(3)入院できない場合は支援者付きで宿泊療養ホテルを利用できるようにすること、(4)陽性者と陰性者を直ちに分けられる場を確保すること等の対策の実施を強く求めてきました。即時の全員検査、陽性者の入院の必要性はようやく認識されるようになってきましたが、病床逼迫により入院はなかなか困難となり、それ以外の対策については部局間のタテ割りの弊害もあって、一年以上たった今なお「手つかずの状態」です。

 この間、政府の対応は後手にまわり続け迷走し、緊急事態宣言の発令は3度に及び、ワクチン接種の普及もまだ相当時間がかかる見通しです。大阪府でも保健所をはじめ衛生部局の体制も急速に逼迫するなど、大変な状態に追い込まれる一方で、飲食店の「見回り隊」に力を入れるなど、ちぐはぐな対応も繰り返してきました。また市町村によっては事業所にばかり責任を押しつけ、寄り添おうとしない姿勢が見られたり、報酬の臨時的な取り扱いすら勝手に打ち切ったところさえありました。
 あちこちの事業所でクラスターが多発すればもはや外部応援も回りきらず「福祉崩壊」、更なる「医療崩壊」ももはや現実のものとして強く懸念されています。個々の命を守り抜くためには感染防止の徹底はもとより、事業所で感染者が出てもクラスター発生にまで至らないよう食い止めることが何よりも重要であり、行政と事業所・団体が力を合わせ上記の対策を急ぎ実現していかねばなりません。
 今年度からの障害福祉サービス等の報酬改定では、「全体で0.56%のプラス改定」「重度化・高齢化への対応」が強調される一方、中軽度者の支援報酬が更にカットされたり、「メリハリのある対応」が強調され、事業によっては報酬が大きく切り下げられるなど、更に厳しい状況となっています。
 特にグループホームでは中軽度者の夜間支援体制加算が大幅にカットされ、個別ヘルパー利用も経過措置の継続にとどまりました。また就労支援B型は前回の報酬改定で事業所によっては大きく減算され、今回新たに一律報酬体系が設けられましたが抜本的な改善には至らず、相談支援はこの間も指定事業所の撤退が多くなかなか増えない中、今回も報酬はさほど増えず改善には到底至っていません。
 また、新型コロナ対応での「かかり増し経費」への補助であるサービス継続支援事業は新年度も継続されましたが、昨年度予算42億から今年度12億に減らされており、この間の感染拡大状況から見ても更なる追加予算が必須となる見込みです。
 
 差別解消の取り組みでは昨年度、大阪府は差別解消条例を改定し、事業所の合理的配慮の提供が義務化され新たな一歩を踏み出しました。国でも今年度、同様に差別解消法が改正され、今後、社会全体に合理的配慮の取り組みが広がり、あらゆる場面で差別が未然に防止されるよう、各業種への具体的な合理的配慮の例示など、啓発取り組みをより一層進めていただきたく思います。
 一方で、まだまだ障害者に対する差別・虐待事例は後を絶ちません。旧優生保護法による強制不妊手術は現在も係争中であり、相模原市障害者施設での大量殺傷事件など障害者の存在そのものを否定する衝撃的な事案が発生し、ここ数年、府内で障害者の監禁・死亡事件が相次ぎました。昨年も平野区の市営住宅で住民から障害者が自死に追い込まれた事件、神戸市の精神科病院「神出病院」での入院患者に対する集団虐待事件が明るみに出るなど、聞くに堪えない悲惨な事案が発生しています。このような事案は決して二度と起こしてはならず、他の虐待事案も含め事案の背景・要因を徹底的に掘り下げ、抜本的な防止策を検討し、「差別・虐待の芽」をしっかりと摘んでいかなければなりません。

 また、施設・病院からの地域移行については、この間のコロナ禍により停滞を余儀なくされていますが、何十年もの長期入所状態の解消に向け、また障害児施設での年齢超過者の早期の地域移行も含め、「待ったなしの課題」として、感染防止策も講じながらどのように移行を進めていくべきか、しっかりと検討していかなければなりません。府として入所施設のあり方検討、地域移行を進める仕組みづくりと併せ、先導的役割をもってしっかり検討し、市町村等に提示していくことが必要です。
 また地域生活支援拠点機能の強化と併せて、今年度からは「精神障害者等にも対応した地域包括ケアシステム」の仕組みが具体化され始めました。急速に進む重度化・高齢化への対応、8050問題等、緊急ケース・困難ケースでの緊急時支援の仕組みづくりも急がれることから、地域拠点機能や包括ケアシステム等の強化により、「緊急ケースを発見し、直ちに救済する連携の仕組み」を整備していかなければなりません。更には、毎年のように各地で甚大な台風・豪雨災害が発生しており、南海トラフ地震も懸念される中、「いつ起こるとも知れない災害への備え」として福祉と地域が連携した防災対策も、急ぎ充実していかなければなりません。

 大阪府では今年度から向こう6年間の新たな長期計画として「第5次大阪府障がい者計画」が策定され、「全ての人間(ひと)が支え合い、包容され、ともに生きる自立支援社会づくり」を基本理念とし、「障がい者差別・虐待の防止、命と尊厳の保持」「あらゆる分野における大阪府全体の底上げ」「真の共生社会・インクルーシブな社会の実現」等の5つの基本原則が掲げられました。
  これら長期計画で示された課題方策が、決してかけ声だけで終わることのないよう、また未曾有のコロナ禍でも災害でも差別・虐待でも、「障害者をはじめ誰も命を落とすことのない社会」を願い、行政と当事者団体、事業所、地域住民が連携・共同して、いかなる危機にも決して揺るぐことのない強固な地域基盤の構築をめざしていかなければなりません。
 以上の認識に立ち、以下各課題について要求いたします。

【障害者施策全般に関する要求項目】

1.今年度からの報酬改定について
  今年度からの報酬改定では、「重度化・高齢化への対応」が最優先課題とされ、中軽度者の報酬・加算が軒並み減算され、グループホームの夜間支援や放課後デイなどでの影響が大きく、また就労支援B型や相談支援の厳しい状態もほとんど改善されなかった。今回の報酬改定での事業所の状況を市町村から集約し、国に対して引き続き課題を訴え、早期の改善を求めていくこと。

2.新型コロナウイルス感染への対応について
  国の今年度予算では新型コロナ感染が発生した事業所に対する「かかり増し経費」への補助である「サービス継続支援事業」について、今年度も継続されたが、昨年度の国予算42億から今年度12億に減らされている。第4波からはクラスター発生が急増してきたことから、国に対して十分な追加予算の確保を求めるとともに、府では事務手続きの都合上、今年3月分が補助されないこととなったが、今後はいつ感染発生しても切れ目なく補助されるよう対応すること。
  また第4波においては、大阪府では病床が急速に逼迫し、死者数は全国で最多となってしまった。大阪市内の障害者の感染事例では、保健所や救急搬送では「血中酸素濃度が80%台まで低下しなければ入院できない」とまで言われ拒否される事例が相次いだ。今後、このような事例を決して発生させることのないよう、重症病床・中軽症病床を大幅に拡充し、少なくとも入院できないことによる死亡ケースをなくすこと。
  更にこの間、保健所・衛生部局の体制も逼迫し、保健所となかなか連絡がつかず、濃厚接触者の特定のための疫学調査も1週間後とされたりもしたことから、今後に備えて保健所のカ所数、職員数も更に増強すること。
  新型コロナワクチン接種について、障害者の生命を守るために、障害者や各種事業所職員がすみやかに接種できるように対応するとともに、かかり付け医等での接種、事業所への訪問接種も可能とすることや、また、区民センター等の会館での集団接種に際しては、障害特性にも対応した各種の合理的配慮を行うよう、全市町村に働きかけること。
 
3.「大阪都構想」とその後の条例制定について
  昨年11月に「大阪都構想」の2度目の住民投票が強行され、今回も否決されるに至ったものの、その後も「都構想」の形を変えて大阪府−大阪市の両議会内だけで市民不在のまま、今年3月に「広域行政一元化条例」が制定され、今後も大阪市24区を8区に再編する「総合区条例」の制定がめざされようとしている。
  「都構想」やその後の条例の検討でも、市民−障害者への影響についてきっちりと説明されることなく、一方的に進められてきていることから、府市ともに説明責任を果たすこと。
  また「広域行政一元化条例」により、大阪市の貴重な財源を勝手に府に吸い上げ、市民−障害者の暮らしに影響を及ぼすことが決してないよう極めて慎重に対応するとともに、今後、大阪市に無用な混乱を及ぼす「総合区条例」は制定しないこと。

4.大阪府立福祉情報コミュニケーションセンターについて
  福祉3センター等の統合移転により、昨年6月に開設された大阪府立福祉情報コミュニケーションセンターについて、設計段階から指摘されていたことだが、駐車場が決定的に不足していることから、隣接する府有施設「環境農林水産総合研究所」の駐車場を活用することや民間駐車場の借り上げ等によって早期にアクセスの改善を図ること。

【介護に関する要求項目】

 2021年度の報酬改定では、グループホームの夜間支援の見直しと連動して、重度訪問介護の夜間支援についても手待時間部分も含め支給決定するよう通知されており、府からも各市町村への周知徹底が求められます。「重度訪問介護利用者の大学修学支援事業」については、当初報酬単価が1600円から2840円に増額される予定でしたが、残念ながら見送られてしまいました。また、従来から課題とされていた「福祉と雇用の通勤・就業支援」が、ようやく地域生活支援促進事業に組み替えられましたが、実施する市町村は非常に少なく、全市町村で実施されるよう働きかけることが必要です。
 新型コロナウイルス感染の第4波では、障害事業所においても次々に感染発生し、クラスターも発生し大変な状況に追い込まれました。日中活動を休む場合の介護サービス利用をはじめ、人員基準等の臨時的な取扱いや「かかり増し経費」への助成で、市町村によって対応にばらつきがあり、クラスター発生時の外部からの応援職員の派遣についても、府で仕組みが設けられましたが、レッドゾーンへの派遣が断られるなど、いずれも大変苦労させられました。感染者やクラスターが発生しても、何とか支援を継続しようとする事業者に寄り添いバックアップすることは、府−市町村の当然の責務であり、決して「事業所まかせ」としないよう、府から市町村に厳しく働きかけることが必要です。
 また、入院時の介護保障については重度訪問介護の区分6の人だけしか認められておらず、それ以外の人には「入院時コミュニケーションサポート事業」しかありませんが、未実施の市町村が多く、入院・宿泊療養において必要とする場合に円滑に利用できるよう、全市町村での制度化が必要です。
 また、重度化・高齢化の課題では、介護保険と障害福祉制度の併給については両制度の違いからまだまだ多くのトラブルが発生しており、更に両関係者の認識を深めていくことが課題となっています。長時間介護の利用ではどの市町村においても、重度化・高齢化に対応した支給量が保障され、安心して暮らせるよう格差を解消していくことが必要であり、盲ろう者の通訳・介助制度でも高齢化に対応した仕組みの強化が必要です。移動支援についても未だに残る市町村格差を早急に是正していかなければなりません。以上の認識に立ち、以下要求します。

1.今回の報酬改定の課題
 (1) 「福祉と雇用の通勤・就業支援制度」について、府内全市町村で実施されるよう、国に対して重度訪問介護等、個別給付制度の利用を含め、更なる推進策を求めていくこと。
   また、府内市町村の実施・検討状況を集約し、就業支援では利用料負担を求めないことなど、先進的な事例を周知し、府独自の支援策も講じながら全市町村での早期実施を働きかけること。
 (2) 大学修学支援事業について報酬の引き上げ、交通費の別途保障を国に強く求めていくこと。
  また府内市町村での大学修学支援の実施状況を把握し、市町村に対して教育部局と連携して事前に利用予定者を把握し、大学入学時から直ちに利用できるよう調整することを働きかけること。

2.新型コロナウイルス問題による介護の課題について
 (1) コロナ禍により日中活動が休業、縮小通所となった場合、あるいは障害者・家族が感染、濃厚接触となり通所自粛となり、本人が居宅で過す場合において、相談支援等とも連携してスムーズに介護の支給決定変更(代替サービスの付加)を行うよう、市町村に対して強く働きかけること。
 (2) 介護や移動支援・日中活動等での「人員基準等の臨時的な取扱い」について、コロナ禍が収束するまでの間必ず継続されるよう、全市町村に対して強く働きかけること。
   「かかり増し経費」への助成(サービス継続支援事業)について、感染発生時期によって助成対象とならないなど空白期間が生じることのないよう、また事業ごとの基準額ではとても足りないことから、基準額を超えて実費全額が助成されるよう、各市町村に強く働きかけること。
 (3) 感染・濃厚接触となったヘルパー・スタッフは一定期間、就業制限せざるを得ず、その間の人手不足を補うことが非常に困難な場合は、外部応援職員の派遣を積極的に運用すること。また、法人やクラスターの規模によっては、あるいは単身・家族同居の障害者では外部応援職員がレッドゾーンに入って協力することも必要となるため、それを可能とする仕組みを再検討すること。
 (4) 障害者は基礎疾患等のある方も多いため、感染時は障害部局と保健部局が連携して速やかに入院できるよう協力を徹底すること。病床逼迫によりどうしても入院できない場合は、宿泊療養ホテルを介護者付きでも利用できるよう、障害部局・衛生部局・危機管理で直ちに具体化すること。
  また家族同居で家族が感染した場合等では、濃厚接触となった障害者が陰性である場合は、別の場で安全に過ごせるよう、宿泊できるホテル(イエローホテル)を確保し宿泊費も補助すること。

3.入院時の支援について
 (1) 重度訪問介護の入院時利用について、早急に区分4、5の人も利用できるよう国に求めること。
 (2) 入院時コミュニケーションサポート事業の府内市町村の実施状況・利用要件を調査・集約し、実施していない、あるいは利用しにくい市町村に対して、事業実施・改善を働きかけること。

4.介護保険との併給課題について
 (1) 各市町村で介護保険との併給に際して、既に廃止されている平成12年の国通知のまま誤って運用し、障害福祉サービスの利用が不当に制限されていないか調査し、その結果について公表し、不適切なものについては早急に改め、併給前の生活を保障するよう市町村に働きかけること。
 (2) 介護保険併給時に「従来通りの介護が受けられない」「生活パターンを変えなければならない」等のトラブルが発生していることから、府市の介護保険・障害福祉担当、ケアマネジャーや相談支援、介護事業者が、「障害状況が変わらなければサービスの引き下がり等の不都合を生じてはならない」ことを理解し、トラブルを未然に回避できるよう、介護保険と障害福祉制度や理念の違い、障害特性等を理解できる研修を実施し周知徹底すること。
   ついては、大阪市で作成した上記の研修資料、ケアプラン作成における留意事項通知等を参考にして、府でも同様の資料を作成し各市町村・事業者に周知すること。
  (3)  トラブルの未然防止のために、個々のケースで相談支援専門員とケアマネが連携してサービス調整することは可能であり、相談支援を積極的に継続利用するよう市町村に働きかけること。

5.長時間介護・移動支援の支給決定時間数、制限問題
 (1) 国のQ&A通知をふまえ、夜間支援等ではコールに対応する待機時間(手待時間)は労働時間であり、手待時間分も必ず支給決定するよう市町村に働きかけるとともに、支給量が確実に上積みできるよう、国に対しても国庫負担基準での夜間支援分の上乗せを要求すること。
 (2) 重度身体障害や強度行動障害、医療的ケアを必要とする障害者等が、障害特性・ニーズを十分ふまえた適切な支給量や二人介護が保障されるよう働きかけるとともに、市町村・事業者に対して障害特性に対応した支給決定、環境設定のあり方に関する研修を強化すること。
  (3) 移動支援の各市町村における不当な利用制限の撤廃に向けて、状況を継続して把握するとともに、「起点・終点による利用制限」「宿泊旅行でのホテル内介護」などについて、早期に是正するよう、市町村に対してより一層強く働きかけること。

6.盲ろう者の通訳・介助者派遣制度等について
  (1) 今期報酬改定でも通訳・介助制度の個別給付化は見送られたが、引き続き国に対して個別給付化と併せ、「日中活動内も含め場面を問わず利用できる長時間の通介制度」の実現を求めること。
 (2) 盲ろう者の高齢化が進み、車いす利用や移乗介護のニーズも増えていることから、府として事故を未然に防いでいくために、高齢化対応での二人派遣の適用、派遣時間数(年1,080時間)や日中活動内での通介利用の拡大にふみ込むこと。従来、通介派遣は自薦中心で脆弱性も現れていることから、本人−通介者任せとすることなく、OJTの導入も併せ通介研修の一層の充実、個々の障害状況・通介状況の変化、ひやりはっとを把握できる仕組みを急ぎ構築すること。

【グループホーム等に関する要求項目】

 この1年半、新型コロナウイルス感染症拡大の中、グループホームの入居者は、ホームならではのだんらんも、大事にしてきたみんなの行事も、生活のうるおいや社会参加の重要な機会だった外出も、いろんなことに自粛を余儀なくされ、ガマンにガマンを重ねてすごしてきました。障害特性上、感染症の危険の理解が難しい方やマスクができない方も多く、学習や対策にも様々な工夫を行ないながら、入居者の生活が少しでも萎縮しないように、心を砕いて取り組んできました。そして、様々な困難な状況に対応しながら、事業の継続要請にこたえてきましたが、グループホームにおける感染や感染うたがいの事例からは、早期の検査実施や入院、適切な分離・隔離を可能にするための具体的な方策など、重症化や感染拡大・クラスター化を防ぐためのたくさんの施策の課題も浮き彫りになっています。
 そのような中、今回の報酬改定では、「重度化・高齢化への対応」「重度障害者の受け入れへのインセンティブ(=施策誘導)」を名目に、中軽度の報酬が引き下げられました。夜間支援体制加算についても、「巡回型加算」の新設と引き換えに、区分3以下の単価が大幅に引き下げられています。日中支援型グループホーム創設の財源確保に名を借りた、前回改定における引き下げに続き、コロナ禍で奮闘するグループホームに対する、非常にむごいしうちです。また、個別ヘルパー併用については、今回も経過措置の延長という形となり、原則禁止のまま、恒久化は見送られました。総じて、重度対応の推進と言うには薄く、ますます大規模・効率化がすすむことが懸念されるばかりです。1989年にグループホーム制度ができて32年。グループホームの入居者は入所施設の利用者数を超えました。その一方で、「スケールメリット」を公言し、施設的な支援形態を持ち込み、地域のグループホームの趣旨をないがしろにする流れは、断じて許されません。
 大阪府においては、公営住宅の活用など、地域のグループホームを支える仕組みがすすめられてきましたが、形式的な複数法人による合築や、高齢ホームとの合築などにより、大阪のルールをかいくぐった大規模ホームの建設が後を絶たない実態があります。また、グループホームを開設して、実際の生活が始まっているにもかかわらず、簡単に廃止する事業所もありました。さらには、15年以上マンションの住民としてふつうにくらしてきたグループホームが、「グループホームは施設」とする管理組合から立退きを迫られ、裁判にかけられるという、恐ろしい事態まで発生しています。第5次大阪府障がい者計画(2021年度から6年間)においては、その最重点施策として、「入所施設や精神科病院からの地域生活への移行の推進」がかかげられ、「障がい者が地域で希望する暮らしを実現するためには、住まいの場となるグループホームをはじめ、日々の暮らしに必要な障がい福祉サービスを質・量ともに確保することが必要」「『8050問題』などの課題を解消し、障がい者とその家族等が、地域で安心して暮らしていくための環境づくりが重要」と、強調されています。新計画推進のためには、地域生活支援・地域移行の要であるグループホームの量的確保だけでなく、大規模・効率化に歯止めをかけ、地域でのあたりまえの暮らしを実現するための質の確保をバックアップする大阪府の具体的な施策が、ますます重要になっています。以上の認識に立ち、以下要求します。

1. グループホームにおける新型コロナウイルス感染症に関する課題について
 (1) 周囲の感染などの状況により、感染疑いの段階からの対応を進めるため、スマホ検査センターの対象を拡大し、症状のない利用者・職員も、必要に応じて受検できるようにすること。
 (2) グループホーム入居者に感染者が出た場合の対応について
 ・保健所の疫学調査を待つ期間のリスクを考慮し、すみやかに必要な検査ができるようにすること。
 ・正しい隔離に基づいた生活や療養ができるよう、すみやかな入院調整や、支援つきでの療養ホテルの利用などをすすめること。濃厚接触者や感染者以外の入居者が他所に移動する形が有効な場合に使用できる「分けるための場」の確保を、早急にすすめること。
 ・障害部局が率先して状況を把握し、保健所と連携するとともに、必要に応じて、行政が保有する防護具や消毒剤の提供などを、すみやかに行なうこと。
 (3) 感染発生時などの日中の支援について、日中事業所とグループホームの双方が対応した場合は、双方の報酬請求を可能にするよう、早急に国に働きかけること。また、府独自で、初日から算定できる日中支援加算や入院時支援加算などの支援策を講じること。

2.第5次大阪府障がい者計画の推進と、大阪府のグループホームに関する具体策について
 (1) 大阪においてグループホームが大規模化しないよう、また同一敷地内・建物内で生活が完結することがないよう、1ホームの定員を短期入所を含めて10人以下、日中事業所との併設禁止を原則とする「指定方針」を堅持し、府内全市町村とその趣旨を共有・徹底できるよう継続して啓発を行うこと。高齢グループホームとの合築・併設については、大規模化が不可避であるため、禁止を明確に通知すること。
 (2) 大阪府のグループホーム開設ハンドブックを、グループホームの質の確保や啓発への活用にも考慮した内容に改訂し、これを活用した事業者への研修をすすめること。
 (3) 日中支援型グループホームについて、府下全域の動向など、実態を明らかにすること。また、日中支援型が、地域のくらしの場として機能するよう、大阪府のチェックリストの普及を進めるとともに、入所施設が看板掛け替えで日中支援型に移行しないようにすること。
 (4) 大阪府の具体策として、下記をすすめること
 ・区分が低く認定される傾向の精神障害者グループホームについて、中軽度の報酬が減額された今回の改定の影響を調査し、具体的に実態を示すこと。また、精神障害者グループホームへの独自の入院時支援加算など、大阪府独自の補助制度を創設すること。
 ・年限付きでない「サテライト型」あるいは「グループホーム圏」として「ひとり住戸」を認めるなど、多様な物件確保や支援形態をすすめること。
 ・在宅からの移行を含む新たな入居者を受け入れた場合の初期加算を創設すること。
 ・初日から算定できる日中支援加算や入院時加算など、大阪府独自の補助制度を創設すること。

3.今回の報酬改定をふまえたグループホーム制度の拡充に関する国への働きかけなど
 (1) 今回の報酬改定における基本報酬や夜間支援加算の減算、利用しにくい巡回加算などの問題について、16大都道府県など他の自治体とも課題を共有し、国に見直しの要望を行なうこと。
 (2) グループホームにおける個別ヘルパー利用について、府下ならびに16大都道府県における実施状況や利用の実態を明らかにすること。またその実態をもとに恒久化を国に強く求めること。
 (3) 感染症対策とも関連する日中支援加算・入院時支援加算の初日からの算定、地域移行特別加算の在宅からの入居支援への拡充、サテライト型の年限撤廃について、引き続き国に要望すること。

4.グループホームの物件確保策、コンフリクトへの対策について
 (1) グループホームの物件確保を進めるため、下記の課題に取り組むこと。
 ・府下のグループホームの物件確保状況について、消防法令による影響やコンフリクト問題を含む実態を調査すること。これらも元に入居拒否につながらない対策について具体的な検討を行なうこと。また、今後の大阪府障がい者計画の策定にあたっては、実態調査を定期的に実施すること。
 ・2018年度、2019年度回答に基づき、大阪府のグループホーム開設ハンドブックなどの活用を進め、UR、家主・宅建業者・管理会社・保証業者、地域や公営住宅自治会等への啓発を進めること。
 ・公営住宅利用の拡充に向け、「隣接住戸2戸1化改修」などのグループホーム仕様や、借り上げ型公営住宅によるグループホーム活用など、府独自やモデル事業を進め、国にも提言すること。
 ・消防法の改正により、公営住宅におけるグループホームの利用が困難になっている実態をふまえ、公営住宅全体の内装不燃化などの防火対策をすすめること。また、公営住宅におけるグループホームの開設にあたって、当該住戸の内装不燃化をすすめること。
 (2) 大阪府営住宅、および政令市を含む大阪府下市営・町営住宅の建て替え計画、ならびに該当住宅におけるグループホームの利用状況、および対応状況を明らかにすること。
 (3) 公営住宅利用グループホームが、建替えに際し新築への入居から排除されることのないよう、「目的外使用」の見直しを国に要望するとともに、個別事例において適切な対応を図ること。

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府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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