検体の医学的研究利用

更新日:2024年4月9日

 検体の医学的研究利用

 本研究の対象となる熱中症、その他の予期しない死亡例の死因の究明は、死者に生じた医学的事実を科学的・客観的に究明・記録し、死者と関係者の人権を守るために必須です。
 その過程で既往症や生活状況等の情報を分析し、解剖に加えて、血液・尿等の検体を採取して化学・免疫学検査を実施し、諸臓器から組織片を採取して組織検査を行います。
 これら実務上の行為は、亡くなったご身内の死因を正しく究明するのに活かされています。
 さらに、複数の症例の情報や資料を比較・検討する”研究”を通して、診断、死因究明の精度が向上し、熱中症等の診断・治療、ひいては予防に役立つ情報を得ることができます。
 ご遺族様方には、ご身内の情報や試料を研究に用いることについて、ご理解いただけると幸いです。

 用いる情報・試料は、検案要請書(警察が作成する既往症、生活状況等を含む事例概要)、検案調書(監察医が検案時に作成する業務記録)、CTレポート(コンピュータ断層撮影に関する報告書)、解剖記録、組織標本、血液等の体液の検査所見、熱中症に特異的な調査項目(例えば、エアコンの設置等)を含む調査票です。
 情報・試料は、「熱中症の病態解明と熱中症予防対策」以外の目的で利用されることがありません。

 研究は、主に大阪府監察医事務所及び大阪大学医学部附属病院で行います。
 他の研究機関に提供されることはありません。

 試料・情報を取り扱う研究者(補助者)は、研究に参加する監察医(大阪大学医学部職員を兼任する非常勤監察医を含む。)、大阪府監察医事務所の職員です。

 研究成果は、順次、学会や学術誌などに公表されますが、個人を特定できる情報は一切公表されません。
 また、他施設の研究者に問い合わせる場合も、個人を特定できる情報は提供しません。

 試料・情報の管理責任者は、大阪府監察医事務所監察医務監 吉田 謙一です。

研究期間

 2025年3月末まで

管理責任者

 大阪府監察医事務所 監察医務監 吉田 謙一
 〒540−0007 大阪市中央区馬場町1−6
 電話:06−6946−3198  FAX:06−6946−3199
 メールアドレス  Yoshidakeni@pbox.pref.osaka.jp

補足説明(詳しい研究内容)

 以下、研究に関して少し詳しく説明します。(読み飛ばしていただいて結構です。)

 
 熱中症は、既往症、生活習慣等の発症要因に、高温環境が加わって発症します。
 発症要因が分かれば予防できますが、未解明の部分が大きいです。
 大阪府監察医事務所では、熱中症が疑われる事例を多数取り扱っています。死後体温の下降幅が小さいことエアコンなしの高温環境等から診断されていますが、死因が熱中症、既往症のいずれか区別できない事例が多いのです。

 熱中症は、体温が40度以上となる病態であり、動物実験により全身性の炎症反応から脳症を伴う多臓器不全症候群に進むと考えられていますが、ヒトの病態に関するエビデンスは極めて乏しいのです。

 解剖は、「死因の究明」のために行います。
 しかし、解剖時に採取した検体を医学研究に利用することで、熱中症の病態が解明されると熱中症の診断精度の向上(既往症等との鑑別診断)、正確な死因に基づく発症要因の分析から具体的な予防対策を策定できます。
 また、得られた情報は個人情報保護の遵守を徹底した上で疫学研究に利用することで、社会に対して広く、熱中症の予防対策を策定できます。
 個別の診断や発症要因に関する情報は、ご遺族様方に死因を説明する際にできる限りお伝えします。
 それ以外、現時点で死者やご遺族に直接的な利益・恩恵をお約束できませんが、公衆衛生や医療の発展のため大きく貢献していることをご理解いただけると幸いです。

このページの作成所属
健康医療部 監察医事務所 

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