CTの活用

更新日:2024年3月8日

死亡時画像診断におけるCT検査の有効性について

 大阪府監察医事務所では、監察医が死因を特定するためにご遺体を外表から観察し、死因が特定できない場合にCT撮影を行います。
 撮影後に読影室で監察医、放射線技師、解剖助手が集まって、議論しながら診断し、診断レポートを作成し、これをもとに死体検案書を作成します。

 肺炎、肺気腫、肺がん等の呼吸器疾患の他、脳出血、脳くも膜下出血、心嚢血腫、心肥大、冠動脈硬化症などの疾患や、食物誤嚥や溺死(浴槽内)、転倒等による外因死の診断にCT画像が役に立ちます。

 CT画像で診断できない事例やCT所見に疑問が残った事例は、解剖、血液検査等を実施し、その結果に基づいて死因の特定を行います。

 CT検査では特に、新型コロナウイルス感染症、肺結核、ガス壊疽等の感染症の診断に優れており、結果を保健所に即時報告することで、ご遺族など周囲の方への感染拡大を防いでいます。
 また、解剖による二次感染を予防しています。

 当事務所では、CT検査を解剖や病理組織検査とともに駆使して、以下のような稀少疾患等の病態の解明に活用しています。

・くも膜下嚢胞(くもまくかのうほう)

 くも膜嚢胞という脳表の先天性異常が、中年に達するまでの長い間に頭蓋底の骨を融解して4つの大きな穴を作った世界初の症例です。
 頭蓋腔内でくも膜嚢胞の塊が脳を圧迫すると、脳表の太い静脈洞が鬱滞して血液が漏れ、慢性硬膜下血腫を生じ、この血腫の中に新たにできた血管から出血して、”急性硬膜下血腫”を生じました。
 そして、骨の穴の端にあたる動脈洞が破綻して出血しました。これらの出血が頭蓋底の穴を通って頚部に多量に流れ出して死亡したと推定しました。

・漏斗胸(ろうときょう)

 漏斗胸という胸部の中央が強く窪む先天的な異常に関するものです。
 心臓が左胸腔に押し込まれて左肺を圧迫し、中年に至るまで肺に入る右心室流出路を圧迫し続けたため、右心不全と右肺塞栓(反復)が進行し、死に至ったと推定しました。

 このようにCT検査と解剖を駆使して、生前に医療の恩恵を受けずに亡くなった人たちが、どのように亡くなったかを明らかにし、ご遺族には、時にCT画像をお見せしながら、死因やその他の所見について説明しています。
 そして、CT検査を活用した大阪府監察医事務所オリジナルのアプローチによって、病態を解明し、医学の進歩に貢献しています。

このページの作成所属
健康医療部 監察医事務所 

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