第40回人権啓発詩・読書感想文入選作品 読書感想文の部門【中学校(中学部)の部】 P.58

更新日:2022年3月31日

「聲の形」から学んだこと                                  大阪府立生野聴覚支援学校中学部 3年 中井 美佑

 「友だちってなんだろう。」と石田将也君が彼自身に問いかけました。私はそういったことを考えたことがありませんでした。
 ある日、久しぶりに家の本棚から「聲の形」を手に取りました。小学生のときに買ってもらったこの漫画はとても印象的でした。なぜなら耳が聞こえない西宮さんがいじめに悩まされ、苦しみながらも笑顔を絶えずに生きていく姿に心惹かれたからです。また、私は十四年間、ろう学校で過ごしてきたので周りは手話を使える友だちや先生がいることが当たり前でした。でも、いつかはろう学校から出ていかなくてはなりません。だから聲の形を読んでもっと聞こえる世界を知ろうと思ったのがきっかけだと思い返しながら一ページ、一ページと読んでいきました。
 私が共感したところは、高校生になった西宮さんと石田さんが再会するところです。石田さんは小学生のときに西宮さんの声を聞かずにいじめたことを後悔して、西宮さんと向き合うために手話を覚えたのです。これに西宮さんは驚いていました。私が西宮さんだったら、同じように驚いたと思います。聞こえる方がろう者とスムーズに話すために手話を知り、そして使ってくれることがとても嬉しいからです。手話はろう者にとって第二の言語だと私は思います。聞こえない世界の中で手話を使って会話することは私にとって当たり前です。でも、聞こえる世界で石田さんのような聞こえる人と手話を使って話せたらどんなに嬉しいことでしょう。もし聴覚障がいに対する理解がさらに深まれば、いつか手話が聞こえる人と聞こえない人を結ぶ架け橋となるかもしれません。
 また、小学生の頃に聞こえる同級生と西宮さんは会話するために筆談ノートを活用していました。私も地域交流で中学校に行ったときに聞きたいことがあれば、筆談をお願いしました。その中学校の方々はすぐに書いてくれましたが、西宮さんがお願いしても落書きや差別的な言葉ばかりがノートを埋めつくしています。私は疑問に思いました。聞こえない人も聞こえる人と同じ人間です。地球上にいる人々は平等でなければならないのに、どうして障がい者は聞くことも知ることも許されないのでしょうか。同じ場所で、同じ時間を共に過ごしているだけなのに、どうして拒まれてしまうのでしょうか。これに関し、私はもしかしたらいじめたくていじめているのではないかもしれないと思いました。もしかしたら相手は「聞こえない」ことが何かわからないために気になってからかっているのかもしれません。それがどんどんエスカレートしていき、大きないじめへと発展してしまうのだと考えました。こういったことをなくすために、ろう者がいること、困ったときは筆談などで助けてほしいということを伝えていくべきだと私は思います。では、これをどこで伝えるべきなのでしょうか。私だったら自己紹介のときや全校集会のような、皆が集まるような場所で時間を少しもらって伝えます。このように自ら発信していくことで、少しでも耳のことをわかってくれる人が増えるかもしれません。
 「聲の形」を読んだあと、友だちとは何かについてある結論に達しました。私はただ話を聞くふりをして相づちを打つ人が本当の友だちだとは思いません。私の思う友だちとは、本当に辛いときや悲しいとき、そして楽しいとき、嬉しいときにお互いの気持ちを分かち合える人です。そういう人が一人でもいると何もかもが楽しくなると思います。これは障がいの有無に関わらず全体的に言えることだとも思っています。だから障がいがあるから関わらないようにしようと思ってほしくないです。私にはまだそういったことをされた経験はありません。でも、大人になるにつれて必ず体験することになると思います。私はどんなに苦しくても、障がいから目を背けることは絶対にしないと心に決めています。障がいから逃げてばかりでは前に進めないからです。確かに「逃げるが勝ち」ということわざのように、逃げた方がいい場合もあるかもしれません。でも障がいに関しては逃げているだけでは何もできないと思います。しっかり自分自身と向き合うことが大事だと私は考えます。
 この「聲の形」から、私は聴覚障がいの壁に真っすぐ立ち向かうことの大切さを教えられました。障がいを持っていることを恐れず何にでも挑戦する西宮さんに少しでも追いつけるように日々、精進していきたいです。

「聲の形」 
著 大今 良時
講談社

 

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

ここまで本文です。


ホーム > 人権・男女共同参画 > 人権 > 教材・啓発冊子の紹介 > 第40回人権啓発詩・読書感想文入選作品 読書感想文の部門【中学校(中学部)の部】 P.58