大阪府同和対策審議会答申(平成13年9月) 第1章第3節  基本目標と基本視点

更新日:2023年6月21日

3 同和問題解決のための基本目標と基本視点

 

(1) 基本目標

 

 部落差別は、差別を温存、助長する因習等をなくし、すべての人の基本的人権を擁護する取組みとともに、同和地区内外住民の交流、コミュニケーションを図る継続的な取組みを通じ、相互理解を促進し、地域住民が協力して自らのまちづくりを進めていくための協働関係を構築し、同和地区とその周辺地域が一体となったコミュニティの形成を図ることにより解消し得るものである。

 今後の同和問題解決のための施策の基本目標は、部落差別を解消し、すべての人の人権が尊重される豊かな社会の実現をめざし、周辺地域と一体となったコミュニティの形成を図ること(以下、「コミュニティづくり」という。)である。

 そのためには、

  〔1〕府民の差別意識の解消・人権意識の高揚を図るための諸条件の整備

  〔2〕同和地区出身者の自立と自己実現を達成するための人権相談を含めた諸条件

   の整備

  〔3〕同和地区内外の住民の交流を促進するための諸条件の整備

を図ることが必要である。

 

 

(2) 基本視点

 

 これまで同和地区の生活実態は低位な状態に置かれていたことから、府においては、国の特別措置法や数次にわたる府同対審答申に基づき、同和地区の生活環境の整備や同和地区出身者の自立促進を図るため、同和地区および同和地区出身者に対象を限定した特別措置としての同和対策事業を集中的に展開してきた。その結果、かつての同和地区の劣悪な状況は大きく改善された。

  しかしながら、平成12(2000)年度に実施した実態等調査などによると、進学率、中退問題など教育の課題、失業率の高さ、不安定就労など労働の課題等が残されているとともに、府民の差別意識の解消が十分に進んでおらず、部落差別事象も跡を絶たない状況である。また、最近においても、調査業者が「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例」に違反する部落差別につながる調査を行い、同条例に基づいて府が処分するという重大な事件が発生するなど、同和問題が解決されたとはいえない状況にある。

  また、IT社会の到来など新たな社会情勢の変化が、同和地区内外の情報格差を生み、それが新たな社会的、経済的な格差につながることが懸念される。

  一方、近年の同和地区における状況は、住民の転出入が多く、特に学歴の高い層や若年層が同和地区から転出し、低所得層、母子世帯、障害者など、行政上の施策等による自立支援を必要とする人びとが同和地区に来住している動向がみられる。

  これまでの同和地区のさまざまな課題は同和地区固有の課題としてとらえることが可能であったが、同和地区における人口流動化、とりわけさまざまな課題を有する人びとの来住の結果、同和地区に現れる課題は、現代社会が抱えるさまざまな課題と共通しており、それらが同和地区に集中的に現れているとみることができる。

  このため、同和地区に対する新たな差別意識、社会的排除を再生産させないためにも、現代社会の抱える諸問題に対するより有機的・効果的な施策の取組みが重要である。

  さらに、「地対財特法」が失効し、特別措置法に基づく同和対策事業の前提となるいわゆる「地区指定」はなくなる。

  以上のことから、今後の同和問題解決のための施策の進め方については、同和地区、同和地区出身者に対象を限定した特別措置としての同和対策事業は終了すべきである。

   このことは、実態等調査で示された同和地区における課題の解決をめざした一般施策の活用を否定するものではない。平成8(1996)年の府同対審答申で示したように、同和問題解決のための取組みは、本来は一般施策で当然に実施されるべきものであるが、一般施策の内容が十分でなく、また、同和地区の実態にそぐわなかったことなどにより、それが実質的に行われなかったところから、一般施策の補完としての特別措置がなされてきたところである。

  これからは、これまでの同和行政の成果を踏まえ、同和対策事業で培ってきた事業のノウハウを活かしながら、一人ひとりがかけがえのない存在として尊重される差別のない社会の実現をめざし、同和地区、同和地区出身者のみに対象を限定せずさまざまな課題を有する人びとの自助・自立を図り、誰もがそれぞれの個性や能力を活かして自己実現の達成を図るとの視点に立って、的確に行政ニーズを把握し、人権尊重の観点に立った一般施策として、取り組んでいくことが適切である。

  このことによって、同和地区、同和地区出身者に対する偏見の解消や部落差別の原因は同和地区だけに特別措置を行うからであるとの認識を改めさせることにもなり、同和問題解決の取組みが普遍性をもったものとして共感を広げ、同和問題の解決につながるものと考える。

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府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画G

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