「川づくり」の話し合いを積み重ねて
小阪西町自治会、アドプト・リバー・陶器川(堺市)
◆堤防の不法占用問題 陶器川は、堺市南部に源を発し、市内を北流して大阪湾に注ぐ石津川の支流です。 石津川合流地点から堺泉北有料道路までの約500mの間は、堤防が家庭菜園に使われるなど不法占用され、成長した作物や菜園の囲いに遮られ、堤防の上から川面が見えないばかりか、川の水も澱み、臭いもしていました。 河川管理者の大阪府からも、注意を促す看板の設置や個別指導も再三行われていたのですが、なかなか解消には至りませんでした。 そのようなとき、陶器川整備の話が持ち上がったのです。 ◆地区で「川づくり」のための話し合い
自治会や地区住民は、「自分たちで陶器川をきれいな川にしたい」と強く思っていましたから、行政に任せきりにするのではなく、自治会が中心となって菜園の耕作者、大阪府の三者で話し合いをすることにしました。 平成17年10月、最初の意見交換会の当日はあいにくの雨になったため、急遽、工場の軒先を借りての実施となりましたが、その後も「まちづくり」ならぬ「川づくり」の話合いを重ねました。地区内に住んでいる耕作者にはすぐ賛同してもらえたのですが、遠方から耕作に来る人たちもいて、これら地区外の人たちとの話合いは難航しました。 それでも、「新しい陶器川づくり」をめざす地区住民の熱い想いは、とうとう耕作地全ての自主撤去を実現させたのです。 ◆「川づくり」から「まちづくり」へ 地区住民と府との間で整備箇所や方針が決まると、陶器川の環境整備がスタートしました。 自主撤去された土手の整地作業が終わった後、レンガを使用して花壇づくりや遊歩道の舗装を地区住民の手で実施しました。レンガは、府の下水処理場から出る汚泥の焼却灰から作られたものです。また、花壇の水撒きは、手押しポンプで川から汲み上げて行っています。 陶器川に対する住民の意識が高まり、平成19年3月には府の「アドプト・リバー・プログラム」に参加し、美化活動に継続して取り組むことになりました。 毎月第3日曜日の朝、自治会、子供会、老人会で清掃活動をしていますが、子どもたちが地区を回って参加を呼びかけてくれます。どうしても川に近い住民が中心になってしまいますが、参加者は年々増えています。 日常の花壇整備や遊歩道の清掃は、老人会の人たちが行っています。雑草が生えたままになっていたり、ゴミを散らかったままにしておくと不法投棄につながりかねませんので、日常の管理が大切です。 きれいになった陶器川には、多くの人たちが集まります。特に、遊びに来る子どもたちが増えたうえ、これをきっかけに地区と学校のつながりが広がり、今では近隣小学校の社会見学プログラムにもなりました。生徒たちには、今では見ることが できなくなった手押しポンプが人気です。 岸にはサクラソウ、道の両端にはガザニアが咲く遊歩道は、地区の散歩コースにもなっています。遊歩道には車椅子用のスロープが設置されているため、車椅子を降りて歩行訓練をする人たちもいます。 今後、別の自治会が管理する対岸も整備される予定ですが、住む人がまだまだ少ないため、私たちの地区がしばらく面倒を見るつもりです。川の片岸だけではなく、両岸が良くなることが何より大切ですから、自治会が違うからといって放っておくわけにはいかないと思っています。 平成21年1月には、堺市から景観賞を頂き、市の広報に掲載されたことから、市内の他の地区から多くの人たちが見学に訪れます。 下流の地区でもアドプト・リバー・プログラムに参加する動きが出てくるなど、地域住民の意識が高まってきています。 ◆さいごに 活動の継続が何より大切と考えています。自分たちでアイデアを出し、自分たちが主体となって取り組んできたことが、活動の継続につながっているのだと思います。業者や行政任せではここまで続かなかったでしょう。 今後も地域で協力しながら、「陶器川づくり」を進めていきたいと考えています。
(アドプト・リバー・陶器川 大庭副会長)
|
このページの作成所属
府民文化部 男女参画・府民協働課