平成10年度大阪府統計年鑑 第13章 金融(解説)

更新日:2013年2月12日

平成10年度大阪府統計年鑑

概況

 日本経済は、平成5年秋の景気の谷以来、緩慢ながらも回復を続けてきたが、平成9年度当初には、消費税率の引き上げ、特別減税の終了などの影響や、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減によって、消費に大幅な減少が見られた。その後、景気は回復に向かったが、反動減の影響が長びき、回復のテンポは緩慢であった。
 夏から秋口にかけて起こった大手企業の倒産や株価の下落、さらにはアジアの通貨・経済危機や複数の金融機関の経営破たんによる金融システムへの信頼低下などの影響によって、もともと産業・就業構造の変化や高齢化に伴う負担増など、中長期的な先行き不確実性を感じていた家計や企業は、不透明感を強め、リスク回避的な行動をとることとなった。家計の消費性向は大幅に低下し、また、金融機関のいわゆる「貸し渋り」行動が強まったこともあって、企業のマインドが悪化し、設備投資や雇用が鈍化した。
 このため、政策面では、金融システムを安定化させるための各種施策や、景気対策のための特別減税実施などの有効需要創出策、経済の足腰を強めて事業機会を拡大するための経済活性化策などが決定され、実施に移された。これらの効果もあって、景況感の悪化には歯止めがかかったものの、ひとたび低下した消費需要は容易に回復せず、企業収益や設備投資が鈍化し、雇用も厳しさを増して、景気は停滞状態となった。

預金・貸出金

 平成9年度末の大阪府の預金残高(全国銀行と信用金庫の計)は、54兆6119億円(対前年度比3. 7%減)で前年度に引き続き減少した。
 これは、第二地銀や信用金庫などの中小金融機関において、一部金融機関が破綻したことによる預金者の動揺等で資金シフトがあったことなどによるものとみられる。
 一方、平成9年度末の大阪府の貸出残高は、61兆1905億円(対前年度比2. 6%減)で4年連続の低下となった。
 業種別銀行貸出残高をみると、卸売・小売業や製造業を中心に貸出の減少が目立つ。この要因としては、株価下落、為替円安化、さらには不良債権処理を踏まえ、自己資本比率対策を背景に融資姿勢を慎重化させたことなどがあげられる。

手形交換高

 平成9年中の大阪府の手形交換高は、4441万1000枚、金額にして181兆9720円となった。
 交換枚数は、企業における決済手段の多様化を反映して昭和55年以降減少傾向を示しており、本年も前年比5. 0%の減少となったほか、交換金額でも平成3年以降は減少傾向(対前年比9・0%減)にある。この傾向は、全国的にみても同様である。
 不渡手形については、枚数が前年比3. 7%の増加、金額が10.9%の減少となった。
 取引停止処分については、人数が前年比5. 9%の増加、金額が4. 3%の減少となった。なお、業種別では「建設業」の件数が最も多い。

生命保険

 平成9年度の大阪府の新契約高(個人保険と団体保険の計)は、28兆8434億円で、前年度と比較して108. 9%増加した。  
 これは、個人保険の新契約が件数、金額とも前年度を下回ったのに対し、団体保険がそれぞれ前年度の5. 85倍、14. 57倍と大幅に増加したことによるもので、このため契約高における個人保険と団体保険の割合は、それぞれ38. 2%と61. 8%(前年度はそれぞれ91. 1%、8. 9%)となり、初めて団体保険の占める割合が個人保険を上回った。
 一方、平成9年度末の保有契約高(個人保険と団体保険の計)は、162兆1333億円で、前年度と比較して21. 1%の減少となった。
 これは、主力の個人保険の解約が大幅に増加し、初めて前年度実績を下回ったことと団体保険の新たな保険への切替えにより、新契約は大幅に増加したが、保障額が従前より低く抑えられるケ−スが多かったため、保有契約高が大幅に減少したことによるものとみられる。

企業倒産

 平成9年の企業の倒産件数は、府内では1912件(前年は1821件)で、前年より増加した。
 業種別では、「卸売・小売業」が最も多い。
 負債額は、1兆2652億7000万円(前年は1兆8593億7500万円)と減少した。
 また、近畿の負債額も1兆9652億2000万円(前年は2兆6946億400万円)と減少している。

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総務部 統計課 分析・利活用促進グループ

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