パネルディスカッション概要

更新日:2009年8月5日

 パネルディスカッション「食物アレルギーから考える食の安全安心」 

 <コーディネーター>
    八木 絵香(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任講師)

 <パネリスト(コメンテーター)>      5名
    亀田 誠(大阪府立呼吸器アレルギー医療センター 小児科部長)
    村井 陽子(相愛大学人間発達学部発達栄養学科 講師)
    加戸 夕起子(主婦・元大阪府食の安全安心推進協議会委員)
    濱野 正人(株式会社フレンドリー営業本部 洋食商品グループ)
    淡野 輝雄(大阪府健康医療部食の安全推進課長)

概  要 

■司会

 ただ今より、第2部のパネルディスカッションを始めます。
 では、コーディネーターの八木さん、どうぞよろしくお願いします。

 ■八木さん

 私は、コーディネーターを務めさせていただきます、大阪大学コミュニケーションデザインセンターの八木と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 では、簡単にパネリストの皆様をご紹介させていただきたいと思います。
 最初に、先程基調講演をいただきました大阪府立呼吸器・アレルギー総合医療センターの亀田 誠さんです。次に、相愛大学人間発達学部発達栄養学科 講師の村井 陽子さんです。次に、大阪府食の安全安心推進協議会の公募委員として2年間ご活躍いただきました加戸 夕起子さんです。本日は、主婦として消費者の立場としてコメントをいただくことになります。次に、株式会社フレンドリー営業部洋食商品グループの濱野 正人さんでございます。本日は外食産業に携わる立場からコメントをいただきたいと思います。最後に、大阪府健康医療部食の安全推進課長の淡野 輝雄さんです。食品衛生の行政の立場からコメントをいただくことになります。

 短い時間ですけれども、皆様よろしくお願いいたします。 

 第一部では、亀田先生からたくさん貴重なお話を伺いまして、私自身も初めて聞くことがいろいろあり、興味深く聞かせていただいておりました。
 パネリストの方々から、本日の講演を聞かれた感想と、それぞれ今日いらっしゃっているお立場を踏まえてコメントを、それぞれ2から3分ずつぐらい頂戴したいと思います。では、村井さんから順にお伺いしたいと思います。

■村井さん

 相愛大学人間発達学部の村井と申します。よろしくお願いいたします。
 亀田先生のお話をお伺いしまして一番印象に残ったことは、「学校での対応」ですが、学校と主治医の先生が協力する体制が今出来つつあるというお話をお伺いしまして、そういうことが非常に大切だなと感じています。そういう動きがあることは大変嬉しいことだと思いました。
 私は長年大阪市の小学校に勤めていましたので、特に学校に行くと給食があるので非常に心配される保護者の方が多いものですから、給食についてはどのような対応があるのかという大阪市の現状について少し紹介させていただきたいと思います。
 食物アレルギーの対応につきましては、大阪市の場合、保護者に献立表と加工食品の原材料を見ていただきまして、アレルギーの原因となる食材が含まれるのかどうかを確認していただきます。食物アレルギーのため、その日の給食が食べられない場合はお弁当をもってきていただくことを基本としています。
 この食べられるか食べられないかの確認が、少量でも反応がでるお子さんの場合、非常に重要なステップになります。

 少し例を紹介したいのですけれども、例えば子どもたちが大好きな豚肉100%のフランクフルトでいいますと、大阪市は3社の業者から仕入れています。A社の製品は、小麦でんぷんを使っています。B社の製品は小麦でんぷんと大豆たん白。C社の製品はいずれも使用していないということで、三者三様の配合になっております。お気づきのとおり、小麦アレルギーであるお子さんは、C社のフランクフルトしか食べられないのです。大豆アレルギーのお子さんはAまたはC社のフランクフルトなら食べられるということです。ですから、前もってどの製品が納品されるのか、その製品は食べられるのかというチェックをしておく必要があるわけです。
 献立を作成する立場からは、給食は3品の献立で構成されることが多いですが、同じ原材料を同時に2品には使用しないように努めておりました。なぜかといいますと、同じような原材料を2品に使ってしまいますと、その原材料が食べられないお子さんは、給食の3品のうち1品しか食べられないことになるからです。
 私が小学校から大学に移りまして3年ほど経ちますけれども、その間に大阪市のアレルギーに対する対応も進んでおります。この食品が食べられるかどうかをチェックするために、加工食品の原材料表をチェックしていたのですが、今は大阪市のホームページで最新の情報が見られるようになっています。随時追加・訂正等更新されており、画期的な進歩だと思います。

 それから、これは検討を重ねた結果だと思いますが、最終段階で使われている卵、それから粉末チーズですね、これについては除去食が提供できるようになりました。ですから、例えば親子丼とか、かき卵汁の場合でしたら、最後に溶き卵を入れる前に、卵の除去食としてとりわけてそれを食物アレルギーのお子さんに提供きるようになりました。
 それから、食物アレルギーのために最初から牛乳が飲めないとか、あるいはごはん・パンが食べられないお子さんについては、その分の費用を給食費から減額できるようになりました。
 アレルギーの対応につきましては、できることはできる、できないことはできないということで、慎重に慎重を重ねて実施していく必要があると思いますけれども、3年ぐらいのわずかな間に、私はずいぶん進んだと思っております。

■ 八木さん

 ありがとうございました。次は加戸さんのほうから簡単な感想を含めて、よろしくお願いいたします。

■  加戸さん

 私は、食物アレルギーは、今まで食事だけで発症するものと思っておりました。今回の先生の講演をお伺いしまして一番驚きましたことは、食後2から4時間の間に激しい運動を行うことで発症するケースがあることに、驚きの目を隠しえませんでした。
 それと、普段から食事についてはとても大切なことと認識していましたけれども、今回、先生から人間にとって食べることの意識向上の大切さをお伺いしまして、本当に大切なことだと改めて感じました。

 ■八木さん

 ありがとうございます。コーディネーターの私も不勉強で、今日先生の話を聞きながらこんなこともあったのかと思っていたところです。どうもありがとうございます。

次に、外食産業の立場からということで濱野さん、よろしくお願いいたします。

 ■濱野さん

 私は、講演をお伺いしました内容で、特に食物アレルギーは年齢にかかわらず発症する症例などをご説明いただき、食物アレルギーの要因は複雑に絡み合っている現状を改めて認識させていただいたことが1点。

 2つ目は、先生がおっしゃられていましたけれども、私ども、食を提供する立場にとって重要な事は、食事を共有できる場と、会話の場を食を通じてご提供できるという点です。ご利用いただいているお客様は、ご家族の方も多いのですが、そこで同じメニューを、同じような形でお召し上がりいただけるように、私どももそういうメニューをご提案していきたいなと感じました。

 ■八木さん

 ありがとうございます。最後になりましたが、淡野さん、お願いいたします。

 ■淡野さん

 我々、行政の人間にとりまして、正しい情報を皆様方にお知らせすることがいかに重要であるかと、今日の講演を聞かせていただいて、その思いを一層強くいたしました。

 皆様ご承知のように、食物アレルギーについては、その食べる食材が悪物ではないわけですね。例えば、食べ物による苦情とか食中毒といった場合は、その食べ物が原因で誰もが同じように症状がでるものですから、その食べ物が悪物になっても仕方がないかも知れない。しかし、アレルギーについてはそうではない。多くの方々が同じように食べておられて全く症状がない。それどころかおいしさを共有しているのです。
 我々自身も、いつ食物アレルギーになってもおかしくないと、これは今日の講演でも聞かせていただきましたように、年齢は関係ないと、むろん乳幼児さんが多いですけれども、我々大人も発症する場合があるということがわかりました。
 それならば、不確かな情報に振り回され、混乱されないよう、皆様にまずは正しい情報を十分知っていただくことが重要であると感じております。
 我々行政は、皆様方だけでなく、事業者の方、そういう食材を取り扱っておられる方にも十分知っていただき、適切な対応を行っていただくために、監視・指導に努めております。

 それから数は少ないですけれども、我々は、年間いろいろな食品について検査をして、その食品に表示されていないアレルギー物質が含まれていないかどうかということも調査しております。
 そういうことを含めて、我々行政、消費者、事業者の方々が同じようにアレルギーについて関心を持っていただいて、不確かな情報で症状が重くならないようにという取り組みを、今後まさに深めていく必要があると感じました。

 ■八木さん

 ありがとうございます。今の淡野さんのお話の中にもございましたけれども、今日会場にいらっしゃる方の中には、詳しくもう少しいろんな取り組みをご存じになりたい方が多いかと思います。
 除去食をしようと思うと、何がそこに含まれているのかを正確に把握することが非常に重要で、取組は進んできていると思いますが、そのあたりの対応をもう少し外食産業の立場から濱野さんとか、あと、府のほうでどのような取り組みをしているかということについて情報を提供していただければと思います。お願いいたします。

■濱野さん

 情報の提供ということでは、フレンドリーのメニューにつきまして、アレルギー物質の有無を表示義務及び推奨表示の物質25品目について、お客様からお問い合わせがあった時にすぐにご説明できるように、一覧表という形で店舗に常時備えております。
 また、除去食のお話ですけれども、アレルギーの対応メニューといたしましては、残念ながら完全にアレルギー物質を除去したものは当社では提供できておりません。しかしながら今現在は、原材料に卵、乳製品、小麦、そば、落花生、大豆を含まない、子ども用のメニューとして低アレルゲンカレーというものを一品ではございますがご用意して、お店のほうで提供させていただいているところでございます。

■八木さん

 ありがとうございます。淡野さん、お願いします。

■淡野さん

 我々、食品衛生監視員ですが、現在大阪府には保健所に70名おります。これは政令市・中核市である大阪市、堺市、高槻市、東大阪市も同じように、食品衛生法を所管する部署には必ず食品衛生監視員がいます。
 我々の仕事のメインとしては、いろいろなお店に立ち入って、そのお店の監視・指導を行っております。食物アレルギーに関して、お店でも様々な取り組みをなさっておられます。
 我々がいつもお願いしますのは、例えば加工品をつくられるお店ですと、そこで仕入れられる原材料にアレルギー物質が含まれているかどうかの確認をきちんとして、情報提供に努めてくださいと。
 それからもう1点、例えば、そばアレルギーの程度によりますが、そばを提供した器を洗って、その後うどんを盛って出したら、そばアレルギーの症状がでたということもございます。人によっては、非常に微量でも症状がでる場合がありますので、「コンタミネーション」、「混じり」がないように注意してくださいというお願いもしております。
 それから、先程も申しましたように、年間いくつかの普通に販売している食品を検査いたしまして、その検査結果によって事業者の方々に注意を、今以上に払っていただいております。ここ何年も検査をやっておりますが、幸いなことにアレルギー物質が入っているのに表示がないということはございません。
 昨今、我々府のホームページでも食品の回収情報として発表しておりますけれども、表示されていないアレルギー物質が、事業者の方が意図する・しないにかかわらず、微量に入ってしまったためにその商品を回収するということがございますので、そういうことがないようにできるだけ区画を設けるとか、徹底的に洗浄をしてから次の商品をつくっていただくという対策をお願いしております。

■八木さん

 ありがとうございます。それぞれの事業者さんでは、現場では細かい大変な対応を行い、それを二重に府のほうでチェックされているということで、より安全性を確保しているということだと思います。

 今、飲食店での対応、行政での対応、小学校の現場の対応のお話を伺いました。今までのお話を聞かれて、加戸さんはどのようなことを思われましたでしょうか。

■加戸さん

 まず、外食産業の方の意見について、子どものメニューを中心に進めておられていることです。
 それと、アレルギー物質の一覧表を備えて表示にも努めておられることについて、私も全然知らなかったことでしたので、そのような取組をされていることがよく分かりました。
 行政のほうも、食品衛生監視員がいらっしゃって、原材料にアレルギー物質が混じっていないとか、食品の検査など積極的に取り組んでおられることに心強いと感じました。

 ■八木さん

 ありがとうございます。亀田さん、いかがでしょう。今までのいろんな取り組みを聞かれて、もうちょっとここはこういう対応が必要ではないかということも含めて、コメントいただけますでしょうか。

 ■亀田さん

 私が今の職場に来ましたのは平成3年ですけれども、18年ほど経ちまして、その中で社会はずいぶん変わってきたと感じています。
 食物アレルギーについての認識というのが本当に一部の限られた方にしかなかったことが、ずいぶんと社会的な認知を受けるようになりました。
 また、加工食品にアレルギー物質の表示義務ができるようになりました。デパートの地下街に行って少し食品店を回りますと、ここに何が入っているかということが結構全部書いてあると思いますし、そこには熱心に取り組まれている姿が見え隠れすると思います。
 外食産業の方々も、実際にメニューを提供できるかどうかは別にして、何を使っているのかという情報提供もずいぶんなさっておられますし、少しずつではありますけれど、低アレルギーメニューも出てきていると思います。こういった取り組みというのは、即座にできるのではなくて、少しずつ進んでいきます。
 さらにこのような取り組みをしていただけると大変ありがたいという加戸さんのお話を伺いながら、真摯に感じるところでした。

 もう1つは、なかなかこういう方が遠出することができなかった。宿泊を伴う旅行をすることができなかったわけですが、最近では旅館・ホテルでも、食物アレルギーに対する対応がずいぶんできるようになってきております。充分かといいますと、そうではないですし、そういう中で事故が起こっていることも事実ですが、積極的な取り組みの中で、止むを得ないと言って良いのかどうか分かりませんけれども、どうしても起こり得ることだと思います。しかし、逃げることなく、続けていっていただけることが、より多くの方に、機会を与えていけるのではないかと思います。 

■八木さん

 ありがとうございます。
 今、先生もおっしゃったように、私も小さな子どもがいるのですが、そもそも子どもがいるだけで外食が億劫になるところがあります。さらに食事制限や、アレルギーとかがあると、さらに億劫になると思います。そうであっても、みんながちょっと出かけていける、そして出かけていくことによって、当然いろんな方々が、アレルギーで食事制限が必要な子どもがいるということが知られていって、それには様々な取り組みが必要なんだと言うことが社会に認知されていくことが今、重要なことなどではないかと、今、お話を聞きまして思いました。
 それでは、今までのお話を踏まえまして、村井さんにご専門の話を含めてお伺いしたいと思います。

■村井さん

 バランスよく食べることは、アレルギーの方に限らず皆さんにも大切なのですが、バランスよく食べるにはということで、少し説明させていただきたいと思います。
 栄養のバランスを取る目安といいますのは、いろいろな考え方があります。今日ご紹介しますのは、ごはん・パンなどの主食、肉・魚・卵・大豆などのたん白食品であるおかずの主菜、野菜などのおかずの副菜。このようなものを基本としたバランスの取り方についてお話させていただきたいと思います。
 アレルギーの方の場合、例えば何か食べられない食品があった場合、それをどのように補うといいかということを考えなければいけません。それを主食・主菜・副菜の中で食品を入れ替えるということ、何をどれだけ摂るべきかという点でお話しします。

 弁当箱ダイエット法について説明させていただきます。これは食事を、弁当箱に詰めてみて、自分の一食分の適量を知るという食事法です。5つのルールがあります。
 まず自分に合ったサイズの弁当箱を選びます。では、自分に合ったサイズの弁当箱とは一体どのようなものか。それは、ご自分が一食で必要とされるエネルギー量によって決まります。例えば女性で活動量が少なければ、1食でだいたい600キロカロリーくらい、活動量が少し多めの女性、あるいは活動量が少ない男性なら700キロカロリーくらい、活動量が多い男性なら800キロカロリーくらい、これが1食分で摂るカロリーの目安となります。それをそのまま弁当箱の容量に置き換えます。ですから、600キロカロリーが必要だというのであれば、600ミリリットルの容量の弁当箱を選ぶわけです。弁当箱の容量というのは裏側に表示されています。それで確認していただけたらと思います。
 そして2つめのルールとしては、料理が動かないようにしっかり詰めます。
 3つめのルールは、食材の組み合わせですが、弁当箱に詰めた物を上から見た時に、主食が3、主菜が1、副菜が2になるような比で入れていただくと、それが自分に合った適量のバランスの取れた食事になるということです。

 これは決して偶然そうなったわけではなくて、長年にわたって実際に綿密な栄養価の計算をして弾き出されたものです。同じ調理法のおかずを重ねない、先程も言いましたように食べるというのは本来楽しいものですから、美味しそうできれいなこと、このような5つのルールをよく理解すれば、ご自分にあった一食分で非常にバランスの良い食事ができるということになります。
 それでは、ごはんとおかずにつきましては、主食が3、おかずは主菜が1、副菜2ですから、足して3。ですから、おかずとごはんの割合というのは3対3、同等くらいが適当ですね。
 それから、次のおかずのほうも、肉や魚、卵、大豆などの主菜と、野菜などの副菜につきましては、主菜のほうが1。これが多い方が少なくないと思いますけれども、主菜が1でその倍くらいの副菜。ですから、肉、魚、卵、大豆より野菜をたくさん食べるということが大切です。
 これが1食分の目安です。1日分の目安は、食事バランスガイドをみていただけたらと思います。食物アレルギーの方で、主菜のところで食べられないものがあるのならば、その主菜の枠の中で入れ替えて合計を確保する。それから1食分の表面積であれば、その主菜を入れ替えて1という部分を確保するという考え方で見ていただけたらと思います。 

■八木さん

 ありがとうございます。今回はアレルギーというテーマでご意見をいただいていますけれども、基本的にはアレルギーがある、なしに関わらず、すべての人が自分の食に対して強い関心を持つとか、丁寧にいろんなバランスを考えてたべるというのが非常に大事だと思っています。それに対するいくつか示唆をいただいたと思いますけれども、一方で、そう思っていてもなかなか難しいなと思うのですが、台所を預かる主婦としては、いかがでしょうか。加戸さんはそういうことを感じられたりいたしませんか。 

■加戸さん

 私も毎日家族のために食事を作っており、一応バランスは考えています。それでも、今日はちょっと肉類が多かったなとか、今日はカルシウムが摂れていないなとか思った時は、1週間のトータルで見て、これだったらいいかなという感じで考えるようにしています。あとでしっぺ返しが来ないようにと思って、栄養バランスは考えているつもりです。 

■八木さん

 ありがとうございます。その他、いかがでしょう。私なんかは、忙しさを理由に結構外食を使ってみたり、おそうざいを買ってみたりしながら、それでも一生懸命バランスの摂れた食事とは何かということを考えてみたりしておりますけれども、そういう点でも何か取組があれば教えていただければと思います。

■濱野さん

 当社では、栄養バランスのとれた食事ということで、健康応援メニューというものを平成19年から企画をさせていただきました。お客様にバランスの良い組み合わせでお召し上がりいただけるようにとメニューの提案をさせていただいております。特に栄養バランスの良いメニューとして、お子様メニューや和膳メニューでバランスセットメニューとして提供させていただいております。
 また、ランチやディナーには、ランチバイキングやディナーバーをご用意しています。バイキングメニューの品揃えも、全体のバランスを考えてヨーグルトデザートを入れるなど、お客様が摂られる栄養のバランスを考えてメニューの構成をおこなっております。以上が現状、取り組んでおります内容でございます。

 皆様にも食事バランスガイドについて認識していただき、ぜひ活用していただきたいと考えております。

■八木さん

 ありがとうございます。
 全体としてアレルギーのことを考えつつ、全ての人にとっての食べ物について考えてきました。
 一方では、私の周りの方にもお子さんがアレルギーではないかと心配していらっしゃる方はかなりいらっしゃって、アレルギーかどうかの判断が結構難しいなと思います。思い込みでアレルギーだと信じている方もたくさんいらっしゃるのではと思うのですけれども。アレルギーと間違いやすいものとは、どういうものがあるのかということで少しコメントをいただきたいと思います。

■亀田さん

 アレルギーと間違われるような事例としては、もともと皮膚炎を持っておられて、少し発赤が強くなる場合があります。そのきっかけを伺ってみますと、例えば入浴後に体が温かくなる、眠くなってくると体が温かくなることで赤みが強くなる場合、アレルギー反応と間違えられる方は結構おられます。
 それから食べるときはエネルギーを使うわけですけれども、顔の筋肉はずいぶん使われるようで、その時に顔に発赤をきたすことも少なからず見受けられます。そういうことも1つ見間違われやすい症状として考えていいのではないかと思います。
 いずれにしても、疑いの目を持たれている方に、それは違うということを簡単に言えるかというと、なかなか言えないです。
 結局、アレルギーであれば同じものを同じように取れば、同じように反応が出てくることが前提としてありますから、出る時もあれば出ない時もある、これはもうアレルギーではないです。
 基本的にはそれを食べて、鶏卵なら鶏卵を摂って、必ずと言っていいほど症状が出るというものがアレルギーであって、出る時と出ない時があるものはアレルギーではないと思っていただいても、間違いではないです。

■八木さん

 ありがとうございます。淡野さんのほうで何かありますか。

■淡野さん

 最近は減ったのですが、ヒスタミンによる食中毒がアレルギーの反応とよく似ているので間違われます。イワシ、マグロ、サンマには、もともとヒスタミンの元になる物質が多く含まれております。しかし、例えば冷蔵庫に入れ忘れていたとか、温度管理などを怠りますと細菌が増殖し、ヒスタミンが産生されまして、それを食べてわずか1時間ぐらいで顔が赤くなったり、じんましんが出たりする場合があります。これは食物アレルギーではございません。ヒスタミンによる食中毒です。ヒスタミンは化学物質ですので化学性の食中毒の範疇に入りますけれども、このヒスタミンを摂った方が誰でもアレルギー症状によく似た反応を示す、食中毒なのです。

■八木さん

 ありがとうございます。アレルギーについて一言で説明するのは難しいので、アレルギーかどうかフロアの方もいろいろお聞きになりたいことはあると思いますが、時間の都合もありますので、最後に皆さんから、これはぜひ今日ここにいらっしゃっている方に対してお伝えしたいというメッセージを一言ずつ頂戴して終わりにしたいと思います。

 ■亀田さん

 今日は食物アレルギーの話をさせていただきました。原因食材として、鶏卵、牛乳、小麦が多いというお話をしましたけれども。実は、日本古来といいますか、以前から私たちが摂っております和食についてはこういった食材があまり使われていない。
 洋食を中心に考えますと、なかなか対応しきれないようなものが、意識を和食に変えるとずいぶんと楽になったという話を聞くことがよくあります。
 我々日本人は、いろんなものを食するという文化を育ててきたと思いますけれども、そういう文化を敢えて自分たちが狭めることなく、いろんなものを味わうということを喜びとして持っていけば、ずいぶん食物アレルギーに対する考えが変わってくるのではないかと思います。
 アレルギーを例にとっても、食事の幅を考えるとずいぶん違うものでございますので、ぜひそれをこれからも皆様とともに考えていきたいと思います。ありがとうございます。

■八木さん

 ありがとうございます。では村井さん、お願いいたします。

■村井さん

 先程の栄養バランスをとるところに少し付け加えさせていただきますけれども、加戸さんがおっしゃいましたように、一週間で辻褄をあわせるという意見がありました。バランスをとるというのは、そういう柔軟な感覚で行っていただきたいと思います。バランスをとることばかり考えていると、本来の食事が楽しくなくなってしまいます。外食を利用するとか、洋食・和食、何も手づくりにこだわる必要もないと思います。そういうような無理のない中で、やはり気にかけないわけではなくバランスを取っていくということですね。
 亀田先生のお話で、除去ばかりしていると食べる機会を逸するというお話がありました。それで、八木さんから、もしかしてアレルギーではないのにアレルギーと思い込んでいる方があるかもしれないというお話がありました。

 学校で対応する場合は、万一何かあるといけませんので、慎重に対応せざるを得ません。そういうことを考えますと、教育機関と医療が提携して、本当ならこれは食べれられるのではないかと、医療との連携のもとに進めていけると、子どもたちの食べられるものの範囲が非常に広がっていくことになると感じました。

■八木さん

 ありがとうございます。では加戸さん、お願いいたします。

■加戸さん

 食物アレルギーはその方だけの問題ではなくて、みんなの問題であり、食の安全安心の問題であり、そして、今日の先生お話の中で、「食事の大切さ」がいかに大事かということを改めて強く感じました。

 ■八木さん

 ありがとうございます。では、濱野さん、お願いいたします。

 ■濱野さん

 私は、先ほどのコンタミネーションのお話もございましたが、安全でおいしい低アレルゲンメニューを提供する立場として、キッチンなど調理をする場所も含めて環境を整えていく必要があると感じています。また、アレルギー物質の混入を防ぐ対策については、当社で働く人々の知識の向上を図り、意識を高める対応が必要であると感じております。

■八木さん

 ありがとうございます。では、最後に淡野さん、お願いいたします。

 ■淡野さん

 我々、行政が最近特にお願いしていることは、行政だけでは何もできません。事業者の方も一生懸命頑張っておられますけれども、それでも、事業者だけの努力ではこういう問題はなくなりません。
 消費者の方々も十分に勉強していただいて、何が正しいのか、どういうことをしてはいけないのか、こういうことは消費者、事業者、行政、3者同じことでございますので、我々ももっと勉強してまいりたいと思いますけれども、消費者の方も十分勉強していただいて正しい選択ができるように、不確かな情報で惑わされないようにお願いしたいと思います。

 ■八木さん

 ありがとうございます。今日のお話をまとめましたら3つぐらいかと、思いました。
 1つは正しく知るということが非常に大事だと思います。アレルギーかどうか、どの程度であってどこまで食べていいのかを、思い込みではなく正しく知ろうということだと思います。
 2つ目には、非常に重篤な症状を示される方が中にはいらっしゃる訳ですが、この問題をそういう人の個人の問題だけにするのではなく、社会としてアレルギー症状で本当に生死にかかわる方がいらっしゃることを共有していくことが大事だと思います。そうすることにより取組が進んでいくと思いますし、逆に知っていてくれる人が増えるといことは、その方や家族の方にとってはとても心強いことだと思いました。
 3つ目には、何度も繰り返しておりますけれど、アレルギーの問題は、それだけでとらえるのではなく、食べるということは私たちにとって何なのか、何を食べるのか、どう食べるのかに対して、もっとひとりひとりが真剣に考えていくことが大切だと思いました。 

 最後に、シンポジウムに参加された学生さんにコメントをいただけるということですので、直接感想を聞いてこのシンポジウムを終わりにしたいと思います。

 よろしくお願いいたします。

 ■学生代表

 大阪府立大学総合リハビリテーション学部栄養療法学専攻3年の山下と申します。本日は様々な立場の方々からのお話を聞くことができまして、非常に貴重な機会だったと思います。どうもありがとうございます。
 本日のお話ですけれども、亀田先生の「最近の食物アレルギーの現状について」です。
 私たち栄養士もアレルギーについて勉強しているわけですけれども、ちょっと前までは5大アレルゲンといわれていましたが、今ではエビ・カニが入って7大アレルゲンとなっております。一度学んだ知識がそのまま通用するのではなくて、刻一刻と情報が刷新されることを念頭に置きまして学んでいかないといけないと思いました。
 あとは、村井先生から、「バランスよく食べるには」というお話がありましたけれども、来週の実習で、他学部の学生に対して栄養相談を行いますが、本日教わったことは早速実習で役立つと思いました。
 消費者代表として加戸さんの意見をお伺いしまして、非常に共感を持って皆様も聞かれたのではないでしょうか。私も、教科書などの勉強だけではなく、こうやって様々な方々の意見を聞くことで、実際に即した正しい知識を栄養士の一員として、また消費者の一員として頭に入れようと思いました。
 フレンドリーの濱野さんのお話をお聞きしまして、外食産業でもアレルギーの方々に対して、より良い食事提供をしようと努力なさっている様子が大いに伝わってまいりました。アレルギーをもっている身近な人で、外食ができないのではないかと心配されている方々がいたら、こうした食事がありますよと教えてあげれれば、少しでも食の選択肢の幅を広めることができるのではないかと思いました。
 府の取組についてですが、私たち栄養士もそうですけれども、正しい情報をひとりひとりが認識し、自分だけでなく周りに広げるといった意識を持つことが重要だと思いました。本日はどうもありがとうございました。

■八木さん

 どうもありがとうございます。これでパネルディスカッションを終了とさせていただき、司会者へお返ししたいと思います。

■司会

 本日は、長時間ご清聴いただきありがとうございました。また、コーディネーターの八木さんをはじめパネリストの皆様どうもありがとうございました。

このページの作成所属
健康医療部 生活衛生室食の安全推進課 食品安全グループ

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