7.G事件(平成30年(不)第51号事件)命令要旨

更新日:2021年1月13日

1 事件の概要

 本件は、会社が、(1)組合員1名に対し、退職金を支払わないこと、(2)組合員2名に対し、就労日数の減少に伴う収入減額の補填分を支払わないこと、(3)組合員3名を雇用する申立外運送会社との運送委託契約を終了したこと、(4)(1)から(3)の事項等を協議事項とする団体交渉申入れに応じなかったこと、(5)組合員1名の就労を拒否したこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)会社が、組合員A及び組合員Bの労働組合法上の使用者に当たるかについて

ア 会社で日々雇用の形で就労する組合員A及び組合員Bについては、事業承継前の企業及びその事業を承継した会社において、20年程度の長期間にわたる就労実績があり、就労実態をみても、両組合員が恒常的に就労することが前提とされる仕組み等が存在していたといえる。

イ よって、組合員A及び組合員Bは、その実体において会社に継続的に雇用されていたものであり、会社に対して継続的に雇用されることに対する合理的な期待を有して然るべきものであるといえるから、会社は、両組合員の労働組合法上の使用者に当たる。

(2)会社は、組合員Dら3名の労働組合法上の使用者に当たるかについて

ア 組合員Dら3名は、申立外C社の従業員であり、会社とは労働契約を締結しておらず、会社と組合員Dら3名との間に直接の雇用関係がないことは当事者間に争いがないが、直接の雇用関係がないからといって、直ちに、労働組合法上の使用者性が否定されるとはいえないので、具体的にみる。

イ 会社は、組合員Dら3名について、少なくとも業務遂行上の服務については、現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位になかったと判断される。
 また、(ア)組合員Dら3名が「会社に専属するミキサー車運転手」であったことを、会社が組合員Dら3名の使用者に当たる理由とする組合主張や、(イ)組合員Dら3名が、会社らの従業員と同じように、生コン輸送業務に従事していた旨の組合主張は採用できない。
 その他、会社が、組合員Dら3名の雇用主と同視できる程度に支配、決定することができる地位にあるといえることについての疎明はないから、会社は、組合員Dら3名の労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。

(3)組合員Bに対する退職金について

ア 組合は、組合員Bへの退職金の支払について、組合と会社との協議において合意が成立した旨主張し、会社は、退職金の支払を合意したとはいえない旨主張する。

イ 協議におけるやりとりをみると、組合執行委員と社長との間で、組合員Bに対する退職金について、その支払の履行を会社に義務付けるような具体的な金額を確定してまでの明確な約束があったとはいえない。

ウ よって、会社が組合員Bに対して、退職金を支払わないことが、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとも、同条第3号に該当する不当労働行為であるともいえない。

(4)組合員A及び組合員Bに対する就労日数の減少に伴う収入減額の補填分について

ア 組合は、組合と会社との協議において、組合員A及び組合員Bの就労日数の減少に伴う収入減額の補填分を会社が支払う旨の合意があったと主張し、会社は、収入減額補填分の支払を合意したとはいえない旨主張する。

イ 組合と会社との協議におけるやりとりをみると、会社が組合員A及び組合員Bに対し、収入減額補填分を支払うことについて、組合執行委員と社長との間で、具体的な金額を確定してまでの明確な約束があったとはいえない。

ウ よって、会社が両組合員に対する収入減額補填分を支払わないことが、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとも、同条第3号に該当する不当労働行為であるともいえないから、この点に関する組合の申立ては棄却する。

(5)会社が、申立外C社との運送委託契約を終了したことについて
 組合は、会社が申立外C社との運送委託契約を終了したことは、申立外C社の従業員である組合員Dら3名が組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たると主張するが、会社が組合員Dら3名の労働組合法上の使用者に当たるとはいえないことは、前記(2)判断のとおりであって、この点に係る組合の申立ては、その余を判断するまでもなく棄却する。

(6)団交申入れに対する会社の対応について

ア 本件団交申入れについて、団交が開催されていないことは、当事者間に争いがない。また、前記(1)判断のとおり、会社は、組合員A及び組合員Bの労働組合法上の使用者に当たり、両組合員の労働条件に関する団交事項については、会社に応諾義務がある。

イ 本件団交申入れにかかる協議事項は、(ア)会社から申立外C社に対する提案事項、(イ)会社による申立外C社との運送委託契約の終了、(ウ)組合員A及び組合員Bの最終確認事項、(エ)春闘統一要求等であった。
 (ア)及び(イ)については、申立外C社の従業員である組合員Dら3名に関する団交事項であるところ、会社が組合員Dら3名の労働組合法上の使用者に当たるとはいえないことは、前記(2)判断のとおりであるから、会社に応諾義務はない。
 (ウ)及び(エ)については、組合員A及び組合員Bの労働条件に関する事項であるから、会社に団交応諾義務がある。

ウ よって、団交申入れに対する会社の対応は、(ア)及び(イ)を除き、正当な理由のない団交拒否に当たり、労働組合法第7条第2号違反の不当労働行為である。

(7)会社が、組合員Aを就労させていないことについて

ア 会社が、組合員Aの労働組合法上の使用者に当たることは、前記(1)判断のとおりである。

イ 会社が組合員Aを就労させないことは、組合員Aに、経済的、精神的不利益が生じたといえるのであるから、会社の組合員Aに対する就労拒否は、その事情如何によっては、不当労働行為に該当する。

ウ 会社は、組合員Aを就労させなかった理由について、組合との労働者供給契約が期間満了により終了したこと及び組合員Aの勤務態度が悪かったことを主張するが、組合員Aが労働者供給契約に基づき会社で就労していたとはいえず、組合員Aの勤務態度がどのように悪かったのかについて具体的な主張はなく、会社が組合員Aに対して、具体的な指導を行っていたとの疎明もなく、会社の主張する理由に合理性はない。

エ 次に、会社と組合との関係についてみる。

(ア)会社は、組合から異議があったにもかかわらず、組合と協議することもなく、労働者供給契約の期間満了を理由に組合員Aの就労を拒否しているといえる。

(イ)また、会社と同業種の協同組合が、会社ら構成員に対し、組合との個別の接触及び交渉等を差し控えるよう求めているが、組合員の雇用については言及がなく、会社は、協同組合の意向を受けて、自らの判断で労働者供給契約を終了し、そのことを理由に組合員Aの就労を拒否しているといわざるを得ない。

オ したがって、会社が、組合員Aを就労させていないことについては、会社が主張する理由に合理性がなく、また、組合に対する嫌悪の下に行われたもので、不利益取扱いに当たるとともに、組合活動を弱体化させるもので、支配介入にも当たり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為である。

3 命令内容

 (1)誓約文の交付

 (2)その他の申立ての棄却

※なお、本件命令に対し、組合及び会社は、それぞれ、中央労働委員会に再審査を申し立てた。

このページの作成所属
労働委員会事務局 労働委員会事務局審査課 運用グループ

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