1.N/R事件(平成30年(不)第41号事件)命令要旨

更新日:2020年11月25日

1 事件の概要

 本件は、(1)組合らとの労働者供給契約に基づき、日々雇用組合の雇入れを行っていたN社及びR社(以下「会社ら」という。)が、労働者供給の依頼をしなくなったこと、(2)労働者供給の依頼の再開に係る団体交渉を複数回行ったが、いずれにおいても、会社らから権限ある者が出席せず、形式的な回答に終始し、合理的な説明をしなかったことが、それぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)N社が、組合員の労働組合法上の使用者に当たるかについて

ア 本件において、会社らは、日々雇用組合員が、組合らとR社との間の労働者供給契約書による労働者供給契約(以下「本件労供契約」という。)に基づき、日々雇用されていたという就労形態を理由に労働組合法上の使用者に当たらないとの主張はしていない。
 もっとも、会社らは、N社とR社は別法人であり、N社は、組合らの労働者供給事業に基づきR社に供給されている組合員の労働組合法上の使用者に当たらない旨主張するので、以下検討する。

イ 本件においては、日々雇用組合員の供給を依頼しなかったことが問題となっているところ、本件労供契約に基づく供給依頼は、組合員の就労の端緒となるものであるので、N社が、R社と同視できる程度に、本件労供契約に基づく供給の依頼に関与していたかについてみる。

(ア)N社はR社に対し、輸送業務の発注元としての一定の影響力を有するものの、R社は、あくまで独立した法人として自身の業務を行っているといえ、N社の専属輸送部門として、法人として形骸化しているとまでみることはできず、この点に係る組合らの主張は採用できない。

(イ)次に、本件労供契約に基づく組合員の就労について、具体的にみると、(a)R社の正社員の人員補充問題への対応として、本件労供契約が締結され、それに至る経緯においてN社が当事者として対応を行っていたと評価すべきであり、(b)本件労供契約に基づく供給の依頼の際の具体的な流れについてみると、N社とR社とは一体となって供給の依頼を行っていたとみざるを得ず、(c)団交に係るN社の対応についてみると、団交当時の会社らの社長及び取締役は、N社とR社とを区別することなく、一体のものとして、組合らとの交渉に臨んでいたとみざるを得ない。

(ウ)以上のことを総合的に勘案すると、N社は、R社が本件労供契約に基づく供給の依頼をしなくなったことについて、現実的かつ具体的に関与していたとみるのが相当である。

ウ そうすると、N社は、組合がR社に労働者供給をしている日々雇用組合員の労働組合法上の使用者に当たる。

(2)会社らが、組合らに対し、日々雇用組合員の供給を依頼しなくなったことについて

ア まず、不利益に当たるかについてみると、個々の日々雇用組合員がR社において継続して就労する期待権を有していたとまではいえず、R社が本件労供契約に基づく日々雇用組合員の供給を依頼しなくなったことによって、組合らの組合員が不利益を被ったとはいえない。
 したがって、その余を判断するまでもなく、R社が日々雇用組合員の供給を依頼しなくなったことは、組合らの組合員に対する不利益取扱いには当たらず、この点に関する組合らの申立てを棄却する。

イ 次に、支配介入に当たるかについてみると、R社が本件労供契約に基づく供給を依頼しなくなったことは、会社らによる組合員に対する不利益取扱いには当たらないが、本件労供契約の一方的破棄は、合理的理由もなく、労使で合意した契約内容を反故にするものであり、組合らに対する支配介入に当たる。

(3)団交申入れに対する会社らの対応について

ア 団交議題は、全て日々雇用組合員の労働条件に関する事項であり、義務的団交事項に当たるといえる。

イ 団交当時の会社らの社長及び取締役は、少なくとも、組合らに対しては、N社とR社を区別せずに対応してきたのであるから、N社及びR社の両方の立場として、取締役が出席し、N社は、団交に応じていたといえるのであって、「団交」として応じていないとするN社の主張は、採用できない。

ウ 団交における会社らの対応についてみると、(ア)決定権限までは有さない取締役のみが団交に出席していたことについては、状況を説明し、組合らも理解していたといえ、(イ)日々雇用組合員の供給の依頼を行わなくなった理由については一定の説明を行い、(ウ)経営状況についての資料は組合から提示を求められていなかったため提示していないというものであるから、かかる会社らの対応は不誠実であったとまではいえず、この点に関する組合らの申立ては棄却する。

3 命令内容

(1)誓約文の交付

(2)その他の申立ての棄却

※なお、本件命令に対して、組合ら及び会社らは、それぞれ、中央労働委員会に再審査を申し立てた。

このページの作成所属
労働委員会事務局 労働委員会事務局審査課 運用グループ

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