2.K事件(平成29年(不)第49号及び同30年(不)34号併合事件)命令要旨

更新日:2020年11月25日

1 事件の概要

 本件は、学校法人が、(1)A組合員の懲戒手続等に係る団体交渉申入れに応じなかったこと、(2)組合執行委員長及び組合員1名を懲戒委員会の委員から解任したこと、(3)団交において、A組合員の自宅待機命令について誠実に回答しなかったこと、(4)A組合員を解雇したこと、(5)団交において、A組合員の解雇について誠実に回答しなかったこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。

2 判断要旨

(1)懲戒手続に係る団交申入れに対する学校法人の対応について

 学校法人は、29-49事件の申立てまでの間、5回の団交申入れで組合が要求していた懲戒委員会要項の運用及び委員の選出方法に関する団交に一貫して応じていないことが認められ、また、学校法人が団交に応じていないことの正当な理由も認められない。このような学校法人の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(2)学校法人が組合執行委員長及び組合員1名を懲戒委員会委員から解任したことについて

 学校法人が、組合執行委員長及び組合員1名を懲戒委員から解任したことは、組合が懲戒委員会の違法を主張していたとしても、一旦組合員2名を懲戒委員に選任しておきながら、同人らが懲戒委員として議論に加わる機会を突然一方的に失わせる対応を取ったという点で、組合を軽視した対応であり、かつ、組合活動を弱体化させるものと言わざるを得ず、組合に対する支配介入といえ、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

(3)A組合員の自宅待機命令に係る団交における学校法人の対応について

 経緯からすれば、そもそも、A組合員の自宅待機の解除という事項が団交の議題として予定されていたものとはみられないのであり、組合執行委員長の発言は、団交で交渉終了後に、A組合員の自宅待機の早期の解除を「お願い」したものであったということができ、これをもって協議を申し入れたものとみることはできない。そのため、組合が不誠実団交に当たると主張するやり取りは、当該団交の団交議題に係る交渉には当たらず、そもそも、不誠実団交を主張し得る対象には当たらない。よって、この点に関する組合らの申立てを棄却する。

(4)学校法人がA組合員を解雇したことについて

 学校法人のA組合員に対する自宅待機命令がA組合員を団交に参加させないために行われたものであるとは認められず、また、本件解雇が非組合員と比べて不均衡な扱いであるとも認められず、さらに、本件解雇の判断自体が不合理であったとも認められないのであるから、当該時期において、組合と学校法人が時間外労働の扱いを巡って対立していたこと、A組合員が労働基準監督署に申告を行ったこと、組合の主張する学校法人の組合嫌悪的態度などを考慮しても、本件解雇が、A組合員が労働組合の正当な行為をしたことの「故をもって」なされた不利益取扱いであるとも、29-49事件の不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする報復的不利益取扱いであるともいえず、また、組合に対する支配介入であるともいえない。
 このため、この点に関する組合らの申立ては棄却する。

(5)A組合員の解雇に係る団交における学校法人の対応について

 本件解雇の撤回を議題とする団交においては、実のある交渉を行うためには、本件解雇の理由が組合らに具体的に示されることが必要であったといえるが、理事長ら団交出席者は、A組合員の解雇の具体的理由を把握していたといえ、それにもかかわらず、その内容を当該団交において組合に開示しなかったといえる。また、開示しなかった理由について、学校法人は、A組合員には聞き取り調査において具体的な事実関係の詳細な説明をしていたことを主張するが、このことをもって、団交において説明をしない正当な理由とはなり得ないことはいうまでもない。
 そうすると、団交における学校法人の対応は、誠実団交義務を尽くしたということができず、不誠実団交に当たり、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。

3 命令内容

(1)誓約文の手交

(2)その他の申立ての棄却

※なお、本件命令に対し、組合及び組合員並びに学校法人は、それぞれ、中央労働委員会に再審査を申し立てた。

このページの作成所属
労働委員会事務局 労働委員会事務局審査課 運用グループ

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