平成28年6月委員会会議会議録

更新日:2016年7月20日

大阪府教育委員会会議会議録

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1 会議開催の日時

   平成28年6月17日(金曜日) 午前 9時56分 開会

                   午前11時07分 閉会

2 会議の場所

   大阪府公館 

3 会議に出席した者

教育長向井 正博
委員小河 勝
委員井上 貴弘
委員岩下 由利子
委員竹若 洋三
委員良原 惠子
教育監和田 良彦
教育次長太田 浩二
教育センター所長山崎 政範
教育総務企画課長後藤 克己
教育振興室長橋本 光能
高等学校課長松田 正也
高校再編整備課長土佐 邦之
市町村教育室長浦嶋 敏之
教職員室長河西 陽三
教職員人事課長白居 裕介

4 会議に付した案件等

◎ 議題1 知事からの意見聴取に対する回答の承認について

◎ 議題2 平成29年度使用高等学校用教科書について

◎ 報告事項1 エンパワメントスクールの平成27年度末の状況及び平成28年度の新入生の状況並びに平成29年度設置予定校の概要について

 

5 議事等の要旨

(1) 会議録署名委員の指定

 良原委員を指定した。

(2) 5月12日の会議録について

 全員異議なく承認した。

(3) 議題の審議等

 

◎ 議題1 知事からの意見聴取に対する回答の承認について

【議題の趣旨説明(教育総務企画課長)】

地方教育行政の組織及び運営に関する法律第29条の規定により知事から意見を求められた平成28年5月定例府議会に提出された次の議案について、大阪府教育委員会事務決裁規則第5条に基づき教育長が代決により異議がない旨を回答した。この代決を、大阪府教育委員会事務決裁規則第7条第2項に基づき承認する件である。

 ○予算案

  1 平成28年度大阪府一般会計補正予算(第2号)の件(教育委員会関係分)

 ○条例案

  1 大阪府学校医等の公務災害補償に関する条例一部改正の件

 

【質疑応答】

なし。

 

【採決の結果】

賛成多数により、原案どおり承認した。

(賛成者 向井教育長、小河委員、井上委員、岩下委員、竹若委員、良原委員)

 

 

◎ 議題2 平成29年度使用高等学校用教科書について

【議題の趣旨説明(高等学校課長)】

標記に係る調査研究結果を定める件である。なお、最終的な教科書の採択は、校長・准校長の選定をもとに、8月の教育委員会会議において決定する予定である。

 

【質疑応答】

(竹若委員) 今の説明で異論はない。しかし、基本的には教科用図書そのものが国の検定を受けて出されているという状況の中から、都道府県の教育委員会が補完教材を改めて出すということ自体は、あまりいいことではないという認識を持っている。ただ、この地理歴史の教科書については昨年も同じケースがあったからみがあって仕方がないかと思うし、大阪府に至っては条例で定めているという状況がある中で仕方がないと思う。聞きたいのは、2−4頁の補完教材、上から5行目に「皆さんに」とあるが、この「皆さん」は誰を指すのか。

(松田高等学校課長) 生徒である。

(竹若委員) そのもう少し後には、「生徒の皆さんには」と書かれている。「皆さん」と「生徒の皆さん」で使い分けをしているのはどういう意味か。それが一点。それから、補完教材そのものは誰あてに出すものなのか。その二点を。

(松田高等学校課長) ここは、どちらも生徒を対象に訴えかけている内容のものになる。前段が「皆さん」、後段が「生徒の皆さん」ということで、最初の方は説明という形で「皆さん」、後の方はもう一度「生徒の皆さんには、・・・ご自身で考え、」ということで、強調して呼びかけている表現にしている。しかし、あえて「生徒」と言うことでまぎらわしい面もあるので、両方「皆さん」という形に修正することを考えたい。

(竹若委員) 紛らわしくないように文言を整理していただきたい。

(松田高等学校課長) 文言を整理する。それと、補完教材なので、生徒にこれをしっかり受けてもらうというものとして作ったので、当然対象は生徒である。

(向井教育長) 「皆さん」と「生徒の皆さん」は同じか。

(松田高等学校課長) 同じである。

(井上委員) 調査研究していただいた中で、1冊だけ、私が国語の教科書でこれはどうかとご指摘させていただいたものがある。その内容というのは、国語の教科書のある作品の中で、高校生が読むと飲酒とか喫煙に興味をそそる内容だったので、ある意味ごまんとある文芸作品の中で、そういった記述を含むものをわざわざ選ぶメリットがないと感じた。高校生はそういうもの対し、非常に興味を覚えてくる年齢だと思うので、機会があれば教科書会社に対し、そういうものを極力避けてもらえないかと言っていただければと思うので、よろしくお願いする。

(向井教育長) どういう表現か、補足説明を。

(松田高等学校課長) 国語の第一学習社の「自分の身体」という作品の中にあるが、自分の体全体を自分の思う通りにならないところがあるという論文。指導主事も、これはどうかと指摘した部分があり、その部分を読ませていただくと、「アルコールを摂取すれば血液が皮膚の表面に押し寄せてくるような感覚があるし、煙草や香辛料を口にした時も、局部的に同様の効果が発生する」と、このような記述である。

(小河委員) 井上委員のご指摘はもっともだと思う。ただ、それを言い出すと、実際上、世の中の文献は議論が非常に難しくなるという課題がある。それを教科書として出すということは、一つのたたき台として出すわけであるから、そこをまた一つひとつ吟味してと、やっていくことはどうなのかと。現実問題として、一般に自由に作られている著作の中で、そういう枠組みを決めるということは非常に難しいという問題がある。前に木村さんという委員がおられて、3年ほど議論をしているが、彼は、色々な意見を、たたき台の中で議論しあうことで学んでいくと。それも一つの課題なのだから、ある意味で極端な言葉が仮にあったとしても、できるだけ避けた方がいいとしても、それはそれで一つの教材として取り上げてもいいのではないか、むしろ失敗やマイナス面も含めて、色々な意見を洗いなおしていくというような操作もあっていいのではないか。幅広いスタイルでとらえているのが、観点として必要なのではないか。あまりに純粋、ピュアな蒸留水のようなものを提供することだけが、教科書というものの課題ではないのではないかとご指摘があったが、私はそれは確かに卓見だと思う。先ほど竹若委員がおっしゃったご指摘だが、基本的に、検定を通じて国としては一応のフィールドを決めているわけであり、それを例えば補完教材という形で出すということをしだすと、極論するとどこの県でもそういうことをしだしたら、検定そのものが壊れていく面があるのではというご指摘があった。私もそれもそうだと思う。色々な間違いというか、問題点を秘めながら、教科書はある。それを我々として指摘して、注文をつけていくことはやぶさかではないが、そういうフィールドにあるんだということを了解しておけばいいのではと受け取っている。

(井上委員) 私は小河委員と考え方が異なる。一点目のきりがないということに関して言うと、世の中で教科書に使っていい文芸作品が百しかないというのであれば難しいが、ごまんとある中で、今回だと国語の教科書なので、わざわざそのような記述を選ぶ必要はないと思う。例えば保健体育の教科書であって、アルコールを摂取したり、喫煙したらこういうことになるという、つまりは、保健体育の授業内で害があるということを教えているならば、理解できるが、国語の教科書の中でわざわざ興味を示すことを選ぶ必要はない。これは高校生が読む本であるのだから、きりがないではなく、徹底的に調べて、私は排除していくべきだと思う。それが一点目。二点目は、木村委員がおっしゃっていた多様な意見というところも、例えば国語の教科書の記述の中で、飲酒や喫煙は体に変化を及ぼすということに対して、多様な意見があるということは議論に値しない。そうではなく、例えば、「公民」の授業で、今回の参議院議員選挙から18歳に選挙権が与えられると、そのように多様な意見があって議論が起きることであれば、それは色々な意見を取り入れるということは、その文脈ではありだと思うが、今回私が指摘したところで言うと、二点目は当てはまらないと思う。議論の必要がないのだから。木村委員がおっしゃっていたこととしては、議論が起きるようなことについて、高校生が多様な意見を持つまで、色々な考え方を示した方がいいのではないかと、私は理解していた。

(小河委員) 気持ちとしては、実際の煙草やアルコールに関する指摘、私は煙草も全く吸わないし酒も飲まないので、生理的感覚としては、井上委員のおっしゃるご心配はピタッとくる。それを議論の対象とするべきかどうかという領域について、今聞いていて、難しいところだと思っている。しかし、おっしゃることはよく分かる。

(井上委員) ここでスタンスを決めるというものではないと思う。私は、松田課長にも言ったが、わざわざこれだけ出版物がある中で、国語の教科書にそこを持ってくる必要はないのではないか、国語の中でその文章を取り上げたいのであれば、同じようなことを主張している、表現がふさわしいものを持ってくればいいのではないか、それぐらい教科書会社さんはできるのではないか、ということを申し上げたい。わざわざそこにそれを張り付けるというのは、私はそれをスクリーニングしていないのか、さぼっているのではないかと思う。高校生だと、そうなのかと思う子どもたちがいるのではないかと思う。

(小河委員) 理科の授業では、その重大性については、厳しく子どもたちに啓発してきた経過がある。そういう意味では、わざわざ言わなくてもいいのではないかというご指摘は、思いとしてはある。

(竹若委員) 議論があるところ。ただここの観点は、最終的にそれぞれの学校が、自分の学校の子どもたち・生徒たちに合った教科書を選ぶ。その際に教育委員会として危惧される要点を、調査委員会として調査してきた。いい悪いについてはそれぞれの学校が判断する材料に使えばいいこと。井上委員が危惧されることも、他の教科についても同じことが言えると思う。教育監の話では、注意書きのところにエイズで死亡したという記載があり、エイズと書く必要があるのかという論点があった。意見として書かれていたが、このように出してきている。それをもとに各学校現場が選定をしていく、選んでいくと期待をして。論議しだしたらきりがない。

(井上委員) 論議というより、私はもっと教科書会社がちゃんとやっておいてほしいと。そのようにして出てきたものを、おっしゃったように学校単位で選んだらよい。毎年同じようなことを議論しているので、もう少ししっかりやってもらえないのかなと思う。

(竹若委員) 教科書会社も意図があって出していると思う。それを言い出したらきりがないが。

(向井教育長) 補完教材の意味について、説明を。

(松田高等学校課長) 先ほど竹若委員からもおっしゃっていただいたが、調査研究は各都道府県教育委員会で行うということだから、それぞれの地域の状況等を踏まえて各都道府県の見解を示すというものだと思う。そういう中で、大阪府としては非常に問題だとか、この間の色々なことを考えて、教科書の記述だけではやや心配なところがあるという中で作ってきたという経過があると思う。そういう意味では、今、色々なご意見をいただいて、そのことを考えたうえで、各学校で選定していただくことが大事だと思う。いただいたご意見は、ありがたいと思っている。

(井上委員) 細かいことだが、これはこのまま生徒に示すのか。

(松田高等学校課長) はい。

(井上委員) 出だしが「本書は」から始まるのは、問題はないが、入り口で「本書は」というのはどうか。「この教材は」とか。

(松田高等学校課長) 全体的に見て修正する。

(向井教育長) 先ほどご指摘もあった「皆さん」、「生徒の皆さん」等の修正は事務方にお任せいただくということでお願いしたい。

 

【採決の結果】

委員の意見を踏まえた補完教材の修正は事務局に一任し、その他の箇所については賛成多数により、原案どおり決定した。

(賛成者 向井教育長、小河委員、井上委員、岩下委員、竹若委員、良原委員)

 

 

◎ 報告事項1 エンパワメントスクールの平成27年度末の状況及び平成28年度の新入生の状況並びに平成29年度設置予定校の概要について

【報告の趣旨説明(高校再編整備課長)】

標記について、報告する件である。

 

【質疑応答】

(井上委員) 1−3頁の「好き、または得意な教科」のところで、小河委員にお伺いしたいのだが、得意な教科として理科がすごく少ない。これは中学校のときの理科と関わりがあるのか。

(小河委員) 私が、つまずきの課題を義務教育の深刻なテーマであるということに至る最大の原因は非行だった。荒れている子どもたちが、なぜ荒れているのかを調べていったら、基礎計算が本当にできない。これでは授業に入るのがしんどいのは当然だ。繰り上がりが分からない。繰り下がりができない。ゼロから引けない。九九ができないのは当たり前。そんな状態では中学校の計算には入れないという状況を見て、これは理科ができないのは当たり前だと思った。理科は、パーセントを使うにしても、メスシリンダーの目盛りを読むにしても、少数ができないとできない。身動きが取れない最大の障害が、面白いとか面白くないとか以前の条件がないという状態にぶち当たった。結局、わからないということが原因となって子どもたちを荒れさせている。荒れさせている一つの象徴的なものが理科だと分かってきた。そこの解決に引きずり込まれていったというのが経過である。ここで、理科が一番不人気だというのはすごくよく分かる。これを打開していくにはどうしていったらいいかというと、理科を分かりやすく、面白くという先生たちは皆、興味を引き付けて調整しておられる。皆が皆ではないが、そういうご苦労は皆やっている。そこを突破できないというのは、是非私が調査したデータを見ていただきたいが、深刻である。理科で使うカテゴリーでは、冒頭に圧力計算というのが出てくるが、昔我々がやったのとは違い、パスカルという単位でやっている。そうすると、百万の桁で処理しなければならない。少数の計算が大きくなる。そうなると身動きが取れなくなる。それが冒頭で出てくるという状況は、調べてみられたらすぐわかると思う。算数、数学系統が苦手だというお子さんに、3桁の少数かける少数の計算をさせてみてほしい。7割から8割がミスする。こんな状態で、実際にはできない。私が繰り返し申し上げているつまずきの克服はお題目でもなんでもなく、現実である。子どもたちを救い出すには、そこの突破である。事実、このデュアルシステムの一角だと思うが、藤井寺工業の定時制で、全く意欲をなくしていた子どもたちのところに、要望があって行き、先生方と積み上げてきたが、ここは劇的に子どもたちの学力状況が変わってきたというご報告を、去年か今年退職された准校長先生に報告していただいた。私はすごく感動した。是非その辺の研究をやっていく必要があると思っている。そのような諸条件が、理科の問題という、実験操作技術というものをかなり厳密にされる先生もいるが、そういうしんどさと、基礎計算が破たんしているというところとが重なって、爆発していると思っている。

(和田教育監) 私も理科の教師なので発言させていただく。昨年の全国学力学習状況調査で、理科の結果だが、大阪府は小学校も中学校も全国に比べて低いという結果が出てきた。問題意識を持ち、教育センターの理科の研究室のメンバーと話をした。仮説としてだが、小学校で理科を面白くやろうとすると、実験の準備や実習の準備をしなければならない。しかし、教員自身がそれをする時間の余裕がないということで、どちらかというと、実験・実習を子どもたちにさせるのではなく、教員がこうなりますよという知識だけを与えている現状があるのではないか。また、教える先生自身が理科が苦手と。小学校で理科を教えることをしなければならないが、大学で理科を学んで小学校の教師になるという例は少ない。このようなことが原因ではないかと仮説として考えている。今年、教育センターにお願いしているのは、仮説ばかりなので、それを実証的に実際に小学校の現場に入ってもらって、なにが原因になっているのだろうということの研究をスタートさせている。一定、まとまったらこの場で、このようなデータが出てきた等、お示しさせていただけたらと思っている。

(小河委員) もう一点。この間、松田課長と話をしたのだが、現実には、基礎学力調査を高校ではやっていると聞いている。ベネッセなどもずっとやっている。現物をくださいと言っているが、実態は、過去に見た感じでは、基礎学力調査は基礎的な領域がどの程度できるかという調査である。これと、つまずき調査とは全然違う。つまり、どこでつまずいているのかを調べるために作った狙いのテストと、その領域の達成度がどうかということをつかむという狙いのテストとは違う。つまり何が違ってくるのかというと、解決の具体的な手の打ち方が変わってくる。例えば、先ほど申し上げた少数の掛け算は、理科では即使う、毎回出てくる、計算といえばそれしかないぐらいの領域だが、そこがほとんど破綻してしまっている。その手当て、これは簡単である。その辺のことを手を打っていくのは効果的ということは出てくる。そういうところの手の打ち方を探るための調査は、独自に組み立てて作らないといけないと申し上げたい。その辺が、全体に飛んでいる、見えていないというのが現実である。和田教育監がおっしゃった話は全くそのとおり。現実の構造としては。特に小・中の段差の壁でいうと、小学校は理科教育の経験がなく、熟達されていない先生方がほとんどである。その辺はしんどさとして出てくる。

(竹若委員) エンパワメントスクールから話がずれてしまっているが、元々大阪府教育センターで理科教育中心の研修をしていた。そこでは長年小中学校の理科の教育を勉強し、たくさんの先生方を育てているが、悲しいかなそれが現場に浸透しないままに、過去来ているのではないか。そういう意味では、和田教育監がおっしゃっている形で、再度教育センターを活用していくということはしなければならない。この話は置いておいて、このエンパワメントスクール、非常に成果が上がっていて喜ばしい限りであるし、これを拡大していくという状況の中で、これから更なる授業の充実に向けてということを言っていただいているが、課題がたくさんあると思う。少し気になっているのが、1−3頁の「好き、または得意な教科はどれですか」というところで、理科が一番低いというのが今の話題だったが、その次に低いのがエンパワメントタイムである。これが売りなのに好きになれない、この辺の課題を分析する必要があるのではないかと思う。エンパワメントタイムは、いいことをしようと思っても、子どもが飛びついてこなければ伸びてこない。子どもの実態に即した計画を関係校で集まってプロジェクトを作るぐらいの工夫が大事だと思う。山?所長は昨年まで校長をされていたから重々承知だと思うが、これは是非、ここには載っていないけれども、課題の大きなものとして入れていただきたいと思う。もう一つ、1−5頁の「エンパワメントスクールに対する期待」というところで、5番、「兄弟や先輩などが通っていて、自分に合っている」が少ない。これも何か課題なのではないか。エンパワメントスクールというのは、どういう目的で入学したのかという目的意識が、課題としてあるのではないか。大阪府の高等学校で総合学科を作ったとき、今宮、それから・・・。

(和田教育監) 松原、柴島です。

(竹若委員) 今宮と柴島を見に行ったときに、特に今宮は、自分がここへ来たという目的意識が強かった。それは、会話の中で出てきた。テニスボールが飛んできて、そのボールを取りに来てくれたときに、「学校面白い?」と、たまたま聞いた。こっちの子は、ものすごく楽しいと。もう一人は、あまりと。「なんで?」と言ったら、楽しいといった子が、その子に、「あんたは目的を持ってここに来てない」と、ポンとかました。これが答えかなと。目的意識に活かすということを持ってもらいたい。それと、この中に、中学校現場のデータが出てきていない。これも大事だと思う。その中に目的意識を持って子どもが入ってくるというのは、中学校の先生の指導が大きく左右するのではないかと。課題としては、是非入れてもらえたらと思う。

(小河委員) 本当にご指摘のとおり。私が中学で生徒指導をしていたときに、どうしても高校に行きたいという子が、工業高校も落ちた、一人しかはみ出しがないので絶対合格すると思っていたのに落ちてしまった。その子を町工場のご主人に、定時制に通わせたいからよろしくお願いしたいということで、連れて行って世話した。それで、働き始めた。1週間真面目にやったのに、パタッと来なくなったということで連絡が来て、行った。そうすると、「175cmの鉄板を半分に切って」と渡したら、じっと考えていて、動きが取れなくなっていた。なんでかわからない、と言うわけである。そのときに初めて、その子はものすごくまじめな子だったが、175cmを半分に切るという長さが分からなかった、そこで小数計算ができなかったんだということが、私自身が分かった。後で家に行って、今から勉強したらいいんだからと励ましたが、本人は恥ずかしさと、一番知られたくないところがばれてしまったということで、応じなかった。僕のことは放っておいてくださいということで、結局はダメになってしまった。エンパワメントスクールが当時あれば、その子は救われていた。そういう子はいっぱいいるだろうと。おっしゃるとおり、中学校の先生方で、困っておられる方々が、このような情報が深くつながりあって、そして地元の工場ともうまくリンクさせる、そういう機能を先生方はお持ちだろうと思うので、それとエンパワメントスクールがうまくリンクすれば非常に機能するだろうと思う。大阪はまさに匠の集合地帯。理にかなった教育環境が構築されている。2年前もこのことを強調させていただいたが、絶対これは大きく拡充していくべき領域だと思う。それから、農業、今だんだん農業の重要さ、理念が広がっているが、そういう領域について、是非構築していってほしい。

(岩下委員) 資料の中にある、カリキュラムや取組みの姿勢は素晴らしいと思っている。ただ一点気になっているのが、欠席者、遅刻者、中退者、特に中退者のところで、今日の資料にはないが、依然として多くの中退者が出ている学校もあり、各校の実態には差があるように思う。このような状況について何か理由があるなら、教えていただきたい。

(土佐高校再編整備課長) 全体的に、エンパワメントスクールは発展途上であり、しんどい子、勉強が分からない子が、いやになって学校に出てこれないというところが、大幅に減ってはいるが、減り切っていないというのが実情。エンパワメントタイムもそうだし、授業のレベルアップをしながら、生徒が関心が持てる学校生活が送れるようになり、学校生活が充実していると感じるようになって、その結果さらにこのような数字が良くなっていくのではないかと思う。これが原因で非常に悪いということではなく、まだ発展途上であるということ。

(岩下委員) はじめて間もないということも分かるが、ただ、この資料にも書いてあるとおり、この学校の理念を分かって入学しているわけである。勉強が嫌いだから辞める、中退を出すというのは絶対にダメだと思う。エンパワメントスクールに関しては。現場の先生たちも、もちろん教科のプロだから、先ほど理科の話題が出たが、ここであれば、基本的な問題からやり始めてもいいわけである。特に国語、英語、数学の数値が上がっているのは、基本のところをやっているから。基本が分かれば応用がきく。私は運動の世界しか見ていないが、全て基本である。できれば興味がわいてくる。学び直しが出来る学校なので、子どもに、何のために入ってきたんだということを、授業する前に、辞めたいという子とかやる気のない子に関しては、もう一度問いただして。日本の子どもは恵まれている。教育を受けようと思えば、ほとんどどんな子でも受けることができる。よく小河委員からアフリカの子どもたちのことを聞くが、私もついこの間テレビでも見たし、アフリカは行ったことがあるが、貧富の差が激しい。日本は勉強しようと思えばできるし、逆にこれが当たり前と子どもたちに思わせることは絶対にダメ。まずは世界状況をもう少し子どもたちに話すことができれば、私はこの辺はクリアできると思う。最低でも赤点は取らないぐらいの勉強は理解できると思う。その辺を指導する前に、是非先生方に説明いただいて。私は、中退者は絶対に出してはいけないと思った。

(和田教育監) 岩下委員が指摘された点は、私たちも危惧している。辞められた子どもの一人ひとりの原因を探ってほしいと校長に指示している。それを二度と繰り返さないために、学校に問題があるなら、それをなくしていく取組みをしていかなければならない。3校についてはモデルケースになるし、やはり卒業させるということ、社会人になるということが目的なので、そのあたりを校長とともに、さらに原因究明と対応に努めたい。

(向井教育長) 色々な課題を背負った子どもが多い。スタートラインの段階で、不登校であるとか、精神的に不安定な、そういう状況の子もいる。皆同じところからスタートするわけではないというところが、学校としてはしんどいところと考えている。

(小河委員) 藤井寺高校の定時制に呼ばれて行って、生徒たちを集めて話をしたときに、最初は寝ている。金髪で、帽子をかぶって色々な形で寝ている。全然勉強する気がない。新学期の始まりにも関わらず。子どもたちは、自分は負けてしまった、自分は人生この道しかないんだ、自分はこんなところに来るつもりはなかった、という思いでそこに寝ている。今どういう取組みをやろうとしているのかという話をしていたが、必ず君たちはできるようになるという話をさんざん色々なエピソードを紹介して、どんな子がこうなっていったという話をずっとやっていって、皆できるように必ずなるからという話をしていくと、最後の頃になったら皆体を起こして聞くようになっている。足し算から始まるから心配ないよ、できるだろう足し算は、というような話からやっていったら、だんだん皆体が起きていく。動機づけは本当に大事。そこに来ている子どもたちは、本当にやる気がない、絶望の海の中でおぼれている状況の子どもたちが来ている。それも今そうなったのではなく、何年もそういう生活の中で沈み込んできて、そこにたどり着いた子だと思うので、動機づけ、モチベーションを高めるカウンセリングのようなプロセスを相当重視していただいて、手を当てていく。ただ制度と決まっているから、ここに来たからがんばれという、そういう話にはなかなかいかないと思う。

(井上委員) 先ほどの理科のことでお伺いしたいが、大阪府立高校で理科が苦手だとか、好きじゃないという子どもは増えているのか、逆に減っているのか。

(和田教育監) そういったデータはないが、私が理科を教えていた感覚で言うと、実際に起こっていることを実感できるような教材であれば、目が輝くというか、顔が上がっているような気がする。先ほど小河委員がおっしゃったが、物理でいうと計算が出てくるが、そのときに、小数点が出てくる、分数が出てくるとなると、つまずきがある。私が問題を作るときは、そういう計算が出てこないように、工夫していた。計算を教えたいのではないので、中身が分かるようにという工夫はしていたつもりである。私が今、もし、現場の教師なら、これだけ映像資料がたくさんあるので、ICTを使いながらやれば、もっといい授業ができるだろうなと当時を振り返りながら感じている。松田課長も理科の教員だが。

(松田高等学校課長) 感覚的には理科の苦手な子が増えていると思う、全体的には。教育監もおっしゃったように、実物を見せるということ、まずなによりもそれがないと入り口は突破できないと思う。それをどんなふうに見せるのかということを工夫しなければならないが、そこの工夫は教師の力量、生徒の状況をつかんでやらないといけないところで、準備も時間がかかるところ。そうすると先ほど小河委員もおっしゃったように、なかなか生徒が落ち着かなくて他のことに追われていると、そこに時間がかけられないから、結果的に授業が面白くなくなるという、こういう悪循環があると思う。

(和田教育監) ただ、すごく開きがあると思う。グローバルリーダーズハイスクールに通っている子どもたちは、課題研究として理科の問題をやっているが、非常に高度なことをやっているし、彼らはそれを理解して研究発表している。大学レベルの中身をやっている。すごく開きが出てきている中で、それぞれに応じたテーマを与えていかなければならないのではないか。各高校が入ってくる子どもたちに合わせて、ちょっとでも上に進むような工夫が必要ではないかと思う。

(井上委員) 先ほど、教育センターで、理科の小学校の先生が授業を改善できるような取組みをとおっしゃっていたが、小学生の段階で理科の面白さを少しでも深めていくと、中学校、高校に続いていくと思う。新聞を読んでいると、国もロボットだとかAIだとかを、国の成長の分野として力を入れていくということになると、そういう分野に興味を持つ子どもたちが増えないといけないと思う。最近でも、トヨタ自動車が戦っている相手が、今はGMやメルセデスベンツ等の自動車会社ではなく、グーグル等であるらしい。自動運転というテーマでは、自動車会社と違う会社と戦いましょうということなので、そういった産業が日本で大きくなっていくということは、理科に興味を持つ人が増えないといけない。ある意味文化的に、そういうものに対して関心を持っている人が増えていかないといけないと思った。先ほどの、少なくとも小学校の段階でそういったものに興味を持つ授業を展開することをしっかりやっていきましょうということは、是非とも力を入れてやっていただきたいと思う。

(小河委員) ご指摘のポイントはすごく重要だと思う。大阪がなぜ全国的に低いのか。私は遊び体験だと思う。理科は、遊び、自然の中で、「えっ」と思うような感覚というものが大事。水たまりが子どもはすごく好き、足をつけてピチャピチャとやりたい。そういう世界が、実は大阪が一番少ない。1930年代で、既に大阪の原生林等の自然はゼロになった。だから、こういう比較で見ていくと、子どもの育ちの世界ではある意味で貧困である、そういう面は言い切れるだろうと思う。私が幼児教育をずっと主張してきた一番深い意味はそこである。小学校段階で面白さを育てるという以前の問題で、就学前の世界で、子どもたちは自然に対する興味、関心、すごい発見を豊かに蓄えさせるというのは、大事な課題だと思う。教育委員会の背負っているテーマではないかと、私は考えている。大きな話で申し訳ないが。

(竹若委員) 理科そのものを日本の国そのものが軽視してきた。国数英、いつも国数英。今ごろになって、テストや色々なからみから、理科が弱いと。一方では、ノーベル賞などは理科関係が多い。国そのもの、教育行政そのものの根幹がまずかった。今おっしゃっている、子どもに理科に興味を持たせるために、わざわざ小学校1年では生活科と名前を変えて、社会と理科をミックスさせたような、自分の生活の現象から興味を持たせることをスタートしたが、それも中途半端になった。それから、特に小学校高学年、中学校と、理科で実験しようとすれば、学校が荒れていたらほとんど実験ができない。それも実情だと思う。どれだけ言ってもきりがないが、もう一度基本に帰って、要は私は教員の指導力の問題だと思う。特に理科。理科に限らないが、原点に戻ってやってもらえれば。話を戻して、布施北。先進的なキャリア教育に力を入れる「デュアルエンパワメントスクール」、これは期待したい。高等学校も色々取組みをされているが、地元産業とタイアップしているのは、今までなかった。特に、東大阪はそういう地場産業が盛んだし、是非高校一年生で実習に行って、その理念を2年、3年につなげるようなプログラムを地元の方と作ってほしい。そこに理念が生きてくるだろうし、地元を愛する人間を育てることになると思うので、期待しているので、是非頑張ってほしい。

(小河委員) 日本の産業の、他の追随を許さない世界は、匠の世界だと思う。日本が絶対に追いつかれることのないテーマだろうと思う。

(向井教育長) 工科高校のプロジェクトも頑張っていく。

 

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教育庁 教育総務企画課 広報・議事グループ

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