全国福祉保育労働組合大阪地方本部 要望書

更新日:2024年3月15日

要望受理日2023年10月16日(月曜日)
団体名全国福祉保育労働組合大阪地方本部
取りまとめ担当課福祉部 福祉総務課
表題2024年度大阪府予算等要望

要望書

2023年10月16日

大阪府知事 吉村 洋文 殿

全国福祉保育労働組合大阪地方本部
執行委員長

2024年度大阪府予算等要望

 日頃より、府民の福祉と暮らしの拡充に、ご尽力されていることに敬意を表します。
 私たち福祉労働者は、その仕事をとおして利用者・家族のいのちと暮らしを支えています。コロナ禍にあっても、憲法25条の生存権や憲法13条の幸福の追求権など基本的人権を保障するにない手として働き社会を支えています。
 コロナ禍の3年間という長きにわたる緊急事態のなかで、福祉労働者の役割と重要性が社会生活を維持するためにも、不可欠であることが明らかになりました。また、その低賃金や厳しい労働実態も社会的に注目され改善を求める声もひろがりました。
 国による処遇改善策が2022年2月から2022年9月と2022年10月から2023年3月まで実施されましたが、対象となる事業や職員などが限定され、全産業平均と月額8万円の格差も解消されませんでした。また、国は2023年においては新たな賃上げする原資すら用意しませんでした。このような状況下で、2023年春闘では他産業ではベースアップなど一定の賃上げがされましたが、福祉職場では昇給にとどまり、職場によっては一時金を削減する厳しい状況に追いこまれています。
 このままでは福祉労働者の他産業への流出に歯止めをかけることはできず、人手不足は解消されません。いまこそ、国と大阪府をはじめとする地方自治体が連携して、福祉人材確保対策をすすめる必要があります。
 福祉職場における賃金・労働条件の改善や職員増を求める声は、以前より増して高まっています。多数の福祉業界団体から物価高騰への対応や賃金引き上げのための財源確保を求める声が上がり、また野党だけでなく自民党の議員連盟からも同様の意見が出ています。
 大阪府におかれましては、福祉職場の厳しい現場実態に直視し、無駄なカジノ・統合リゾート(IR)をはじめ大阪・関西万博に伴う大型公共開発に予算を使うのではなく、新型コロナ感染症や災害発生時の対策など府民のいのちや暮らし、福祉を守り拡充する予算の増額が優先されるべきです。
 今こそ、地方自治法に明記されている「住民の福祉の増進」をもとづき、新型コロナ感染症対策、社会福祉制度の拡充や職員の大幅増員・処遇改善を求め、府民のいのちと暮らしが守られるよう、以下の通り要望します。

【全体項目】
1.国に対し以下の項目について要望を上げ、予算措置を求めること。
(1)引き続き、福祉職場における新型コロナウイルス感染予防を徹底できるようにするため、コロナ感染者を早期に把握し、施設・事業所内で即対応できるよう定期的なPCR 検査をおこなえるようにすること。また、陽性者が出た場合、クラスター感染拡大が起こらないよう職員、利用者など全員のPCR 検査ができるようにすること。
(2)介護・障害事業所の利用者については、新型コロナウイルス感染者は原則入院とするとともに、対応できる病院等での病床数を増やすなど、医療体制を強化・確保すること。
(3)かかりまし経費における新型コロナウイルス感染症対策に使われた施設数(事業所数)、金額と用途を明らかにすること。
(4)かかりまし経費における新型コロナウイルス感染症対策の人件費は、大幅に増額するか、別途交付金とし恒常的に正規職員を配置し雇用できるよう新たに公費補助を設けること。また、個別協議に応じない自治体には応じるよう指導すること。
(5)利用者の安心・安全を確保し豊かなくらしができるよう、以下の福祉人材確保対策をおこなうこと。
 1) 処遇改善支援補助金事業は、支給対象は限定せず、すべての事業や職種を拡充し、恒常的に実施すること。また、全額交付金とし利用料負担はなくすこと。
 2) 処遇改善支援補助金事業は、全産業平均月額8万円の格差を是正すること。また、支給方法は定期昇給や一時金、手当などではなく、全職員の基本給を一律にベースアップに充てることを義務化すること。
 3) 職員配置基準以上に職員が配置されている実態に即し、公定価格や報酬単価を引き上げること。また、正規雇用を原則とし、常勤換算方式は撤廃すること。
 4) 労働基準法や労働関連諸法令が遵守できるよう、抜本的に職員配置を引き上げる改善をおこなうこと。
 5) 感染症や災害発生時に利用者のいのちと安全が守れるよう、どの時間帯においても、福祉職場の「1人配置」を解消し、複数以上の人員配置をおこなうこと。
(6)児童福祉施設の実施監査の規制緩和はしないこと。
(7)社会福祉施設職員等退職手当共済制度を福祉・保育現場で働くすべての職員へ保障できるよう、公費負担をおこなうこと。

2.大阪府の福祉拡充をすすめ、府内自治体と連携し独自施策をおこなうこと。
(1)物価高騰等への対策
   福祉職場や福祉事業所などに対して、水光熱費や食材、燃料費など含む物価高騰で影響をうけた支出増加分を、大阪府として各自治体と連携し補助金を出すこと。
(2)新型コロナウイルス感染対策
 1)福祉職場や保育所、児童福祉施設、福祉団体など安全な運営ができるよう、府の責任で利用者・職員に(1週間に1度の)定期的なPCR検査が実施すること。また、コロナ感染の疑いが生じた場合など、すぐにPCR検査が実施できるよう検査キッドを保障すること。
 2)福祉事業所におけるコロナ感染に伴う労働災害の認定及び罹患後遺症の対応を引きつづきおこなうこと。また、府民のいのちを守る観点で、休業要請などは事業所任せではなく府としておこなうこと。その際に府の主導で各事業所・関係機関の連携をすすめ、利用者の暮し・安全の確保対策をおこなうこと。
 3)感染拡大の防止対策により通常以上の過密労働となっている状況を勘案し、負担軽減ができるよう体制を強化する支援策をおこなうこと。
 4)コロナ禍により明らかとなった福祉事業の社会的役割を踏まえ、その労働にふさわしい継続的な手当を支給すること。また、実際に感染者対応をする職員への手当として特別勤務手当(仮称)を創設し、府として財源確保をおこなうこと。
 5)病床削減・転換は中止し、自宅や福祉入所施設などにおけるコロナ陽性患者の対応ができるように、すべての病床が活用できるよう医療スタッフを確保すること。
 6)自宅や福祉施設での経過観察を診療・検査医療機関まかせにせず、保健所が責任をもつこと。また、保健所を増設し、保健師など保健所業務にたずさわる職員を増員すること。民間委託による増員はおこなわないこと。
(3)福祉職場の人手不足を解消し、府内自治体と連携し、福祉職員の確保と定着が図れるよう、以下の対策をおこなうこと。
 1)感染症拡大や災害発生時等のいかなる状況下でも、豊かな利用者の暮らしを保障するため、正規雇用で専門性のある職員の増員をはかること。
 2)府として、すべての福祉労働者に対して社会的責務にふさわしい賃金水準を保障するため、独自の補助金制度を創設すること。また、正規職員と非正規労働者の差別待遇・不合理な格差を是正するため財政措置等の支援策をおこなうこと。また、
 3)福祉事業所で労働関連諸法令が遵守されるよう、労働部局と連携して指導を強化すること。
 4)産休等代替職員費補助金の補助金基準額を増額し、その代替対象期間は産休については、育休も含み1年以上とすること。また、病休についても1年間以上とし、介護休業も補助金の対象とすること。
(4)指導監査を強化すること。また、府職員を増員するなど体制強化をはかり、市町村とも連携し、指導監査の水準を向上させること。
(5)労働時間管理の使用者責任を徹底させるとともに、タイムカードの設置を指導すること。また、大阪府が把握している各法人・施設における労働時間管理の方法を明らか にすること。
(6)介護・障害職場の職員への退職金を保障するため、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の都道府県公費負担分を大阪府として補助すること。また、大阪府全体にかかる費用のシミュレートをし、その状況を開示すること。
(7)災害・感染症発生時にも利用者と職員の安全が守れ、事業を継続できるよう、以下の対策をおこなうこと。
 1)感染症の発生や地震・台風等の災害が頻発していることを踏まえ、府内福祉事業所の安全点検を実施するとともに、安全対策の支援策をおこなうこと。また、業務継続計画(BCP)が具体的に実施でき、安心・安全の福祉職場を実現するための職員加配補助制度を創設すること。
 2)感染症や災害等で利用者の安全を確保するために休園・休所した場合の減収について補填をおこなうこと。
 3)自然災害時に福祉施設が福祉避難所として機能するよう、拠点施設の整備と担当職員の配置をおこなうこと。
 4)災害時に利用者の安全が確保されるよう、福祉職場の「1人勤務」を解消し複数以上の職員配置ができるよう職員加配をおこなうこと。
(8)感染症対策や人材確保対策など市町村まかせにするのではなく、「市町村を包括する広域の地方公共団体」としての府の公的責務を果たすとともに、連携を強化し市町村間格差の是正、それに伴う財政措置をおこなうこと。
(9)利用料の軽減を行い、負担の心配をせず必要な福祉施策・福祉施設を利用できるようにすること。
(10)福祉医療費助成制度を拡充し、利用者負担の軽減と対象の拡大を図ること。また、廃止した老人医療助成制度を復活させること。
(11)カジノ・IRに伴う大型公共開発に予算を使うのではなく、府民への福祉・暮らしへ最優先に使うこと。また、カジノ(賭博場)誘致計画は撤回すること。
(12)万博の施設建設にあたり、労働者を過酷な状況に追いこむ残業規制の適用除外は、明確に反対の意志を大阪府として示すこと。

【保育関連施設】
1.保育士の配置基準を0歳児2対1、1歳児3対1、2歳児5対1、3歳児10対1、4、5歳児15対1に府の責任で拡充すること。
2.保育施設での労働が厳しくなっている中で、専門職として支えている保育従事者に対して、処遇改善を行うよう国に要望すること。また、大阪府独自の処遇改善を行うこと。
3.障害児保育の実態に見合った職員加配となるよう市町村へ大阪府として指導し、予算の増額を行うこと。
4.様々な感染症が流行する現場で、感染対策に努めていけるように補助金を出すこと。
5.全ての保育所において、病気や怪我の処置や衛生用品の準備が行えるよう、看護師を単独で1日加配出来るよう独自策を構じること。
6.複雑化するアレルギー児に対して、より安全な対応を行うためにも、職員加配(保育士・調理員)や物価高騰が続く中で豊かな給食を提供するための食材費に補助金を出すこと。
7.栄養士や調理員の急病に際して、給食調理現場に保育士が応援に入らなくても対応出来るよう、最低の配置基準を2名とし、乳幼児20名ごとに1名の加配をするなどの独自策を構じること。

【生活保護・救護施設関連施設】
1.府民の命と暮らしを守るのはもとより、日本における「健康で文化的な最低限度の生活」を牽引するべく、生活保護水準の向上に向け、府独自の加算などを積極的に推進してください。
2.府民の命と暮らし、文化的水準を守るため、生活保護制度を様々な方法で周知し、制度を必要とされる方に積極的に制度活用を勧めるとともに、府民全体に対し生活保護制度の利用に対する忌避感を取り除くような広報活動を行ってください。
3.救護施設利用者に対し、必要に応じて速やかに要介護認定が(「みなし」も含めて)受けられるように、府か市町村に指導を行ってください。また、施設変更の進捗状況に応じて有効期限についても柔軟な取り扱いを行うよう取り計らってください。
4.受診件数の多い救護施設に対して、府独自に看護師加算を増額してください。
5.国に対し、何十年と改善が為されていない救護施設の職員配置基準の引き上げを要請してください。

【障害関連施策】
1.第7期大阪府障がい福祉計画のサービス見込み量に基づき、大阪府で推計される障害福祉人材の必要数、および不足数を明らかにすること。
 「障害福祉独自の人材確保戦略」を策定するためには、サービス見込み量に基づく人材の必要数と不足数を明らかにすることが前提と考えます。昨年の応接でもお願いしましたが、大阪府におけるその数を明らかにしてください。調査できないというのであれば何がネックになっているのかを教えてください。
2.障害福祉現場で働く職員の状況についての認識をお聞かせください。
 泊り勤務のある職場では、月の半分近く(12泊とか)を泊らなければ回らない、日中事業所でも毎日朝夕の送迎の運転業務に入らなければならず、疲れた体でいつ事故を起こすかわからないと不安になるなどの声が上がっています。しかもそれらを担う職員の非正規化や高年齢化も進んできています。

【児童養護施設関連施策】
1.児童養護施設等職員の処遇改善をはかるため以下の事項を要望します。
(1)児童養護施設等職員の確保・定着のため、賃金引き上げの財政支援を行うこと。
(2)実態に基づく超過勤務手当が支給できるよう、財政支援を行うこと。
(3) 児童養護施設等(乳児院含む)の職員が働き続けられるよう、児童指導員・保育士の配置を児童1人に2名配置できるよう、財政措置を講じること。
(4)育児しながら働き続けられるよう、産休・育休の取得およびスムーズに職場復帰ができるよう、職員の加配を行うこと。
2.子どもたちに行き届いた支援ができるよう、以下の事項について要望します。
(1) 医療機関に継続して通院が必要な子どもが増加していることをふまえ、職員を増員すること。
(2)医療的ケアを必要とする児童が増えていることを踏まえ、看護職員や心理療法担当職員、精神保健福祉士を増員すること。
(3)一時的に施設での生活が困難な児童について、適切な医療ケア、支援が受けられるよう環境整備(例えば精神科病院に児童枠を創設するなど)をはかること。
(4)一時保護事業施策を以下の事項について財政措置を講じること。
 1)一時保護専用施設を増設すること。また、安定的に運営できるよう補助を引き上げること。
 2)施設の委託一時保護の体制が強化されるよう財政支援を行うこと。また、施設機能強化補助金を引き続き支給すること。
(5)乳児院で3歳以上の児童が生活し、障害を持っている児童が生活している実情を踏まえ、より良い療育環境を実現するために、財政支援を講じること。
(6)乳児院の夜間体制を強化するために、専任の職員を配置すること。
(7)社会的養護を必要とする児童が迅速に措置されるよう、関係機関に対し周知・徹底すること。
(8)児童養護施設等のICTによる業務効率化を推進するために、ハード、ソフトの整備にかかる費用を補助すること。
3.子どもたちの自立支援等を充実するために、以下の事項について要望します。
(1)児童虐待の相談件数が引き続き増加していることを踏まえ、虐待防止策の強化を図ること。
(2)18歳に達した児童が、自立に向けて希望する支援が受けられるよう、措置延長や社会的養護自立支援事業との活用について、関係施設に周知徹底するとともに、運用について助言、指導すること。
(3)22歳に達した利用者および退所した利用者が再び退所した施設等で引き続き自立に向けて十分な支援できるよう、生活費等の支援を行うこと。
(4)入所児童の就職に必要な自動車運転免許取得のための費用について、補助すること。
(5)里親制度のいっそうの改善に向けて、関係機関に対する指導・援助を強化するとともに、関係機関のさらなる関係強化を図ること。

【高齢・介護関連施策】
1.共通要望

(1)市町村と連携してすべての高齢・介護事業所の利用者・職員に定期的にPCR 検査を実施すること。また、新型コロナウイルス感染症が疑われた場合は、すべての高齢・介護事業所の利用者・職員は病院に通院し、無料でPCR検査ができるよう補助すること。
(2)市町村と連携してすべての高齢・介護事業所の利用者・職員に新型コロナウイルスのワクチンを優先接種できるようにすること。
(3)あらゆる感染症の蔓延や災害時においても、施設・事業所の業務が継続できるよう、加配の職員を配置するなど特別の対策を行うこと。
(4)市町村と連携して災害や感染症の発生時に、高齢者が避難、隔離できる福祉避難所を市町村ごとに整備すること。
(5)災害や感染症の拡大による利用自粛等の減収については事業ごとに補填すること。
(6)コロナ感染症による消毒等の業務過重を軽減するための職員の増員等のための財政支援を講じること。
(7)高い感染リスクを抱え、日々業務をこなしている職員に特別手当を支給すること。
(8)ICTの導入・活用については、業務の省力化や職員の負担軽減、利用者ケアの向上を目的に実施されるべきであり、ICTの活用を根拠にした職員配置基準の緩和はおこなわないよう国に求めること。
(9)介護保険制度における利用料の1割自己負担を撤廃するよう国に求めること。また、国が撤廃しない場合は大阪府として臨時で補助制度をつくること。
(10)感染症で福祉事業を休業・休園せざるを得ない場合は、収入減となる財源の補填を 大阪府として保障すること。

2.個別要望
(1)特養関係
 1)介護職員が気を遣うことなく、休暇を取りやすくできるよう職員の増員をおこなうなど、健康で文化的な生活が送れるようにすること。
 2)安心・安全な介護を保障するため、夜勤の介護職員体制をユニット毎で2人夜勤以上になるよう、加配職員を配置すること。
 3)利用料等の負担を軽減するための支援策を講じること。

(2)通所・訪問介護事業関係
 1)安心して通所介護が受けられるよう、介護職員の増員と施設の環境整備のための財政支援策を講じること。
 2)訪問介護員の人材難の背景にある低い賃金を引き上げるため、財政支援を講じること。また、台風などの災害時でも、命をつなぐ支援をおこなう訪問介護員に特別手当を支給すること。
 3)訪問介護における感染対策を徹底するために、消毒等の業務に対する財政支援をおこなうとともに、マスク、消毒液、使い捨て手袋等の必要な衛生資材を定期的に配布すること。

(3)高齢福祉制度関係他
 1)養護老人ホームにおいてコロナ感染症の感染予防のための業務が過重になっていることを踏まえ、体制強化のための支援策を講じること。
 2)養護老人ホームにおいて、複数夜勤となるように支援策を講じること。
 3)盲老人ホームの利用者が同行援護を利用して医療機関への受診・通院が安定的に保障できるよう、府内自治体と連携して強化を図ること。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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