部落解放同盟大阪府連合会 要望書

更新日:2023年9月29日

要望受理日令和5年7月6日(木曜日)
団体名部落解放同盟大阪府連合会
取りまとめ担当課府民文化部 人権局 人権擁護課
表題大阪府2024年度予算編成にあたって
部落差別解消・人権行政の推進に関する要望書

要望書

2023年7月6日

大阪府
知 事  吉村 洋文 様
大阪府教育庁
教育長  橋本 正司 様

部落解放同盟大阪府連合会
執行委員長

大阪府2024年度予算編成にあたって
部落差別解消・人権行政の推進に関する要望書

 部落差別の解消と部落問題の根本的解決、人権尊重社会の実現にむけて、人権施策等の推進にご尽力されておられますことに、あらためまして敬意を表します。

 さて、現在、被差別部落の地名リストを掲載した書籍出版や個人情報をネット上に公開するのはプライバシーの侵害であるとして、部落解放同盟や全国の被差別部落出身者235人が原告となり、神奈川県川崎市の出版社「示現舎」を相手に訴訟が行われています。

 6月28日、東京高裁は控訴審判決を言い渡しました。

 控訴審判決で、東京高裁は「現在も残る厳しい部落差別の実情」について詳しく事実認定を追加。そして―
 「憲法13条、14条1項の趣旨等に鑑みると、人は誰しも、不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有しており、これは法的に保護された利益である。部落差別は本件地域の出身等であるという理由だけで不当な扱い(差別)を受けるものであるから、これが上記の人格的な利益を侵害するものであることは明らかであるが、当該問題の根深さ、不当な扱い(差別)を受けた者のその後の人生に与える影響の甚大さ、インターネット上における識別情報の摘示を中心とする部落差別の事案は増加傾向にあること等に鑑みると、本件地域の出身等であること及びこれを推知させる情報が公表され、一般に広く流通することは、一定の者にとっては、これにより平穏な生活を侵害されることになるところ、これを受忍すべき理由はないから、本件地域の出身等であること及びこれを推知させる情報の公表も、上記の人格的な利益を侵害するものである(判決要旨 第3理由の要旨(2)原文のママ)。」
 として「差別されない権利」が侵害されていること。人格権に基づく法的救済が必要であることを認めました。

 ご承知のように、大阪府内の被差別部落の所在地情報(被差別部落とみなされる地域等も含む。以下「所在地情報」という。)が、インターネット上で流布・公開されたまま野放し状態です。あわせて、障がい者や在日外国人、LGBTQの人たちなどある特定した属性を有する人たちを誹謗中傷したり、偏見等をあおったりする行為も頻発しています。

 被差別部落出身者をはじめとする政治的・社会的・経済的マイノリティの人たちが「差別されない社会」の実現にむけた取り組みを積極的に推進することを強く求めるものであります。
 同時に、高度情報・デジタル社会という「新たな世界」における脅威と向きあい、部落差別をなくし、人権尊重の社会づくりにむけた諸制度のあり方についても論議を積み上げていくことが重要です。

 「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(以下「地対財特法」という。)」が失効して20年余が経過いたしました。この間、同和行政から人権行政への転換、一般施策等を工夫・活用した部落問題解決のための施策が推進されてきたところであります。地対財特法失効後、大阪府として展開してきた施策等の評価を明らかにする必要があるのではないでしょうか。そのためにも、大阪府と関係する自治体としっかりと連携をとって、今日的な部落差別問題の現状を可能な限り正確に把握することが求められるところです。

 昨年、大阪府水平社創立100周年を迎えたことを節目に、私たちは部落差別のない共生社会の実現を追求していくことを決意いたしました。その意味では、部落差別などの被差別マイノリティの問題を「地域生活課題」として浮き彫りにし、地域(周辺)住民や地域関係団体にも理解と協力を得ながら、地域福祉などの社会事業を通してその解決に取り組んでいく―。部落問題解決のための政策の一つとして具体化し、発展させていきたいと考えているところです。

 つきましては、2024年度予算編成にあたって、貴庁として部落差別の解消と部落問題の根本的解決、人権行政のさらなる推進と充実を求めるため、下記のとおり、要望いたします。

要 望 項 目

【1】「部落差別解消推進法」の具体化と部落差別解消・人権行政の推進に関して

(1)「大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例(以下「ネット上の差別等防止条例」という。)」の具体化等に関して
 1)ネット・SNS上における「大阪府内の被差別部落の所在地情報」問題に関して、法務省見解(依命通知)をふまえ、あらためて府内各自治体との協力を得ながら「ネット上の差別等防止条例」に基づいてどのような対策を講じられるのか、大阪府としての考え方と方向性を明らかにされたい。
 2)近年、インターネット・SNS上では、外国人のみならず、障がいのある者や生活保護受給者、野宿生活者などに対する「ヘイト行為」が頻発している。こうした「不当な一般化」により社会的・経済的マイノリティ等に対する誹謗中傷、偏見・差別をあおるネット上の差別行為等を抑止するための方策を検討されたい。
 3)「大阪府インターネット上の人権侵害の解消に関する有識者会議」とりまとめで示された提言等をふまえ、大阪府としての「ネット上の差別等防止条例」に基づく基本方針及び具体的な実施計画を策定されたい。

(2)「大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例(以下「規制条例」という。)」に関連して、下記の諸点について見解等を示されたい。
 1)大阪府内の事業者が土地の取引等に関わって他県にある被差別部落の所在地情報を調べる行為に加えて、「被差別部落の所在地情報」を「尋ねる」「問い合わせる」「第三者に依頼する」等といった行為を抑止するために、規制条例第3条3項の努力義務を禁止規定へと改正を検討されたい。
 2)「規制条例」に基づいて「差別につながる調査をしない・させない・許さない」と自主的・主体的に取り組んでいる一般社団法人大阪府調査業協会が果たすべき役割等について、あらためて大阪府としての基本見解を示されたい。同協会の会員拡大へ、関係機関と連携をとって積極的に働きかけられたい。

(3)生成AIの普及に伴う人権リスクなど、高度情報・デジタル社会における「部落差別」解消にむけた取り組み強化に関わって、大阪府としての基本的な考え方と方針を明らかにされたい。

(4)部落差別の解消、部落問題の解決のための施策の推進にあたっての基礎資料とするために、被差別部落の実態把握(生活実態、意識実態、差別事象)、当該自治体と連携をとった隣保館活動を通じた実態把握の実施を検討されたい。

【2】「SNS調査(裏アカウント調査含む)」問題と公正な採用選考のあり方に関わって。下記の諸点について見解等を明らかにされたい。

(1)今日的な公正な採用選考・採用調査のあり方を検討する基礎資料とするため、求職者(新規学卒者及び一般求職者)を対象に「本人同意の手続き」に関する実態把握、あわせて経済団体等と連携をとって「採用調査の実態(SNS調査含む)」を把握されたい。

(2)「公正採用・雇用促進会議」のもとに「SNS調査」問題にかかわる研究会(仮称)を設置し「公正な採用選考・採用調査の在り方」に関して検討・論議を図られたい。

【3】戸籍等の不正取得に関わって、被害を受けた者に通知等の対応を行う「住民票の写し等の不正取得に係る被取得者への通知実施要領(仮称)」を、府内全自治体で策定するよう、大阪府として積極的に働きかけられたい。

【4】「困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する法律(以下「困難女性支援法」という。)」の具体化に関して

(1)2023年度の国の予算を活用した困難女性への適切な支援の実施について、大阪府の取り組みの進捗状況を明らかにされたい。

(2)困難女性の実態把握に関してどのような内容で実施したのか。困難女性の定義の明確化など「基本計画」にどのように反映されようとされるのか明らかにされたい。

(3)女性の生活自立を支援する民間団体・機関等を対象に「困難女性支援法」に基づく支援等の活動に関する意向調査(仮称)を検討されたい。あわせて、民間支援団体から出された要望を具体化するため、民間支援団体との共同事業を実施されたい。

(4)各市町村に対して「基本計画(市町村計画)」を定めるよう働きかけられたい。

(5)コロナ禍によって確実にDVが増加している現状をふまえ、「大阪府配偶者等からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する基本計画(2022-2026)」について、これまでの取り組み状況と成果・課題を明らかにされたい。

【5】第5期大阪府地域福祉支援計画の改定にあたり、下記の諸点について見解等を示されたい。

(1)現行計画「第4期大阪府地域福祉支援計画(中間見直し版)」に記載されている内容からの改定にあたり、下記の点を補強されたい。
 1)部落差別の解消と部落問題の解決の視点を位置づけるため「第一章 地域福祉の理念 3.地域福祉とは」等において「被差別部落出身者」とあらためて明記されたい。
 2)「同章 4.地域福祉推進の原則」の「(1)人権の尊重と住民主体の福祉活動」において、今日、様々な人権問題が存在していること、こうした人権問題解決の取り組みも「地域生活課題」として位置づけて取り組むことが重要である旨についてあらためて強調されたい。

(2)「重層的な包括支援体制の整備」に関わって、日常生活圏域等で「孤立や孤独」「貧困」等を解消しようと取り組まれる地域福祉活動と、重層的支援体制整備事業を活用し「参加支援」「地域づくり支援」など社会的に包摂する取り組みが連動することが重要と考えるが、大阪府としての基本的な考え方を明らかにされたい。

(3)子どもが日常的に家族の介護や世話を担う「ヤングケアラー」に関して、大阪府教育庁が府立高校の全生徒を対象に実施した調査で10人に1人、そのうち約4割が「ほぼ毎日」との結果が明らかとなった。全府立高校にSSWの配置を検討されたい。常態化し「当たり前」として自覚なくヤングケアラー状態におかれている子どもも存在する。「ヤングケアラー」とはどのような支援等を必要とする子どもなのか(基準)、早期発見や予防的支援など、ヤングケアラー問題に対する具体的な方針等について、改訂計画に反映されたい。

(4)隣保館等を核に人権問題解決の取り組みを地域生活課題の一つとして地域福祉活動から、社会参加支援や地域づくりなど「重層的な包括支援体制の取り組み」へとつなげていくため、当該自治体の協力を得ながら「隣保館相談・支援を通じた実態把握(仮称)」を検討されたい(一部再掲)。

【6】すべての人が、人間の尊厳と人権を尊重し、国籍、民族等の違いを認めあい、ともに暮らすことのできる共生社会の実現―「改正大阪府在日外国人施策に関する指針(以下「指針」という。)」の具体化に関連して

(1)2021年に在日コリアンの男性(特別永住者)が銀行口座の開設申し込みの際に、特別永住者証明書や在留カード(外国人登録証)の提示を求められたことに対し「外国人差別だ」として、今年3月、日本弁護士連合会に人権救済申立書を提出した。「指針」をふまえて、大阪銀行協会などの関係団体に働きかけるなど、当事者本人の尊厳を確保した社会活動・生活関連の手続き等のあり方・ルールの共有化を図られたい。

(2)国内に住所を持つ外国人宿泊者に対し「本人確認のため」と在留カードの提示やコピーを求められるケースが多くみられる。「Expo2025大阪・関西万博」を控え、「指針」に示された目標を具体化していくため、香川県の事例を参考に、大阪府としても毅然とした姿勢を表明し、府内の全宿泊業者に周知を徹底されたい。

【7】地域雇用対策の強化に関わって。物価上昇等により、年金だけでは生活が苦しい人たち、とくに後期高齢者の人たちが増えてきている。就労を軸とした生活自立を支える意味でも「地域就労支援センター」および「シルバー人材センター」の役割はますます重要である。「業務の切り出し」等による軽作業業務の雇用創出などの地域雇用対策の強化、シルバー人材センター関係者に対する部落問題研修・人権研修の充実・強化を積極的に働きかけられたい。

【8】統一自治体選挙を機に「大阪府の高校授業料完全無償化」の制度化にむけた論議が行われている。「経済的理由により進学を断念せざるを得ない生徒を生み出さない」観点から、公立・私立の学校間で、あるいは進学希望校が制限されるなど、不公平とならないよう十分配慮されたい。

【9】リバティおおさかが所蔵する人権関係資料の積極活用に関して

  2022年8月、リバティおおさかから公立大学法人大阪に対し、収蔵資料の寄贈について提案がなされ、条件が整えば資料を受け入れ、保存・展示・活用する旨の大学からの回答をふまえ、2023年3月、財団と大学で合意に達した。現在、資料の保存・展示・活用策について、大学と財団による協議が進められているが、2024年度には結論を得られるよう、検討を加速させる必要がある。大阪府においても、その実現にむけ、大阪公立大学の共同設置者として、大阪市と連携し、積極的に支援を行われたい。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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