社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 要望書

更新日:2023年9月29日

要望受理日令和5年6月13日(火曜日)
団体名社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会
取りまとめ担当課福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課
表題知的障がい児者とその家族に対する支援策の充実について

要望書

令和5年6月13日

大阪府 知事 吉村 洋文 様

社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 理事長

知的障がい児者とその家族に対する支援策の充実について(要望)

 平素は、知的障がい児者とその家族に対して様々な支援策を講じていただきまして感謝申し上げます。
 さて、令和5年度補正予算および令和6年度当初予算において実現していただきたく下記の項目を要望いたします。
 ついては、令和5年8月末日までに書面にてご回答くださいますようよろしくお願いします。

【権利擁護】
○知的障がい児者への虐待について
 昨年発生した北海道不妊手術強要、福岡市発達障がい児監禁事件などに見られるとおり、障がい児者への虐待事案は変わらず続いています。とりわけ大阪府はその虐待認定件数の多さが顕著であると認識しています。
(1)私たち育成会は、津久井やまゆり園の事件を忘れることはできません。社会の一部に根強くある優生思想を払拭するべく、大阪府として、知的障がい児者を支援する人たちへの強力な虐待防止の取組みをお願いします。
(2)施設等での虐待を予防するには「風通しのよさ」が必要で、支援現場に「外部の目」が入ることが有効です。その外部の目として重要な役割を果たす行政の実地指導が、コロナ禍では回数も規模も縮小されてしまっています。虐待防止の観点でも実地指導がしっかりと行われますことと、コロナ禍以前よりさらに丁寧な指導がされますようお願いします。これについては、実地指導等を所管する市町村に指導をしてください。
(3)障害者虐待防止法に則り虐待防止センターが各市町村に設置されていますが、その取組みや対応に違いが見られます(虐待の認定基準や具体的対応方法など)。当団体としては障がい児者の命や尊厳に関わる、虐待防止の取組みや、虐待への対応に、市町村格差が絶対にあってはならないと考えます。現在、虐待防止センターの運用は市町村任せになってはいませんか。各市町村においてその取組みが標準化されるよう、大阪府の取組みを望みます。

○知的障がい児者への差別解消について
 障害者差別解消法および大阪府条例において、事業者の合理的配慮義務がうたわれています。しかし、社会におけるその理解が進展していることについて私たち当事者には実感がありません。
(1)差別解消法の相談窓口対応の相談数が少ないと聞いています。各市町村の取扱い件数を教えてください。また、特に知的障がいの件数が少ないようですが、これは私たち本人や家族の現実の生活からかけ離れています。なぜ知的障がいの相談は少ないのか、大阪府の見解とその対策についてお聞かせください。
 また、知的障がい児者への差別について、具体的な差別事案を可能な限り私たち当事者にお知らせください。
(2)知的障がいのある本人やその家族は、自らの平常を守るため、差別など受けてもその行為者へ申し出るということがしづらいです。その前提に立って、当団体は、私たちを支援してくれている支援者からの相談が増えることを願っています。前年度にお伝えしましたヘルパーへの調査は、その障害者差別の実際を抽出するにふさわしい対象であると考えていますので、取り組んでください。
(3)知的障がい児者への合理的配慮について、その特性に配慮した「わかりやすい文書」への配慮がなされていないのが現実です。大阪府下において、行政が発行する書類には、知的障がいへの合理的配慮が必ずなされるよう工夫をしてください。また、その配慮の内容は、難しい文章にルビをふるだけではなく、やさしい日本語を取り入れ、意味のある配慮になるようにお願いします。

○知的障がいの啓発について
 大阪府においては、ふれあいキャンペーンを中心に啓発に取組んでいただいているところですが、そのキャンペーンが市町村に平たく活用され定着しているとは言えない状況です。現況を分析し、より効果的な取組みが必要です。
(1)障がいのある人を理解するためには、出会って交流していただく必要があると私たちは思っています。このような取組みが市町村に広がるよう、好事例を収集し公表するなど、私たちと一緒に考えてください。
(2)障害者差別解消法では、令和6年4月より合理的配慮の提供が事業者へも全面義務化となります。障がいのある人を雇用する企業も含めて、事業者への啓発について、私たちと一緒に考えてください。

○知的障がい児者の家族支援について
 養護者虐待が起こる世帯は、家庭内もしくは生活に困難を抱えた世帯が多いです。また知的障がいは長年家族が介護するものとされてきたことで、現在老障介護といった問題が大きくなっています。さらに近年、支援の対象となったヤングケアラーには、障がいのある人のきょうだいが対象となっているはずです。当団体は、知的障がいの分野こそ家族支援が必須であると考え、特に地域や生活に密着した支援が必要であると思っています。
(1)児童期の保護者支援やきょうだい児(ヤングケアラー)支援には、相談支援の強化等が必要です。国では、数年前から厚生労働省でも文部科学省でも家庭と教育と福祉の連携をうたい、プロジェクト等を行ってきました。それらは大阪府でどのように広がっているのでしょうか?特に「保護者支援を推進する方策」が私たち当事者に伝わってきません。福祉部局として具体的な例をあげて、大阪府の状況を教えてください。
(2)児童期の保護者、成人障がい者の養護者、いずれに対しても、ピアサポートが有効であります。同じ家族による支えあいや繋がりは私たち育成会の今ある姿です。私たちの活動をどうぞ活用してください。
 また、この提案以外に大阪府として、家族支援強化への取組みがおありならば教えてください。

【知的障がい児者の防災】
○災害等における防災について
 近年の大雨災害や台風被害、頻発する大規模地震など、防災への備えは今そこにある危機として私たちは捉えています。災害時障がいのある人の命と生活が守られるために、備えとしての様々な配慮がなされることを願います。
(1)各市町村にて把握されている「要支援者名簿」の内容について大阪府として把握し、以下の内容について市町村ごとに公表してください。
 ・対象とする人
 ・登録されるまでの手続き
 ・情報更新がされているかどうか
 ・名簿活用の実際(平常時、災害時)
 ・広報の仕方
(2)各市町村における個別避難計画の作成状況についてお聞かせください。その中で、知的障がいのある人の作成件数についても教えてください。
(3)災害有事の際に障がいのある人が利用する「福祉避難所」の府下の設置状況を公表してください。そして大阪府が把握されている、福祉避難所にまつわる課題をお聞かせください。

○新型コロナウィルス感染症について
 コロナの脅威にさらされた3年間。感染者が発生した事業所は容易に休業をする、ガイドヘルパーやホームヘルパーの派遣を断られるという状況が繰り返されました。自分たちは感染や接触をしていないにも関わらず、平常の生活ができませんでした。
 特に、知的障がいのある人たちは、何が起きているのか理解しづらく、とてもしんどい思いをしました。それでも社会に合わせ懸命に自粛やマスク着用など感染予防を行い、耐え忍びました。その結果、二次的な障がい等が起きている人たちもいます。
 また「感染者になっても入院ができない。」「家族が感染しても、誰も助けにきてくれない。」という苦しい叫びが聞こえると同時に、「健常者はたやすく入院や療養施設に入れる」ということも繰り返されました。
 私たちは「障がいがあるから、あきらめるしかない」のでしょうか。今後もこのような災害が起きるたび、見捨てられ・後回しにされ、家族だけが「できない辛抱」を続けなければならないのでしょうか?
 私たちが向き合った「障がいのある人の生活が簡単に崩壊してしまう現実」を振返り、以下のことをお願いします。
(1)コロナ禍において浮彫りになった、障がい児者やその家族をとりまく課題は、そもそも障がい児者福祉が抱えていた課題であると認識しています。大阪府においては、府下各地における障がい児者をとりまくこの間の課題について集約検証し、今後の障がい児者福祉施策に反映させてください。
(2)コロナに感染しても入院できないという状況が府下各地で見られました。とりわけ障がい程度が重いことを理由に拒否されたり、付き添いが必要ということで断られたりといった事案もありました。これらは平時にも見られることかと思います。どんなに重い障がいがあってもあたりまえに医療が受けられるようにしてください。
(3)コロナ感染症にまつわるさまざまな社会的動きが見られました。日々変化した感染症への対応、支援金やワクチンなどのこと、各市や府の関連施策など、そもそも情報を得ること、見通しを立てることが苦手な障がいのある人は非常に戸惑いました。これを機に、障がいのある人への配慮として、「わかりやすい」に留意した情報の保障をしてください。
(4)コロナ感染症まん延時には、多くの感染者の入院がかなわず、グループホームなど居住系サービスにおいては、施設内で利用者の隔離療養を行わざるを得ませんでした。大阪府においては、施設内で陽性者支援を行った場合、介護事業所には国補助金および大阪府からの補助金を支給していましたが、これを今後は、障害福祉サービス事業所も同様の扱いとしてください。

【生活支援】
○地域生活支援拠点等の整備について
 親も子も高齢化が進む中、8050 問題は障がい者のいる世帯に多い課題でもあります。その世帯においてはいつ緊急事態が起ってもおかしくはありません。また、親なき後の課題は障がいのある人とその家族にとって恒久の課題でもあります。
(1)私たちが期待を寄せる地域生活支援拠点等は、私たちに何をしてくれる所なのかがよくわかりません。支援対象者とその家族は情報が届きにくい人という前提に立ち、利用者の立場に立った周知広報を行うよう、市町村を指導してください。
(2)整備状況およびその運営内容について、市町村ごとの違いが顕著です。この事業が府民に対して等しく有用なものとなるよう、本事業について以下の点を市町村ごとに調査し公表してください
 ・広報の仕様と内容
 ・拠点のあり方(面的整備、拠点整備のハードとソフト体制詳細)
 ・緊急預かり運用方法
 ・体験の場運用方法
 ・コーディネーターの設置と職務
(3)面的整備においては、地域の事業所を登録し運用する方法がありますが、事業所が負担感などを感じて受入体制が進まない、体制が整わないので登録がはかどらないと聞きます。この課題を大阪府として把握されていますか。把握されていない場合には、登録の実態について調査をしてください。また把握されている場合には、大阪府として課題へいかに取組まれるのかをお聞かせください。

○強度行動障がいの状態にある人への支援について
 障がいの重い人、とりわけ行動障がいの状態にある人については、多くの配慮と専門性が担保された支援が必要であると考えています。強度行動障がいの状態にある人が、安心して社会参加でき、生活できる環境が府下何れの地域を見ても整備されていません。そんな中、厚生労働省にて令和4年度に実施された「強度行動障害を有する者の地域支援体制に関する検討会」の報告書を、私たちは大きな期待をもって読みました。
(1)地域の支援力を高めるためには、支援する事業所へのスーパーバイズを行う仕組みが必要です。報告書では「広域的支援人材の育成」がまとめられていますが、これについての大阪府のお考えをお聞かせください。また、必要であると認識された場合、大阪府においてはその必要数を具体的にどの程度お考えになるでしょうか。
(2)強度行動障がいの状態にある人が適切に障害福祉サービスを利用するためには、障がいの実態に合わせた障害支援区分の認定が必要となります。そこで、認定調査を行う調査員の障がい理解が求められるところではありますが、実情は事務的に処理をされてしまい、聞き取ろうという姿勢がみられないなど不具合が散見されています。調査員に対する研修を強化していただくよう、大阪府の広域的な取組みとともに、各市町村へ働きかけてください。
(3)強度行動障がいの状態にある人への支援は広く大阪府全域の課題であると認識しています。そこで、大阪府における障がい者自立支援協議会に「強度行動障がい支援部会」を設置していただき、この課題に対する検討を行うとともに、大阪府としてこの課題に向かうスタンスを明確にしてください。

○共同生活援助事業(グループホーム)について
 知的障がいのある人の地域生活を支える本事業は、その有効性から設置数が増えていますが、課題は多く、とりわけ重度障がいのある人が生活するにはさらなる制度の改定が必要と考えています。
(1)国による画一的な家賃補助ではなく、物価水準の高い都市型グループホームへの補助増額と、健康で文化的な最低限度の生活が保障されるよう、所得保障である障害基礎年金が増額されることを国へ要望してください。
(2)スタッフの一人仕事も多いとされるグループホームでは、障がい者虐待事案が発生しやすいです。知的障がいの特性理解や人権意識などのスタッフ(とりわけ世話人)向け研修を定期的に実施してください。
(3)多様な運営主体の参入により、経験や専門性を持ちえない事業者が散見されます。そんな中、突然の事業廃止により、住まいを失うといったことが危惧されます。入居者の生活を守ってくださるよう、大阪府として事業者への実地指導および事業廃止の際の指導を厳密に行ってください。
(4)報酬としての日中支援加算は、傷病などにより日中の活動ができなくなりホームでの生活をした場合に算定されるものですが、現行3日目からしか算定できず、土日曜日と祝祭日には算定できません。支援自体は初日より発生し、休日にも支援を行います。本加算の運用を変更するよう国へ働きかけをしてください。
(5)グループホームの指定について国では、同一敷地に20名までとしていますが、ある市の事業者指定対応では10 名までと言われたとのことです。またある市では、同一敷地であっても2住居の住所を別にしたり、出入口を2つ作れば20名まで可能などの実態を確認しています。この事業者指定事務の実態を大阪府として把握し、共通のルールで運用していただくようにしてください。

○居宅介護事業および移動支援事業について
 居宅介護事業は市町村によってその運用に大きな違いがあり、居住地により受けられるサービスに差があるという不具合が出ています。ヘルパーは障がいのある人の地域生活に欠かせないものです。府下全域で標準的な運用がされることを求めます。
(1)障害福祉サービスでありながら、居宅介護は市町村によってさまざまな違いが認められます。支給される条件の違い、決定される支給量の上限の違い、グループホーム利用者への支給内容の差等です。これらは市町村によって作成される支給ガイドラインが違うことが原因とするならば、すべての市町村の「ガイドラインの有無」「ガイドラインがある場合の内容」を教えてください。そして、府民が等しくサービスを享受できるよう、格差をなくす取組みをしてください。
(2)通院等介助においては、身体介護の決定がなければ診察室への同行が認められません。知的障がい者は、その障がい特性から、医師の質問を理解したり、自分の症状を説明することなどが「うまくできない」という問題があり、全ての人に支援が必要です。府下において、知的障がい者は身体介護を伴う通院等介助が標準的に運用されるよう調整してください。
 また、定期的な通院を必要とする疾病等については認められるものの、突発的な体調変化による通院などには適用されません。地域で生活するために当然必要な支援であり配慮であると考えます。制度の拡充を国へ求めてください。
(3)移動支援事業の運用については、市町村ごとの違いが顕著です。各市の運用実態については比較検討ができる調査をいただいているところですが、住まう市の違いだけで、制度が使いにくいという声は依然として聞かれます。障がいのある人の移動保障を権利としてとらえ、居住地がどこであろうが、等しくサービスを享受でき生活が保障されるよう、作成されすでに10年が経過する「移動支援に係る運用の考え方」を見直していただき、標準的なサービスがいずれの市町村でも運用されますよう、市町村へ働きかけをしてください。
(4)移動支援についてはおおよそ個別的な運用がなされています。よって統合補助金の仕組みは実態にそぐわないものであります。個々の生活の仕方によって差があるのが当たり前なのに、現在の移動支援では時間数の制限等があります。当団体はやはり、このサービスは個別給付であるべきだと思っています。大阪府からも法制度として個別給付となるように国へ働きかけをお願いします。
(5)居宅介護や移動支援については、支給決定を受けたとしても事業所のヘルパー不足のためサービス利用ができない現状があります。生活に必要であるヘルパーが利用できず、当たり前の生活ができないで我慢をしている人や介護から解放されない家族がいます。また重度の障がいがあるほど、担当してくれるヘルパーがおらず、家族で抱え込むしかない状況です。
 そして、福祉の人材不足については長年の課題で、現在の大阪府における取組みは理解していますが、改善されている実感が全くありません。特にヘルパー不足については、絶対数が不足しているのではなく、利用者と担い手のマッチングに問題があるという意見もあります。大阪府として、現状を正確に把握して、新たな取組みを行っていただきますようお願いします。

【相談支援】
○基幹相談支援センターについて
 地域における相談支援の核となる標記センターについては、その機能強化や質の向上が、指定相談支援事業所の質に多分に関わると考えています。また、地域生活支援拠点等や、障がい者自立支援協議会の有意な展開についても多分にそのあり様が問われています。令和5年3月に厚生労働省の主管課長会議資料には、「基幹相談支援センターの設置促進や適切な運営の確保のための都道府県の役割(広域的見地からの助言等)を規定 ※新設」とあります。大阪府の今後の取組みに大きな期待をしています。
(1)ますます役割を増す基幹相談支援センターですが、私たちや地域のために何をしてくれる所なのか、各市のホームページを見てもその実際がわかりません。わかりやすく広報していただくよう、各市へ指導をしてください。
(2)現在、未設置の市町村はどのくらいあるのでしょうか?すべての市町村の設置状況を教えてください。また未設置の場合はその理由をお聞かせいただくとともに、その設置促進について大阪府がどのように進めようとしているのかも教えてください。
(3)設置済の市町村については、その活動の詳細を把握し、公表してください。また、府下すべてのセンターが適切な運営となるよう、情報交換し研鑽を深める場があればよいと思います。ぜひ担当者が交流できる機会を定期的に作ってください。

○障がい者自立支援協議会について
 各市の運営状況については調査いただきお示しいただいたところですが、市町村による実施内容には大きな違いがありました。地域性を鑑みた違いだけではなく、その熱量の多少がうかがえる内容と理解しています。障がいのある人が住みやすい地域づくりに必要な仕組みとしてさらに機能が強化され、地域に根付くことを願います。
(1)大阪府の自立支援協議会で話し合われていることについて、私たち当事者が理解できるよう実施内容などを説明してください。また協議会は、各市町村の実勢を把握した上で府域の課題を堀り起こし、不足する社会資源等を明らかにして、地域づくりへの計画等につなげていることと思います。それについて大阪府が認識されている課題を教えてください。さらに、その課題についてどのように広域調整に足る検討を進めているかも教えてください。
(2)市町村の協議会について、実効性のある協議会であるためには、私たちは協議会の委員の構成が重要であると考えています。各市町村において、委員の公表がなされるようにしてください。
(3)障がいのある人の暮らしに着目した実効性のある協議会になるよう、すべての市において、地域の課題に応じた作業部会が設置されることや、事例の検討を行うことにより地域のニーズを把握する協議会になるようにしてください。

【就労支援】
 大阪府においては障がいのある人の就労支援について、障害福祉サービスなどを通して多様な取り組みを行っていただいているところです。さまざまな就労、社会参加の形があるなかで、現行の法体系の範囲では解決できない課題もあります。これまでの就労支援施策において、大阪府は全国的にも先行した施策展開をしてきていただいたと認識しております。引き続きの取組みをお願いします。

○官公庁における公需の優先調達について、職務の切り出しや運用方法、事業所とのマッチングなどが丁寧に行われる仕組みや、市町村単位などで共同受注の仕組みができることなどを、大阪府として取組んでください。また優先調達のような取組みが民間企業にも広がっていくようにしてください。

○就労継続支援B型事業にある目標工賃達成指導員配置加算ですが、事業所に配置している指導員の専門性を高めることが、工賃の向上につながるものと考え、大阪府において研修(営業や工程管理、マーケティングなど)を実施してください。

○就労定着支援事業については、本人の意向や会社環境などを鑑みた、個別支援が必要とされており、3年という期限に終了し支援機関を変更することで、本人への不利益が容易に想定できます。3年の利用期間を経過した本人が、どのように支援機関と関わり、働き続けることができているかどうかを把握していただくとともに、事業の利用期限を無くす、または延長申請を可能とするなど、国へ働きかけをしてください。

【事業所運営】
 私たちが利用する障害福祉サービス事業について、その支援の質を向上させていただくことを望んでいます。しかし、人材確保が困難で事業運営に支障をきたしていたり、不適切と思しき運営に対して行政指導が行き届いていないなどの課題が散見されています。私たちが安心して福祉サービスを選び利用できるよう、取組んでください。

○大阪府の一部地域では、指定権者(事業者指定など)と指導権者(実地指導など)が違う場合があります。この両者の連携が円滑に行われなくなると、地域の福祉事業者の質の低下を招きかねません。福祉事業の安定化のために、ねじれを無くすなどの調整をしてください

○福祉人材の確保について
(1)(公財)介護労働安定センターの令和3年度介護労働実態調査大阪版では、介護職の離職率が、1年未満42.8%(全国35.6%)と大変高い数値となっています。離職者は福祉業界そのものから離れてしまっているのでしょうか。大阪府としてこの数値をどのように捉えておられますか。
(2)大阪府では、介護分野への人材参入を促進するため、令和4年度より、吉本興業株式会社に委託して、YouTube で介護職・介護業務の魅力発信をされていますが、介護福祉業界のイメージアップが図られ、人材確保の効果が出ているのでしょうか。検証し結果を教えてください。また、介護福祉を中心に据えた施策展開だけではなく、障害福祉に視点をあてた人材確保施策を今後展開してください。
(3)令和5年度は、高校生を対象にしたインターンシップを実施するとのことですが、とりわけ障害特性がわかりにくい知的障がい児者の分野にも希望が集まるよう、大阪府としての取組みを教えてください。

【教育】
○障害者権利条約について
 支援学校などにおける分離教育について、障害者権利条約の対日審査で指摘を受けたところですが、大阪府としてこれをどのように捉えておられますか。

○強度行動障がいについて
 強度行動障がいの状態にある子どもたちへの教育および処遇については、支援学校における先生の専門性が必要と考えています。教育分野だけではなく、福祉分野との連携を促進していただき、学校における専門性の向上に向けて取り組んでください。

○教師の質の向上について
 前述の行動障がい以外でも、特別支援教育における先生の専門性は、子どもたちの成長や日々の生活等に直結します。特に、知的障がいの支援学校は、そのセンター機能を考えるとき、地域小中学校に多く在籍する知的発達障がい児童生徒の支援教育スキルアップへの役割が求められます。だれもが安心して学ぶことができる体制を作り、「ともに学び、ともに育つ」教育を推進するために、支援学校においては、障がい児教育に専門性の高い教育力を持つ先生をそろえてください。

○支援学校について
(1)学校間格差について
  学校によって生徒や保護者に対する対応にさまざまな違いがあります。それはスクールバスの運用、ケース会議の実施、保護者が交流できる機会、生徒の学びの場などに見られます。学校間格差が無くなり、いずれの学校においても同様の対応をいただけることを望みます。
(2)支援学校の設置について
障がい児の数は依然として増えており、知的障がいの支援学校は毎年児童生徒の数が増え、過密になっています。そのため、スクールバスの乗車が長時間になる子どももいます。
大阪府では、現在も新設校の整備等を進めていることは承知しています。しかし、増え続ける障がい児や支援学校の過密という問題は、特別支援教育になる前からずっと続いている問題であり、一向に解決する兆しがありません。
 知的発達障がいのある子どもたちにとって適切な教育環境となるため、支援学校は設置の数や場所を含め、どのような状態になればよいと考えておられますか?現状の計画も含め、今後の方針等について大阪府のお考えをお聞かせください。
(3)スクールバスについて
 スクールバスは子どもの通学を保証する大切なものですが、様々な課題を抱えている面もあります。乗車時間中のストレスが強くて登校をいやがる、調子を崩し不穏な状態だからと乗車させてもらえない、添乗員等の言動にしんどくなった子がいるなどの話が届いています。
 スクールバスはバス会社に委託されていることは承知していますが、登下校も子どもたちにとっては大切な教育の時間です。その点をふまえて、スクールバスの環境改善を希望します。
(4)年度途中の支援学校への転校について
 各市町村設置の小・中学校で環境に馴染めない児童・生徒が、府立支援学校に転籍する仕組みは存在しますが、実際に現所属の学校に相談をすると、年度単位でないと不可等の誤った回答があると聞いています。大阪府教育センター「すこやか教育相談」や府内の各市町村にある就学相談窓口の広報を積極的に行うことと、府内で均一な情報提供ができるように要望します。

○教育と福祉の連携について
 トライアングルプロジェクトをはじめ、教育と福祉の連携は重要であると言われていますが、実際の教育現場ではそれが進んでいるように思えません。福祉支援者にとって地域の小中学校の扉は固く、連携を拒否するような態度があったり、相談支援や保育所等訪問支援の理解がなく、「受け入れるかどうかは学校が決める」などの発言もあります。
 支援学校においても、先生の障がい特性への理解が乏しいため、支援共有ができないと嘆く福祉サービス事業所もあります。また、毎日の下校時に先生との接触はあるけど、一度も子どもの様子を聞き取られたことがないという事業所からの意見もありました。子ども・保護者にとって、学校も福祉支援者も同じ「うちの子を支援してくれる大切な人」です。その支援者同士が実際に「うちの子」のことで連携できる体制になるよう、各学校を強く指導をしていただきますようお願いします。

○保護者支援について
(1)先生への相談
 学齢期の保護者にとって、最も身近で信頼をしているのは「学校の先生」です。不安と悩みの多い学齢期に、学校以外のことも相談させていただき、頼りにしています。その分、先生のアドバイスや意見が適切でなかった場合、傷ついたり、間違った情報に苦しんだりして、その後の子育てや介護に支障をきたすこともあります。
 現在は福祉や進路の情報が幅広く、またどんどん変化します。古い情報を先生から聞いて、後で苦労する保護者が出ないよう、最新の正しい情報で対応してもらえるようお願いします。
 また、福祉については、必要な情報は多種で幅が広いため、先生を含め教育関係者だけで情報を更新することは非常に困難です。福祉関係者との連携で対応していただくことを希望します。
(2)支援学校のPTA活動
 現在、全国的にPTA組織の弱体化が問題視されていますが、支援学校のPTA 活動は、その学校だけでなく、また教育分野だけでなく、福祉的な情報提供等でも役立ってきました。何よりも、子どもの支援・介護は一生続きますから、保護者の仲間づくりにも良い場でした。
 働く母が多くなった等、社会情勢が変わったことで、活動継続に課題があるとは思いますが、それでもやはり支援学校らしく、しっかり活動できるようにしていただきたいです。                                   

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室広報広聴課 広聴グループ

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