緑化の効果及び心理的影響の検証

更新日:2016年3月16日

緑化の効果及び心理的影響の検証

街路空間におけるヒートアイランド現象の適応策として、路地における壁面緑化や低木緑化が周囲のふく射環境に与える影響について評価を行うため、緑化の施された場所(以下、「緑化エリア」)と緑化エリアと似たような地形にあるが壁面緑化又は低木緑化が施されていない場所(以下、「対照エリア」)の2点において気象要素の同時測定を行いました。それに付随して被験者実験を行い、温冷感、心理申告から緑化による街路空間の心理的な影響について評価を行いました。また、温冷感指標であるWBGT(※1)、PMV(※2)、SET*(※3)、人体熱負荷量それぞれで温熱環境の評価を行い、緑化が温熱環境に与える総合的な影響について考察を行いました。

※1 WBGT : Wet-Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)の略称で、黒球温度、湿球温度及び乾球温度をもとに算出される暑さ指数
※2 PMV  : Predicted Mean Vote(予想平均温冷感申告)の略称で、温熱6要素(気温・湿度・気流・熱放射・代謝量・着衣量)をもとに算出される暑さ指標
※3 SET*   : Standard New Effective Temperature(標準新有効温度)の略称で、温熱6要素(気温・湿度・気流・熱放射・作業量・着衣量)をもとに算出される暑さ指標

測定

調 査 日 : 平成26年8月3日、8月4日 日中
測定項目:温度、湿度、日射量、赤外放射量、風速、風向、黒球温度、皮膚温、心拍数、鼓膜温度、発汗量、体重
測定場所:大阪府立大学中百舌鳥キャンパス内

測定箇所

緑化エリア

対照エリア

エリアAa1a2
エリアBb1b2
エリアCc1c2

エリアD

d1d2
エリアEe1e2

結果

壁面緑化条件(壁面付近の樹木による壁面からのふく射の遮蔽の影響が見込まれるエリア)

  • 緑化エリアでは対照エリアと比べて壁面緑化の施されている方向からの日射量が減少することが認められました。しかし、壁面緑化の施されている方向以外の日射量も減少しており壁面緑化の影響とは言い切れません。
  • 今回の実験の結果では周囲の赤外放射環境は緑化エリアが対照エリアより大きな赤外放射量でした。壁面緑化の施されている方向からの赤外放射量も小さな差異でした。この原因として緑化エリアは周囲の舗装路面の割合が高く、路面からの赤外放射量の影響が大きかったことが考えられます。
  • 人体熱負荷量は対照エリアと比べて緑化エリアは13W/m2の軽減がみられました。
  • POMS(※1)による心理申告の結果では、緑化エリアの被験者の心理状態が対照エリアと比べて悪くなりました。天候不順時の心理申告が含まれているため、条件の整っている時間帯の申告結果を抽出したところ大きな差はありませんでした。
  • SD法(※2)に関して、対照エリアは緑化エリアと比べ「生活を感じやすい」という結果になりました。ただし、緑化の影響というよりも実験場所が駐輪場であったことの影響が大きいと考えられます。
  • POMS、SD法どちらにおいても、周囲の建物や路面が心理的に悪い影響を与えたと考えられます。

※1 POMS : Profile of Mood States(気分プロフィール検査)の略称で、被験者のおかれた条件により一時的な感情・気分を数値化して評価する手法
※2 SD法   : Semantic Differential technique(主観的印象評価法)の略称で、試料の持つ主観的なイメージを知るための手法

低木緑化条件(垣根状の低木による路地からのふく射の遮蔽が見込まれるエリア)

  • 緑化エリアでは対照エリアと比べて下面方向からの日射量(地表面からの反射日射量)が減少することが認められました。また、周辺の赤外放射量の減少が認められました。
  • 人体熱負荷量は対照エリアと比べて緑化エリアは人体熱負荷量が34W/m2軽減されていました。
  • POMSによる心理申告の結果では、緑化エリアの被験者の心理状態は対照エリアと比べて良い値を示しました。他の緑化に関する実験と比べても大きな心理的影響を示しました。一方で明確な有意差はみられないため、より詳細な検討が必要です。
  • SD法の申告に関して緑化エリアは対照エリアと比べ「リラックスする」、「安心」、「静かである」、「立体的」といった印象をうける傾向にありました。
  • 低木植栽は、一定の心理的効果が期待できると考えられます。

このページの作成所属
環境農林水産部 脱炭素・エネルギー政策課 気候変動緩和・適応策推進グループ

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