大阪エコエリア構想5/9

更新日:2020年12月9日

第3章 廃棄物処理・リサイクルに関する課題と解決への方向

 

3−1 廃棄物減量化目標と課題

(1)廃棄物処理・リサイクルの課題

  第1章に示した大阪府における廃棄物処理・リサイクルの現状を踏まえ、また、第2章に示した京阪神圏における現状を基にした広域的な観点も考慮し、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷をできる限り低減する循環型社会を形成するためには以下の諸課題を克服していく必要があると考えられる。

 

(大量に発生する廃棄物)

  平成12年度に府域から排出された一般廃棄物は457万トンで、ここ数年は横ばい傾向にあるもの依然として高い水準で推移している。また、国の調査結果(「日本の廃棄物処理 平成11年度版」環境省)によると、都道府県別の総排出量で大阪府は東京都に次いで全国2番目、一人あたりの排出量は1,363g/日と最も多くなっている。

平成12年度に大阪府域から排出された産業廃棄物は1,768万トンで、平成7年度の調査結果に比べると55万トン減少している。これは、全国の産業廃棄物排出量(「産業廃棄物排出・処理状況調査平成10年度実績」環境省調べ)と比較すると、単位面積あたりの排出量は全国の約9倍、単位人口あたりでは全国の約0.6倍となっているが、全国総排出量4億849万トン(都道府県平均約869万トン)の約4.%を占め依然大量に排出されている。

このように排出量が多い上、種類の多様化が進むという状況は、高度に都市化が進んだ府域においては大量生産、大量消費、大量廃棄型のライフスタイルが定着していること、多くの事業所が府域に集中していることなどに起因すると考えられる。また、排出された産業廃棄物のうち、建設工事に伴い発生する廃棄物は30%を占めており、昭和40年代以降の高度成長期に急増した建築物が更新時期を迎えることから、今後とも、建設系廃棄物の排出が懸念される。

 

(全国レベルに比べ低いリサイクル率)

  国においては、平成12年6月に循環型社会の実現に向けた道程を明らかにするため「循環型社会形成推進基本法」を制定した。また、同法と一体的に、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」という。)が改正され、「資源の有効な利用の促進に関する法律」「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(以下「建設リサイクル法」)「食品リサイクル法」「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」が成立した。さらに、平成14年7月には「自動車リサイクル法」が成立し、既に施行されている「容器包装リサイクル法」「家電リサイクル法」などに併せて、法的基盤は整備されつつある。府においても、3期にわたり大阪府分別収集促進計画の改定を重ね、市町村による容器包装廃棄物の分別収集拡充の促進に努めるなど、各種リサイクル法の円滑な施行に努めており、リサイクル率は一定の増加は見られている。しかし、平成12年度においては一般廃棄物が8.3%、産業廃棄物が26%となっており、全国のリサイクル率(一般廃棄物13%、産業廃棄物43%)と比較すると、一般廃棄物が約5ポイント、産業廃棄物が17ポイント低くなっている。一般廃棄物については、都市化の進展や事業系一般廃棄物の排出量が多いことなど、また、産業廃棄物については、再生利用率の高い動物のふん尿の排出量が少なく、中間処理による減量化率が高い汚泥の排出量が多いことが原因と考えられる。今後、ソフト面・ハード面での取組みを進め、リサイクル率の向上を図る必要がある。

 

 大阪府における一般廃棄物のリサイクル率は増加してきているが、全国に比べ低い(平成11年実績で府域7.4%、全国13.1%)

図3−3 一般廃棄物のリサイクル率の推移

 

(困難な廃棄物処理施設等の整備)

廃棄物の不法投棄などの不適正処理、焼却施設からのダイオキシン類の発生による環境汚染などに対する不安から廃棄物処理施設に対する不信感が高まっていること、また、人の健康や生態系への影響を回避するために水源や森林地域の保全が求められていることなど、新たな廃棄物処理施設や廃棄物最終処分場の設置はますます困難な状況となっている。府では近隣府県、市町村等と協力しながら、大阪湾フェニックス計画として、大阪湾圏域の広域処理対象区域において生じた廃棄物の海面埋立処分場を泉大津沖に確保するなど公共関与による最終処分場の確保に努めてきたが、このような状況の中、廃棄物のリサイクルを一層進め、最終処分場の延命化を図る必要がある。

 

(懸念される有害化学物質による環境汚染)

近年、焼却施設から排出されるダイオキシン類やPCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の紛失による環境汚染の防止など廃棄物に関する有害化学物質対策が重要な課題となっている。廃棄物焼却施設から排出されるダイオキシン類の環境への排出を抑制するため、構造基準に適合した施設への改善やばいじん、燃え殻等の適正処理が求められている。また、PCB廃棄物については、処理施設の設置がこれまで困難であったため長期保管の状況が続いており、紛失などによる環境汚染の防止、確実かつ適正な処理の推進を目的として、平成136月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」が制定され、事業者は今後15年以内にPCB廃棄物を処理することが義務付けられている。

 

(跡を絶たない不適正処理)

苦情や監視パトロールで発見した野外焼却や不法投棄などの産業廃棄物の不適正処理件数は、年々増加している。平成13年度には大阪府において411件でそのうち約40%が野外焼却、約37%が野積みとなっており、平成9年度に比べ倍増するとともに、その内容については悪質化、巧妙化、広域化している。

 

    

 不適正処理件数は平成11年以降400件以上となっており、平成7年から9年の頃の200件前後からは倍増している

              図3−4 不適正処理件数の推移

 

(新たな課題)

 上に示した諸課題に加え、

1) 高度成長期から整備・運営を行ってきた公共関与による廃棄物最終処分場が受入終了時期を迎えてきていることから、この跡地の有効活用を図る必要があること

2) 地球温暖化問題への取組みのひとつである二酸化炭素などの温暖化ガスの排出削減に貢献するため、廃棄物処理・リサイクルで発生する未利用エネルギーの活用が望まれていること

3) 大阪都市圏における産業活性化のため、循環型社会形成の担い手である環境関連産業の振興が望まれていること

 などが、循環型社会の形成のための新たな課題として注目されているところである。

 

(2)廃棄物減量化の目標

このような課題を克服し、最適生産、最適消費、最少廃棄型の循環型社会を形成するためには、府民、事業者、行政など社会を構成する全ての関係者が従来の価値観を改め、共通の認識のもと、それぞれの果たすべき役割に責任を持ち、連携して取り組んでいかなければならない。府は、このような状況を十分認識したうえ、府民、事業者、行政が廃棄物の発生抑制、リサイクル、適正な処分に取り組むための規範とするため平成14年3月に大阪府廃棄物処理計画を策定しており、この中で、一般廃棄物・産業廃棄物の区分ごとに減量化の目標を設定している。

 

 

【大阪府廃棄物処理計画における廃棄物の減量化目標】

廃棄物ごとの減量化目標は下表のとおりであり、国の基本方針に基づき、平成9年度に対し、平成22年度において、最終処分量をおおむね半分に削減することをみすえつつ、目標年度の平成17年度における最終処分量を一般廃棄物については84万トンに、産業廃棄物については111万トンに削減します。なお、廃棄物の処理やリサイクル等の技術の進歩、府民意識の変革などの実態を踏まえ、必要に応じ目標を見直し、最終処分量の更なる削減に努めます。

 

   

  〇 一般廃棄物

 

 

 

平成17年度 

平成22年度(参考)

排出量

450万トン

   442万トン

再生利用量

68万トン

   111万トン

中間処理による減量

 298万トン

   275万トン

最終処分量

  84万トン

   56万トン

 

 

 

 

 

 

 

 

〇 産業廃棄物

 

 

 

平成17年度

 

平成22年度(参考)

排出量

1872万トン

1977万トン

再生利用量

506万トン

543万トン

中間処理による減量

1255万トン

1334万トン

最終処分量

111万トン

100万トン

 

 

 

 

 

 

 

  

【参考】

    最終処分量                 (万トン)

 

平成9年度

平成17年度

平成22年度

一般廃棄物(削減率)

102

84(18%)

56(45%)

産業廃棄物(削減率)

232

111(52%)

100(57%)

 

※ 一般廃棄物の最終処分量の削減には、市町村等のごみ処理施設からの焼却灰などの有効利用が重要な要素です。しかし、これには溶融施設などの整備が不可欠なため、施設整備が見込まれる平成17年度以降に削減率が上昇します。

 

3−2 対策が必要な廃棄物分野の抽出と解決への方向

(1)今後対策が必要な廃棄物の分野

  第1章、第2章の現状及び3−1に示した廃棄物処理・リサイクルについての課題を踏まえ、より効果的に各種の施策を進め課題の解決を図るためには、以下の廃棄物分野に対する対策が重要と考えられる。

 

  ○ 貴重な最終処分場の延命のため、最終処分される量が多い、あるいは比率が高い廃棄物

  ○ 各リサイクル法を適切に活用し、一層のリサイクルを促進するため、資源として有用性があり更に有効利用を進めるべき廃棄物

  ○ 廃棄物の適正処理を推進し、環境リスクの低減を図るため、有害物質を含む等特別な管理が必要な廃棄物

 

1) 最終処分される量及び比率が高い廃棄物

 (建設廃棄物)

今後、昭和40年代以降の高度成長期に急増した建築物が更新時期を迎えるため、その解体に伴う建設廃棄物の増加が予想され、また、不法投棄など不適正処理物となる例も多いことから、平成14年5月に施行された建設リサイクル法に基づくリサイクルと適正処理の推進が課題である。特に、大量に排出されるがれき類や分別されずに排出される建設混合廃棄物(建設リサイクル法で分別解体・再資源化が義務付けられた廃棄物を除く。以下同じ。)の対策が重要であり、その分別の徹底と分別後の木質廃棄物等の種類に応じたリサイクルへの誘導が必要である。

(廃プラスチック類)

  一般廃棄物の廃プラスチック類は、プラスチック製容器包装の分別収集の進展が予想されるとともに、順調に回収・リサイクルが進んでいる家電製品についても、今後は、プラスチック部分のリサイクルが課題となることが予想される。産業廃棄物の廃プラスチック類は、製造業、建設業をはじめとしてあらゆる業種・規模の事業所からの排出され、リサイクルしにくい複合素材製品に起因する廃プラスチックなど、排出量の約半分が最終処分される状況である。このため、再生プラスチックの用途拡大や原料化などによるリサイクルの推進を図ることが必要である。

(汚泥)

汚泥は、中間処理により4%まで減量化されて最終処分されているが、排出量が非常に多いため、最終処分量は他の廃棄物種に比べて多くなっている。また、今後、下水道整備地域の拡大により汚泥排出量の増加が見込まれることなどから、そのリサイクルを一層推進する必要がある。

 

 2) 資源として有用性があり更に有効利用を進めるべき廃棄物

(容器包装廃棄物)

一般廃棄物に占める割合の高い容器包装廃棄物(容積比で6割、重量比で約2から3割)については、簡易包装やリターナブル容器の利用の促進など発生抑制に努めるとともに、平成12年度から対象となったプラスチック製容器包装などの分別収集を一層促進し、これら容器包装廃棄物の更なる再商品化を推進する必要がある。1章に示したとおり、大阪府においては3期にわたり大阪府分別収集促進計画を改定するなど市町村による分別収集とリサイクルの促進に努めており、今後さらに分別収集量の拡大を図る必要がある。

(食品廃棄物)

一般廃棄物に占める割合の高い食品廃棄物については、食材の効率的な利用などの発生抑制に努めるとともに、食品リサイクル法等に基づき、堆肥化、飼料化、バイオガス化などの再生利用等を進めていく必要がある。なお、国においては、バイオマスの活用について、平成14年12月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定している。

(使用済自動車関係)

使用済自動車の処理に関しては、シュレッダーダストの適正処理やリサイクル率の向上が課題である。自動車リサイクル法が平成17年1月までに完全施行される状況を踏まえ、使用済自動車のリサイクルが円滑に実施されるよう、府域において既に取り組んでいる解体業者等の事業者の一層の活用なども含め、適切なリサイクルシステム、特にシュレッダーダストのリサイクルシステムの構築が求められている。

(家電製品)

家電リサイクル法の対象となる4品目は銅、アルミ、ブラウン管ガラスなどはリサイクルが進められているが、各機器のボディ部分に使用されているプラスチック類は、資源として、更にリサイクルを進めていく必要がある。また、将来的には対象品目が拡大される可能性があることから、このような動きも視野に入れる必要がある。

 

3) 有害物質を含む等特別な管理が必要な廃棄物等

(PCB等有害廃棄物)

現在、事業者自らの責任で保管されているPCB廃棄物は、処理施設の整備が進まない中、不適正な管理などによる環境汚染のリスクが高まっており、適正管理の徹底とともに、PCB特別措置法等に基づく早急な処理体制の整備が必要である。

(有害産業廃棄物)

ばいじんなど重金属の溶出等により有害性を有する産業廃棄物の処理については、可能な限り府域内での処理が望ましいため、適正処理・リサイクル施設の整備が必要である。

(汚染土壌)

土壌汚染の状況の把握、土壌汚染による人の健康被害の防止に関する措置等の土壌汚染対策を実施することを内容とする土壌汚染対策法が、平成14年5月に公布され、平成15年2月に施行されている。府では、対象物質の追加など、府域の実情に即した制度化を図ることとしており、このような新たな制度に対応するための体制の整備が必要である。

 

(2)解決への方向

大阪府において、廃棄物の発生抑制、資源としての再利用、リサイクルを進め、循環型社会を形成していくためには、「今後対策が必要な廃棄物の分野」を踏まえ、以下の方向に沿った取組みが必要である。

 

  1) 発生抑制・リサイクルの推進

資源の有効利用を図り、廃棄物の中間処理や最終処分による環境への負荷を可能な限り低減するため、廃棄物の発生抑制と再使用、再生利用を推進する必要がある。このため、府は、府民、事業者等とともに、大阪府廃棄物減量化・リサイクル推進会議が策定した「ごみ減量化・リサイクルアクションプログラム」の推進、再生品の認定、公共工事における再生品等の率先的利用、リサイクル関連諸法の円滑な施行及び循環型社会の形成に関する教育・学習の振興などに努めることとしている。

 

  2) リサイクルや適正処理のための施設の整備

   大阪都市圏全体における廃棄物・リサイクルの広域的なシステムの構築、廃棄物処理の際に生じるエネルギーの有効利用及び環境関連産業の振興を通じた大阪の活性化のため、府は、民間事業者を主体としたリサイクル施設の整備を図ることとしている。さらに、大阪市域においては、関係自治体と連携しながら、環境事業団によるPCB廃棄物(高圧トランス・コンデンサ等)の処理施設の整備を推進することとしている。

 

3) 規制・指導の徹底

 不法投棄などの不適正処理が横行するような社会状況においては、廃棄物処理・リサイクルが健全な社会システムとして成長していくことは期待できない。

 このため、府は、廃棄物処理法等の厳格な運用により排出者責任の徹底や悪質処理業者の排除を図るとともに、顕彰制度の創設を検討するなどにより優良な処理業者の育成に努めることとしている。併せて、不法投棄された場合の原状回復も推進するものとしている。

このページの作成所属
環境農林水産部 循環型社会推進室資源循環課 施設整備グループ

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