自治の窓 地方公務員のメンタルヘルスと公務能率の維持・確保について 「第4章」

更新日:令和2年10月23日

第4章 メンタルヘルス不調により休業を要する職員への適正な対応

 対策B「メンタルヘルス不調により休業を要する職員への適正な対応」の狙いは、適正な休業期間の運用により職員の療養を図ること、そして、療養を図ってもなおメンタルヘルス不調の症状が継続・悪化する職員に対し、その休業期間に応じて病気休暇から分限休職処分、そして分限免職処分へと身分取扱い上の措置を円滑かつ適正に進めることである。本章では、対策Bの実施方法及び留意点を考察する。

第1節 病気休暇


(1) 病気休暇の制度の概要

 [1] 病気休暇の承認
 まず、病気休暇の制度の概要について触れておく。病気休暇は、負傷又は疾病のために勤務に服することができない職員に対し、医師の診断等に基づき、最小限度必要と認められる期間、その治療に専念させることを目的とする有給の休暇である。
 「負傷又は疾病」とは、身体的に不健康に陥っている状態、心身に故障のある状態をいい、これにメンタルヘルス不調が含まれるのは第1章で述べたとおりである。
 地方公共団体において、給与、勤務時間その他の勤務条件は地公法第24条第5項により条例で定めることとなる。ただ、国や他の地方公共団体との均衡を失しないように考慮しなければならず(同条第4項)、病気休暇についても国の制度に準ずるのが通常である。
 なお、病気休暇又は分限休職処分からの職場復帰後のリハビリテーションを受けるような場合も、その期間を病気休暇と承認し得、これにより勤務軽減措置が図られることとなる。

 [2] 病気休暇の期間

 ≪上限期間≫
 病気休暇の期間は、国においては、人事院規則15−14第21条第1項により、除外日(生理日の就業が著しく困難である場合、公務災害若しくは通勤災害の場合又は人事院規則10−4に基づく勤務の軽減措置を受けた場合における病気休暇を使用した日等)を除き、連続して90日(週休日等を含む。)を超えることができない。
 しかし、当初の病気休暇とは明らかに異なる負傷又は疾病のため療養する必要がある場合は、同規則第21条第3項又は第4項により、当初の病気休暇とは別に、病気休暇を取得することができる。この場合においても、取得可能期間は、当該明らかに異なる負傷又は疾病に罹った日から連続して90日を超えることはできない。

 ≪クーリング期間制度≫
 病気休暇を取得していた職員の病状が回復して職務に復帰したが、病気が再発して再び病気休暇を取得することとなった場合、復帰した日数によってはクーリング期間制度が適用される。
 この制度は、病気休暇を断続的に繰り返して取得するという濫用を防止するためのもので、具体的には、連続する8日以上の期間の病気休暇を取得した職員が、その病気休暇の期間の末日の翌日から、実勤務日数が20日に達するまでの間(クーリング期間)に、再び病気休暇を取得したときは、前後の病気休暇期間を通算するというものである。 
 同規則15−14第21条第2項により、再度の病気休暇がクーリング期間内であれば、前後の病気休暇の期間は引き続いているものとして日数を通算し、クーリング期間外であれば再び病気休暇を取得した日から改めて日数をカウントすることとなる。

 [3] 病気休暇期間における給与の取扱い
 国においては、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年4月3日法律第95号。以下「給与法」という。)附則第6項及び人事院規則9−82第5条により、病気休暇が承認された日を起算日として、病気により勤務しない状態が引き続いて90日を超えるに至った場合は、給料が半減される。
 例えば、疾病Aにより病気休暇を取得した職員が90日を超える前に、連続して疾病Bにより勤務しない状態が続いた場合、疾病Aによって病気休暇を承認された日から起算して90日を超えるときから、給料が半減されることとなる。

(2) 地方公共団体における病気休暇の制度
 前述の病気休暇の制度の概要は、国におけるものである。では、地方公共団体における病気休暇の制度の状況であるが、これについても勤務条件等調査(休暇の制度等の状況について一部事務組合等は調査対象外)により確認できる。

 [1] 1回の病気休暇の上限期間
 1回の病気休暇の上限期間の状況について、平成28年4月1日現在の調査結果は、表5のとおりである。全団体の合計で見ると、国と同じ団体が1,556団体(87.0%)、国と異なる団体が232団体(13.0%)となっている。また、大阪府内市町村の状況は表6のとおり、国と同じ団体が29団体(70.7%)、国と異なる団体が12団体(29.3%)となっており、全国に比べて国と異なる団体の割合が高い。
 そして、この国と異なる団体の多くは、「必要最小限度の期間」等として上限を設けていない。そもそも、国の病気休暇の上限期間が原則連続90日とされたのは、平成23年の制度改正によるもので、従前は必要最小限度の期間として上限が設けられていなかった。つまり、国と異なる制度の団体は、おおよそ、平成23年の制度改正の際に国と同様の改正を行っていない団体と考えられる。

<表5>1回の病気休暇の上限期間の状況(全国)(単位:団体)
<表5>1回の病気休暇の上限期間の状況(全国)
<出典>総務省 平成27年度勤務条件等調査結果

<表6>1回の病気休暇の上限期間の状況(大阪府内市町村(政令指定都市を除く。))(単位:団体)
<表6>1回の病気休暇の上限期間の状況(大阪府内市町村(政令指定都市を除く。))

 [2] クーリング期間制度
 次にクーリング期間制度の状況であるが、大阪府内市町村の状況は表7のとおり、制度ありが31団体(75.6%)、制度なしが10団体(24.4%)となっている。この制度も国において平成23年の制度改正により設けられたものである。つまり、上限期間の設定と同じく、制度なしの団体は、平成23年の制度改正の際に制度を導入していない団体と考えられる。

<表7>クーリング期間制度の状況(大阪府内市町村(政令指定都市を除く。))(単位:団体)
<表7>クーリング期間制度の状況

(3) 病気休暇の繰返しの取得を防ぐために

 [1] 上限期間の設定
 前述のとおり、病気休暇は最小限度必要と認められる期間、その治療に専念させることを目的とする休暇である。そして、国においてその取得日数に上限が設けられた趣旨は、長期にわたる病気休暇を取得する職員の割合が増加傾向にあり、欠員補充が可能となる分限休職処分(休職者は条例定数外とすることが通例)との役割分担を明確化するためである。
 つまり、上限を設けず病気休暇を付与することは、国の現行制度の趣旨を逸し、併せて、病気休暇によるアブセンティイズムの長期化を招くということである。
 裁判例においては、病気休暇の残日数がある中で行われた分限休職処分を適法としており、判決では「職員が病気休暇の残日数で賄いきれない長期の休養を要することが明らかな場合に、病気休暇の承認をしないで休職処分をしたとしても、法の趣旨に反するものではない」としている(鹿児島地裁平19・5・22判決)。
 本事例は規程(本事例では条例に基づく規則)による上限期間の設定が前提とされていることから、上限期間の設定は、病気休暇から分限休職処分へ移行する際の判断基準及びその根拠となり得る。規程により上限期間を設定しないまま、運用で分限休職処分移行の判断を行うには基準が曖昧になりかねない。
 そして、病気休暇の残日数で賄いきれない長期の休業を要することが明らかな場合には、その時点から分限休職処分へと移行すべきである。

 [2] クーリング期間制度の導入
 メンタルヘルス不調による病気休暇は繰り返して取得されるケースが多い。クーリング期間制度が導入されていない場合、断続的に病気休暇が取得されると、その状況が延々と繰り返されることとなる。
 つまり、病気休暇の上限期間を設定したとしても、クーリング期間制度が導入されていなければ、通算で上限期間を超える病気休暇を取得している又はしようとしている職員に対して、分限休職処分を行う機会を逸することとなる。
 このような状況に陥ることを防ぐためにも、上限期間の設定に併せて、クーリング期間を導入することが望ましい。なお、一部の団体では運用によりクーリング期間制度を設けている団体も見られるが、前掲の裁判例からも、規程によりクーリング期間制度を設けるべきだろう。

第2節 心身の故障による分限休職処分


(1) 地方公共団体における分限休職処分の制度
 次に、第2段階の身分取扱い上の措置となる分限休職処分についてであるが、分限休職処分とは、職員に職を保有させたまま一定期間職務に従事させない処分をいう。
 地方公共団体において、任命権者は、地公法第28条第2項第1号により「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」は、その職員に対して分限休職処分を行うことができる。病気休暇と同様、心身の故障にメンタルヘルス不調が含まれるのは第1章で述べたとおりである。

 [1] 分限休職処分の判断
 心身の故障のある職員に対して、病気休暇と分限休職処分のいずれによるか、また、病気休暇で療養中の職員をいつ分限休職処分とするかであるが、裁判例においては、「(地公法第28条)第2項第1号に定める私傷病休職の場合の処分事由が被処分者の状態等に関する一定の評価を内容として定められていることを考慮するときは、同条に基づく休職処分につき、任命権者には当該趣旨・目的に照らして合理的な裁量が認められるというべき[4]」としている(大阪地裁平26・11・19判決)。
 前節で述べたとおり、病気休暇の残日数で賄いきれない長期の休業を要することが診断書等で明らかになった場合等は、アブセンティイズムの解消の観点から、速やかに分限休職処分を行うべきである。

 [2] 地方公共団体における分限休職処分の手続き及び期間
 地方公共団体において、分限に関する手続き及び効果は地公法第28第3項により条例で定めることとなる。そして、各地方公共団体においては、基本的に、国から示された条例案(昭26・7・7地自乙発第263号別表1。以下「分限条例案」という。)に基づき、分限に関する手続き及び効果が定められている。
 分限条例案における分限休職処分の手続き及び期間に係る規定については、次のとおりである。ただ、当該規定は、国における制度と異なる点がある。この点については、(2)で述べることとする。

 ≪分限休職処分の手続き≫
 分限条例案第2条第1項では、心身の故障による分限休職処分の手続きについて、「医師2名を指定してあらかじめ診断を行わせなければならない」とされている。
 医師の診断を要件とする趣旨は、心身の故障の認定を医師の医学的見地からの所見に基づく客観的判断に依拠させることによって、任命権者の恣意を排除し、職員の身分保障を図るためである。また、医師については、診断の信憑性の問題から、本人が任意に依頼するのではなく、任命権者が指定することとなる。

 ≪分限休職処分の期間≫
 分限条例案第3条第1項では、心身の故障による分限休職処分の期間について、「休養を要する程度に応じ、3年を超えない範囲内において、それぞれ個々の場合について、任命権者が定める」とされている。分限休職処分に付された職員は、予め指定された期間が終了した際、当然に職務に復帰しなければならない。
 メンタルヘルス不調については、継続的な治療を要するものであるが、適切な治療の継続により、その症状を相当程度安定化させ、治癒することも可能とされている。従って、任命権者としては、分限休職処分期間が3年に至る間は、分限休職処分に付し、治療に当たらせることができる。
 分限休職処分期間に上限が設けられている趣旨は、回復の見込みがないか治療に極めて長期間を要する場合にまで職員の身分を保障すると、公務能率を大きく阻害することとなるからである。

 [3] 分限休職処分期間における給与の取扱い
 心身の故障による分限休職処分者の給与について、国においては、給与法第23条第3項により、原則として給料及び一定の手当の100分の80が1年間支給され、地方公共団体においても、地公法第24条第5項に基づく条例によりそれに準じた内容が定められているところである。つまり、最長期間3年のうち、有給であるのは1年間のみで残余の期間は無給となる。

(2) 国における分限休職処分の制度

 [1] 国における分限休職処分の手続き
 国において、心身の故障による分限休職処分の手続きについては、人事院事務総長通知(昭54・12・28任企第548号)第5条関係第1項により「原則として医師の診断の結果に基づいて行うこと」とされている。
 つまり、分限条例案第2条第1項の規定とは異なり、医師の人数までは定められておらず、医師1名の診断をもって、分限休職処分を行うことができる。また、分限休職処分の更新及び分限休職処分期間満了前の復職に当たっても同様である(前掲人事院事務総長通知第5条関係第1項及び第6条関係第2項)。

 [2] 国における分限休職処分の期間
 国における分限休職処分の期間は、国家公務員法(昭和22年10月21日法律第120号。以下「国公法」という。)第80条第1項に基づき、人事院規則11−4第5条第1項で定められている。
 同項では、心身の故障による分限休職処分の期間について、分限条例案第3条第1項の規定に加えて、その後段に「休職の期間が3年に満たない場合においては、休職にした日から引き続き3年を超えない範囲内で更新することができる」と規定されている。これが、分限条例案における分限休職処分の期間に係る規定と異なる点である。
 また、この人事院規則11−4第5条第1項後段については、前掲人事院事務総長通知第5条関係第2項で、「休職の期間は、同一の休職の事由(根拠条項)に該当する状態が続く限り、その原因である疾病の種類、従事する業務の内容等が異なる場合においても、引き続き3年(中略)を超えることができない」と示されている。

(3) 分限休職処分に係る裁判例

 [1] 分限休職処分の手続きについて
 前述のとおり、心身の故障による分限休職処分の手続きについて、分限条例案第2条第1項では指定医師2名の診断を要件としているのに対し、国における制度では医師の人数の定めがない。
 裁判例においては、規程により指定医師2名の診断が要求されていない場合、指定医師1名のみの診断書をもって行われた分限休職処分の手続きに違法性はないとしている(東京地裁平17・10・27判決)。
 つまり、規程次第では、分限休職処分を行うに当たって、必ずしも指定医師2名の診断が必要となるわけではない。地方公共団体においても、分限休職処分の手続きの簡素化を図るのであれば、特段、指定医師の人数の規定まで設ける必要はないだろう。

 [2] 分限休職処分の期間について
 前述のとおり、心身の故障による分限休職処分の期間について、分限条例案第3条第1項には、(ア)人事院規則11−4第5条第1項後段及び(イ)前掲人事院事務総長通知第5条関係第2項の規定が欠けている。
 裁判例においては、(ア)の規定について、「一旦復職可能との判断から復職が認められたとしても、その結果、依然として通常の勤務が可能な状態にはないことが判明した場合には、従前の休職期間から休職事由が継続していたとして、休職期間を通算する休職期間の更新の一つとして再度休職処分を行うことも(中略)許容していると解するのが相当」とし(前掲大阪地裁平26・11・19判決)、また、(イ)の規定に基づく分限休職処分に違法性はないとしている(大阪地裁平15・7・30判決)。 
 つまり、(ア)及び(イ)の規定は、疾病の種類が異なったか否かを問わず、同一の休職の事由(根拠条項)に該当する状態が続く限り、その復職の前後の分限休職処分期間を通算するものといえ、分限休職処分期間の通算規定となり得る。地方公共団体においても、延々と分限休職処分が繰り返されることのないよう、規程上(ア)及び(イ)の規定を定めておくべきである。
 ただ、分限休職処分期間の通算規定については、病気休暇のクーリング期間制度と異なり、復職の前後の期間を通算するか否かを判断するに当たってのその復職日数の具体的な基準がない。復職の前後の期間を通算するか否かは、職員の職場における態度・言動や医師の診断等から「依然として通常の勤務が可能な状態にはないこと」を判断する必要があるだろう。

(4) 病気休暇と分限休職処分による繰返しの休業を防ぐために

 [1] クーリング期間制度と分限休職処分期間の通算規定
 これまでに述べてきたとおり、メンタルヘルス不調は、一旦その症状が治まったとしても、再発するケースが往々にしてある。分限休職処分後に復職した職員が、再度同様の症状に陥り休業を要することとなった場合、制度上、再度病気休暇を付与することもできる。
 危惧すべきは、病気休暇の取得、その後の分限休職処分という一連の休業が、延々と繰り返されることである。
 もし、病気休暇のクーリング期間制度及び分限休職処分期間の通算規定が設けられていない状況で、メンタルヘルス不調の症状が継続する職員により、断続的な休業が繰り返されれば、その休業の都度、病気休暇及び分限休職処分の期間のカウントがリセットされ、この一連の休業がいつまでも繰り返されることとなる。
 そして、本来、分限免職処分の事由に該当する職員に対して、処分が行うことができない事態に陥ることとなる。繰返しの休業に歯止めをかけ、長期的なアブセンティイズムの解消を図るためにも、病気休暇のクーリング期間制度の導入に加えて、分限休職処分期間の通算規定を設けることが重要といえる。

 [2] 分限休職処分後の病気休暇の不承認
 また、分限休職処分後に復職した職員が再度休業を要することとなった場合、その要する期間が短期間であっても、その職員に対して病気休暇を付与せず、分限休職処分を行うことができるか否かであるが、裁判例においては、病気休暇を認めず、従前の分限休職処分に引き続いて行われた分限休職処分を適法としている(前掲大阪地裁平26・11・19判決)。
 判決では、「明文の規定がなくとも、過去の休職状況や、復職後の実勤務期間の長さ、その間の勤務状況(職場での言動や行動、欠勤の有無)、本人の病状(これまでの経過や現在の病状)などを総合的に勘案し、産業医の意見も踏まえた上で、疾病による休職から復職後、社会的に見て通常勤務が可能な状態に至らず、疾病が継続していると判断される場合には、依然として休職事由が先の分限休職処分期間から継続しているとして、療養休暇を認めず、地方公務員法28条及び分限条例に基づき、従前の休職処分と引き続く休職処分とすることは、その考慮する要素の内容、(中略)分限処分の趣旨・目的に照らすと、任命権者の合理的な裁量の範囲内というべきである」としている。
 ここで、留意すべきは、疾病が継続しているか否かの判断の一要素に、職員の勤務状況が含まれていることである。この際、第3章で述べた「職員の態度・言動等に関する記録」が活用されることとなる。職場において疾病の症状と見られる態度・言動があり、それが記録として残っていれば、病気休暇を承認せず分限休職処分を行う判断の裏付けとなる。また、この考えは、復職の前後の分限休職処分期間を通算するか否かの判断にも適用できるだろう。
 以上から、療養を図ってもメンタルヘルス不調の症状が継続・悪化する職員については、公務能率の維持・確保の観点から、その症状に応じて病気休暇ではなく分限休職処分を行い、その期間を通算していくことで、病気休暇と分限休職処分による繰返しの休業を防ぐことができる。



[4]最高裁昭48・9・14判決(二小)参照



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このページの作成所属
総務部 市町村課 行政グループ

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