今月の事例解説(R2.10)

更新日:令和2年11月1日

今月の事例解説(Q&A)

Q1 労働者から、産前産後休業および育児休業に関する相談

私は会社と6か月更新の有期雇用契約を締結し、働き始めて4か月が経ちます。次回の契約更新日は2か月後です。
現在妊娠しており、出産予定日は半年後です。妊娠・出産を理由として契約を解除されることはありますか。また産前・産後休業を取得したいと考えているのですが、有期雇用契約の社員は取得することはできるのでしょうか。

 

事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業を請求し、休業したこと等を理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならず、妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、事業主が当該解雇が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明しない限り無効とされています。(男女雇用機会均等法第9条、同法施行規則第2条の2【平18.10.11厚生労働省告示第614号】)

次に、産前休業は、女性労働者の出産予定日を基準に、6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産する女性労働者が請求した場合においては、使用者はその者を就業させてはなりません(労働基準法第65条第1項)。産後休業については、産後8週間を経過しない女性労働者を就業させてはなりません。また、8週間のうち最初の6週間は強制休業期間であり、本人が就労を請求したとしても休業させなければなりませんが、産後6週間を経過した後、本人が請求した場合であって、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えありません(労働基準法第65条第2項)。また、使用者による産前産後休業の一方的な短縮は許されません。

よって、産前産後休業は、労働契約の期間の定めの有無にかかわらず取得できます。

 

Q2  労働者から、病気休暇後の復職に伴う労働条件の不利益変更についての相談

私は正社員で、2か月の病気休暇後職場に復帰しました。しかし元いた職場ではなく、別部署への配置転換を命じられました。確かに復帰の際、体調が本調子でない間は業務内容について配慮してほしい旨を会社に伝えましたが、配置転換までは望んでいませんでした。配置転換により勤務形態が変更となり、業務内容も変わったため大変働きづらくなりました。社長には「解雇になるよりましだろう」と言われ、従うよう迫られました。私自身は元の部署に復帰したいのですが、どうすれば良いですか。



労働契約法では、労働条件(労働契約の内容)について、「労働者及び使用者は、その合意により労働契約の内容である労働条件を変更することができる(労働契約法第8条)」と規定されており、労働者と使用者との合意がなければ労働条件を変更することができません。
労働者の合意がない不利益変更に拘束力はなく、使用者から合意を迫られても合意する義務はありません。
また、不利益変更を受け入れない場合に解雇するなどと迫られているような場合でも、応じなければならない法的義務はありません。労働条件の不利益変更を受け入れなかったことのみを理由とする解雇は、解雇権の濫用として無効であると主張することになります(労働契約法第16条)。

一方で、使用者は労働者に配置転換(配転)を命じることができますが、配転命令を行うためには、労働契約上配転命令権の根拠があり、当該命令がその配転命令権の範囲内であることが必要です。
また労働契約法は「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」と定めており、配転命令権の行使にも一定の限界があります(労働契約法第3条第5項)。

さらに、使用者は安全配慮義務に基づき快適な職場環境の実現や労働条件の改善を通じて労働者の安全と健康を確保する責務があります。
本件については、以上の考え方をふまえ、就業規則を確認の上、使用者に配置転換の根拠と理由の明示とともに、配置転換の再検討を求めてはいかがでしょうか。

    

Q3 使用者から、体験入社期間の賃金支払いについての相談

社員の採用にあたって、入社希望者に対し数日間の体験入社期間を設けたいと考えています。期間中に希望者の仕事に対する適性を見て、その上で雇用契約を締結したいのですが、その間賃金を支払う必要はあるのでしょうか。仮に支払うとしたら、どのくらい支払えば良いのでしょうか。

本件の場合、「体験入社」が労働に該当するか否かという点が問題になります。
労働契約法第6条において、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と定められています。労働契約の成立によって、使用者は賃金支払い義務を負うこととなります。
また、労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる」【平29.1.20 基発0120第3号】とされています。
よって、本件の「体験入社」の業務の具体的な内容および労働時間等の具体的な状況を考慮した上で、労働に該当する場合は、使用者は労働基準法第11条に基づき賃金を支払う必要があります。
「体験入社」が労働に該当する場合の賃金については、最低賃金法第4条第1項の「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」との規定をふまえ、「体験入社期間中は、〇〇円×□□日分の賃金を支払う」といったように、労働契約の内容を明確にされてはいかがでしょうか。

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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