今月の事例解説(R2.8)

更新日:令和2年9月1日

今月の労働相談事例解説(Q&A)

Q1 労働者から、退職後の競業避止義務についての相談

退職し、これまで培った業務のノウハウを生かし、自営業を立ち上げようと考えています。現在勤務する会社で自分で開拓した顧客を今後の取引先とするつもりです。
会社には就業規則は無く、就職の際に競業避止等に関する説明も受けていません。また、自分は役員でも管理職でもないので、問題はないと思いますが、現在勤務する会社から損害賠償請求されることはありませんか。

  

労働者には職業選択の自由があり(憲法第22条)、基本的に自由に転職することができます。しかし、秘密保持義務や競業避止義務などの法的義務が、退職後も課される場合があります。

労働者は、労働契約の存続中は、一般的に使用者の利益に反する競業行為を差し控える義務(競業避止義務)がありますが、労働契約の終了後については、労働者には職業選択の自由があるため、労働契約存続中のように一般的に競業避止義務を認めることはできず、競業行為の差止請求時の措置の法的根拠と合理性を問題ごとに検討することになります。

役員等でないのであれば、厳格には競業避止義務に拘束されないと考えられますが、勤務先の企業の損失が明白な場合は、地位がいわゆる平社員であっても損害賠償が請求される可能性はあります。

紛争防止の観点から、勤務先の会社と話し合われてはいかがでしょうか。

Q2 労働者から、職場におけるセクシュアルハラスメント、パワーハラスメントについての相談

女性の上司から私用のLineやメールを頻繁に送ってこられ、勤務時間外や休日に食事や旅行に誘われるなどしており困惑していましたが、当たり障りなく受け流していました。

しかし、先日「私の好意を受け入れないと、新しい事業のプロジェクトチームのメンバーから外しますよ。会社に居辛くなるかもしれないね」と言われ、どうすればよいかわかりません。

同僚に相談しても、「男性なのだから、そんなことで悩むのはおかしい。嫌ならもっと言い返せばいいのに」と言われました。その上司は、機嫌が悪くなると業務の打合せ時でも部下の言うことを受け入れずに全否定したり、反論できないように追いつめるので、機嫌を損ねたくありません。どうすればよいでしょうか。



セクハラ(セクシュアルハラスメント)やパワハラ(パワーハラスメント)は、「被害者が女性、行為者が男性」と限定されたものではなく、女性から男性や同性の間でも起こり得るものです。

職場におけるセクシュアルハラスメントとは、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」とされており、男女雇用機会均等法第11条及びその指針では、事業主に対し、職場のセクシュアルハラスメントを防止するために必要な措置を講ずることを義務づけています。

また、職場におけるパワーハラスメントは、「職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1か)ら(3)までの要素を全て満たすもの」をいいます。※客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しません。

労働施策総合推進法第30条の2では、事業主に対し、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないとしています。

※中小企業主は、2022年(令和4年)4月1日から義務化されます。それまでは努力義務ですが、早目の対応をお願いします。

まずは、上司からの言動の内容を「職場における優越的な関係を背景とした言動」で「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」であることが客観的にわかるように整理し、時系列に書き出して、Lineやメールの記録も合わせて、会社の相談窓口に相談されてはいかがでしょうか。

社内に明確な相談窓口がない場合は、言動を行った者の上司に申し出るか、人事担当者に直接申し出てはいかがでしょうか。また、相談体制を整備するよう求めてはどうでしょうか。

Q3 使用者から、新型コロナウイルス感染症に関係した妊娠中の従業員への配慮についての相談

妊娠中の従業員から「時々、マスクもせず顔を近付けて話をする顧客の対応をせざるを得ない状況があり、新型コロナウイルス感染が心配。また、従業員の中にはマスクをしないまま、ハンカチで口を覆うこともしないでクシャミを連発する人がいて、飛沫感染が気になる。何とかしてほしい。」と言われ、「感染のおそれの低い作業への転換又は出勤の制限(在宅勤務・休業)の措置」「通勤緩和の措置」が必要であると医師から指導があったとして、母性健康管理指導事項連絡カードを提示されました。どうすればよいでしょうか。

妊娠中の労働者には、国から企業に対して配慮要請がされているところです。

一般的に、妊娠中に肺炎を起こした場合、妊娠していない時に比べて重症化する可能性があります。そこで、厚生労働省は、令和2年4月1日に経済団体、労働団体に対し、妊娠中の女性労働者等に配慮した取組みが促進されるよう、次の3点を要請しています。

(1)   妊娠中の女性労働者が休みやすい環境の整備
(2)   感染リスクを減らす観点からのテレワークや時差出勤の積極的な活用の促進
(3)   妊娠中の女性労働者も含めた従業員の集団感染の予防のための取組み実施など

コロナに関連して、男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理上の措置として、「感染のおそれに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、主治医や助産師から指導を受け、それを事業主に申し出た場合(母性健康管理指導事項連絡カードを活用)、事業主には、この指導に基づいて必要な措置、例えば、感染の恐れが低い作業への転換、出勤の制限(在宅勤務・休業)、通勤緩和(テレワークや時差出勤等)を講じなければならないとされています。(令和3年1月31日までの時限的措置)

また、従業員に対して、コロナ感染防止のために気を付けるべきことを周知するなどして、職場環境を改善する取組みもされてはどうでしょうか。 

  

このページの作成所属
商工労働部 雇用推進室労働環境課 相談グループ

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