第1回大阪府教育振興基本計画検討委員会 議事概要

更新日:2023年5月29日

日時

平成24年6月28日(木曜日) 午前9時30分から11時45分

場所

大阪府公館 大サロン

出席委員

梶田会長、森田会長職務代理、小田委員、神谷委員、山本(絹)委員、山本(晋)委員、横井委員

議事概要(1.開会2.審議3.閉会

1.開会

知事あいさつ

 本委員会でご審議いただく教育振興基本計画は、これからの大阪の教育の羅針盤となるものであり、委員の皆様には、この計画を私と教育委員会でしっかり議論しながら最終固めるための問題点を、どんどんご指摘をいただきたい。

 今年2月の府議会で、大阪府教育行政基本条例および大阪府立学校条例が可決・成立したが、これは教育の目標を知事が教育委員会と協議をして決定するというもの。 

 今まで、教育は、教育の中立性という名のもと、政治とあまりにもかけ離れたところに置かれていたが、実際は、教育現場に対し、教育に対する様々な施策・予算は、やはり政治が決定をしていくものであり、教育の目標についても、知事が教育委員の皆さんと協議をして決定をしていかなければならない。それが子どもたち、教育を受ける者たちに対する政治の責任であり、大人の責任であると思っている。

 今のグローバル社会では、生き抜くための力を子どもたちにしっかりと身に付けてもらえる教育現場でなければならないと思っている。

 この教育振興基本計画、初めての挑戦であり、様々な問題点もあると思うが、委員の皆さんからそのような課題をどんどん出していただき、教育を受ける側の子どもたちの立場に立った教育現場に、しっかりと変えて行きたい。

 また、大阪府では26年度から府立高校の学区を全廃するということが決定しており、私学も無償化をし、今、公私の切磋琢磨が非常に活発に行われているところ。

 そんな中で、各専門家の委員の皆さんには、受益者の視点で、大阪にふさわしい教育現場に変えるための様々なご意見をいただきますことを、心からお願い申しあげる。

 お忙しい思いをおかけするが、なにとぞ大阪の教育を再生させるということで、どうぞよろしくお願いします。

 会長選任

委員の互選により、梶田委員を会長に選任。梶田会長より、森田委員を会長職務代理に選任。

会長あいさつ

 この会をお世話させていただくこと、非常にうれしく思っている。

 教育振興基本計画については、2000年の教育改革国民会議で議論があり、教育基本法を変える、その時に必ず教育振興基本計画を入れようと。私も企画委員ということでまとめの1人をさせていただいた。国はそういうことで教育改革国民会議の報告を受け、次の年、新しい中教審の中に、教育基本法を議論する特別部会を作り、私もメンバーだったが、その中で議論して教育基本法の改正についての報告をまとめると同時に、その中の非常に大事な要素として、教育振興基本計画というものを位置づけた。

 教育というのは安定した形でもっていかないといけない、子どもは1年とか2年とか3年でどんどん色々な大きな仕組みの上での変更とか内容の上での変更があると、非常に混乱してしまう。政権交代があったが、今、日本の学校制度は非常に安定した形で持っていっていると思う。

 国の方では、教育基本法を整理し、私もメンバーとして教育振興基本計画を作り、各自治体、特に都道府県が教育振興基本計画を作るという取組みをやってきた。また、隣の兵庫県で教育振興基本計画を作る会の代表をさせていただいたというような経過もある。

 だから、この教育振興基本計画自体についても私なりの思い入れがあり、府民の一人として、また3人の孫を府内の公立学校に通わせているおじいちゃんとして、皆さんで衆知を集めて、これからの大阪府の教育が3年5年10年と大きな筋でいいものとなるようなものを何とかまとめ上げたいと思っている。どうぞよろしくお願いいたします。

2.審議

事務局より、資料1及び資料2について説明。 

(1)大阪の教育を取り巻く状況について

(委員)

 大阪府の高校生のキャリア支援のプロジェクトということで、卒業したての若者の就職がなかなかうまく見つけられない方々の支援をしているが、その中で、いかに社会環境が子どもたちに与える影響が大きいかというのを知ってびっくりしている。特に、親との関係。

 基本的な目標の中に、粘り強く、自分のいいところを信じて頑張れるというようなことを入れていただきたい。社会環境とかそういったものは個人の力でなかなか変えられないと思うが、この現状を知った中で、教育の現場を預かる方々が子どもたちを信じ導く、指導の側にあたる方々も粘り強くということも含めていただきたいと思っている。

(委員)

 子どもの教育について、内容もさることながら、いかに教育する側の先生方のモチベーションを上げ、やる気になっていただくかということが重要。

 また、その上で例えば国際化に関して、豊かな経験を積んでいただくようなことはできないか。やはり教育をするというのは、人生経験も含めて、色々なことの情報を生徒と共有していただくことが大事だと思う。

(委員)

 子どもたちの絶対数が少なくなっている中で、反比例する形で支援を必要とする子どもたちが増えてきている。そういった中で、社会情勢への対応や保護者との連携を具体的にどのように進めていくかというのも大事。

 教育振興の基本的な目標で、「違いを認め合い、互いを尊重する」「全ての子どもの学びの支援」という中に、様々な障がいのある、または支援が必要な子どもたちの視点が盛り込まれているということで考えていいか。

 また、社会の中で適応していく力をつけていくとともに、強い力をさらに伸ばしていくという考え方、そういった様々な力を更に伸ばしていくという中にも、支援教育の観点があると思っている。

(事務局)

 支援が必要な子どもの視点も含まれている。大阪の教育で一番大切にしてきたのが、一人ひとりの人権や、支援教育の分野では、障がいのある子もない子も「ともに学び、ともに育つ」ということ。

(委員)

 グローバル化ということで、資料では、海外への留学生が減っているとあるが、留学費用等を考えるとホームステイなどで高校生も含めて大阪に留学生を受け入れることによってグローバル化に対応するというのもあるのでは。

 それから、海外から来られた方と意見交換・PRできるよう、もう少し日本や大阪の歴史文化をしっかりと教えるということも入れていったらどうかと思う。

(委員)

 総論はこのとおりで、認識としては共有するものが多かった。格差という所にまなざしを向けていくところが大阪らしい、非常に重要な所だと思う。東日本大震災の教訓として「絆」とあるが、地域コミュニティというのを大阪はこの間ずいぶん大事にしてきた経緯があり、共感できる。

 基本的には公教育なので、条件を整備して公正な教育をしていくということが求められていく中で、同時に、グローバル化や国際化という新しい教育が必要ということが言われていて、基本的な条件整備をすると同時に新しい教育を生み出していかなければならないという所に、今この時点で我々が立っているのかなという印象を持った。

(委員)

 現在の「大阪の教育力」向上プランをどのような形で教育振興基本計画に入れていくか、あるいはここでめざしたものとどのような形で違いを見せていくのか。向上プランは相当議論して積み重ねてそれなりの結論の中で今進んでいるので、ここで考えた議論をきっちり踏まえ、その上で今の経済の状況あるいは教育を取り巻く状況を議論した上で、目標を議論できたらなと思っている。

 今回の目標は、前回の「力・理念・目標」を大きく取りまとめた形で、より分かりやすくなっている。今後、どういう人をめざして、そのために何をしていくのかということをしっかりと教育振興基本計画で盛り込めたらと思っている。

(会長)

 「大阪の教育力」向上プラン、非常によく書けているなという感がある。新しい目で見直さないといけない部分はあるが、これもたたき台にしながら考えていくと、非常にきっちりした報告になるかと思う。

(2)大阪の教育がめざす「基本的な目標」について

(委員)

 「めざす目標像」に3つ書かれており、2番目の「社会経済情勢や国際社会の中で自立して力強く生きる人づくり」はグローバル化に対応したものと思うが、外国から日本を見ると、やはり不思議な国だと捉えられている場合が結構多い。学生が書いた企業のCSRについての修士論文で、アメリカと日本の企業の社会的責任に関する場面を比べてみると、圧倒的にアメリカの方は人権について書かれていることが多く、日本の場合は環境であり、ずいぶん違うという指摘があった。

 3番目にある「違いを認め合い互いを尊重しながら、自立して社会を支える人づくり」というのは、ある意味ではグローバル化に関する最も基本的な考え方。大阪にたくさん色々な国から人がやってきて、その人たちを温かく迎え、一緒に働いていくという発想がなければ、大阪もグローバル化できない。英語を話す以前にここから始めないといけない。

(会長)

 大阪は国際化が進んでいるところ。外国籍の方もおられるし、ニューカマーもたくさん来ておられる。私は大阪府の北部に住んでいるが、非常に多様な国籍の方がおられ、大阪府内の学校は10年以上前から、小学校も中学校も学校から親御さんに通知する6か国ぐらいの基本的な言葉のガイドブックを準備している。ある意味では国際化が進んでいるという中で、もっともっと進めていくには、色々と課題はまだ残っているのかなという気もする。

(委員)

 大きな目標については全般的にはいいと思う。これが具体的になっていくときに、それが若干弱いのではないかとか、十分ではないのではという話ができるかと思っている。

「違いを認め合い互いを尊重しながら」ということで、私も普段、障がいのある方々と同じフロアで一緒に仕事をしているが、一緒にいるからこそ分かるものと、一緒にいるからこそ衝突があったり理解もしあえるという所がある。こういう目標の中にあることを、どのように当たり前のような社会、学校教育にしていくかというところをどのように落としていくかというのが一番重要。

それから、自立ということを自分の意思で自分のことが決められる、素晴らしい権利と責任を持つものということで、自立は自分にとってすごく素晴らしい世界が開けるという話を、特に高校よりも大学を卒業する皆さんに言っている。自らの力が付くことが自分自身の将来の大きな夢に広がるということを、自立することが自分自身にとっての大きな目標であるということを目標にぜひ入れていただきたい。

(委員)

 先ほど国際化の話があったが、OECD等が提起している能力観、キーコンピテンシーと言われるものがあり、この一種の国際的なスタンダードになりつつある学力観とどのように関係づけるのか、どこまでがどのように関係しているのか、そのあたりも少し入れ込むと説明力が増すと思う。また、この目指す教育像が、知識基盤社会というものにどういう準備をするものであるのか、あるいは知識基盤社会というとらえ方自体がどうなのかということも含め、今国際的に議論されていることもリンクさせて、これからの大阪の教育が語られる必要があるのではないか。

(会長)

 今や知識基盤社会、グローバル社会だと。日本の中だけでこれでいいんだよねと言っているだけでは済まなくなっている。その中で新しい意味での知性、キーコンピテンシーと言われるような知性がグローバルな社会では必要とされますよね、という状況の中で新しい指導要領の改訂があった。教育というのは積極的に何かを育てるという側面があり、目標に新しい形の知性を育てるみたいなものが少し見える形で入っていた方がいいのかなと。

 全国学力・学習状況調査、ご存知のように順位を言ってはいけないが、大阪は一番下を争っている。A問題は習ったことをどこまでわかっているか、B問題はキーコンピテンシーと同じで、問題解決力あるいは活用の力と言われるような思考力を論述でやっている。これも大阪の子どもは良くない。昔から良くなければ言うことはないが、昭和30年代の学テでは大阪はトップレベルだった。岩手・秋田・青森は昭和30年代は一番下だったが、いまや秋田は一番。順位を上げるのが能じゃないが、大阪の教育力からしたらやれるはず。

 これからの本当のグローバルな社会、その中で本当に知性ということを活かさなくちゃならない社会、その中で、PISA的な学力、いわゆるOECDが問題にしているようなキーコンピテンシー、あるいは全国学力・学習状況調査で言うB問題的な活用の力、問題解決の力がもう少し上がるようなことが目指されなければ、大阪が地盤沈下するんじゃないか。教育力というのは成果で見えてくる。子どもにどういう力がついたか。

 今の知事も前の知事もかなり気にしておられる部分ではないかと思うので、目標に上手に入れてもらいたい。

(委員)

 学校や教員側の立場から書いてある。「社会総がかり」はその通りだが、もう少し家庭・地域を含め、より保護者を巻き込んで、「よし、うちも」という気持ちになるような言葉がどこかに出てくればもっといいと思う。

(委員)

 府立高校等の教員研修や巡回相談等で現場に行く機会が多くあるが、大阪の1つの特徴として、非常に多様なニーズのある生徒に対する対応がされている。例えば、知的障がいのある生徒が高等学校に入学する制度という形で、自立支援コースと共生推進教室。「ともに学び、ともに育つ」という所からすると、特別な支援ではなくナチュラルサポートとして、共生社会に向けた教育目標という形でつながっていくといいと思う。

 もう1つは、特に小学校とかで顕著であるが、美術の好きな先生のクラスは美術がうまくなり、音楽の好きな先生は音楽、算数の得意な先生のクラスは算数が得意になる。先生の特徴や専門性が子どもたちに非常に大きく影響するという意味では、授業力という所が根底になるが、教育力を高めていくためには、先生方の力を高めていくということが大前提になる。教え育てるだけでなくて教え育つという理念につながっていってほしい。

(会長)

 色々な障がいのある子どもたちが、ハンディがない形で社会参加できるところまで学校でどういうふうに仕組みとして揃えていけるか、学校そのもののあり方をどうするかということが、大きな課題。国でも新しいビジョンに向けた検討が進められている。

 大阪は非常に進んでいるところだと思うが、次のステップをどうしたらいいだろうかということについては、もう少し書きこめればと思う。

(委員)

 目指す目標像の3つ目が「違いを認め合い互いを尊重しながら、自律して社会を支える人づくり」ということで、障がいのある方、ハンデのある方をお互いに認め合うということで、非常に大事だと思う。思いやりというか、そういうことをきちっとできる人間像をめざすんだという形。具体的な中身を見ると、「自覚や忍耐力・責任感、規範意識」という意味での自律、「自ら律する」ということ、これも非常に大事。思いやりとともにきちっと自分も規範意識を持っていく。

 3つの目標の中で「夢や志、チャレンジ」という非常に前向きな、これからグローバルになっていく中で、ある意味では基本となる所と、たくましさということで、「自ら立って力強く生きる」ということと、それと思いやりという人間としての基本的なマナーとともに、心の部分というか、この3つの意味合いをきちっと今後説明していく、具体的に次のページに書いてあるが、それを具体的に展開していく施策が非常に重要になってくる。

 今回、この「じりつ」は2つあるという部分を強調していくということが、特にこの大阪の非常に厳しい経済環境の中で、そこで育っていかないといけない子どもたちにとって大事なことかと思う。

(会長)

 「自らを律する」、自分自身を色々な意味でコントロールできるようにということは、少し何か見える形で書いておいてもらった方がいいかなと。世の中豊かになって寛容になると、欧米でもそうだったが、20年すると子育てや学校教育などに悪い意味でゆるみとして出てきてしまう。アメリカの場合では70年代のオープンエデュケーション、日本の場合は90年代のゆとり教育がそう。その時にいつも言われるのは「好きなことを、好きな時に、好きなようにやらせましょう」「ほめて、ほめて、ほめて育てましょう」。耳触りはいいが、それでは自分で自分を律していけなくなる。アメリカとかヨーロッパの場合ですと、80年代から引き締めに回って、日本でも今回の学習指導要領というのはゆとり教育を清算して、無責任な、耳に快いだけの、そういうことではちゃんとした子どもに育ちませんよと言っている。「自分のことは自分で考えてやりなさい」だけではだめで、やはり親の関わり方、教師の関わり方、学校の雰囲気の持ち方、全部この辺に関わってくると思うので、何かこの辺も少し見える形で出てくる方がいい。

(委員)

 目標として設定すると、達成状況の確認や評価をされていくことになる。

 「めざす目標像」のうち、「果敢にチャレンジする」について、チャレンジというのは、ある部分「能力」にかかるが、ある部分「環境」の問題でもある。チャレンジして、失敗してやり直しがきかない、救済がなければ、誰もチャレンジしようとしない。実は、チャレンジする人づくりというのは、教育だけができるものではなくて、社会との連携の中でできていくものだとした時に、どこまでを今回の計画で担当するのかというところが気になるところ。そういう認識をもった上で、たしかにチャレンジする人づくりは必要だが、必要だからそういう人づくりをしたけれども、チャレンジする人が増えないということになったときに、どう解釈していくかということをあらかじめ考えながら目標を練っていく必要がある。

 つまり、評価と連関して目標は掲げるべきで、学校教育が全て担えるのかどうかというところも少し視野に入れた方が良いと思う。もちろん学校教育が中心だとは思うが、それが全てではないし、もちろん「社会総がかりで」ということだけれども、そうなるとものすごくお金もかかるわけで、その覚悟をもって掲げているのであれば、それはすごくいいかと思う。

 もうひとつ、大阪でチャレンジする人が少ないというデータがあるのかどうか。

(事務局)

 データについて、資料3のデータ集110ページに掲載している全国学力・学習状況調査において、「将来の夢や目標を持っているか」というのを小中学生に聞いており、その中で、全国に比べると大阪の子ども割合は低く、特に中学生になると、全国と比較してやや低い結果となっている。

(会長)

 大阪の状況で、気になるのが、大阪府が採用を内定した先生方が大量に辞退したこと。チャレンジする方向とは違う現象。

 チャレンジは、夢や希望だけではない。先ほど委員がおっしゃった、逞しさ・粘り強さと言う部分も含めて、すぐに断念しない、あきらめない。「大阪は逞しい子どもが育つよね」というようになればいいと思う。

(委員)

 経験上、会議では日本人の発言は圧倒的に少ないが、これは、実は英語の問題ではなくて、議論に慣れていないということ。一方通行の教育が議論下手を生んでいる気がする。これを覚えろという一方通行の教育の方が楽で、双方向でやると、大変だし準備にも時間がかかるが、そういう努力をしていかないと、日本人の発言力、コミュニケーション能力はやはり伸びてこないのではないか。

 要するに、論理的に話を展開するという能力も実はコミュニケーション能力の一部であり、英語能力が過度に強調されるが、実は、コミュニケーション能力と英語能力とは全く別物で、コミュニケーション能力は日本語でも必要であり、コミュニケーション能力がなければ、英語で単語を知っていても、話が通じないのは当然。そのあたりが、学校教育の中でいかに養成できるかということが極めて重要な問題。

(会長)

 今回の指導要領改訂で「言葉の力」というものを一つの柱にしており、「言葉の力」が「確かな学力」を育成し、土台として「確かな学力」が「生きる力」を支えなければいけない。そういう意味での「知性」、「言葉の力」とは、実は「論理の力」。「話し合いをさせております」というのではなく、「読み取る」「書き表す」あるいは「人の話を聞きとる」、こういうことに5W1H的な、きちっとした捉え方をできる、特にあの人はこう言っている、あるいはこの文章はこう訴えている、それをこう読み取るのは、それはどういう根拠からか。Why,Becauseにこだわることを全国の小・中・高に発信しているが、まだなかなか。日本人は情緒的な捉え・発信は上手だが、論理的な捉え・発信が少し弱かったんじゃないかという指摘を踏まえて、今回の改訂には、そういうことが入っている。

 大阪は元々ある意味ではアジアの節目の街であり、節目の中でやっていくためには「論理的」と言うのが土台にならないと、本当の意味でも説得できないし、相手の理解もできないということにつながっていく。具体的なところかもしれないが、何か目標の中にそういうことが表現ができれば。

(委員)

 学校教育の現場で教えるとすれば、まず第一に教える先生方のコミュニケーション能力を一層高めていく必要があるかと思うが、同級生の教師に聞くと、とてつもなく忙しい。いかに先生のそういう力を伸ばしていくか、まさに教育力を拡充していくという取組みはできないものか。

(委員)

 データの中で「自分に良いところがあるか?」の問いに「ある」と答えた数が大阪の子どもは少ない。これは、教育現場の中で、先生方が「何か一つ褒めることはないか、この子の良さはないか」ということを気が付いていても言う機会がないのか、発信してやる場がないのか。子どもの頃にかけられた一言がその子の人生を変えるとか、学ぶ方向を変えるということは、「誉める」ということが左右していると気がする。

 互いを認め合うのはそうなのだが、「自分も認めてもらう」ということも教育の基本の目標にしていただければ。

(委員)

 「果敢にチャレンジする」ということを考えたときに、どこかでチャレンジする意欲がなくなっている、つまり自己肯定感や自尊感情が非常に低くなって、そこからチャレンジを促しても、なかなかチャレンジまでいかない。そういった意味での成功体験や褒めるということは大前提になると思う。一人ひとりの強い力、強い思いをどう伸ばしていくか、自尊感情や自己肯定感をどう高めていくか、ということがここの目標ではないか。

(委員)

 先ほどは、全てのことを学校でできるのかということを申し上げたが、学校の先生の力というものが要。中教審の教員の資質能力向上特別部会の報告書の最初のところに「教員になる前の教育は大学、教員になった後の研修は教育委員会という断絶した役割分担から脱却し、教育委員会と大学との連携・協働により教職生活全体を通じた一体的な改革、学び続ける教員を支援する仕組みを構築する必要がある」とあり、私は教員養成に携わっているので、その必要性を非常に感じている。

 教員採用試験のあり方について、「どういう教員が必要なのか」、教員養成をしている我々も特に大阪に貢献できるようになるとしたら、「どんな教員養成をしていったらいいのか」ということもメッセージとして出していく、教員養成の時代から連携しながら新しい大阪の教育を作っていくための教員を育てていくことが必要なのではないか。

 もちろん最低限のことはしているつもりだが、他と比べて特徴のある能力を育てているのかと言われると、必ずしもそういうことはない。地域の大学、養成機関と連携しながら、教員を育てていく。そして研修自体も一緒にやっていく、リンクしていくことが必要。

 社会が変化するたびに、このような審議会で審議することは重要だが、やはり学校現場で考え実践していく、学校現場にその力がもっと必要で、教員にその資質を育てていくことがこれから重要ではないか。

(会長)

 施設設備も教育では必要だが、まず「教育は人なり」。

 どう養成し、どういう資質・姿勢を持った教員が大阪で教育に携わるか。それをどう教育委員会がサポートし、あるいは研修等で資質を高めていくか、その辺りは大きな柱。

(委員)

 経営学での「経営戦略」とは、「外部環境」「内部環境」「競争環境」を調べた上で、どう資源配分を行い、どういう具体的な目標を達成していくかということになる。今議論していることも、「教育に関する戦略」と言うとすれば、例えば、大阪で育てる生徒・学生たちが、世界で働いてどんどんコミュニケーションができる人間を育てるんだということであれば、ある程度具体性のある目標の設定が必要。目指す目標像は異論はないが、メッセージとして、グランドデザインとして、大阪はどのあたりに視点を定めて資源配分をしていくのか、もう少し、具体性があった方がいいのかという気がする。

(委員)

 色々な施策があっても、ボヤっとしていて何をするのか分からないと、力も合わせにくい。「社会総がかりで」ということでは、メッセージ性がなければいけない。例えば、アメリカでやっている「No Child Left Behind」「Head Start」のような、分かりやすいメッセージをこの中に込めていくと、「そういうことをやろうとしているのか」と理解できて、力を合わせやすくなると思う。

(会長)

 今のようなことをするときに、大きさから言っても公立の方が大きいが、同時に、設置者を超えて、私立も含めてみんな同じ方向に持っていけるようなビジョンを打ち出したい。

 子どもの数から言っても、公立ではない学校法人という公法人が設置する学校に通う子も多く、幼稚園は私立の方がずっと多い。

 大阪の子どもたちがみんな同じビジョンの下で育っていく、例えば、国際的な力を付けるべきではないかとか、理数系の力をもう少し日本の教育で大事にしていかないといけないとか、論理の力など、公立だけ限定で考えるわけにはいかず、私立も含めてみんなに訴えて、必要ならば先生方の研修も共通でやっていくといったことも必要かと思う。

 最終的には設置者の違いを超えて、「大阪の子どもたちはこう育っていってほしい」「こういう若者が大阪の学校を通じて育ってほしい」というビジョンがまとめられたらと思う。

(委員)

 先生のステータスを上げる方策も必要。自分が子どもの時は、家族も含めて先生への憧れや尊敬の念があった。

 それから、小学生・中学生の頃から、文化・スポーツを通して、持続力・忍耐力などを養うことは学力のアップや思いやりにつながるというように思っており、目標の中に文化・スポーツがないが、各論で考えるべきではないかと思う。

(委員)

 グランドデザインを描く場合の一つの大前提は、資源には限りがあるということ。やりたいこと全てをやれるわけはないので、戦略を立てるということは、つまるところ何をやって何をやらないかを決めること。何に重点をおくかということをはっきりさせないといけない。

(会長)

 教育には2つの面があり、仕組みとか教育活動の中身を変えていくということでお金を投入しなくてもやれることがある。もう一つは条件整備で、これはどこにお金や人も含め資源をどう投入していくか、どう軽重を付けて行ったらよいかということになる。

 今のご指摘は、総花的にならないようにとの趣旨だと思うので、事務局で工夫を。

(委員)

 先ほどから保護者との連携という話が多く出ているが、大学の教職課程の中で、保護者対応・保護者との連携という科目はない。実際の学校現場にいくと、その壁にぶち当たることがある。先生方のストレスもそこにある部分が結構大きい。そういう時に、学校だけで対応できるような状況ではない部分があって、保護者との連携を支える仕組みが必要ではないかと思う。

(会長)

 東日本大震災の教訓と挙げているが、これを具体的に大阪でどのように捉えて、どのように次のビジョンに載せようとしているか。

(事務局)

 今の整理は、震災以降どのように意識が変わってきたかを書いている。この間、大阪の子どもたち、特に高校生を中心に被災地支援に出かけ、報告を受けたが、すごく色々な経験、勉強をして帰って来てくれている。また、教員も現地支援に派遣し、逆に被災をした子どもたちの受入も行って、その両面で取組みをし、その辺りを踏まえながら、直接的な防災体制の整備と同時に、そういうところで培われたものをこれからの教育にどう生かしていくのか、そのあたりも含めて議論していきたいと思っている。

(会長)

 いつ何時、どんな災害が起こるか分からない。これに備える何かを教育で考えなければならない。「命」「絆」を教育の中で大事にしながら、具体的には防災教育とか、危機対応の教育とか。

 これを課題領域であげるのはとても大事。いつ南海地震や東南海地震が起こるか分からないし、もっと前から言うと、少し違うが不審者の乱入によって子どもが殺傷されるという痛ましい事件が大阪でもあったわけで、「治に居て乱を忘れず」、平和な今日の日常があるにしても、そのすぐ先にとんでもない非日常なことが起こるかも分からないということを学校という場ではいつでも考えておかないといけないし、そういうことも考えておきながら教育の在り方を考えておく必要がある。具体論で、大阪の学校で何ができるか詰めていければ。

(委員)

 「大阪の教育力」向上プランは『公立学校の教育への信頼に向けて』ということで作成されていたが、今回の振興計画は私学も当然に対象としているとのこと。今回、高等学校の授業料無償化で、非常に大きい税金が私学に入っている。その責任として、私学の教育理念はあるにせよ、最終的に受け入れた子どもたちを今回の理念に基づいてきちっと教育するという責任がある。定員以上に入って、競争力がある人だけが残り、中途退学してもそれを誰が責任をとるのか。教育委員会が持つのか私学が持つのか、そういうことが起きないように目標や施策という要素を今回の計画に必ず入れていただきたいと思う。

 向上プランでは、小中に対して、高校に対してそれぞれに重点項目が出ているが、今後、重点項目に落とし込んだときに私立学校にどこまで強制ができるのか。私立学校は、元々それぞれに建学の精神があってそれに賛同して入っていかれる方も多いが、最終的に大学の進学率とかいう要素もあると思う。

 大阪府の経済の情勢が非常に厳しい中で、格差がどんどん広がっていて、中退をなくすために努力してこられている。トップ層をやるのはいいが、一番底辺のところを支えてこられてきた部分がすごくあると思う。そこのところを今回の教育振興基本計画においても、切磋琢磨して、競争の中で選ばれるところだけが選ばれていけばいいということではなく、全体の教育の水準、あるいは貧困にいかないようなベースをきちっと作っていくことが、大阪の教育が目指すべきものだというふうに思って今までやってきたので、そこのところはぜひ、押さえていただきたい。

(会長)

 非常に大事なご意見。どうしても教育は「俗事」に入りやすく、短絡的な言葉が飛び交いがち。でも、一人ひとり子どもたちはかけがえないわけであり、優勝劣敗だけではいけない。とはいえ、みんな同じですよ、ではどうしようもない。単純に学校同士を競争させたらいいとか、そういうことは欧米でも昔の話。といって競争を否定することではないが、ただ、常に最低保証、どう転んでも、きちっとしたセーフティネットが張ってあるというのが、子どものレベルでも学校のレベルでもあるような、そういう議論に今はなっていると思う。お互いその辺は頭において、あまり単純化した議論にならないようにしたい。

 それから、私学は何でもできるわけではない。私立学校法というのがあり、学校法人は公法人で理事長であっても勝手なことはできない。それを保障するために、例えば高校以下や専門学校を持っている学校法人は、都道府県がきちんと監督している。大学を持っている学校法人でいうと文部科学省の私学課が目を光らせている。

 ただし、こういう方向で大阪の子どもを持っていきたいというようなことを打ち出していきく時に、公立だとストレートに提案できるが、私学になるとワンクッションおいてということ形になる。しかし、私学の集まりもあり、私学と公立の関係者が合同で研修をするといった取組みなどが進むことで、「大阪の子どもはこういうふうに育つといいよね」「そのためにこういうところに十分に配慮して教育していければいいよね」というような共通理解ができていくのではと思っている。その辺が上手く進むように、表現しておかないといけない。

(委員)

 参考資料の中の教員の年齢構成を見ると、相当偏ってる。40代後半からそれ以上の先生方が、全体の6割から7割ぐらい。ということは、これから10年ぐらいで、先生方が大量に定年退職するということ。これは、いま議論しているグランドデザインとは無関係ではないような気がするが、今、教育委員会で何かお考えはあるか。

(事務局)

 資料3の72ページにさらに詳しい年齢構成を記載している。小中高の全体にわたって言えることだが、かつて子どもの数の急増期にあわせて大量に教員採用し、団塊の世代の退職によって大量に退職していったことに伴うもの。

 即効性はなかなかないが、教員採用について、これまでは新卒の若手の先生方を中心に採用していたが、講師の経験者、社会の経験者などに、年齢制限の緩和という形で門戸を広げて経験者採用を行い、この年齢構成のいびつな状態の緩和に努めているところ。

(委員)

 会社でいうと課長以上ばかりがたくさんいるということで、かなりバランスが悪い組織になってしまっているというのは否めないが、逆に言うと、ある意味チャンスでもあって、これから先、どういう先生方に教師で来ていただいて、どういう方向でやっていただくのか、これから戦略的にできるということや、年齢制限の緩和によって、さらに幅広い層から募集できるチャンスということでもある。

(委員)

 大阪の学校教育が、私立も含めて、いかに公正に行われているか。特定の層にだけ利益があるようなものでなく、公正性をどのように重視しているのか。そこのあたりを見えるような形にして、その上で、どんな特徴づけをしようとしているのかが説明されるとよい。つまり、公正性を確保した上で、「あなたも大阪で育ったの」という人が全国であふれるように、そういう卓越な教育を作っていくには、どうしていくか。

公正ということと卓越ということは、ある部分矛盾しがちな原則だと思うが、これをどのようにバランスを取って実現していくかということを、見えるようにすると伝わりやすい、力が集まりやすいのではないかと思う。これまで大阪の教育がされてきたことは、大きな意義と成果があると思うが、多少、宣伝不足、理解が広がっていない部分もあると思う。このようなチャンスにそのようなことをポリシーとしてきちっと書いていく。それがあったらすごく力が合わせやすいのではないか。

(委員)

 親御さんに関する件で、いくつかの事例の中で本当にびっくりするようなことがある。例えば、面接が決まってマネージャーが付いて行こうとすると、何時になっても出てこない。何故かというと、交通費がないから。それでマネージャーが迎えに行ってお金を渡して、ということをするが、もちろん、親御さんはいらっしゃるという状況がある。極端な例だとは思うが、そういった環境にあっても、最後は知力で頑張ってもらうしかない。一気に変えることはできないが、自分で人生を切り開くためには、あきらめないで頑張るという知力、投げ出さないというのも知力、そういったものを磨くというような目標を作っていただければ。

(会長)

 本日は多岐にわたる大事なご意見を随分いただいた。今日の議論を事務局でまとめていただき、次の会議の際には、もう少し具体的なところに踏み込んだ議論にさせていただくことができればと思っている。予定の時間になったので、今日の議論はこのあたりで。

 事務局から、何かありましたら。

3.閉会

(事務局)

 大変勉強になる活発なご意見をいただき、今日は本当にありがとうございました。

 昨年1年間、教育の条例において、熱い議論を知事ともやってきた中で、今日こういう形で知事と一緒にこの検討会議をスタートさせることができ、私自身、本当にうれしく思っている。

 昨年、議論した中で一番大きな問題になったのが、知事による教育目標の設定というところをどうするかということで、最終的にそれが条例によって、知事が教育委員会と協議をして、この計画を作るということになったのは、冒頭に知事が挨拶をされたとおり。

 この計画の役割は、知事はこれからの大阪の教育の羅針盤という言い方をしたが、まさにそのとおりで、知事と教育委員会がしっかりと力をあわせて、これからの大阪の教育を進めていくことができる、しっかりとした羅針盤、計画を作りあげていきたいと思っている。

 今日は本当にたくさんのご意見を頂戴したが、特に、我々の整理の中で弱かったなと思っているのが、国際的な議論とのリンクというご指摘があったとおり、国際的な議論なり、国内におけるゆとり教育の議論、あるいは学習指導要領の改正、そういったところからの学力観について、きちっとした形での整理がちょっと弱かったなという気がしており、その辺はさらに強化をしたい。

 また、会長からも指摘があったが、私学も含めた、設置者を超えた計画にしていくということの必要性を改めて痛感した。今日、企画室や私学・大学課も参画をしているので、そこの連携をさらに固め、大阪府全体での教育力の向上を目指す計画にできるように努力していきたい。

(事務局)

 次回は、7月30日(月曜日)午前9時30分より、プリムローズ大阪にて開催し、これからの大阪の教育の方向性等についてご審議いただく予定。

(会長)

 それではみなさん、本日は長時間ありがとうございました。

このページの作成所属
教育庁 教育総務企画課 教育政策グループ

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