令和3年2月25日 府政運営方針説明(要旨)

更新日:2023年4月10日

 本日、令和3年2月定例府議会の開会にあたりまして、私の所信の一端と今後の府政運営の方針を申し述べ、議員並びに府民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

 現在も、新型コロナウイルス感染症は、府民の生活に大きな影響を及ぼしています。外出自粛や営業時間短縮などの感染防止対策により、これまで最大の規模であった第三波も、下降傾向となっています。一昨日には、京都府、兵庫県とともに、国に対して、緊急事態措置を実施すべき区域からの除外を要請をいたしました。長期間にわたる、府民・事業者の皆様のご協力に、深く感謝を申し上げます。
今後も、ウイルスはなくならず、共存していかなければなりません。感染防止対策の新たな決め手となるワクチンの接種が、日本でもいよいよ始まりました。引き続き、これまでの経験や知見を踏まえ、ワクチン接種をはじめ、対策に全力を尽くしてまいります。

 知事就任の際、4年間の任期の使命として、「世界の中で躍動し、成長し続ける大阪をつくり上げる」ことを、府民の皆様とお約束しました。あれから2年。まもなく、任期の折り返し地点を迎えます。
これまで、世界最大規模の国際会議であるG20大阪サミットの成功、国によるスタートアップ・エコシステムのグローバル拠点都市の指定、港湾の国際競争力強化に向けた大阪港湾局の設置など、大阪府市が一体となって、成長の種をまいてまいりました。

 しかし、就任当時には予想もしなかった、新型コロナウイルス感染症という難題に直面し、現在は、「この未曽有の危機から府民の命を守る」ことが最大の使命と考えています。引き続き、感染拡大防止と経済活動の維持の両面から、コロナ対策を最優先に実施してまいります。
感染者の増加や医療提供体制のひっ迫のみならず、インバウンドの消失や雇用環境の悪化による経済の落ち込み、外出自粛や日常生活への制約による社会不安など、感染による影響は多岐にわたっています。今は苦しい状況ですが、必ず、この危機を乗り越え、再び、成長軌道に乗せてまいります。
ポストコロナを見据え、大阪の成長のカギを握るのは、未来を拓くシンボルである万博の成功と、大阪府市が一体となって取組む新たな社会の実現です。
万博の成功に向け着実に取り組むとともに、その理念である、世界課題の解決に貢献するSDGs先進都市をめざします。
万博をインパクトに、大阪が誇る成長産業である健康・医療関連産業を育成するとともに、大胆な規制緩和を背景とし、イノベーションを創出し、大阪の成長エンジンであるスタートアップが生まれ、活躍する環境をつくります。IR誘致や大阪ならではの魅力あふれるまちづくりを進め、国内外の観光需要の取り込みを図ります。デジタル技術を活用し、公民共同による地域課題の解決や行政手続きの利便性の向上等により住民の生活の質を高めるスマートシティの実現をめざします。また、テレワークなどの新たな働き方を通じた、多様な人材の活躍を促進します。さらに、世界から選ばれる都市をめざし、東京とは異なる個性を持った国際金融都市の実現に向け挑戦をいたします。

 さらなる大阪の成長・発展のためには、大阪府・市が一体となり、都市の力を最大限に引き出すことが不可欠です。ふしあわせと揶揄された、二重行政の時代に戻してはならないという強い信念のもと、現在の、府市一体の大阪を継承、強化し、大阪の成長、まちづくりを強力に推進するため、条例案を今定例会に提出します。
私は、大阪を一地方都市で終わらせるつもりはありません。府市一体で、大阪の力を最大限に引き出し、東西二極の一極として日本の成長をけん引する「副首都・大阪」を実現してまいります。

(令和3年度当初予算)
 それでは、令和3年度当初予算について説明します。
コロナ禍での企業収益や個人消費の減少により、府税収入が大きく落ち込み、府の財政は非常に厳しい状況です。そのような中でも、新型コロナウイルス感染症対策や大阪の成長に向けた取組みなど、必要な施策は着実に実施してまいります。
来年度の主要施策について、順次説明します。

 まずは、感染症から府民の命を守る対策に最大限の力を注ぎます。

 ワクチンの円滑な接種に向け、体制を整備します。先週、ワクチン接種を担当する新組織を設置し、体制を強化しており、来月上旬から、医療従事者に向けた優先接種を開始します。今後、ワクチンが予定通り供給された場合、希望する府民には、開始から半年間を目途に接種を完了することをめざしており、実施主体である市町村を強力に支援してまいります。また、急激な感染拡大に対応した相談体制や、検査体制の整備・充実を図ります。

 医療体制のひっ迫状況を緩和し、社会経済活動をできる限り継続するため、さらなる病床確保に努めます。急激な感染拡大時に備え、新たに、重症病床等を備えた施設を整備する医療機関を公募し、整備費用を支援します。

 昨年12月に運用を開始した大阪コロナ重症センターを着実に運営します。課題となっているマンパワー確保に向け、人材バンクを整備し、センターの運用に必要な看護師を確保するとともに、クラスターが発生した医療機関に看護師を派遣するための仕組みを構築します。

 福祉施設においては、依然、クラスターの発生が続いています。重症者の発生をできる限り抑えるため、高齢者施設や障がい者施設等の従事者を対象に、来月末まで、集中的に、2週間に1回の頻度で検査を実施します。また、先月設置した高齢者施設「スマホ検査センター」において、有症状の高齢者施設の従事者や入所者への検査を迅速に行います。さらに、施設に対する、衛生用品の購入や個室への改修に対する支援により、感染拡大を防止するとともに、感染者が発生した場合の応援職員派遣体制を整備し、業務の継続を支援します。

 最前線でウイルスと闘う医療機関や医療従事者を支援します。

 病床確保や医療機器の整備、医療従事者への特殊勤務手当の支給などに補助するとともに、院内感染の予防や拡大防止のため、対策の専門家チームを派遣します。

 感染症対策に当たっては、医療、経済、福祉など幅広い視点から、最適解を導くことが求められます。このため、大阪の感染症対策を支える拠点の形成をめざし、公立大学法人大阪において「大阪国際感染症研究センター」を設置し、大学の学際的な研究資源を活用して、感染症に関する調査研究を実施します。

 現在のコロナ対策に全力を注ぐとともに、新たな感染症への備えも万全にし、万博開催を見据え、世界的な拠点都市として、感染症に強いまちづくりを進めていきます。

 感染の長期化により、大阪経済は大きな打撃を受けています。経済を支え、雇用を守る取組みを進めます。

 苦しい経営状況にある中小企業を支援するため、引き続き、融資による資金調達支援を実施します。

 外出自粛要請やイベントの開催制限により、大きな影響を受けている産業を支援します。府内の観光消費を喚起するため、旅行業者や宿泊施設等を通じてクーポンを配布し、観光関連産業を支援します。また、府内の文化芸術活動を大阪市と連携して支援し、公演機会の創出や府民への鑑賞機会の提供とともに、文化魅力を発信します。

 また、民間人材サービス事業者と連携し、失業された方に対する雇用対策を実施します。

 全ての府民が少しでも安心して生活できるよう、セーフティネットのさらなる充実を図ります。

 コロナによって、貧困、住宅確保、失業といった、社会的課題が顕在化しています。

 民間の資金提供先と協働し、NPO法人等を支援することにより、こうした課題の解決を図ります。

 対面での地域活動が制限される中、支援が必要な府民の孤立や不安を解消することが必要です。府内の市町村社会福祉協議会を支援し、ICTの活用などによる新しい地域活動モデルの開発を促します。

 昨年の自殺者数は、全国的に11年ぶりに増加に転じ、深刻な状況です。特に、女性や若年層の増加率が大きくなっており、SNS等による相談など、総合的な対策を通じて、自殺の未然防止を図ります。

 介護の現場では、感染症防止対策による負担が増加しています。また、高齢化が進展する中、より多くの介護人材の確保・定着が喫緊の課題です。
介護助手の導入、介護職員の専門性向上や多職種によるチームケアを実践し効果検証を行うとともに、介護ロボットやICT機器の導入を支援し、介護従事者の負担軽減やサービスの質の向上を図ります。

 心身の健康を支える医療の充実を図ります。

 将来、子どもを産み育てることを望む、小児やAYA世代のがん患者が、希望を持ってがん治療に取り組めるよう、新たに、妊よう性、生殖機能の温存治療費用を助成します。

 ウイルス性肝炎の早期治療と重症化予防につなげるため、新たな取組みとして、定期検査の費用を、年2回を上限として助成します。

 不妊症・不育症治療については、経済面でも精神面でも負担が伴います。不妊治療への助成について、所得制限の撤廃や助成額の増額等、制度を拡充するとともに、新たに、研究段階にある不育症の検査費用の助成を始めます。さらに、カウンセリングや当事者団体によるセミナーの実施など、相談支援体制の拡充を図ります。

 未来を担う子どもたちへの施策に力を入れます。

 大阪の全ての子どもたちが安心してくらし目標に向かってチャレンジできるよう、環境整備を進めます。

 ICTを活用した新時代の教育を実現するため、府立高等学校等において、全ての生徒に1人1台の端末整備を完了し、グローバル化や情報化に対応できる人材を育成します。

 本来、学びは無償であるべきとの考えのもと、昨年4月から、全国に先駆けて実施している、大阪府立大学・大阪市立大学等の授業料等無償化を、継続して実施します。

 学力向上に向けて、府内公立小学校5・6年生を対象に、新たに学力テストを実施します。中学生チャレンジテストとあわせ、子ども一人ひとりの経年データを把握することにより、指導効果を向上させ、その後の学習に生かしてまいります。

 小学校の子どもたちの心のケアや保護者の悩み相談、教職員への助言・援助を行うため、全公立中学校に配置している「スクールカウンセラー」を拡充します。

 障がいのある子どもたちの自立を支援します。

 府立学校において、医療的ケアが必要なために通学バスを利用できないなどにより通学が困難な児童生徒の通学を支援します。

 保護者の働き方の変化に対応し、長時間かつ長期間の保育ニーズに応えられるよう、私立幼稚園の預かり保育に対する補助を拡充し、保育の受け皿としての役割を強化します。

 「重大な児童虐待ゼロ」をめざし、オール大阪で取り組んでいます。児童虐待の未然防止・早期発見・早期対応を図るため、大阪市・堺市と共同でSNS相談窓口を設置します。今年度の試行実施を踏まえ、本格的に運用を開始します。また、新たな一時保護所の設置に向けた準備とともに、子ども家庭センターにおける児童福祉司の増員や環境改善を進めます。

 ポストコロナを見据え、万博をインパクトに、大阪の再生・成長に向けた取組みを加速させます。

 万博の成功に向け、準備を着実に進めます。昨年12月に、BIE総会において大阪・関西万博の登録申請書が承認されました。10月から開催されるドバイ万博などの機会を捉え、世界各国へのプロモーション活動を展開します。また、いち早く万博を体験できる場としてバーチャル空間を構築するとともに、地元パビリオン出展に向けた準備を進めます。

 ポストコロナの成長をけん引する産業を創出し、イノベーションを促進します。そのけん引役として、「空飛ぶクルマ」をぜひ大阪で実現させたいと考えています。40を超える産官学の有力プレイヤーが参画する大阪ラウンドテーブルで課題解決に向けた道筋をつけるとともに、万博での実用化に向けた実証実験を支援し、空飛ぶクルマのある社会を見据えた新たな産業の創出をめざします。

 また、中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向け、大阪産業局等と連携して、社内のDX人材の育成等を行うとともに、DXをはじめとする技術革新を促進するため、ものづくり企業が行う研究開発を支援します。

 国内外から、人々や投資を引きつける、魅力的なまちづくりを推進します。

 まちの成長のためには、大胆な規制改革が不可欠です。AIやビッグデータなど、最先端の技術を活用し、未来のくらしを先行実現する、まるごと未来都市と言える「スーパーシティ」をうめきた2期や夢洲で形成するため、まずは、国による区域指定をめざします。規制緩和を背景に、次々に新たなサービスを生み出し、未来をつくる、そのシンボルとなるまちづくりを進めます。

 夢洲での、世界最高水準の成長型IRの実現をめざし、事業者選定や区域整備計画作成を着実に進めます。ギャンブル等依存症などの懸念事項についてもしっかり対応し、府民の不安の払拭に努めます。

 府内の強みを生かしたエリアの魅力に磨きをかけます。万博記念公園駅前周辺地区での大規模アリーナを中核とした新たなスポーツ・文化の拠点づくりを進め、国内外からの観光需要を取り込んでまいります。

 新大学、大阪公立大学の誕生に向け、2025年度開所予定の森之宮キャンパスをはじめ、中百舌鳥、杉本、阿倍野の既存キャンパスの学舎整備を進めます。

 将来の大阪の成長・発展に向けたまちづくりのために、地域資源を生かした特色あるまちづくりや都市インフラの方向性を示す、新たなグランドデザインについて、大阪市、堺市とともに策定に着手します。あわせて、大阪の成長の核となる、うめきた2期、大阪城東部、新大阪駅周辺、ベイエリアのまちづくりを進めます。

 まちの成長を支える、都市インフラの充実に取り組みます。
淀川左岸線延伸部、なにわ筋線、大阪モノレール延伸といった道路・鉄道ネットワークの整備を進めます。また、大阪港と府営港湾をあわせた、いわゆる大阪”みなと”の国際競争力強化に向け、それぞれの強みを生かしたインセンティブを創設し、さらなる集貨につなげます。

 次の成長の原動力とされる「グリーン」と「デジタル」に力を入れます。

 脱炭素化に向けて、燃料電池バスの導入やバイオプラスチックの研究開発を支援します。また、プラスチックごみゼロをめざし、マイボトルの普及拡大や、マイ容器を利用できる飲食店等を検索できるマップを作成し、2050年カーボンニュートラルに貢献します。

 公民共同でデジタル化を進め、スマートシティを実現します。

 300を超える企業・団体が参画する大阪スマートシティパートナーズフォーラムを中心として、実証・実装を行うとともに、今年秋に創設予定の国のデジタル庁における改革と呼応し、大阪版デジタル庁の検討を進めます。

 うめきた2期や夢洲などの拠点や市町村など、それぞれのプラットフォームで運用されているアプリの相互利用やデータの流通を促す、大阪都市OSを構築し、利用者の利便性向上を図ります。

 行政のデジタル化も進めます。府への申請・届出などの行政手続きのオンライン化を進めるとともに、先端技術を利用した住民の生活の質の向上や都市機能強化に取り組む市町村を支援します。

 世界から選ばれる都市をめざし、将来に向けた大阪の成長の核となる、国際金融都市の実現に挑戦します。デリバティブ発祥の地である大阪で、万博やスマートシティといったポテンシャルを生かしつつ、東京とは異なる個性を持った国際金融都市をめざします。3月までに官民一体の推進組織を設立し、ビジネス面、生活面でのワンストップの支援やプロモーションにより、海外事業者の誘致を進めます。

 成長の基盤となる災害対応力を、ソフト、ハード対策を組み合わせ、強化してまいります。

 水害や土砂災害に備え、府民の避難行動を促します。土砂災害の恐れのある区域を指定するための基礎調査や、台風到来時等の事前行動をまとめたタイムライン作成の支援を行います。また、豪雨災害のリスクを周知するために作成している、河川ごとの浸水想定区域図を全ての河川において完成させます。

 津波・高潮・洪水に備え、老朽化が進む三大水門の更新や、橋げたが低く、越水の危険性がある阪神なんば線淀川橋梁の架替えを進めます。

 大阪市と連携して実施している、南海トラフ地震に備えた防潮堤の液状化対策は、10年計画で進めており、約9割の工事が完了しています。令和5年度の完成をめざし、着実に整備を進めます。

 以上、令和3年度予算の主要な事業について説明をいたしました。

 今後も、感染拡大や経済の状況等に応じて、必要な対策を機動的に講じていきます。
引き続き、全力で府民の命とくらしを守るとともに、未来が希望にあふれたものとなるよう、大阪の元気を取り戻し、コロナを乗り越え、そして成長する大阪を実現してまいります。

 議員並びに府民の皆様におかれましては、今後の府政の推進に一層のご支援、ご協力を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

このページの作成所属
政策企画部 企画室政策課 政策グループ

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