【脊損についての医療的知識】脊損者が常に注意しなければならない副次的症状・疾患等

更新日:令和3年3月4日

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【脊損についての医療的知識】脊損者が常に注意しなければならない副次的症状・疾患等  脊損ケア手帳(平成19年3月31日発行)24ページ

以上説明したように、脊損は、脊髄の損傷によって身体機能がマヒしたり低下したりすることで、身体保持のための様々な生体反応や免疫機能も低下するので、合併症が起こりやすくなります。

ここでは特に自己管理の対象になっているものについて説明しています。

床ずれ(褥瘡[じょくそう])

普通は長時間同じ姿勢でいると皮膚や血管などが圧迫されてしびれたり痛くなったりするので無意識に姿勢を代えます。

しかし、脊損は、感覚がマヒしている領域では痛みを感じないので、また、筋肉も弛緩しているので、長時間同じ姿勢で接触面に圧力をかけていることがあります。そのために圧迫を受けている部位の血流が低下したり無くなったりして、その部分の組織(肉)が死に、組織がくずれます。

当初は発赤[ほっせき=部分的に充血して赤くなること]からはじまり、靴ずれのように水泡[すいほう=水ぶくれ]ができたり、皮膚が破れたりしますが、放置すると数日で穴が開いて皮膚面より深く大きく壊死[えし=組織が死んでくずれおちること]が広がり、この傷が骨まで達すると細菌等に感染して死亡することにもなります。

床ずれは、人間の骨格の影響で、身体の特定部分(でっぱっているところ)に起こりやすくなります。これを好発部位と言います。[図7]

図7 床ずれの好発部位
この画像は床ずれの好発部位です。

脊損の場合は、特に、マヒ域の肉が落ちて皮膚が薄くなったり、骨が出っ張ったりしているところへの圧迫によって、皮膚表面はもちろん、接地面と骨とに挟まれた筋肉の奥側も影響を受けます。

自分の寝姿や、車いす上の座位姿勢に照らし合わせて必要な部位(車いす上では、座骨、仙骨、かかと、大転子)への予防を心がけましょう。

脊損の床ずれは、一日きちんとした医療的手当が遅れると、治るのが一週間遅れるといわれています。発生した場合には、一刻も早く専門医の治療を受けてください。

床ずれが悪化すると床ずれ部分の治療や保護のために一定の姿勢を保持しなければならなくなり、ベッド上でも自由がなくなり、車いすの利用が制限されるのでベッドから離れての活動もできなくなります。それは身体的にも心理的にも生活的にも大変な苦痛になります。

しかも治療については、脊損の場合は、マヒ域の新陳代謝が低下していて皮膚再生能力が落ちているので、自然に治すことは困難です。

なお、現在は専門病院では原則として入院治療の対象にはならなくなっています。通院も困難になり、在宅療法を指示されて、訪問看護師による手当てだけで、場合によっては自宅で数年寝たきりの状態になりかねません。早期の受診と正しい手当が必須です。それだけに、日常生活においても、床ずれの予防には時々刻々の注意と観察が必要です。油断できません。

車いす利用やベッド上などでの座位時には体重によって臀部に圧迫や押さえつけが生じます。そして、物理の「作用と反作用」の絶対法則によって、おしりの表面には、座面からの反発の圧力がかかります。これが床ずれの第一原因になります。

その他には、湿気による蒸れ、炎天下に放置していた自動車の座面やクッション類の表面とその内部の空気やジェルにこもった高温、おしりと座面とのずれ動きやひっぱりの摩擦抵抗、発汗や失禁・失便の放置や排泄後の清拭不足などの汚れ、さらに高齢化による皮膚の老化、栄養不良、特に毛細血管の血流を低下させる喫煙の影響、着衣、特に下着やズボン類の鼠径部への食い込みがあります。また、意外な盲点は固いジーンズやすべりの悪いコールテン(コーデュロイ)などの布地の影響や、さらに、床ずれ予防用のマット類などへのトランスファー(乗り移り)時に、クッションと着衣の沈み込みの差で着衣が張りつめて板などと同じように危険な圧迫が皮膚面におこります。時々座骨部に手を入れて状態を確認してください。

なお、近年すぐれた床ずれ予防用のマットやクッションが提供されていますが、すべて一長一短があります。

クッション類の除圧[じょあつ=圧力をゆるめること]の機能は、でん部とクッション座面の接触面積を広げて単位(1cm2)あたりの圧力を減らしたり、おしりの動きを自由にしたり、乾燥させたりすることにあります。

手ざわりや肌当たりがよいことは関係ありません。どのような床ずれ予防マットやクッションにも圧力を無くす魔法の作用はありません。

車いすで使用のクッション類は、身長や体重と車いすの基本寸法とクッションとの間の調整が必要なので、一体的に設定しなければなりません。

利用に際しては、車いす座面とクッション表面の確認、異物の排除、設置位置の確認、さらに、空気式の場合は気圧や気温が影響するので、一日のうちにもたびたびの空気圧調整などが必要になります。

しかし、床ずれの予防は、何よりも1時間(理想は20分)以内に、1分程度の除圧を行うことが基本です。

車いす上では、安全を確認した上で、車輪やアームレストを支えにしたプッシュアップ(身体を持ち上げる動作)や、おしりが浮くように身体を前後左右に大きく傾けたり反らしたりすること、車いすに座ったまま車いすを大きく後ろに傾けてもたれさせることなどで除圧することができます。

自動車を運転しているときには大きな交差点での信号待ちで、ブレーキロックをかけた上で、プッシュアップや身体を大きく傾けておしりを浮かせることで効果を得ることができます。

就寝時には、最低2時間に一度の体位変換(寝返り)、ベッド用床ずれ予防マットの利用、好発部位にクッションなどのプロテクターを当てることなどがあります。

しかし、定時の体位変換は睡眠を妨げます。睡眠を摂るにはエアーマットの利用がすすめられます。エアーマット類は種類もあり、毎年のように進化しています。利用については、専門医や関係機関等にご相談ください。

この他に、脱げないようにきつめのサイズの靴を長期間はいていると、かかとに靴ずれならぬ床ずれができることがあります。

同じように、車いすのサイドパネルなどが身体に当たったままになっていたり、身体に取り付ける福祉機器を長期間利用していたりすると、接触部分の皮膚内部に床ずれができていることがあるので注意してください。

皮膚内部の床ずれについては、最近になって、医療機関によっては超音波検査器で観察できるようになっています。床ずれの起こりやすい方は定期的な検査を推奨します。

なお、床ずれ予防用の一部のクッションには、ジェルなどを座骨部にセットするためのポケット(くぼみ)があります。これと同じようにでん部が前方にずれるのを防ぐためにクッション内部に段を設けて座骨前縁部で座骨の動きを抑えるタイプの製品があります。しかし、この二つはまったく機能と効果が異なります。ジェルなどをポケット部分に正しくセットして座骨位置にするのは重要で効果的ですが、座骨前縁部で座骨の動きを抑えるタイプのクッションを長期間使用すると、脊損の場合は座骨前縁部内部に袋状の内部床ずれを作ることがあります。

脊損用の床ずれ予防クッションはシーティング(座り姿勢づくり)と併せて専門医やPT(理学療法士)・OT(作業療法士)の専門職、脊損ピアマネ、関係機関にご相談ください。

なお、男性の場合は、体位交換時に男性器等を挟んだり下敷きにして押さえつけたりしないように注意してください。熱発や炎症や床ずれ、折損にとどまらずに、数日で損壊、脱落につながります。

また、喫煙は末梢血管の血流を著しく低下させるので床ずれができやすくなります。また、治療時には回復が著しく遅れます。多くの医療機関では敷地内全域が禁煙となっていますが、医師によっては外来診療時に在宅での禁煙を指示されます。床ずれ治療のためには我慢してください。

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尿路感染[にょうろかんせん]

尿路感染とは、細菌等が尿道口から侵入して、尿道から膀胱、さらに腎臓までの尿路が感染し様々な症状が現れることです。

過去には、床ずれからの敗血症、呼吸器感染や誤嚥[ごえん=食物や唾液などを気道に間違えて飲み込むこと]からの肺炎、そして尿路感染からの腎炎と、脊損の予後における死亡原因の三悪に上げられていました。

自己導尿法をはじめとする医療手当てが確立した今でも、油断をすると最も早く危険な状態になります。

予防は清潔にすることで、手の洗浄(手洗いや消毒)が有効です。

特に、車いすの操作時には、タイヤの回転で地面などのほこりや土などが手元に舞い上がるので、外出から戻ったときには意識的に手洗いしてください。

また、排便時やその後始末後にも意識的な手洗いが必要です。

なお、尿路感染予防の観点から最も大切なことは、膀胱に尿を溜めすぎた状態(膀胱過伸展[ぼうこうかしんてん]による膀胱壁の虚血[局所性貧血])を避けることです。そのためには、導尿を行うべき時間(間隔)を守り、また水分を多く取ったときには早めに導尿を行うなどの注意が必要です。同時に導尿の際には残尿に注意して出し切ることも重要です。

尿が濁った場合には必ずしも尿路感染とは限らないので、まず水分をいつもより多めに採り、同時に導尿回数を増やして様子を見てください。多くの場合はそれだけで尿がきれいになりますが、混濁がなおらなかったり、いきなり高熱になったりした場合は速やかに専門医の診察を受けてください。

なお、体調が良くても、医師の指示で、(一年単位などの)一定期間後には感染予防や全身の体調検査、膀胱等の変質・変形予防のための造影検査等を定期的に受けてください。

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呼吸障害

無気肺・肺炎・呼吸困難
人間の呼吸は自律的な呼吸を行う横隔膜[おうかくまく]と、随意に呼吸を行える呼吸筋によって行われています。
横隔膜の自律的(不随意)な呼吸はC3,4が健在でほぼ可能となります。したがって、このマヒレベルになると、受傷後の初期には人工呼吸器を利用することがあっても、一定期間呼吸器リハビリを受ければ、人工呼吸器をはずすことが可能です。
C2以上のマヒでは、例外はあるものの、ほぼ一生人工呼吸器に頼らなければなりません。
横隔膜の自律的呼吸が可能でも、肋骨[ろっこつ]間の筋肉がマヒしている場合は、大きく深い呼吸をすることができません。
頚損と高位胸損は、呼吸筋である胸廓[きょうかく=肋骨で囲まれた心臓や肺が納まった部分]を膨らませたりしぼませたりする肋間筋[ろっかんきん]とか肋骨挙上筋[ろっこつきょじょうきん]などの機能にマヒの影響がでるので、くしゃみや咳払いがうまくできなかったり、嚥下[えんげ=飲み込み]がうまくいかなかったりするために、タンなどが肺に溜まりやすくなり、肺炎や呼吸器系の病気になりやすくなります。
特に、C5より高位の頚損は肺が充分にふくらまず肺活量が300cc以下程度と少ししか換気ができなくなり、風邪を引くと肺炎を起こして危険な状態になることが多々あります。
C5より高位の脊損者は、リハビリテーションではもちろん、在宅生活になっても一定の呼吸器訓練を行う必要があります。
また、呼吸法の訓練を行なうと共に、咳が困難な場合は、咳や排痰[はいたん=タンを出すこと]の介助方法の指導を受けてください。
在宅訓練については、医師の指示や関係機関から情報を得て、必要な場合は訪問リハビリや身の回りの方の手助けを得て自主的に訓練してください。
人工呼吸器利用
人工呼吸器の利用と管理については医師の指示に従ってください。
利用者の生命と気分がかかっているので、設定や管理、ケアについては本人が理解できるように配慮すると共に、本人が快適な状況を得られるように本人からの指示について細やかな対応を行うように気づかってください。また、常に本人への意思確認を確実に行ってください。
在宅での管理については、医療機関のスタッフと一緒に、利用している機器のマニュアルとは別に、緊急時に誰でもが対応できるように要点をまとめたわかりやすい操作手引きを作り、安全確実な管理の環境を作ってください。
また、在宅では一定期間ごとに、または、介助者などが代わったり増えたときには、意思確認訓練や機器の操作演習を行い、日ごろから指呼確認[しこかくにん]するなどの手順確認の習慣をつけてください。
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胃腸機能障害[いちょうきのうしょうがい]

腸管障害の項で説明した以外に、自律神経が制御する腸管の運動異常があると、時間がたってから下記の症状などが現れてくることがあり、しかも習慣化しやすくなります。

そして、こういった症状が習慣化したり、悪化したりすると、日常生活に大きな影響が出るだけではなく、大変苦しい思いをすることになります。気づいたら、早めに専門医にご相談ください。

イレウス(腸閉塞[ちょうへいそく]、偽性腸閉塞[ぎせいちょうへいそく])
イレウスは、腸閉塞症、腸不通症など、種々の原因によって腸内容の腸管内通過障害をきたした状態で、腹痛、嘔吐、ガスと排便の停止が起こり、おなか(腸)がはって大変苦しくなります。
脊損者の場合は胃腸の機能低下で、腸のイレウスと同じよう胃も胃アトニー(胃弱)になりやすく、また、これによって自律過反射を引き起こして、悪循環になります。
また、運動不足やお尻を前に出して背中を丸めて座る「すべりすわり」姿勢が胸郭(肋骨)によって腹部(内臓)を圧迫することなどによってもイレウスと同じような症状が起こることがあります。
シーティングを正しく行うこと、ゆったりと身体を伸ばして仰向けに寝て、ひざを立てたり、腰腹部を左右にゆっくりとひねったりすることでガスが抜けることがありますが、症状がひどい場合は専門医に相談してください。
なお、急激に激しい症状になると血圧が亢進して危険な状態になるので、胃や腸へ挿管[そうかん=口や肛門から管を入れること]して強制的にガスを出したり、開腹手術を行ったりしなければならないことがあります。
胃下垂[いかすい]・胃アトニー
胃全体が元の位置より下まで垂れ下がり、時にはへそのあたりまで落ち込んでいるのが胃下垂で、胃袋の張ったような痛みや、少量の食事で満腹したり、食後のむかつき、飽満感、食欲不振、精神疲労、意欲減退、また食後の胃のもたれ、腰痛、あるいは吐き気、げっぷ、排便不正常の症状が表れます。
また、胃下垂があって、胃壁の筋肉の緊張が低下し、胃の働きが鈍くなる状態を胃アトニーといいます。症状は胃下垂とほぼ同じです。
胃下垂の多くは生得的体質[せいとくてきたいしつ=生まれついての体質傾向]とされていますが、頚損や特に高位胸損が長期にわたると腹筋・背筋の筋力が著しく低下し、内臓を支えている体幹筋もゆるみ、胃下垂、胃アトニー様の症状が慢性的に起こり、胃部膨満感、おくび(胸つかえ)、自律過反射を生じたり、無気力化したりして、生活に支障が出ます。また、薬の副作用でも起こります。
胃下垂などでお腹が出張ってきたからと、細いベルトなどで無理に押さえ込むと腹腔内の腸管等が押さえられてイレウス様の症状が出やすくなったり、場合によっては排便しにくくなったりするなどの影響が出ます。逆にゆるめ過ぎると胃下垂様の症状が現れて体調維持が難しくなります。
腹部を押さえるときは、さらしなどの幅広の布や腹帯を巻くか、医師の処方で簡易な幅広のコルセットを作成して、適度に締めてください。
呑気症[どんきしょう]
食後、下腹部に軽い膨満(張って膨れた感じ)が生じたら、仰臥位(あおむけ)に身体を伸ばして寝てみてください。そうすると胃袋が元の位置に戻り、下腹部の膨満感が消えます。
人はみな、食事や唾液[だえき=つば]と共に空気を飲み込んでいます。繰り返し唾液を空気と一緒に飲み込む人や空気を飲み込むのが癖になっている人は呑気になりやすくなります。
本来、空気は軽いので水分の多い胃には流れ込みません。飲み込んだ空気の塊は食道の蠕動[ぜんどう]運動で胃の方に送られていきますが、食道の下方にたまった空気や、胃の中に入ってしまった空気がある程度たまれば逆流して「げっぷ」として押し出されます。
しかし、この作用がうまく働かずに、胃や食道に空気がたまり続けると、胃がふくらみ、イレウスと同じように大変苦しくなります。
対策は上記のような姿勢をとってガスを抜いたり、イレウスと同じようにします。
憩室[けいしつ]
さまざな内圧が働いて小さな風船のような袋(憩室)が内臓の筋肉層から外へ飛び出しているもので、憩室がある状態を憩室症といいます。健康な人の場合も中年期以後にできやすいものです。
憩室が一番多くできる場所は大腸で胃や小腸にできるのはまれです。また、消化管以外には膀胱などにもできます。
脊損になると、胃腸の機能が弱くなり、頚損や高位胸損は弛緩します。しかし、便が滞留したりガスが張ったりすると腸壁に圧力がかかり、憩室ができやすくなり、憩室に炎症が起こると憩室炎となり、脊損の場合は治療が困難になります。
便やガスをためないための排便習慣をつけましょう。
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痛みとしびれ

脊損による痛みとしびれは最もつらいものです。

痛みについては原因がわかるものとわからないものがあります。そして、原因のわからないものが非常にひどい痛みになります。

原因の特定できないものは、幻覚痛とか、損傷した脊髄神経の損傷面や神経伝導路への刺激などと考えられています。

対策についてはいろいろ考えられてきましたが、現状ではこれといえる解決策はありません。当初は劇的な鎮静効果があっても、いずれ身体がなれて効果がなくなるからです。

入浴やシップで痛みが軽くなる場合は骨格や筋肉系の痛みです。

なお、常時感じる痛み以外は、姿勢が原因になっていることがあります。ベッド上で仰臥[ぎょうが=うえむき]、横臥[おうが=よこむき]、伏臥[ふくが=うつぶせ]足の交差やひざの抱きかかえなどで痛みが軽くなる場合は姿勢が原因である場合が多いです。

特に、車いす使用時の姿勢が痛みやしびれの原因になっていることがあります。シーティングで車いすの座り姿勢を整えてください。

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骨粗鬆症[こつそしょうしょう]と骨折

骨は、カルシウムのバランスと骨に圧力(重み)がかかることで、日々のカルシウム成分等の消費と補給が見合って形状を維持しています。

高齢女性の脊椎の骨粗鬆症はホルモンバランスの変化等で吸収力が弱くなって引き起こされますが、脊損の骨粗鬆症は、血液の流れが悪くなったり、骨に体重がかからなくなったり、また、運動で骨に負荷をかけることができなくなって、骨を作る作用が低下して骨からカルシウム成分が抜けて骨がすかすかになるものです。

研究では、受傷後数ヶ月で骨の密度[みつど=詰まり具合]が著しく低下して、正常の半分程度になるとその後はほぼ安定します。

そのため足をぶつけたり、脚をひねったりすると容易に骨折することになります。

車いす使用時には、足を保護するために靴をはくこと、足先を落としたり引っ掛けたりしないこと、転倒に注意することや、何かで身体を支えて極端に身体を伸ばしすぎたりそらしすぎたりなどの無理な姿勢をとらないことや、車やベッドへの移乗(乗り移り)に注意することが必要です。

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異所性骨化[いしょせいこっか]

体質によって、マヒした関節の部分に余分な骨(軟骨)ができることがあります。このような症状が起こると、関節の可動域(かどういき=動かせる範囲)が制限されて、日常生活にも影響します。

関節の回転できる範囲を維持するための関節可動域訓練をやり過ぎるのが一因とも見られていますが、原因や、なぜ起こるのかの仕組みはまだわかっていません。関節に症状が出たら早期に専門医の診察を受けてください。

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皮膚と爪

脊損者は、受傷後の早い時期にマヒ域の皮膚の角質がはがれて皮膚が薄くなり、傷つきやすくなります。また、マヒのない皮膚でも体温調節のための発汗が低下して皮膚が乾燥します。その後、時間経過と共に、再角質化、肌の乾燥による荒れ、かゆみの発生などが起こります。状況に応じて清潔な肌用クリームなどを利用した肌の保護が必要になります。

体温調節のための発汗は低下したり消失したりしますが、陰部などの発汗は自律的に働いています。そして新陳代謝が低下しているので、陰部が蒸れて皮膚病に感染しやすくなっています。

また、爪が巻き込んだり、爪を切る際に深爪をしたり、巻き爪(まきづめ)や陥入爪が皮膚に食い込んで出血したり、炎症を起こしたりします。特に化膿すると菌が体内に入り込んで危険な場合があります。

また、足指の間や爪の水虫になると自然には治らず広がります。爪が白くなったりぼろぼろになったりする水虫には内服の特効薬があります。皮膚科で診察を受けてください。

肌の清潔を保つには、シャワーだけに頼らず入浴できる場合は積極的に入浴しましょう。自由に入浴ができない場合は、皮膚の清潔を保つ清拭(せいしき=身体をふいてきれいにすること)や洗髪、地域によっては訪問入浴サービスやデイケアセンターでの入浴サービスを活用してください。

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ウイルス感染症やバクテリア(細菌)感染症

ウイルスとは、細胞に寄生する細菌より小さい病原体の総称で、このウイルスに感染することにより、発病する病気を感染症と呼びます。ウイルスより少し大きい単細胞微生物ある種のものは有害で動植物に寄生して病原性を示すので、これを細菌感染といいます。

感染症の代表的なものには、肝炎や工イズ、成人T細胞牲白血病などがあり、その予防には、その感染症に対する正確な知識、特に感染経路などに関する知識や、予防接種、集団感染を予防するための徹底した消毒、手洗いが求められます。

以下は、すでに記載(再掲)していますが、大切なことなので再度記載します。

予防は清潔にすることで、手の洗浄(手洗いや消毒)が有効です。

特に、車いすの操作時には、タイヤの回転で地面などのほこりや土などが手元に舞い上がるので、外出から戻ったときには意識的に手洗いとうがいを行ってください。車いすの特にハンドリムやタイヤの清潔にも気遣ってください。

なお、薬剤耐性菌が増えています。しかし、これらの耐性菌の多くはヒトのからだや環境に常在する弱毒菌で、一般的には病原性は低く、通常の健康なヒトに感染しても発症することはまれです。しかし、体力が落ちて感染に対する抵抗力が落ちていると、弱毒菌でも感染症の原因となります。このような感染症を日和見[ひよりみ]感染症と呼びますが、薬剤耐性菌に対して消毒は有効なのできちんとした手当を行ってください。

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蜂窩織炎(ほうかしきえん)・蜂巣炎(ほうそうえん)

別称、フレグモーネともいいます。皮膚および皮膚深部の密度のあらい結合組織中に起る急性の化膿性炎症のことです。化膿菌が小さな傷などから皮下に侵入することによって起こり、腫脹・発赤・圧痛・熱感を引き起こし、化膿を伴います。抗生物質による数日の治療で症状は治まりますが、用心のために10日間以上投薬治療を継続します。

最近、脊損者に頻発する傾向があります。蜂窩織炎に限らず、マヒ域では生体防御の仕組みが充分機能せず、小さなけがで感染した細菌やウイルスが簡単に体内に侵入し、治療に意外とてこずり、数ヶ月も大変な思いをすることがあります。また、死亡したり、感染した脚を切断したりしなければならなくなったりします。簡単に考えず、感染部がはれてきた場合はすぐに専門医の診察を受けてください。

なお、蜂窩織炎と、深部静脈血栓症の初期症状は似ていますが、検査で区別されます。

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体重増加

人は、年齢による違いがあるものの、生活する中で、呼吸したり、体液が循環したり、消化したり、背筋を伸ばして身体を起こしたり、起立したり、歩行したりするための最低限必要なエネルギー(カロリー)があります。これを基礎代謝といい一日に必要なエネルギーの多くはこれに使われています。また、様々な動作によってエネルギーを消費します。

しかし、脊損になると、起立や歩行することや全身を使う運動ができなくなるので、基礎代謝が減り、さらに、動作や運動量も減るので、必要なエネルギーが同じ年齢の事務職の一日必要エネルギーの2/3から1/2程度にまで減少しているとみられています。

予防とダイエットには、食事の制限と運動することしかありません。

通常、健常者でも30代後半から基礎代謝量が大きく減少し始めますが、最近になって、脊損の場合はその影響がより顕著に出ると見られています。

食事量については、若くても注意が必要ですが、30代半ばになれば日常的に意識した注意を行いましょう。

なお、脊損の場合は、(温水プールを含む)水泳にはエネルギー消費の効果が見込まれますが、その他の車いすスポーツを行っても、脚や体幹の筋肉を使わないので、それほどエネルギーを消費しません。

ただし、車いすスポーツやアスレチック(体操)は筋力強化や身体機能を維持・強化するので積極的に行いましょう。

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その他

脊損にも起こりやすいことですが、全身の様々な機能が低下している場合には、薬の服用で思わぬ副作用が生じることがあります。

新たな薬を服用し始めたときや、それから数ヶ月後であっても、それまでになかった、体調の調子の変化が起こったら、服用している薬との関係について主治医や投薬を受けた薬局の薬剤師に相談してください。

そのためには、日常的に薬の服用と体調の関係について意識してください。

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このページの作成所属
福祉部 障がい福祉室地域生活支援課 地域生活推進グループ

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