リハビリテーション訓練の時期の違いとそれぞれの内容

更新日:令和3年3月4日

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リハビリテーション訓練の時期の違いとそれぞれの内容    脊損ケア手帳(平成19年3月31日発行)39ページ

訓練期

医療的リハビリテーションの前期訓練と後期訓練

社会復帰や社会での活躍を最終ゴールとする脊損のリハビリテーションには、最初に、臥床期から離床期へと続く、残存している機能を回復・強化させる医療的リハビリテーションの前期訓練と後期訓練があります。

前期訓練

前期訓練は、一般的に言われる安静期から回復期にかけての医師の指示に基づくもので、看護師の指導によるベッド上や病棟での生活指導と訓練、PT・OTの専門的指導による基本的な運動機能や動作についての訓練の段階で、残存機能の復活を目指すものです。

健康な人でも長時間安静に寝ていると血圧の調整機能が低下します。

脊損者の場合は副次的障害としての低血圧や起立性低血圧があるので、急に起こすと脳貧血を起こします。絶対安静期が過ぎれば、ベッド上で少しずつベッドを起こす(ギャッジアップ)ことから始まります。

なれてきて、ベッドのリクライニング角度を上げても大丈夫になれば、ベッドサイドでの呼吸訓練、マヒで機能低下した筋力アップ、健在筋の筋力維持・増強、関節可動域(関節の回転する範囲)の維持、体位変換、座位保持に始まり、訓練室での座位動作とバランス、プッシュアップ、座位移動、起立台での立位荷重、さらに、車いすに乗る訓練になります。

多くの場合、脚を下ろすことで再び脳貧血を起こしますが、これにもなれると、車いすを使った、ベッドや訓練台や床位置の訓練マットへの移乗へと進みます。この時期はまだ身体が安定しないので、PTやOTの指示に従って、無理なさらないようにしてください。

また、この時期には、「障害受容(障害適応)」といって、障害者になったことを心で受け止めきれない心の葛藤があります。

これを乗越えるには周りの人たちの支えがとても大切ですが、最後は本人が現実を受け入れて、将来に希望を見出して、乗越えるしかありません。

49ページの「障害受容のステップ」を参照してください。

そして、排尿と排便のための訓練が始まります。

排尿と排便についてはいくつかの方法があります。まずは医師や看護師・PT・OTなどの医療専門職の指示で基本的な方法を覚えてください。

排尿については、初期には留置カテーテルが使われますが、いずれはカテーテルを使うCIC(清潔間欠自己導尿法)が第一の原則になります。カテーテルにはいくつかの種類があります。自分に合ったタイプの利用法を知っておかなければなりません。使うか使わないかは別にして、必ずその手法を習得してください。トラブルが起きたときの助けになります。

その後、自分にあった方法、自分なりの生活パターンに適した方法に切り替えてください。それでもうまくいかない場合は、専門医や脊損ピアマネ、関係機関に相談してください。

後期訓練

前期訓練に続く、日常生活に結びついた目的のある動作の訓練です。

ここでの目標は、IADL(手段的日常生活動作能力)です。

それは、脊損のレベルによって目標が制限され、手法も異なりますが、床面と車いすとの間の移乗、車いすと自動車との乗降、起居、整容、入浴、排泄、更衣、移動、食事などの日常習慣的生活動作に始まり、買い物、炊事・調理、洗濯、掃除などの家事動作、さらに、日常生活や社会生活に関わる動作、パソコン操作、自動車運転、公共交通機関利用、外泊訓練へと広がります。

この段階に入ると、基本的には動作の制限がなくなります。どんどんいろいろなことができるようになってきて、訓練にも勢いがついてきます。

指導を受ける訓練だけにとどめず、時間を無駄にしないように、医師やPTやOTの許可を取って、どんどんと自主的な訓練を始めましょう。

特に、ウエイトトレーニング(筋肉の肥大と筋力を高めるために、バーベル、ダンベル、エキスパンダーなどの主に重量負荷物を使うトレーニング)と、車いす利用者に対応した宿泊施設の利用や、帰宅しての外泊訓練は大きな効果があります。

また、PTやOTによる効果的な身体の動かし方の指導などと共に、脊損ピアマネの経験によるスキル(技法)やコツのデモンストレーション(模範演技)、具体的な生活のお手本(ロールモデル)やライフモデルが参考になります。

一日も早く在宅生活に戻れるように、ソーシャルワーカーや脊損ピアマネを活用して、この後のライフプランづくり(人生設計)を行ってください。

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トータル・リハビリテーションの復帰期と発展期

トータル・リハビリテーションとは

図9の医療的リハビリテーションを終えて退院してから、職業的リハビリテーションや社会的リハビリテーションといわれる時期があります。

これは、脊損者として地域生活や社会生活を行う上で必要になる様々な生活技術(生活力と社会力)を獲得することで、脊損者として身体機能的障害を持ちながら人生を作りだすのに必要なものになります。

復帰期

脊損者は、他の重い障害のある人たちと異なり、退院後の生活復帰と再建、在宅生活や社会生活に向けて、特に就労のための職業的リハビリテーションや、障害を持った状態で社会に出て行くための様々なノウハウ(情報や知恵)やハウツー(方法)やスキル(技術)などの「脊損の生活技術(生活力と社会力)」を獲得するための社会的リハビリテーション訓練プログラムがあります。

医療的リハビリテーションで行ったIADLの修了は義務教育を終えたようなものです。医療やリハビリテーション関係者は、その目的とする訓練が終わったので、基本的には、「退院おめでとう。ここから後は自分の生活を作るためにがんばってください。」となります。

その後、自分でどんどん物事に挑戦し、うまくやっていける方は問題ありません。

しかし、家に帰って日常生活を組み立てるにも、広げるにも、社会に出て活動するにも、趣味に取り組んだり、生きがいを見出したりするにも、課題に立ち向かい行動を広げる必要があります。

自宅では、それぞれの障害に合わせた生活環境を整えられますが、社会は標準的な仕様の対応しかできていません。また、それさえもすべての施設で行えているわけではありません。

さらに、様々な起こるであろう問題に柔軟に対応して適応するには、なおいっそうの工夫や努力が必要になります。そのためにはささいことにも意欲を喚起し、勇気を持つ必要があります。そして、そのためには脊損者としての物事や社会とのあり方や、生き方についての考え方やとらえ方、哲学(人生観・世界観)と生活技術を必要とします。

脊損になる前のあなたが旅行するのを思い出してください。きっと旅行のための準備表を参考にあれこれ用意したことだと思います。脊損になると、一つ一つの新しい体験について、これと同じようにすればよいのです。

例えば、元の就職先に戻るにも、新たに就労するにも、就学するにも、まず一日24時間、一年365日の体調の維持が必要です。

そして、通勤通学の手段や道中、出先のバリアフリー環境の整備、雨天や酷暑・厳寒への対処などなど、脊損になったために必要な調整などがあります。

少し面倒ですが、ひとつの体験は次の機会の参考になり、日をおかずにあなたもベテランになり、脊損による不自由や不便をあまり気にかけずに行動できるようになります。

そのためにも、なじみがなかった障害者福祉の理念(根拠)や制度や社会資源に関する情報収集や勉強を行ってください。

そして、家族や、旧来の友人・知人、新しくできた脊損仲間との時間を大切にして、仕事やレクリエーション(余暇)、社会参加活動など、自分の人生に改めて挑戦し、自分の幸福を築きましょう。それが脊損のトータル・リハビリテーションの始まりです。

職業リハビリテーションについては、公立の生活機能訓練を行う更生施設、職業能力を取得する職業能力開発校、コンピューター操作能力を習得する大阪府ITステーションなどがあります。必要に応じて活用しましょう。元の職場に復帰することを含めて障害者の就労には障害者雇用促進法に基づく支援策があります。

社会リハビリテーションについては、内容が多岐にわたります。まず本人が「何を目指すのか?」「どうしたいのか?」を示さなければなりません。その糸口をつかむのも本人が取り組まなければなりません。

そのためには府下の団体が開催する様々な講演会や研修会などの機会を積極的に活用してください。また、脊損ピアマネへの相談も非常に有益です。詳しい内容については、関係機関に相談してください。

しかし、もともと社会経験がある中途障害者といわれる脊損の多くにとっては、すでに具体的な生活目標や人生の目的がある場合が多いので、その目標・目的の実現に向かって行動するだけです。目的実現、目標到達への道のりは、障害のある人もない人も基本的な取り組みは変わりません。

発展期
  • 脊損になったことは残念です。
  • しかし、社会はバリアフリー(障壁や障害のない社会環境)やユニバーサル・デザイン(より多くの人が生活しやすい)社会を目指しているので、私たち重い障害のある脊損も、障害の状況や生活条件によりますが、多くを望まないなら無理をせずにゆっくりのんびり生きることがほぼ可能になっています。これも人生の選択肢の一つです。
  • さらに、脊損になったことで新しい発見や可能性もあります。あなたが今おかれている状況から飛躍したいと願うなら、様々な支援制度や施策があります。また、脊損のネットワークがあります。
  • 社会で言われるコンピューターをはじめとするIT(情報)技術を使いこなせるか否かによって生じる情報格差(デジタルデバイド)は、障害のある人には情報好機(デジタルオポチュニティ)です。訓練手当(給付)を戴きながらIT技術を習得する制度や雇用につながる支援を行う機関もあります。障害者の場合は、社会的な差別や不利がある弱者を救済するための積極的な優遇措置(アファーマティブアクション)による起業や、福祉的な事業への取り組みも可能です。
  • 自分自身を活かして、生きがいをつくりだし、自分の人生を実らせましょう。脊損ピアマネに相談してください。
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補足説明

  • リハビリは開始が一日遅れれば復帰まで一週間余分にかかるといわれています。再入院時も同じです。留意ください。
  • 状態のよい胸・腰損者でも、体調や日常生活の安定には、実例的に受傷後3年程度はかかるものとご承知ください。また、不全マヒの方の機能回復や安定には数年以上の長期間かかる場合があります。
  • リハビリテーションの期間には、様々な脊損に必要な対処法を習得するとともに、多くの失敗や苦労をされることになると思います。
  • これは脊損者にとっては逃れられない苦労であり、苦痛です。不全マヒの方にとっても同じ状況です。少しでも早く慣れるしかありません。なれてしまえば、後は普通に生活するだけです。
  • 医師による行動の制限がなくなれば、身体機能や筋力や精神力を鍛えるにはスポーツ活動(取り組み)が効果的です。46ページの「車いす利用者のレクリエーション種目等」を参照してください。
    車いすでできるスポーツには限界も限度もありません。普通にスポーツを行うように準備と段取りを行って、安全を図りながら好きな種目に取り組んでください。スポーツは脊損仲間との交流の機会にもなり、そこから新しい世界が広がります。スポーツになじまない方には、その他のレクリエーションがあります。ここで注意するのは、身体機能の維持増進のためにはできるだけ自分で行うことです。
    日常生活の中で、マヒしている身体の機能維持には、健全な手でマヒしている手足を助けて運動してください。特に重度の頚損者の場合は、他人の助けを借りて行いましょう。一見効果がないように思えますが、手足の動きは筋肉の屈伸につながり、血管を圧迫したり緩めたりするので血行が良くなります。また、筋肉や関節の萎縮等を防ぎます。また、適度な刺激は痛みやしびれを鎮めます。健康のため、予防のため、そして、いつか新しい治療法ができる日に備えてください。
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車いす選び

脊損のリハビリテーションの前提に車いすの利用があります。また、日常生活を快適にするための前提です。きちんと調整した車いすは快適です。

車いすの設定と調整については、一般的な事柄と、脊損者の障害レベルや状態との個別的なこととがあります。まずは専門職に相談してください。

脊損者にとって車いすは身体の一部です。専門職や業者にもシーティング(次項)を良く知らず、きちんと調整できない場合があります。ご自身で基本的な採寸と位置設定とバランス等の調整については知ってください。

最も基本になることは、まず第一にタイヤの空気圧を管理して座面(ヒップポイント=坐骨ポイント)の位置・高さが動かない、変わらないようにすることです。タイヤの空気が抜けると標準状態に比べて座面の高さで最大3cm低くなります。そうすると座面が3cm後に沈み込み、背もたれも後ろに3cm程傾きます。それぞれ傾斜が3から4度変わることになります。行動的な方はパンクしないタイヤを選ぶと管理が楽です。

その上で、作業や運動のための姿勢か、軽作業のための姿勢か、安楽な姿勢かといった活動や状態にあわせて座面と背面の角度を決めます。

次に、利用するクッションの種類を決めて、自分の座り姿勢と、体重と、でん部の骨のとがった部分になる座骨や仙骨の位置から、座面に対するクッションの設置位置を決めて、除圧調整後の座面基準高を決めます。

その後、足の前後位置と高さ、日常的に利用する履物を履いた状態でのクッションと脚とひざ裏の当り、適当な座幅(骨盤の幅に+5から6cm)、最後にお尻の収まり、腰の支え(ランバーサポート)、背もたれの高さと角度などを決めます。

また、車軸の前後位置でバランスや操作性が大きく変わります。タイヤを少しハの字にする(キャンパー角をつける)と悪路での操作性がよくなりますが、直進性は低下します。

脊損者のシーティングはマヒ域に感覚がないので、特に時間をかけてていねいに微調整を重ねなければなりません。そのために手間がかかると専門職や業者がおざなりにしがちです。そのためにも脊損者本人が要領を把握しておくことが肝心です。また、床ずれ予防や姿勢保持についてはそれぞれに適した必要な用品を利用してください。

なお、最近では、購入後でも調整のできるアジャスタブル(調整)方式の合金製の車いす利用者が増えています。そのほうがシーティングのセッティングには安心ですが、特別な体格の方や、頚損者や力の弱い方などは、フルオーダー式のアルミ製車いすの方が利用しやすいようにつくることができます。

電動車いすについては、多様な種類、性能のものがあります。価格が高くなるので、購入については、リハビリテーション中の場合は病院のケースワーカーやPT・OTに相談してください。在宅の場合は関係機関や脊損ピアマネに相談してください。

なお、車いすは日常的な調整や手入れや掃除が必要となります。清潔にしてください。正しい方法で車いすは洗えます。

シーティング

車いすの座面や背面のシートを人の身体に合わせることで、床ずれ予防のためのものと、操作しやすいようにバランスを調整するものと、楽な姿勢をとるためのものと、姿勢の傾きなどを予防し姿勢を保持するためのものがあります。それぞれに設定が相反することがあるので、車いす選びの項で説明しているように、車いすの利用目的に合わせたシーティングの方法について知っておく必要があります。

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住宅整備

脊損者の在宅生活の最も基礎的な環境整備、条件になります。

近年、バリアフリーや住環境整備についての意識が高まり、専門的資格も整備されていますが、設計する人と施工する人が異なるので、実際に住んで利用する脊損者の立場からの希望がスムーズに伝わるようにしなければなりません。また安易に機器類での対応を薦めるのは感心しません。

OTやPTやケースワーカーに相談してください。脊損ピアマネへの相談も役に立ちます。脊損協会のホームページも参照してください。

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福祉機器と自助具、補装具と日常生活用品

脊損者の日常活動を助ける機器や道具には、補装具と日常生活用品として公的な支援品目があり、その貸与や支給についての窓口と判定は58ページの市町村の福祉事務所が行ないます。なお、各市町村で一部の基準が異なります。福祉機器と自助具については、脊損ピアマネか57ページの主な相談支援機関にご相談ください。

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このページの作成所属
福祉部 障がい福祉室地域生活支援課 地域生活推進グループ

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