脊損の経過とリハビリテーション

更新日:2021年3月4日

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脊損の経過とリハビリテーション      脊損ケア手帳(平成19年3月31日発行)34ページ

まず、脊損を発症してから治療を終えて、地域生活(自宅や施設)に入るまでの医療的手当についての流れを説明しています。

まず、図8に受傷から医療的リハビリテーションを経て退院に至る大まかな流れを示しています。

図8 脊損の経過と医療的リハビリテーション
この画像は脊損の経過と医療的リハビリテーションです。

医療的リハビリテーション

臥床期(安静期・脊髄ショック期)
脊損は大きな事故を原因とすることが多いので、損傷直後は脊損の症状だけを示すことが少なく、外傷性ショック症状や呼吸器系や心臓循環器系の症状、四肢の運動や感覚のマヒ、脳震盪などによる意識障害、皮膚外傷などの症状が重なるので、まず、救急救命措置が行われます。この時期を安静期といいます。
外傷性のショック症状と共に、脊髄そのものも受傷直後から脊髄ショックといわれる症状を示します。これは、損傷部位だけではなく、脊髄全体に損傷の影響が現れたり、脳と脊髄との連絡が途絶されることによって発生するもので、数日から数週間続きます。
この時期の症状は、脊損部位以下の完全な弛緩性マヒが起こり、腱反射をはじめとするすべての反射が消失します。
その結果、膀胱反射消失による尿閉、内臓運動反射と直腸反射の消失による腸管蠕動運動[ちょうかんぜんどううんどう]停止による便秘、障害レベル以下の血管の拡張による血圧の低下などが見られます。そこでこの時期を脊髄ショック期ともいい、安静を保持します。
離床期(回復期・慢性期)
受傷後、損傷レベルによって差があるものの、1から3ヶ月の時期は、特に回復期と言われています。
脊髄ショック期に消失していた反射が再び現れ、マヒ域に痙性が起こるようになります。マヒの強さやマヒのレベルの回復には大きな差が見られます。
不全マヒの脊損の多くはここで回復できる神経部分が回復し、マヒ域も減少します。
受傷後3から4ヶ月を過ぎればほぼ慢性期になります。胸・腰損者の多くは、排泄訓練や日常生活のための訓練を終えるので在宅生活に戻ります。そのためには、自分にあった車いすを受傷後一ヶ月程度で発注しておかなければなりません。
マヒの回復は、この後も徐々に6ヶ月から1年以上にわたって進みますが、6ヶ月を過ぎると大きな回復が見られなくなり、リハビリテーションにも顕著な効果がなくなるので、当初のリハビリテーションの終了時期とされています。
頚損者の多くも6ヶ月を経過した頃にほぼ治療とリハビリテーションが終了します。これにあわせて、住宅や介助や移動手段の確保といった退院とその後に向けた備えが必要になります。
C5より高位の頚損者は、訓練意欲や訓練効果が期待できる場合はリハビリテーションを継続されますが、そのための医師による継続効果の認定は厳密になっています。
胸・腰損も頚損も、この後必要が認められれば、更生施設で訓練を継続しますが、多くの場合は、在宅で、生活訓練やスポーツを活用したリハビリテーションに取り組むことになります。
退院後(固定期・フォローアップ期)
受傷後1年以上過ぎて、マヒがほぼ一定の状態になり、これ以上回復しないとみなされる時期ですが、慢性期とほとんど区別できず、また、この後まったく回復しないものでもありませんが、多くの脊損者にとっては、この状態がほぼ一生涯にわたって続きます。
また、体調管理の面からは、脊損になってから約3年で一通りの状況を経験し安定します。約6ヶ月の医療と生活のためのリハビリテーション訓練と、約3年後の生活上の身体的安定は別のものなので、この間は我慢と注意が必要です。
脊損者の髄節別に予想される医学的な残存身体機能の基本的な到達ゴール(目標)と使用すべき補装具等は36ページを参照してください。
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このページの作成所属
福祉部 障がい福祉室地域生活支援課 地域生活推進グループ

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