大津川水系河川整備基本方針

更新日:2022年12月13日

1河川の総合的な保全と利用に関する基本方針

1.1流域の現状

(1)水系の概要

大津川水系は、その源を?城山系に発し、父鬼川、東槇尾川、槇尾川、松尾川、牛滝川の支川を合流して大阪湾に注ぐ、流域面積102.2km2、流路延長約68.0km(うち二級河川指定区間流路延長56.6km)の府下最大の二級水系です。その流域は、和泉市、岸和田市、泉大津市、忠岡町の3市1町にまたがっています。

(2)流域特性

1.自然環境特性

流域の地形は、沿岸部及び河川沿いは低地が広がり、中流部は段丘や丘陵地、上流部は山地が広がっています。
気候は瀬戸内式気候に属し、年間を通じて温暖な気候となっており、年平均気温16.4℃、年降水量1,387mm(平成11年堺地域気象観測所)となっています。梅雨期や台風期前後に降雨が多いという特徴がある一方で、年間を通じての降水量は比較的少なく、古くから灌漑用のため池が数多くあります。
流域は上流部を中心に豊かな自然環境が広がっています。植物では中流部の丘陵地にアラカシや竹林等の植生が点在するほか、?城山系の一部となる上流部の山地ではモチツツジ−アカマツ群集やスギ・ヒノキの植林等の植生が分布し、牛滝川上流の一部にはブナの原生林もみられます。
動物では多くの種の生息が確認されており、そのうち河川に関わりの深いものとして、魚類では上下流を通じてオイカワ、中流部から上流部でカワムツ、上流部でカワヨシノボリ等が多く確認されています。昆虫類では中流部から上流部でムカシヤンマやゲンジボタル等、両生類では松尾川上流でオオサンショウウオ、槇尾川上流でカジカガエル、その源流部ではブチサンショウウオの生息が記録されており、また、鳥類では下流部でカワウ、上下流を通じてカワセミ、中流部から上流部でヤマセミが確認されているほか多くの野鳥が生息するなど良好な水辺環境を有しています。このほかにも流域では、ニホンザルやイノシシ等の哺乳類やオオタカやハイタカ等の猛禽類も確認され、多様な生物の生息環境が形成されています。

2.社会環境特性

流域の各市町の人口(平成7年国勢調査)は、泉大津市が約69,000人、忠岡町が約17,000人、和泉市が約157,000人、岸和田市が約195,000人となっており、特に泉大津市、和泉市は府内でも人口増加率の高い地域となっています。
下流部から中流部にかけて大部分が市街化区域となっており、中流部の丘陵地において和泉中央丘陵新住宅市街地開発事業(トリヴェール和泉)等の整備が進められ、宅地が大きな割合を占めています。また中流部は水田やミカン畑など農地が比較的多く残っており、豊かな自然の残る上流部は、槇尾川周辺から?城山一帯にかけて金剛生駒紀泉国定公園に指定されています。
代表的な産業としては「泉州ミカン」の生産や繊維工業も広く知られています。
流域には、「大津川河川公園」、「蜻蛉池公園」、「和泉市立青少年の家」、「牛滝温泉森やかの郷」等の施設や槇尾山や?城山のハイキングコース、施福寺等の寺社、観光・レクリエーション施設が多く位置しています。
交通は、下流の低地部では大阪と和歌山を結ぶ南海本線、国道26号、JR阪和線といった交通網が従来から基幹を成していたものの、大阪湾沿岸の臨海工業地の発達等により、道路における慢性的な渋滞が見られるようになり、高速道路等の整備が進められるようになりました。平成5年には阪和自動車道が中流部を通り、平成6年には泉州沖の関西国際空港のアクセス道路として阪神高速湾岸線が開通しています。また、上流の山沿いを国道170号(大阪外環状線)が通過するほか、国道480号は槇尾川に沿って上下流を結び和歌山県へ通じています。

3.歴史・文化

流域の歴史は古く弥生・古墳時代に遡り、国指定の史跡である池上・曽根遺跡、摩湯山古墳や「和泉」という名の由来といわれる泉井上神社の和泉清水等の遺跡が点在するほか、奈良時代には、現在の和泉市に和泉国の国府が置かれ、当時の泉州地域の政治、経済、文化の中心地として役割を担っていたとされています。中でも、弥生時代の環濠集落とされる池上・曽根遺跡は、当時の建物が復元され「池上曽根遺跡史跡公園」として整備されるなど、歴史を伝える取り組みが成されています。

(3)河川特性

1.河川の景観

流域の下流部では、宅地や商工業地が密集する市街地の中、川幅が広く、高水敷に公園が整備されるなど、広がりのある良好な河川景観となっています。中流部は水田や果樹園が多くみられ、河川は人工的なブロック積の護岸が目に付きますが、河川沿いの樹木が水面を覆う美しい景観もみられます。上流部は集落の点在する山間部となり、河川は樹林や露岩のみられる渓流の様相を呈しています。

2.水環境

本水系の水質汚濁にかかわる環境基準は、流域の下流部の大津川橋(大津川)では魚類が生息する限界と考えられるD類型に、高津取水口(大津川)、高橋(牛滝川)、新緑田橋(松尾川)、繁和橋(槇尾川)ではアユなどが住めるとされるB類型に、上流部の神田橋(槇尾川)ではイワナなどがすめるとされるA類型に指定されています。平成10年度の調査においてBOD(生物化学的酸素要求量)75%値が環境基準値を達成しているのは、大津川橋(大津川)、神田橋(槇尾川)であり、その他の地点では、環境基準を上回っています。各地点のBOD(年平均値)では、昭和63年以降、平成6年を除いてやや改善もしくは横這いの状況にあります。今後、下水道の整備に伴い水質の改善が図られる予定です。

3.水利用と空間利用

大津川水系の河川の水は、古くから農業用水として、多く利用されています。大津川流域では、ため池により農業用水を確保してきた歴史があり、河川の水は、ため池の水源の役割も担っています。
一方、河川空間の利用については、大津川・牛滝川の高水敷を公園等の広場として解放しており、また、槇尾川下流や松尾川中流、牛滝川上流などでは水遊び等を楽しむことができる親水護岸の整備が行われており、府民に親しまれています。

4.治水事業の沿革

治水事業の沿革は、昭和27年7月豪雨による大出水を契機に、災害復旧助成事業に着手したのを始めとして、昭和46年には基準地点高津における基本高水のピーク流量を1300m3/s(計画規模1/100)とする大津川水系の全体計画を定め、河口から槇尾川・牛滝川の合流点までの区間について堤防の築堤、河床の掘削等を施工するとともに、槇尾川・東槇尾川・松尾川等について下流から順次、河川改良工事に着手しました。

さらにその後、流域内では関西国際空港の開港に伴い、住宅地(トリヴェール和泉)等の開発が著しく進行したため、住宅宅地開発関連事業として大津川・牛滝川・松尾川の改修を進めました。
また、平成7年7月の洪水をきっかけに、当面は市街地を中心に時間雨量50ミリに対応できるよう河川の整備を進めています。
なお、河口から下流部の楯並橋までの約1キロ区間においては、高潮対策事業を実施し、伊勢湾台風級の超大型台風による高潮にも対応できる高潮堤防が完成しています。

1.2流域の将来像

流域は概ね山地が主となる上流部、丘陵地が主となる中流部、市街地の広がる下流部に分かれ、大阪府新総合計画及び流域各市町の総合計画等により、次のような方向付けがなされています。
・下流部:国際交流、物流等の諸機能の強化、産業面の高度化(都市型・高付加価値型産業)等による特色ある都市を目指す。また、都市環境の向上を図る。
・中流部:山地と市街地の緩衝帯としての役割を担い、良好な住宅地の供給、身近な自然の場の創出等を進める。
・上流部:自然の保全と活用を基調とした地域を創出する。

1.3河川の総合的な保全と利用に関する基本方針

河川の総合的な保全と利用に関する基本方針としては、河川改修の実施状況、水害発生の状況、流域の市街化の進展及び河川環境の保全を考慮し、流域全体の保水機能の維持を含めた治水対策を進め、治水安全度の向上を図ります。
また、流域の社会・経済情勢の発展に即応するように大阪府新総合計画及び流域各市町の総合計画などを考慮し、地元市町との協力のもと計画的なまちづくりとの連携を行うとともに、河川利用の現状、既存の水利施設などの機能の維持に十分配慮して、水源から河口までを含めて調整を行い、河川の総合的な保全と利用を図ります。

(1)当該河川の洪水、高潮等による災害の発生の防止又は軽減に関する事項

洪水による災害発生の防止または軽減としては、本水系下流部の都市化の進展および中流部の今後の都市化の進行を鑑み、本水系の治水計画は100年に一度程度発生する規模の大雨が降った場合に発生する洪水を安全に流下させるものとします。なお、整備にあたっては、段階的な目標を定め、実施するものとします。

さらに、計画規模を上回る洪水や高潮及び整備途上における施設能力以上の洪水などによる被害の軽減を図るために、降雨時における雨量、水位などの情報提供、ハザードマップの作成等により住民の安全な避難行動や地域防災活動を支援していくものとします。

(2)河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関する事項および河川環境の保全と整備に関する事項

流水の正常な機能の維持に関しては、今後とも、適正かつ効率的な水利用が図られるように努めるとともに、動植物の生息・生育環境及び水質等に十分配慮して、確保すべき流量を設定し、流域住民及び河川利用者等の協力のもと、その流量の確保に努めます。
また、大津川水系では、流域が持つ歴史・文化・景観や流域の多様な自然環境に配慮し、各地域の特徴を活かした川づくりを行います。そのため、下流部では都市及び市街地における貴重な「オープンスペース」及び「自然空間」としての役割を果たすような川づくりを、中流部の丘陵地では、良好な水辺環境の形成を目的とし「人と自然との共生」を目指した川づくりを行います。また、上流部では良好な水辺環境の維持に努めるとともに、周辺の豊かな自然環境に十分配慮した川づくりを行います。

(3)河川の維持管理に関する事項

河川の維持管理に関しては、災害発生の防止、河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全の観点から、河川の有する多面的機能を十分に発揮させるよう適切に行うものとします。また、高潮対策に関しては、伊勢湾台風級の大型台風の通過による高潮にも対応できる高潮堤防が完成しており、今後もその機能の維持に努めていきます。
さらに、日頃から川に親しんでもらうため河川に関する情報を流域の住民に提供するとともに、河川愛護思想の普及に努めていきます。

2河川の整備の基本となるべき事項

2.1基本高水並びにその河道及び洪水調節施設への配分に関する事項

基本高水は100年に1度発生する規模の降雨(1時間あたり86.9ミリ)で発生する洪水を対象とし、そのピーク流量は、基準地点「高津」において1,300m3/sとし、これを河道に配分します。

表−1 基本高水のピーク流量等一覧表(単位:m3/s)

河川名

基準地点名

基本高水の
ピーク流量

洪水調節施設に
による配分流量

河道への
配分流量

大津川

高  津
(河口から1.1km)

1,300

1,300

2.2主要な地点における計画高水流量に関する事項

計画高水流量は、槇尾川の 板原地点において、上流の洪水調節施設による調節効果50m3/sを見込み 700m3/sとし、その下流で牛滝川及び残流域からの流入量を合わせ、大津川高津地点において、1,300m3/sとし、河口まで同流量とします。

計画高水流量配分図
図−1 主な地点における計画高水流量配分図(単位:m3/s)

2.3主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項

主要な地点の計画高水位及び計画横断形に係わる概ねの川幅は、次表に示すとおりとします。また、河川工事の施工にあたり、河道の横断形については、現況の形状を尊重した上で必要に応じて拡幅し、適正な河川環境の保全と整備に配慮するものとします。

表−2 主要な地点における計画高水位等一覧

河川名

地点名

河口又は合流点
からの距離

計画高水位

川幅
(m)

備考

(O.P.+m)

(T.P.+m)

堤防高
(O.P.+m)

堤内地盤高
(O.P.+m)

左岸

右岸

大 津 川

高 津

河口から
1.1km

6.50

5.20

98

7.7

2.7

4.3

槇 尾 川

板 原

大津川合流点から
0.5km

12.38

11.08

53

13.4

10.5

11.2

牛 滝 川

北 出


0.7km

12.20

10.90

55

13.2

9.5

10.2

西大路町


2.1km

17.97

16.67

31

19.0*

19.0*

松 尾 川

小 田 町

牛滝川合流点から
0.6km

17.77

16.47

25

18.8

15.5

15.5

(※) O.P.:大阪湾基準標
    T.P.:東京湾中等潮位
計画高潮位:O.P.+4.70m
     (*)背後地盤高

2.4主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項

大津川水系の既得水利としては、水道用水、工業用水及び農業用水の許可水利並びに農業用水としての慣行水利がありますが、過去において大きな取水障害は生じていません。
流水の正常な機能を維持するため必要な流量は、今後、流況や取水実態等の把握に努め、流水の占用、生物の生息・生育環境の状況等から総合的判断の上、決定するものとします。
画像です。大津川水系流域図

大津川水系流域図

 

このページの作成所属
都市整備部 河川室河川整備課 計画グループ

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