大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第188号)

更新日:2010年6月7日

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第188号)

大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第188号)

〔平成19年度分産業廃棄物管理票交付等状況報告書部分公開決定第三者異議申立事案〕

(答申日 平成22年6月7日)

 

第一 審査会の結論

 実施機関の決定は妥当である。

 

 

第二 異議申立ての経過

 

1 平成21年6月15日、大阪府知事(以下「実施機関」という。)に対し、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、「平成19年度分として下記担当課(産業廃棄物指導課)に提出された産業廃棄物管理票(紙・電子データ)交付等状況報告書で、産業廃棄物の種類が「汚泥」を含む業者のもの全ての写し」についての行政文書公開請求(以下「本件請求」という。)が行われた。

 

2 同年6月18日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書に異議申立人である株式会社○○に関する情報が記録されていることから、条例第17条第1項の規定に基づき意見書提出の機会を付与するため、異議申立人に対して、第三者意見書提出機会通知書を送付した。

 

3 同年6月26日、異議申立人は、実施機関に対し、次のとおり、本件行政文書の一部について公開に反対する旨の意見書を提出した。

(1)公開に反対する部分

   紙情報により提出された「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」のうち下記の部分

   ア 交付された管理票欄のうち「管理票交付者 氏名又は名称」及び「交付番号」

        イ 受入先ごとの受入量欄の「受入先」及び「受入量」

   ウ 目的地への運搬欄の「運搬先」及び「運搬量」

   エ 積替え又は保管欄の「排出量」

   オ 産業廃棄物の物品名(名称)

(2)公開に反対する理由

  本件情報は、当社の業務である廃棄物処理業の契約相手方や運搬先、物品、数量等、営業の秘密に属する情報が大部分を占めておりこれら情報を公開することは、当社の営業活動上著しい不利益を蒙る恐れがあり、当社の競争上の地位、その他正当な利益を害されることになる(条例第8条第1項第1号及び同条第2項第1号違反)。

 又、本件情報を公開することは、当社の契約相手方である個人及び法人が識別される可能性が多分にあり、当社が相手方と締結している「産業廃棄物処理委託契約書」、「産業廃棄物処理委託契約約款」(契約書及び約款の条文中に機密保持条項が存在する)に違反するとともに、契約相手方から契約違反として損害賠償等の請求または、訴訟等の問題になることも予想され経営上のリスクが非常に高い(本件情報を公開することは、条例第8条第1項第2号及び同条第2項第1号違反)。

 さらに本件申請者のような情報公開請求そのものが当社の営業機密の暴露を目的とするものであるから情報公開に名を借りた不正競争を企図するものであることは、明らかであり、このような情報公開請求は、条例の目的と条例制定の趣旨に大きく乖離するものであり条例第1条に違反する。

 以上の理由により本件情報公開に反対する。

 

4 同年7月9日、実施機関は、本件請求に対応する行政文書として、下記(1)の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、下記(2)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、その旨を請求者に通知するとともに、条例第17条第3項の規定により、公開決定をした理由を下記(3)のとおり付して異議申立人に通知した。

(1)行政文書の名称

   紙情報により提出された「産業廃棄物管理票交付等状況報告書(平成19年度)」

(2)公開しないことと決定した部分

   個人の氏名(法人取締役を除く)

(3)公開決定をした理由

 本件行政文書(公開部分)に記録されている情報については、当該法人及びその事業の性質等を考慮すると、当該法人の競争上の地位、その他正当な利益を害するとは認められず、条例第8条第1項第1号には該当しない。そのほか、同条例第8条第1項各号又は第9条各号(非公開情報)に該当しないため。

 

5 同年7月22日、異議申立人は、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。

 なお、本件決定のうち本件異議申立ての対象となった部分については、同日、異議申立人が、行政不服審査法第48条において準用する同法第34条第2項に基づき、執行の停止の申立てを行い、同年7月27日、実施機関が本件行政文書のうち、本件異議申立ての対象となった部分については執行の停止を決定して、その旨を異議申立人及び請求者に通知した。

 

 

第三 異議申立ての趣旨

 当方が提出した「産業廃棄物管理票交付等状況報告書」のうち非公開部分の拡張を求める。

  既に公開しないことと決定された「個人の氏名」の他、次の4項目(以下「本件係争部分」という。)の非公開を求める。

 1.「運搬先の住所及びコード」

 2.「処分受託者の許可番号及び処分方法」

 3.「処分受託者の氏名又は名称」

 4.「処分場所の住所及びコード」

 

 

第四 異議申立人の主張要旨

 異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

 

1 異議申立書における主張

 紙情報により提出された「産業廃棄物管理票交付等状況報告書(以下「状況報告書」という。)(平成19年度)」のうち個人の氏名以外はすべて情報公開するとしているが、状況報告書のうち、本件係争部分については、大阪府以外の第三者である株式会社○○の主力業務である産業廃棄物処理業の取引先である処分受託者の個別情報が含まれている。これら取引先情報は、申立人の会社経営上の個別事業に関する私的な情報であって公にすることにより、その競争上の地位及び事業運営上の地位が損なわれる。

 これら取引先情報は、条例第8条第1項第1号に該当する。

 よって状況報告書のうち本件係争部分についても非公開とするように異議申立てをする次第である。

 

2 反論書における主張

(1)本件係争部分の妥当性について

 異議申立ての対象となる部分について条例第8条第1項第1号に該当し「競争上の地位を害すると認められるもの」であるか否かが今回係争の争点である。

 実施機関の弁明書に述べられた「競争上の地位を害すると認められるもの」についての弁明は、一般概括的な説明であり所謂常識的見解を羅列したものにすぎず本件係争の具体性及び妥当性については、何等の考察もされていない。

 異議申立ての対象となる部分が何故「競争上の地位を害すると認められるもの」に該当するのか以下に述べる。

 高度情報化社会である現代においては、異議申立ての対象となる部分を公開されることにより契約者である排出事業者の個別の法人名の特定や廃棄物処理の契約単価を容易に推測されてしまう可能性が高い。

 異議申立人は、会社所在地である大阪府△△を中心に営業活動を展開している。

 当然の事ながら廃棄物処理の契約相手方も△△及び周辺の自治体に存在する会社、工場等の法人と個人事業者である。

 今回情報公開の対象となっている状況報告書のうち「産業廃棄物の種類及びコード」、「排出量(t)」、「管理票の交付枚数」、「運搬受託者の許可番号」、「運搬受託者の氏名又は名称」(これら5項目の部分については公開に反対していない)だけの公開にとどまるならば契約相手方の特定や契約単価の推測は、困難が伴うと予想される。

 しかしながら情報公開に反対している本件係争部分の全面公開は、契約者である排出事業者の個別の法人名の特定や廃棄物処理の契約単価を容易に推測される危険性がある。

 これらの情報は、事業者にとっては機密性の高い情報であり当該情報を入手した第三者が当該情報を基に排出事業者に直接営業活動等を行うことが想定される。このため、これらの情報は、公にすることにより異議申立人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある法人等情報に該当する。

 具体的には、大阪府△△という狭い地域特性上、廃棄物の種類、排出量、管理票交付枚数(何回トラックで搬出したかの特定)である程度の排出事業者の特定が可能になる。またここに処分受託者の氏名、運搬先、処分方法、(最終)処分場所等の情報が加わる事により契約単価を逆算出する事が可能になる。契約単価の算出方法は、中間処理業者や最終処分業者に対して新規の第三者を装い見積書を依頼することにより容易に算定できる。これらは、電話1本かければ済むという簡便なものである。

 産業廃棄物処理業界は、ここ数年厳しい競争を繰り広げており大手事業者が弱小業者のテリトリーにまで侵食している。

 産業廃棄物処理業者からの状況報告書は、許可権者である府が廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年12月25日法律第137号)(以下「廃棄物処理法」という。)の規定に基づき、すべての産業廃棄物処理業者に求めているものであり、産業廃棄物処理業者としては報告を拒否することはできない。しかし産業廃棄物処理業者が状況報告書を府に提出するに当たって第三者に全面開示されることを想定していない。なぜならこれら情報は、上述した如く公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものであるからである。非開示を求めている情報は、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報ではない。それは、競争上の地位を害すると認められる営業上の機密情報である。

 近時産廃紛争は全国で多数発生しているが、その要因の1つとして、施設周辺住民に対する、処理業者と行政の情報公開不足が挙げられる。その情報不足が住民の不信感を増幅させており、周辺住民に対する情報公開と住民の参加が必要との声もある。

 しかしながら異議申立人は、これまで、廃棄物処理法の規定に基づく行政処分又は行政命令等の不利益処分を受けたことがなく、また、現に違反行為をしている法人でもない。そして産廃の業種は収集運搬業者であり中間処理業でもなければ最終処分業者でもなく住民の利益を守るためあえて公開しなければならない緊急の必要性も合理的理由も存在しない。

 情報を全面開示することは、営業の機密内容を何人に対しても全部開示することになり、廃棄物処理法において産業廃棄物処理業者に厳しい責任が課せられていること及び産業廃棄物処理業を取り巻く社会状況等を考慮しても、産業廃棄物収集運搬業者が正当な事業活動を営んでいく上で支障になることは、自明である。

 ところで、情報公開制度は全国の都道府県で整備されており、その手軽さから多く利用されている。

 今回の情報公開請求は、異議申立人の産業廃棄物収集運搬業の顧客を奪うために情報公開制度を利用し機密情報を入手したうえ契約単価をほぼ正確に確定し顧客である排出事業者と直接契約交渉をすることが目的であると推測される。

 条例の目的は、(第1条)「府民の府政への参加をより一層推進し、府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民の福祉の増進に寄与することを目的とする。」と定められている。

 しかしながら今回の情報公開請求者の真の目的は条例の崇高な目的とは相容れないものである。

 実施機関にとっては、開示情報がどのような目的に使われようが関係のない事であり情報公開請求者の内面の心情などは、行政側とすれば知る由もなく且つ責任も関係もない事であると云うであろう。

 しかしながらこのような無関心と放置がわが国の産業廃棄物行政そのものを後退させ荒廃させていく事は、後述する。

 実施機関は、現在他府県の産業廃棄物に対する情報公開の答申を根拠にして全面公開することへの補強材料としているが状況報告書について争われた事例は、見つける事ができなかった。中には、産廃事業者側に相当悪質性のあるものも含まれており取引業者等の情報を含めて全面公開しなければ地元住民の不安を払拭する事ができず正義にも反するような事案も多々ある。

 産業廃棄物行政については、法改正も度々行われ刑事罰も引き上げられてきたが悪質業者が多数存在することを否定する事はできない。一瞥すると産廃関係の行政側情報はすべて公開することが正義にかない、一部でも公開制限する事が正義に反するように見受けられる。

 しかし、本件事案は、他の都道府県と似て非なるものであり一律に論じられるべきものではない。

(2)本件係争部分を公開することは、単に条例に違反するだけではなく産業廃棄物行政の荒廃につながる

 本件係争部分は、条例第8条第1項第1号に該当し「競争上の地位を害すると認められるもの」であることは、上述のとおりである。

 しかし、単に条例違反であるばかりでなくこのような情報公開は、情報公開に名を借りた営業機密情報の収集であり、行政側が漫然とそれに応じる事が産業廃棄物行政そのものを後退させ荒廃させるものであることを詳述したい。

 ア 不法投棄の現状

  産業廃棄物の不法投棄の件数と不法投棄によって捨てられた廃棄物の量は減少傾向にある。不法投棄事件が減少した原因は、不法投棄の厳罰化、マニフェストの義務化、行政の不法投棄対策の強化などが考えられる。環境省の調査によると1994年以降、それぞれの年に新たに発覚した産業廃棄物の不法投棄は、若干の変動はあるものの、おおむね40万トン程度であった。しかし、2003年度は、岐阜市不法投棄事件の56.7万トンの影響によりその年だけで74.5万トンの不法投棄が確認された。2004年度も沼津事件の20.4万トンの影響で全体では、41.1万トンと大規模不法投棄事件が全体の不法投棄量を押し上げる結果となっている。2005年度は、 17.2万トンと極端に少なくなっているが前年度と比較して少ないだけで17.2万トンという数字は、厖大な量である。2006年度は、13.1万トン、2007年度は、10.2万トンと減少傾向にある(但しこれらは判明した限りの数字であり隠蔽された不法投棄廃棄物の実数量は分からない)。

 法務省の調査「軽犯罪法違反等の罪名別検察庁新規受理人員の推移」によると廃棄物処理法違反の検察庁新規受理件数は、右肩上がりに増加しており平成19年度は、8,879人であった。産業廃棄物の不法投棄量は、減少しているのに廃棄物処理法違反事件の検察庁新規受理人員は、増加し続けている。不法投棄量が減少しても決して産業廃棄物違反事件は減っていない、むしろ増加しているという現実を表しており楽観できない。

 イ 不法投棄の実行者

 環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況」(2005年)によると不法投棄件数全体558件のうち排出事業者によるものが228件(40.9%)、実行不明者186件(33.3%)、無許可業者85件(15.2%)となっている。

 また、不法投棄された廃棄物の量17万2千トンのうち無許可業者によるものが82.8万トン(48.1%)、許可業者によるものが2.9万トン(16.9%)、排出事業者によるものが2.7万トン(15.5%)となっている。

 件数では、排出事業者が4割を占める。云うまでもなく排出事業者とは、地域において工場生産や企業経済活動により産業廃棄物を発生させる一般企業である。

 不法投棄に対する検挙件数は毎年500件以上に上り、減少する様子を見せていない。警察庁の調査によると2006年度の不法投棄件数は592件であった。その内訳は、排出事業者が402件で 67.9%、無許可業者が161件で27.2%、許可業者が29件で4.9%であった。この年は、排出事業者が6割以上を占めるに至っている。

 不法投棄をした動機としては、「処理費節減のため」が473件で79.9%、「最初から不法投棄を企図」が60件で10.1%、「処分場が遠距離のため」が14件で2.4%であった。

 不法投棄をした動機を実行者ごとに分析してみると、排出事業者の場合は、「処理費節減のため」が332件で82.6%、「最初から不法投棄を企図」が15件で3.7%、「処分場が遠距離のため」が13件で3.2%である。

 許可業者の場合は、「処理費節減のため」が25件で86.2%、「最初から不法投棄を企図」と「処分場が遠距離のため」がともに1件ずつで3.4%であった。無許可業者の場合は、「処理費節減のため」が116件で72.0%、「最初から不法投棄を企図」が44件で27.3%、「処分場が遠距離のため」は、0%である。これらの結果から排出事業者の場合は、「処理費節減のため」という動機がほとんどであることが分かる。要するに安く上がればよいという極めて身勝手な考えなのである。

 不法投棄の実行者は、排出事業者自身である。数字的に見れば無許可業者の数量のほうが多いといえるが無許可業者に依頼するのは、排出事業者である。

 不法投棄の正犯は、紛れも無く排出事業者であると断言できる。

 産業廃棄物の創造者である排出事業者は、その処理においても経費が安く上がる事を最重要視している。これまで立法府、行政府とも度重なる法改正や行政監視を強化してきたが不法投棄は、無くならない。

 このような状況の下で処理費を安くするという営業テクニックを持って既存の排出事業者に対して今までの契約業者を排除させ自社が新規参入しようとする産業廃棄物処理業者が最近頗る増加している。

 少しでも廃棄物処理費を安く抑えたいと思っている事業者と既存契約を破棄させて自社が参入しようとする廃棄物処理業者の思惑は、完全に一致するので単に「安い」という理由だけで今までの契約業者は、簡単に排除されるのが現実である。処理料金は、安ければ良いというわけではなく、処理コストの妥当性を評価することが重要であるにもかかわらず安ければよいという風潮が蔓延している。その極端な例が排出事業者自身によるコストゼロの不法投棄なのである。  

 虎視眈々と勢力拡大を図る産廃業者は、既存業者の契約単価を調査するために「情報公開制度」を利用している。

 自治体は、公開の適法性、的確性を真撃に調査することなく情報公開は、すべて良いこととしている風潮が見受けられる。

 このまま情報公開制度を利用して自己の権益を図るがごとき産廃業者が闊歩し制度の悪用が横行するなら我が国の産業廃棄物行政は、荒廃するであろう。

 処理費を安く押さえ込もうとすれば収集運搬業者、処理業者いずれにも経営上の歪みが生じる。それは、不法投棄につながる事になる。

 資本主義経済の下では、価格競争は当然であり安い業者が仕事を獲得するのに何等の不思議も無い。

 しかし、産業廃棄物処理業に関しては、アダム・スミスのいう「神の見えざる手」によって導かれるとは、限らないのである。

 情報公開制度を利用した歪んだ価格競争は、間違いなくわが国の産業廃棄物対策に深刻な悪影響をもたらすと確信する。

(3)その他の主張について

 実施機関は、弁明書において産業廃棄物の処理に係る取引上の情報公開における他府県の取扱については、青森県、埼玉県、東京都、愛知県、島根県の情報公開審査会で審議されており、すべて公開することが妥当と答申されていると述べている。また、平成14年の三重県の「産業廃棄物または特別管理産業廃棄物の処分実績報告書」の事例を引き合いに出し取引先情報を公開決定した経緯をもとにこれ以降同様の取扱をしていると自己の正当性を主張している(三重県の例は、処分業者と思われる。異議申立人は、収集運搬業者である)。

 しかしながら他府県の事例の中に今回紛争となっている収集運搬業者の状況報告書の情報公開の事例を見出す事は、できなかった。

 もっともわれわれ民間人は一般に公開されている他府県のホームページから検索する以外に情報の入手方法がないので情報収集に限界があることをお断りしなければならない。

 情報公開請求の審査にあたっては、条例によりその適法性、妥当性を具体的に真撃に調査しなければならない。

 平成14年に三重県が産業廃棄物処理業者等の情報を原則公開したことをもって一律に全部公開することが情報公開条例に適合しているというが如き姿勢は、行政の怠慢でしかない。三重県の事例が情報公開に普遍性をもたらしたとは、考えられない。このような条例の運用方法は、条例の崇高な目的を放棄しているといわざるを得ない。

 条例の適用については、その第1条の目的主旨を踏まえ公開請求の文書につき第8条に定められた不利益等の有無につき具体的にその可否を調査しなければならない。しかるに三重県が公開しているから大阪府も公開していいというような安易な条例の適用方法は慎むべきものである。

 仮に東京都において今回紛争となっている産業廃棄物収集運搬業者の状況報告書が公開請求され全面公開されたとしても東京都という地域特性から個別の排出事業者を特定する事は、ほぼ不可能である。

 しかし、同じ公開情報から大阪府△△の個別の排出事業者を特定する事は容易である。東京都下と大阪府△△では、排出事業者等の数がまったく相違するので同じ情報を与えられても東京都では、不可能なことが△△では、可能になってしまう。

 このように同じ種類の情報であっても個別事情は違うのであるから条例適用については具体性及び妥当性につき真撃に調査する必要がある。

 情報公開の適用には、普遍性などあり得ないのである。

(4)結論

 以上のとおり、本件決定は条例に基づき適正に行われたとは云い難く違法且つ不当なものである。

 本件決定のうち非公開部分の拡張を求める。

 既に公開しないことと決定された「個人の氏名」の他、本件係争部分の非公開を求める。

 

 

第五 実施機関の主張要旨

 実施機関の主張は、概ね次のとおりである。

 

1 本件行政文書である状況報告書について

  廃棄物処理法第12条の3第1項の規定により、その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、産業廃棄物管理票(以下「管理票」という。)を交付しなければならない。また、この管理票を交付した事業者(以下「管理票交付者」という。)は、廃棄物処理法第12条の3第6項及び廃棄物処理法施行規則第8条の27の規定により、本件行政文書である状況報告書を、産業廃棄物を排出する事業場ごとに、毎年6月30日までに、その年の3月31日以前の1年間分を、当該事業場の所在地を管轄する都道府県知事に提出することが義務付けられているものである。

 なお、本件行政文書は、異議申立人が、この法令に基づき、平成19年度に交付した管理票の交付等の状況を報告するために、平成20年6月22日付けで実施機関に提出したものである。

 

2 本件行政文書に記載されている内容について

   本件行政文書には、管理票交付者である報告者の住所、氏名(法人にあっては名称及び代表者の氏名)及び電話番号をはじめ、産業廃棄物の処分に係る情報として、事業場の名称及び所在地、報告者に係る業種及びコード、担当者名、産業廃棄物の種類及びコード、排出量、管理票の交付枚数、運搬受託者の許可番号、運搬受託者の氏名又は名称、運搬先の住所及びコード、処分受託者の許可番号及び処分方法コード、処分受託者の氏名又は名称、処分場所の住所及びコードが記載されている。

 

3 異議申立ての対象となる部分について

   実施機関は、本件係争部分が非公開事由にあたらないとし、公開すると決定した。しかし、異議申立人は、本件係争部分について、条例第8条第1項第1号に該当するとして、公開しないことを求めている。

 

4 本件係争部分の妥当性について

(1)条例における公開原則について

     条例においては、その前文及び第1条にあるように、「府の保有する情報は公開を原則」、「個人のプライバシー情報の最大限の保護」、「府が自ら進んで情報の公開を推進」を制度運営の基本的姿勢としている。

 よって、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報を公開しなければならないものである。

 本件異議申立てにおいては、異議申立人が、本件係争部分が条例第8条第1項第1号に該当するとして、公開しないことを求めているため、本件係争部分が、当該条項に該当しないことを、以下において説明する。

(2)条例第8条第1項第1号について

 事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重・保護されなければならないという見地から、社会通念に基づき判断して、競争上の地位を害すると認められる情報、その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第1号の趣旨である。

 同号では、

 ア  法人等に関する情報であって、

 イ  公にすることにより、当該法人等の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるものは、公開しな いことができる

と規定している。

 また、一般に、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理を侵害すると認められるものをいうと解されており、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、事業を営む者に対する名誉侵害、社会的評価の低下となる情報及び公開により団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらわれないものをいうと解されている。

 そして、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、当該文書に記録された情報が明らかとなることにより、当該法人等に具体的な不利益が及んだり、社会的評価の低下につながったりするなどの事実が存在し、それが社会通念に照らして「競争上の地位その他正当な利益」を害すると認められる程度のものである必要があると解すべきである。

(3)本件係争部分が条例第8条第1項第1号に該当しないことについて

 本件行政文書は全て当該法人の産業廃棄物の処理に係る事業内容等に関する文書であり、(2)アの要件に該当することは明らかである。

 そこで、本件係争部分について(2)イの要件に該当するか否かを検討するが、本件係争部分に係る情報のうち、「運搬先の住所及びコード」は、その産業廃棄物を処分するために持ち込まれる場所のことであり、当該4項目は産業廃棄物の処分受託者に関する情報であることを踏まえた上で、本件係争部分に係る情報が、(2)イの要件に該当するか否かを以下のとおり検討し、(2)イの要件に該当しないと判断した。

 産業廃棄物の処分受託者に関する情報は、大阪府情報公開条例解釈運用基準(以下「解釈運用基準」という。)第8条第1項第1号の〔解説〕3において、「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理を侵害すると認められるものをいうとされていることから、ここでいう取引上の情報に該当する。

 しかしながら、解釈運用基準同号〔解説〕4において、閲覧等の請求に係る情報が「競争上の地位その他正当な利益を害する」と認められる情報に該当するかどうかは、当該情報の内容のみでなく、事業者の性格、事業活動における当該情報の位置づけ等にも十分留意しつつ、慎重に判断する必要があるとされている。

 ここで、産業廃棄物の処分受託者に関する情報を検討すると次のとおりである。

(ア)産業廃棄物の処分受託者をはじめとする産業廃棄物の処理等に関わる排出事業者及び収集運搬業者(以下「産業廃棄物処理業者等」という。)に対して厳しい責任を課した廃棄物処理法の趣旨や当該業種を取り巻く社会状況等を総合的に判断すると、産業廃棄物処理業者等の運営の態様に関わる情報は、周辺住民等の健康を保護するために公開することが強く要請されているものであり、これらの情報を公開することは、周辺住民の不安感を取り除き、産業廃棄物処理業者等の運営等に対する理解を得るためにも必要である。

(イ)産業廃棄物処理業者等の名称や所在地等の部分は、産業廃棄物処理業者等が取扱う産業廃棄物の具体的な内容を把握、確認する情報である点で、産業廃棄物の処理に密接に係る情報であり、これを開示することが周辺住民等の生命及び健康を保護するため要請されているものであり、産業廃棄物処理業者等にとっても、周辺住民等の不安感を取り除き、産業廃棄物処理業者等についての理解を得るためにも必要である。

(ウ)廃棄物処理法第3条第1項により「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」とし、同法第12条第3項及び第5項により「事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬又は処分について産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託し、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」と規定されており、排出事業者には廃棄物処理法に従って当該産業廃棄物を適正に処理すること、又は、委託した産業廃棄物が適正に処理されたことを、それぞれ確認する責務がある。

(エ)産業廃棄物処理業者等についても、廃棄物処理法第14条第12項の規定により「産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者は、産業廃棄物処理基準に従い、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を行わなければならない。」とし、産業廃棄物処理基準に従って収集運搬、処分をしなければならない義務が課されている。

 以上のことから、産業廃棄物処理業者等の性質や廃棄物処理法の趣旨等から総合的に判断すると、産業廃棄物処理業者等の取引上の情報は、(2)イの要件には該当せず、公開することが妥当であると考えられる。

   よって、異議申立人が本件決定のうち、非公開部分の拡張を求めている本件行政文書(公開部分)は、条例第8条第1項第1号に該当しない。したがって、本件決定において、 

  非公開とした個人の氏名(法人取締役を除く)以外を公開としたことは、妥当である。

 

5 その他の主張について

 本件行政文書に記載されている産業廃棄物の処理に係る取引上の情報の情報公開における他府県の取扱いについては、青森県、埼玉県、東京都、愛知県、島根県の情報公開審査会で審議されており、全て公開することが妥当と答申されている。

 この答申を踏まえて、実施機関に対して、平成18年1月31日付けで三重県在住の住民から、ある産業廃棄物処理業者が実施機関に平成14年度以降に提出した「産業廃棄物または特別管理産業廃棄物の処分実績報告書」の情報公開請求のあった際に、産業廃棄物処理業者等の情報を原則公開とした上で、当該請求に対する公開決定において、取引先の事業者の名称又は氏名、所在地、電話番号などの情報を公開決定した経緯がある。

 これ以降における情報公開請求についても、同様の取扱いをしているところであるが、産業廃棄物処理業者等の情報を公開することで異議申立て等されたことはなく、当該取扱いによる支障はないものと考えている。

 

 6 結論

 以上のとおり、実施機関による本件決定は条例に基づき適正に行われたものであり、適法かつ妥当なものである。

 

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

 行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を促進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

 このように「知る権利」を保障するという理念の下であっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

 このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

 

2 本件行政文書である状況報告書について

    実施機関及び異議申立人の説明などから以下のとおり認められる。

 管理票とは、排出事業者に対する責任を明確にするため、廃棄物処理法第12条の3第1項の規定により、産業廃棄物の処理を他人に委託する場合に、排出事業者に交付が義務付けられているものである。

 本件行政文書である状況報告書は、廃棄物処理法第12条の3第6項及び廃棄物処理及び清掃に関する法律施行規則第8条の27の規定により、毎年6月末までに、前年度1年間に交付した管理票の交付等の状況について、産業廃棄物を排出する事業場ごとに、当該事業場の所在地を管轄する都道府県知事等に提出することが平成20年度から義務付けられているものであり、本件行政文書は、当制度が開始されて初めて実施機関に対して提出された書類といえる。

 本件行政文書には、管理票交付者である「報告者の住所、氏名(法人にあっては名称及び代表者の氏名)及び電話番号」をはじめ、産業廃棄物の処理に係る情報として、「事業場の名称及び所在地」、「報告者に係る業種及びコード、担当者名」、「産業廃棄物の種類及びコード、排出量、管理票の交付枚数」、「運搬受託者の許可番号」、「運搬受託者の氏名又は名称」、「運搬先の住所及びコード」、「処分受託者の許可番号及び処分方法コード」、「処分受託者の氏名又は名称」、「処分場所の住所及びコード」が記載されている。

 

   本件係争部分について

 本件異議申立てにおいて、異議申立人は、実施機関が条例第9条第1号に該当するとして公開しないことと決定した「個人の氏名」に加えて、次の4項目についての非公開を求めている。

(1)「運搬先の住所及びコード」

(2)「処分受託者の許可番号及び処分方法コード」

(3)「処分受託者の氏名又は名称」

(4)「処分場所の住所及びコード」 

 

4 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

 異議申立人は、本件係争部分に係る情報は異議申立人の顧客である取引先にかかる情報であり、価格競争が激しく、処理コストが業者選定において最重要視される産業廃棄物処理業にあっては、異議申立人の同業他社である産業廃棄物収集運搬業者がこれらの情報に基づいて異議申立人の契約単価を推定し、より有利な価格で排出事業者に営業活動を行うことが可能になること、また異議申立人の事業活動が、東京都のような大都市ではなく、△△という特定の狭い地域である性格上、推定することが他に比べ容易であることをあげ、条例第8条第1項第1号の当該法人の競争上の地位、その他正当な利益を害することは明らかであると主張しているので、以下検討する。

(1)条例第8条第1項第1号について

   事業を営む者の適正な活動は、社会の維持存続と発展のために尊重、保護されなければならないという見地から、社会通念に照らし、競争上の地位を害すると認められる情報その他事業を営む者の正当な利益を害すると認められる情報は、営業の自由の保障、公正な競争秩序の維持等のため、公開しないことができるとするのが、条例第8条第1項第1号の趣旨である。

  同号は、

 ア 法人(国、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人、地方住宅供給公社、土地開発公社及び地方道路公社その他の公共団体(以下「国等」という。)を除く)その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、

 イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの(人の生命、身体若しくは健康に対し危害を及ぼすおそれのある事業活動又は人の生活若しくは財産に対し重大な影響を及ぼす違法な若しくは著しく不当な事業活動に関する情報(以下「例外公開情報」という。)を除く。)に該当する情報が記載されている行政文書を公開しないことができる。

と定めている。

   また、本号の「競争上の地位を害すると認められるもの」とは、生産技術上又は営業上のノウハウや取引上、金融上、経営上の秘密等公開されることにより、公正な競争の原理に反する結果になると認められるものをいい、「その他正当な利益を害すると認められるもの」とは、公開されることにより、事業を営む者に対する名誉侵害、社会的評価の低下となる情報及び団体の自治に対する不当な干渉となる情報等必ずしも競争の概念でとらえられないものをいうと解されるが、これらの具体的な判断に当たっては、当該情報の内容のみでなく、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も考慮して、総合的に判断すべきものである。

    例えば、地方自治法第244条の2第3項に基づき指定管理者として公の施設を管理する法人等の当該施設の管理に係る事業活動に関する情報、あるいは法人等がその事業活動において法律、条令等を遵守しているかどうかに関する情報などは、公的な性格の強い情報であり、「競争上の地位その他正当な利益を害する」と認められる情報に該当するかどうかは、特に慎重に判断する必要がある。

(2)本件係争部分に係る情報の条例第8条第1項第1号該当性について

    本件係争部分は、排出事業者が法令の規定に基づき、平成19年度に交付した管理票の交付等の状況を産業廃棄物を排出する事業場ごとにとりまとめ、平成20年6月末までに実施機関に提出したものであるから、(1)アの要件に該当することは明らかである。

   次に、本件係争部分に係る情報が(1)イの要件に該当するか否かについて、当該事業を営む者の性格や事業活動における当該情報の位置づけ等も踏まえ、以下に検討する。

ア 産業廃棄物処理業の性質及び産業廃棄物処理業を取り巻く社会状況について

 本件係争部分に係る産業廃棄物の処分受託者等に関する情報は、一般的に法人の取引先や事業活動に関する情報であると認められるものであり、これが同業他社に明らかになった場合には、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることは否めない。

  しかしながら、産業廃棄物処理業は、現代社会において不可欠な事業であるものの、その運営態様によっては周辺住民の健康、周辺の生活環境、自然環境に悪影響を与えるおそれがあることは否定できないところであり、その事業活動に関する情報については、できる限りの情報公開が求められているところである。

 特に、産業廃棄物処理業における産業廃棄物の種類、処分量、取引相手等の情報は、産業廃棄物処理業の運営の態様に密接に関わる情報であることから、周辺住民等の健康上の不安を取り除くためにも公開することが強く要請されている情報であると認められる。

イ  廃棄物処理法の趣旨及び産業廃棄物管理票制度(マニフェスト制度)について 

    実施機関の説明から以下のとおり認められる。

  廃棄物処理法においては、産業廃棄物の不法投棄等の不適正処理を防止する必要性から、近年、数次にわたる改正がなされており、事業者責任の強化、規制の厳格化等の措置が講じられているところである。

 具体的には、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理する責務(廃棄物処理法第3条第1項)、産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるよう努める責務(廃棄物処理法第12条第3項・第5項)が規定され、また、産業廃棄物の収集運搬業者や処分業者においては、産業廃棄物処理基準に従い、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を行う責務(廃棄物処理法第14条第12項)が規定されており、当該基準に適合しない処分が行われた場合には廃棄物処理法第19条の5第1項第1号の規定による措置命令の対象となり得るなど、産業廃棄物の処理を適正に行う責務が産業廃棄物処理業者には課されている。そして、これらに違反した場合には、罰則等も規定されている。

 また、排出事業者の責務を明確化するとともに、不法投棄の未然防止を目的として、マニフェスト制度が導入されているところである。マニフェスト制度は、排出事業者が産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には管理票を交付し、処分後に当該管理票の写しの送付を受けることにより処理が適正に行われたことを確認することを義務づける仕組みで、管理票により、産業廃棄物に関する正確な情報や処理の流れが明らかにされるものである。

 さらに、平成19年度からは、この管理票の交付状況について、排出事業者が都道府県知事等に報告することを義務付けることにより、都道府県等が産業廃棄物の流れや不適正処理の情報を容易に入手し、適正な指導につなげることを目指しているところである。

ウ 本件係争部分に係る情報が(1)イの要件に該当するか否かについて

 上記ア、イで述べたところの産業廃棄物処理業の事業の性格等を総合的に検証すると、本件係争部分に係る情報は、廃棄物処理法をはじめとする関係法令の定めにより規律が守られている事業に関する情報であり、事業を行うに当たっては、周辺住民に及ぼす影響から事業に関する情報を広く提供し、事業への理解を求めることが要請されることから、一般的な企業の取引先情報とは異なるものと考えられる。

 また、本件係争部分に係る情報は、産業廃棄物処理業の不適正処理を未然に防止するために構築された、産業廃棄物の処理内容や流れを明らかにし、法令を遵守しているかどうかの確認を容易にするためのマニフェスト制度にかかる情報であることから、周辺住民等の健康上の不安を取り除くためにも公開すべき情報と認められる。

 よって、これらの情報を公開されることにより生じる不利益は、法に基づく制約の下で営業活動を行う産業廃棄物処理業者等としては、事業活動地域の特性や事情等にかかわらず、適正な処理を行うという責任を果たす上からも受け入れるべきものであり、本件係争部分に係る情報は、本件法人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとはいえないと考えられる。

  以上のことから、本件係争部分にかかる情報については(1)イの要件には該当せず、条例第8条第1項第1号に該当しないと認められる。

 

5 結論

 以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

 

(主に調査審議に関与した委員)

 鈴木秀美、岩本洋子、大和正史、野呂 充

 

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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