大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第130号)

更新日:2009年8月5日

(答申第130号)府立高等学校同窓会教育支援費関係文書不存在事案

(答申日 平成18年11月30日)

1 公開請求された行政文書(公開請求書の記載)  

大阪府立高津高等学校の平成14年度から平成17年度の会計における下記文書

・会計名を「同窓会教育支援費」とする「支出伺書」および伺書に添付された領収書等資料のすべて

2 実施機関の決定

(1)実施機関

   大阪府教育委員会(担当課:高津高等学校、財務課)

(2)決定内容

  不存在による非公開決定

(理由)

当該文書は、高津高等学校の同窓会が保有している文書であり、当該実施機関の職員が職務上作成し、又は取得したものではないため、当該職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているものではない。

3 異議申立て

(1)申立ての趣旨

本件決定を取り消し、全ての対象文書の公開を求める。

(2)理由(要旨)

ア 平成14年から平成17年度までの高津高校の校長は、同校の教育後援会費によって賄うことのできない支出について、同窓会から財政的な援助を受けて支出することとし、同窓会に働きかけて、母校に対する教育支援費の名目で、毎年、同窓会より援助を受けてきた。そして援助を受けた教育支援費を支出するにあたっては、高津高校の会計担当者が、会計名を「同窓会教育支援費」として、「支出伺い書」を作成し、事務長、教頭、校長の決裁を受けて支出している。

イ 同窓会は、この教育支援費の支出の目的を「教育活動」に限定して支出することを校長に委ねているものであり、校長は、その目的に限定して支出する責務と、その責務を果たしていることを同窓会に報告する責務を負っているものである。そして前記の「支出伺い書」および添付の領収書等は、高津高校が同窓会に負っている前記の責務を履行していることを明らかにするために、高津高校の会計担当者によって作成され、又は取得されているものであり、当該職員が、組織的に用いるものとして、高津高校が管理しているものである。よって開示の対象たる公文書にあたることは明らかである。

4 大阪府情報公開審査会の答申

(1)審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

(2)理由(要旨)

 ア 同窓会及び同窓会教育支援費について

同窓会は、大阪府立高津中学校(旧制)もしくは高津高校を卒業した者を正会員とし、同高校の現、旧教職員を特別会員とする任意団体であり、会誌の発行や懇親会等、会員相互の親睦事業のほか、高津高校の教育活動の後援等の事業を行っている。教育活動の後援に係る支出は、会計上、同窓会教育支援費(以下「教育支援費」という。)として処理されており、総会での決定方針に基づき、校長からの援助依頼を受け、必要な経費の支出を認めている。

同窓会の事務局は学校内に設置され、同窓会の事務局職員が週2回程度来校して会計処理等の事務を行っているが、教育支援費については、同窓会が、支出に係る事務処理を校長に依頼している。校長の指示を受けた学校職員が本件支出伺書を起案して、校長の確認を受けて支出しており、支出後に、同窓会の会計担当役員の確認を得るとともに、同窓会の総会の際に決算報告を行って、会員の承認を得る形で処理されているが、学校職員の関与は、同窓会の業務のうち学校の教育活動と密接な関係にある教育支援費の支出に係る業務への協力として行われているものであり、実施機関においては、職務外の行為として位置づけられている。

イ 条例第2条第1項について

行政文書公開請求の対象となる「行政文書」の定義については、条例第2条第1項に「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真又はスライド並びに電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」をいう旨規定されている。

「職務上」とは、実施機関の職員が、法令、条例、規則、規程、訓令、通達等により、与えられた任務又は権限を、その範囲内において処理することをいう。

「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関の職員が管理しているもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において、業務上必要なものとして利用又は保存されている状態のものを意味する。

ウ 本件支出伺書等の行政文書該当性について

本件支出伺書等は、教育支援費の同窓会会計からの支出のために作成される文書であり、具体的には、校長の指示を受けた高津高校の職員が同窓会用の支出伺書の様式を用いて起案したものに、事務長、教頭及び校長が承認の押印をしているものである。

このように、本件支出伺書の作成には、高津高校の職員が関与していることが認められるが、アで述べたところからすれば、同窓会の教育支援費支出に係る業務への協力として関与しているのであり、実施機関の職員として、法令、条例、規則、規程、訓令、通達等により与えられた任務の遂行又は権限の行使として、関与しているものではない。

したがって、本件支出伺書は、高津高校の職員が作成したものではあるが、同窓会の事務に従事する者として作成したものであり、実施機関の職員として作成したものとは言えず、イで述べたところに照らし、実施機関の職員が「職務上」作成した文書とは認められない。

以上のことから、本件請求に係る支出伺いは、同窓会の文書としては存在するが、実施機関が管理する条例第2条第1項の「行政文書」としては存在しないと言わざるを得ず、本件決定は妥当であったと認められる。

しかしながら、高津高校において、同窓会は、単なる卒業生等の親睦団体としての性格にとどまらず、教育支援費の支出を通じて、学校の教育活動の振興充実に重要な役割を果たしている。このような学校関係団体の当該学校の教育活動と密接な関係にある活動については、団体としての会員に対する説明責任とともに、学校としても一定の説明責任があると言うべきである。実施機関においては、事務室で預かっている団体の文書で必要な情報が把握できることで十分とするのではなく、年度毎の教育支援費の決算報告、学校の教育活動への助成実績などといった基本的な情報について、当該団体に資料の提供を求めたり、学校で資料を作成するなど実施機関の行政文書としても保有することが望まれる。

また、実施機関の説明によれば、教育支援費の支出に関する文書は、一定期間、学校の事務室内で保管されているが、今後は、同窓会室内で管理するなど、実施機関の行政文書と同窓会の文書とを峻別した文書管理を徹底されるよう望むものである。

大阪府情報公開審査会答申(全文)

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

1 異議申立人は、平成18年3月31日、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、「大阪府立高津高等学校の平成14年度から平成17年度の会計における、会計名を『同窓会教育支援費』とする『支出伺書』および伺書に添付された領収書等資料のすべて」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 実施機関は、同年4月14日、本件請求に対して、不存在による非公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、理由を次のとおり付して異議申立人に通知した。

(公開請求に係る行政文書を管理していない理由)

当該文書は、高津高等学校の同窓会が保有している文書であり、当該実施機関の職員が職務上作成し、又は取得したものではないため、当該職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているものではない。

3 異議申立人は、同年6月9日、本件決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った。

第三  異議申立ての趣旨

本件決定を取り消し、全ての対象文書の公開を求める。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は概ね以下のとおりである。

1 異議申立書における主張

本件において公開を求めた文書は、「大阪府立高津高等学校(以下「高津高校」という。)の平成14年度から平成17年度までの会計名を『同窓会教育支援費』とする『支出伺書』および伺書に添付された領収書等資料のすべて」であるが、本件処分は、「当該文書は、高津高等学校の同窓会が保有している文書であり、当該実施機関の職員が職務上作成し、又は取得したものではないため、当該職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているものではない」との理由で、非公開としたものである。

しかしながら上記理由は、以下のとおり、当該文書の評価を誤ったものであり、当該文書が、当該実施機関の職員が職務上作成し、又は取得し、組織的に用いるものとして管理していることは明らかである。

平成14年から平成17年度まで高津高校の校長を勤めた木村智彦氏は、同校の教育後援会費によって賄うことのできない支出について、同窓会から財政的な援助を受けて支出することとし、同窓会に働きかけて、母校に対する教育支援費の名目で、毎年、同窓会より援助を受けてきた。

そして援助を受けた教育支援費を支出するにあたっては、高津高校の会計担当者が、会計名を「同窓会教育支援費」として、「支出伺い書」を作成し、事務長、教頭、校長の決裁を受けて支出している。また「支出伺い書」には、支出の対象となった金額の領収書等の資料が添付されている。

同窓会が教育支援費を高津高校に援助する目的は、まさに母校の教育活動を後援することにあり、高津高校は、この教育支援費を同校の教育活動に役立てる責務を負っているものであり、教育支援費を同校の教育活動以外に支出することは許されないものである。

そして同窓会は、この教育支援費の支出の目的を「教育活動」に限定して支出することを校長に委ねているものであり、校長は、その目的に限定して支出する責務と、その責務を果たしていることを同窓会に報告する責務を負っているものである。

そして前記の「支出伺い書」および添付の領収書等は、高津高校が同窓会に負っている前記の責務を履行していることを明らかにするために、高津高校の会計担当者によって作成され、又は取得されているものであり、当該職員が、組織的に用いるものとして、高津高校が管理しているものである。よって開示の対象たる公文書にあたることは明らかである。

2 反論書及び反論補充書における主張

(1)実施機関の主張する不存在理由の不当性

実施機関は本件支出伺書について、校長が同窓会の依頼を受けて、学校職員に作成を行わせ、校長が保管していることを認めている。にもかかわらず、本件支出伺書の作成を、学校職員の職務外の行為とする理由は、

ア 本件請求文書が同窓会に帰属していること

イ 校長から指示を受け学校職員が「支出伺書」を作成し、支出事務処理を行うことについては、学校内で行っているものであるが、任意団体である同窓会の事務として、本来の職務と切り離して行っている。

の2点である。

しかしながら上記ア、イのいずれも、本件支出伺書の作成が職務外の行為であること、ひいては本件支出伺書が行政文書であることを否定する合理的な理由とはならない。

ア 本件請求文書が同窓会に帰属しているとの理由について

行政文書とは、条例第2条によれば、当該実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書等であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているものとされている。当該実施機関が、職務上作成したものであれば、その所有権を取得したものでなくても、当該実施機関が組織的に用いるものとして管理している限り、行政文書にあたる。従って、本件請求文書の所有権が仮に同窓会に帰属しているとしても、行政文書とすることについての何らの障害にならない。

本件は、校長が本件請求文書を保管していることを認めている事案であるが、判例は、実施機関に所有権が帰属せず、しかも実施機関が保有していない書類についても、条例にいう行政文書にあたるとしている。すなわち、さいたま地裁は、岩槻市が出資して設立した第3セクター会社から市に提出された「会社再建計画書」(以下「再建計画書」という。)について、同市民が情報公開条例に基づき市に対して公開を認めた事案について、平成16年6月30日、市は当該請求時において、再建計画書を所持していなかったとしても、速やかに上記会社に再建計画書の提出を求め、原告に公開すべきであったとして、市民の請求を認容した。このように市に所有権が帰属していない第3セクターの文書であっても、市に再建計画書の提出を求める権限のある限り、行政文書に該当するとしている。

このように実施機関が保管していない文書であっても、行政文書とされることがあるのであって、況や、実施機関が保管している文書については、その所有権が実施機関に帰属していなくても、実施機関が職務上作成し、組織的に用いるものであれば、行政文書にあたることは明らかである。

イ 同窓会の事務として、本来の職務と切り離して行っているとの理由について

実施機関は、「任意団体である同窓会の事務として、本来の職務と切り離して行っている」などとしているが、具体的に本件請求文書の作成について、どのように本来の職務と区別して行っているか、何ら具体的な説明は行っていない。

さらに実施機関は「予算・決算等にかかる事項は総会の所轄事項であり、同窓会から依頼された校長が独自に行えるものではなく、同窓会教育支援費の支出事務処理も、同窓会の指示のもとに行われているものである」としているが、本件支出伺書の作成にあたって、同窓会から校長に対する包括的な委任は存在したとしても、その委任事務の処理にあたって具体的な指示は何ら行われていない。

このように本件支出伺書の作成において、同窓会の具体的な指示など存在しないのであって、校長においても学校職員においても、本来の会計事務処理と同窓会教育支援費の支出事務処理との間に、その職務上の実質的な差異は全く存在しない。ただ支出事務処理の結果、公費によって賄われる経費となるのか、私費によって賄われる経費となるのかの違いがあるだけである。

そもそも「同窓会教育支援費」の支出事務処理を職務外の行為とするのであれば、学校職員は、勤務時間中に職務外の行為を行っていることになる。すなわち学校職員は「同窓会教育支援費」の支出事務処理を、地方公務員法第35条に定める職務専念義務に違反して行っているという奇妙な結果となる。到底このような結果が容認されるはずはないのであって、「同窓会教育支援費」の支出事務処理は、高津高校の教育振興充実を目的してなされる教育活動のためのものであり、職務上のものであると解してこそ合理的な説明が可能になるのである。

この点においても、本件支出伺書の作成を職務外の行為とする実施機関の主張が誤りであることは明らかである。

(2)同窓会総会による承認と本件請求文書の関係について

実施機関は、「同窓会は、会則で予算・決算等にかかる事項は、毎年8月の第4土曜日に開催される総会において承認を受けなければならないものとし、会員に対して報告を行う責務を有していることからも同窓会の文書であることは明白である」としているが、同窓会が、予算・決算等にかかる事項を総会の承認事項にしているからといって、本件請求文書が行政文書でなくなるものでは全くない。

そして当然ながら、同窓会総会において本件請求文書がそのまま会員に示されて承認がなされるわけでは全くない。実態は、同窓会における会計担当者が、「同窓会教育支援費」の支出事務処理を行っている高津高校の学校職員から報告を受けて、その報告に基づき決算書を作成するに過ぎないものである。

そして同窓会は、「同窓会教育支援費」の支出事務処理を高津高校に委任するにあたって、その支出目的を「教育活動」に限定して支出することを校長に委ねているものであり、校長はその目的に限定して支出する責務と、その責務を果たしていることを同窓会に報告する責務を負っているものである。校長が、同窓会に対して負っているこのような責務は、高津高校が、その教育環境整備のため同窓会から支援を仰ぐにあたって、当然に負うべき責務であり、高津高校の校長ならびに職員の本来の職務に含まれるものである。そして本件請求文書は、高津高校の校長ならびに職員が、かかる本来の職務を果たすために作成するものであるから、行政文書に該当することは明らかである。

(3)本件請求文書公開の必要性について

今般、異議申立人が本件請求文書の公開を請求したのは、異議申立人に対して、高津高校の「同窓会教育支援費」の支出に関して、本来の教育活動にあたらない支出が、教育活動の名目において支出が行われている疑いがあるとの情報が寄せられたためである。

「同窓会教育支援費」の支出が、本来の教育活動に限定して適切に支出が行われているかどうかは、高津高校の校長の責務において調査されるべきことであり、校長がそのような責務を果たさない場合には、府教委の責務において調査されるべきことである。しかるにそのような自主的な調査が行われないために、異議申立人は本件請求に及んだものである。結局のところ、本件文書の公開を求める理由は、高津高校の校長ならびに職員が、前項において指摘した責務を適切に果たしているかどうかを明らかにすることにあり、情報公開の目的である「府政の公正な運営を確保」することにある。

「同窓会教育支援費」の支出に関して、本来の教育活動にあたらない支出であるにもかかわらず、教育活動の名目において支出が行われているとの疑いが、万一、真実であるとすれば、同窓会は、いわば被害者の立場に、そして高津高校は加害者の立場に立つものである。そして被害者は、加害者からの正確な情報を提供されない限り、誤りなき判断を下すことができない。

従って、「同窓会教育支援費」の支出に関して、本来の教育活動にあたらない支出が、教育活動の名目において支出が行われていた場合には、そのような情報が同窓会に提供されないまま、決算報告が行われ、その決算報告が総会で承認されたからといって、「同窓会教育支援費」支出の違法性がなくなるものでは全くない。

そしてこのような違法な支出が行われていた場合に、それを正すべき第一義的責任は、高津高校の校長ならびに府教委にあるのであって、同窓会からの責任追及がなされないことで、校長や府教委の責任が免罪されるものでは全くない。

このように本件で問題とされていることは、同窓会教育支援費の支出事務処理を委託された校長が、同窓会に対して負っている「適正な支出を担保すべき義務」である。そしてかかる義務は、高津高校の教育環境整備を図る目的で、同窓会の支援を仰ぐに当たり、校長が、同窓会に対して負っているものであるから、校長の本来の職務上における義務である。このような義務が公正に果たされているかどうかは、行政としての監督責任により明らかにされるべきことである。にもかかわらず、同窓会総会の承認を理由として、問題の解明を同窓会に委ねてしまうことは、同窓会自治に名を借りて、公正な府政を実現しようとする情報公開制度の趣旨を没却する結果になりかねない。

以上のとおり、本件請求が認められるべき必要性には、極めて高いものがある。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は概ね以下のとおりである。

1 大阪府立高津高等学校同窓会(以下「同窓会」という。)について

同窓会は、会員相互の厚誼を厚くし母校の発展興隆に寄与し、社会の公益に貢献することを目的に設立され、規程を有し、役員を有する任意団体(権利能力のない社団)である。

同窓会は、その目的を達するため、次の事業を行っている。

(1)会誌及び名簿の発行。総会ならびに懇親会の開催。

(2)母校の教育活動の後援。

(3)表彰慶弔慰労等。

(4)その他目的達成に必要な事項。

また、同窓会の会員は、大阪府立高津中学校(旧制)もしくは高津高校を卒業した者等で、特別会員は高津高校の現、旧教職員である。

2 同窓会の事務処理について

同窓会の事業は、その目的から学校と深く関わりを有しているため、学校内にその事務局の設置を認めている。そこで、同窓会の事務局職員が、会計担当役員の指示を受け、同窓会の会計事務等をはじめ、同窓会の事務を行うために、週2回程度来校し行っている。

同窓会は、母校の教育活動の後援にかかる事業の一部として、その会計事務のうち、「同窓会教育支援費」についての支出の手伝いを校長に依頼している。同窓会は、総会での決定方針に基づき、校長からの援助依頼を受け、必要な経費について同窓会教育支援費から支出を認めている。具体的には、進路指導を支援するものとして、卒業生が学習サポーターとして在校生の学力向上のためアドバイスを行う「土曜自習室」の謝礼の一部負担や進路講演会の外部講師の謝礼を負担している。また、クラブ活動を支援するものとしては、クラブ活動に必要な備品の購入費や全国大会、近畿大会等への出場が決定したときの激励費がある。これらの支出は、年間を通じて発生しうる行事等にかかる費用相当分を同窓会に依頼しており、具体的な教育活動に基づき、支出事務の処理を行う必要があるため、継続的に事務が発生している。

一方、学校では、日常的に校務としての収入・支出に係る事務が発生しており、類似した事務を効率的に行うため、同窓会からの依頼により、学校職員が職務外の業務として、同窓会教育支援費の支出事務処理の手伝いを行っている。支出事務処理の手続きについては、同窓会から依頼を受けた校長が学校職員に指示を行い、学校職員は会計手続きを明確にするため、同窓会用の「支出伺書」を作成し、校長の確認を受けている。この支出事務処理は、最終的には会計担当役員が同窓会の会計年度での決算報告を行っているところである。

なお、校長から指示を受け学校職員が「支出伺書」を作成し、支出事務処理を行うことについては、学校内で行っているものであるが、任意団体である同窓会の事務として、勤務時間外に本来の職務と切り離して行っているところである。また、作成した書類の名称が「支出伺書」であるため、行政文書であるかのような誤解が生じているので、同窓会において、今後の取扱いが検討されているところである。

同窓会は、会則で予算・決算等にかかる事項は、毎年8月の第4土曜日に開催される総会において承認を受けなければならないものとし、会員に対して報告を行う責務を有していることからも同窓会の文書であることは明白である。

以上のように、予算・決算等にかかる事項は総会の所管事項であり、同窓会から依頼された校長が独自に行えるものではなく、同窓会教育支援費の支出事務処理も同窓会の指示のもとに行われているものである。依頼を受けて校長が作成した支出事務に関する文書等は、依頼者である同窓会に帰属するものである。

しかることから、学校職員は同窓会から依頼を受けて支出事務処理を行っているものの、学校職員は職務外の業務として行っていることから、請求された文書は、学校職員が職務上作成し、又は取得したもので、当該職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているということにはあたらない。

3 本件行政文書の不存在理由

以上のことから、当該「支出伺書」は、校長が同窓会からの依頼を受けて同窓会の事務として学校職員に作成させたものであるが、学校職員の職務として行ったものではないことから、当該職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理している行政文書ではない。

4 結論

以上、本件処分は、条例に基づき適正に行われたものであり、何らの違法・不当な点はなく、適法かつ妥当なものである。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。

2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について

(1)同窓会及び同窓会教育支援費について

実施機関の説明等により、以下のことが認められる。

同窓会は、大阪府立高津中学校(旧制)もしくは高津高校を卒業した者を正会員とし、同高校の現、旧教職員を特別会員とする任意団体であり、会誌の発行や懇親会等、会員相互の親睦事業のほか、高津高校の教育活動の後援等の事業を行っている。教育活動の後援に係る支出は、会計上、同窓会教育支援費(以下「教育支援費」という。)として処理されており、総会での決定方針に基づき、校長からの援助依頼を受け、必要な経費の支出を認めている。

同窓会の事務局は学校内に設置され、同窓会の事務局職員が週2回程度来校して会計処理等の事務を行っているが、教育支援費については、同窓会が、支出に係る事務処理を校長に依頼している。校長の指示を受けた学校職員が本件支出伺書を起案して、校長の確認を受けて支出しており、支出後に、同窓会の会計担当役員の確認を得るとともに、同窓会の総会の際に決算報告を行って、会員の承認を得る形で処理されているが、学校職員の関与は、同窓会の業務のうち学校の教育活動と密接な関係にある教育支援費の支出に係る業務への協力として行われているものであり、実施機関においては、職務外の行為として位置づけられている。

また、実施機関における団体徴収金の会計処理に係る基準である「学校徴収金及び団体徴収金等の会計基準」(昭和58年4月1日付け教委財第3号)が適用される団体は、現在のところ、PTAと学校安全互助会のみであり、同窓会教育支援費の支出には適用されないが、本件支出伺書の様式については、同基準中の支出伺書の様式例に準じたものが使用されている。

(2)条例第2条第1項について

行政文書公開請求の対象となる「行政文書」の定義については、条例第2条第1項に「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真又はスライド並びに電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が管理しているもの」をいう旨規定されている。

「職務上」とは、実施機関の職員が、法令、条例、規則、規程、訓令、通達等により、与えられた任務又は権限を、その範囲内において処理することをいう。

「実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関の職員が管理しているもの」とは、作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において、業務上必要なものとして利用又は保存されている状態のものを意味する。

(3)本件支出伺書等の行政文書該当性について

本件支出伺書等は、教育支援費の同窓会会計からの支出のために作成される文書であり、具体的には、校長の指示を受けた高津高校の職員が同窓会用の支出伺書の様式を用いて起案したものに、事務長、教頭及び校長が承認の押印をしているものである。

このように、本件支出伺書の作成には、高津高校の職員が関与していることが認められるが、(1)で述べたところからすれば、同窓会の教育支援費支出に係る業務への協力として関与しているのであり、実施機関の職員として、法令、条例、規則、規程、訓令、通達等により与えられた任務の遂行又は権限の行使として、関与しているものではない。

したがって、本件支出伺書は、高津高校の職員が作成したものではあるが、同窓会の事務に従事する者として作成したものであり、実施機関の職員として作成したものとは言えず、(2)で述べたところに照らし、実施機関の職員が「職務上」作成した文書とは認められない。

以上のことから、本件請求に係る支出伺いは、同窓会の文書としては存在するが、実施機関が管理する条例第2条第1項の「行政文書」としては存在しないと言わざるを得ず、本件決定は妥当であったと認められる。

しかしながら、高津高校において、同窓会は、単なる卒業生等の親睦団体としての性格にとどまらず、教育支援費の支出を通じて、学校の教育活動の振興充実に重要な役割を果たしている。このような学校関係団体の当該学校の教育活動と密接な関係にある活動については、団体としての会員に対する説明責任とともに、学校としても一定の説明責任があると言うべきである。実施機関においては、事務室で預かっている団体の文書で必要な情報が把握できることで十分とするのではなく、年度毎の教育支援費の決算報告、学校の教育活動への助成実績などといった基本的な情報について、当該団体に資料の提供を求めたり、学校で資料を作成するなど実施機関の行政文書としても保有することが望まれる。

また、実施機関の説明によれば、教育支援費の支出に関する文書は、一定期間、学校の事務室内で保管されているが、今後は、同窓会室内で管理するなど、実施機関の行政文書と同窓会の文書とを峻別した文書管理を徹底されるよう望むものである。

(4)異議申立人の主張について

異議申立人は、本件支出伺書等は、高津高校が同窓会に負っている責務を履行していることを明らかにするために、高津高校の会計担当者によって作成され、又は取得されているものであるから、当該文書を組織的に用いるものとして保管していることは明らかであると主張している。また、さいたま地裁の裁判事例を引用しつつ、「実施機関が保管していない文書であっても、行政文書とされることがあるのであって、況や、実施機関が保管している文書については、その所有権が実施機関に帰属していなくても、実施機関が職務上作成し、組織的に用いるものであれば、行政文書にあたる」と主張している。

しかしながら、本件支出伺書等については、(3)で述べたとおり、実施機関の職員が「職務上」作成したものと言うことができないから、これらの主張は採用できない。

さらに、異議申立人は、教育支援費の支出事務処理を職務外の行為とするのであれば、学校職員は、勤務時間中に職務外の行為を行っていることになると主張しているが、条例に基づく公開請求の対象となる「行政文書」に該当するか否かは、条例第2条第1項に該当するか否かを、当該文書の作成又は取得並びに管理の状況に基づき判断するものである。

3 結 論

以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

(主に調査審議を行った委員の氏名)

 塚本美彌子、福井逸治、小松茂久、鈴木秀美

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

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