大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第104号)

更新日:2009年8月5日

答申第104号 地方公務員法守秘義務違反等関係文書公開請求拒否決定異議申立事案 [PDFファイル/86KB]

第一 審査会の結論

実施機関の決定は妥当である。

第二 異議申立ての経過

1 平成15年3月13日、異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対し、「A氏の地方公務員法守秘義務違反等、カラ出張による不当な出張費の支給の調査の内容と決裁書 不当給与の返還されたか判る書類、フロッピーディスク等その他決裁書」についての公開請求(以下「本件請求1」という。)並びに「A氏の法律違反等に係わらず、昇格で約2年6カ月間に約5万6千円を不当に給与を得ていた調査の内容と決裁書」の公開請求(以下「本件請求2」という。)を行った。

2 同年3月27日、実施機関は、本件各請求について、次のとおり、3件の公開請求拒否決定(以下「本件各決定」という。)を行い、それぞれ理由を付して、異議申立人に通知した。

(1)本件請求1のうち「A氏の地方公務員法守秘義務違反等、カラ出張による不当な出張費の支給の調査の内容と決裁書」の部分についての公開請求拒否決定(以下「本件決定1」という。)

  (公開請求を拒否する理由)

当該公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるため

(2)本件請求1のうち「不当給与の返還されたか判る書類、フロッピーディスク等その他決裁書」の部分についての公開請求拒否決定(以下「本件決定2」という。)

 (公開請求を拒否する理由)

当該公開請求に係る行政文書が存在するか否かを答えるだけで、条例第9条第1号に該当する情報を公開することとなるため

(3)本件請求2の全部についての公開請求拒否決定(以下「本件決定3」という。)

 (公開請求を拒否する理由)

当該公開請求に係る行政文書を特定すること自体が条例第9条第1号に掲げる情報を公開することとなるため

3 同年4月11日、異議申立人は、本件各決定を不服として、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立てを行った

第三 異議申立ての趣旨

本件各決定に係わる全ての行政文書、決裁書、フロッピーその他の資料の全面公開を求める。また、行政文書が存在するか否かを答えるだけでと記載しているため、至急行政文書が存在するか否か答えてください。

第四 異議申立人の主張要旨

異議申立人の主張は、概ね次のとおりである。

1 異議申立書における主張

A氏に係わる通勤交通費不正請求、違法な昇格、昇給により得た約2年6ヵ月の間に5万6千円の給与アップで得た不当給与問題、地方公務員法守秘義務違反、違法な昇格で得た給与やカラ出張による不当給与が有るため、速やかに条例第11条、公益上の理由による公開、「2 第9条の規定にかかわらず、実施機関は公開請求に係わる行政文書に同条第1号に掲げる情報が記載されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、請求者に対し当該行政文書の全部又は一部を公開することができる。」、これにより全面公開を求める。

具体的な内容は、

(1)大阪府立B高等学校に在職中に通勤交通費の不正請求が発覚するまで、約20年間にわたり通勤交通費の不正請求があった。

(2)通勤交通費不正請求発覚後、車通勤の届を提出しているが、虚偽申請の可能性がある。

出張命令簿によりかなり多くの出張をこなし、かなり遠方の出張もできている。

(3)大阪府立B高等学校在職中、午前8時30分までに出勤していない日が多い。

(4)交通事故報告をしていない。

(5)出張の宅着を頻繁に利用して早く帰宅した。職務義務免除願いにも違反がある。

(6)近距離の出張費を不正請求

(7)情報公開請求の段階でD市職員のE部長に情報公開請求者名をA氏とD市職員のF氏が漏洩したり、内容を虚偽の発言をしたことにより、異議申立人の名誉を傷つけられた。名誉毀損であり地方公務員法違反である。D市役所の部長から、いやがらせの電話があったことで分かった。

(8) (1)から(7)までの問題についてA氏に尋問及び陳述要求をする。

(9)平成9年1月から平成11年7月までの2年6ヵ月の間に約5万6千円程の給与のアップについて理由と説明を求める。

上記の理由等により昇格の取消及び不当な給与の返還を求めるためにも全面公開を求める。また、異議申立人の名誉回復のためにも全面公開して事実確認をしなければ、異議申立人も不利益を被る。

2 反論書における主張

実施機関が、民間企業であれば、何も言えないが、税金で運営している以上、各種の申請、各種の支給が適正に行われているか、税負担者が把握する必要がある。

また、異議申立人が出勤簿、交通費申請書の内容が判読できる箇所を指摘してきたところでも十分疎明できるものである。

通勤費の不正請求、カラ出張、違法に利用する職務専念義務免除願、違法な昇格による不当給与、カラ出張で得た出張費は返還する義務があり、地方公務員法第32条、第33条、第34条の違反等により、条例第11条第1項、第2項により第9条第1号に該当するという主張といえども、公開することにより優越的な公益を認められるものである。

また、租税を負担している者として、知る権利も求める。

A氏に不正請求及び不当支給がありながらプライバシーを盾に非公開とするのは、間違っており、税負担する府民が返還請求できなければ不利益を被り、法の下の平等に反する。

公平かつ平等な判断を求め、重ねて全面公開を求めるものである。

各種申請書類に証拠書類の添付を求める。

この案件に関して、実施機関に調査して是正するように伝えていたが、A氏が是正するどころかさらに違反や虚偽申請で不正を重ねられ、自分の都合の悪いことは言わずにA氏と夫であるB市職員C氏が情報公開請求者の情報の漏洩や逸脱した内容を言われたことによる地域での差別やB市職員や他の人等によるいやがらせや電話攻撃等で困っている。

全面公開してA氏に返還請求ができるのと地方公務員法の守秘義務違反等により精神的苦痛を与えられていることを解決するようお願いする。

以上のとおり、本件各決定は、条例の趣旨を踏まえたものではなく、違法行為、不正請求が多く見受けられるのに非公開としたのは不適法である。

したがって、公益上の事情、必要があるため、全面公開を早急にすべきである。

第五 実施機関の主張要旨

実施機関の主張は、概ね次のとおりである。

1 条例第9条第1号及び条例第12条に該当することについて

条例第9条第1号においては、「個人の・・・身体的特徴、健康状態、家族構成、・・・住所、・・・所得等に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され得るもののうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの」が「記録されている行政文書を公開してはならない。」と規定されている。

また、条例第12条においては、「公開請求に対し、当該公開請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、第10条第1項各号に掲げる情報を公開することとなるときは、実施機関は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該公開請求を拒否することができる。」と規定されている。

本件請求に係る内容は、特定の職員の不正行為に係る調査並びにそれに基づく出張旅費及び給与の返還に係る情報であることから、いずれも条例第9条第1号の「個人の身体的特徴、健康状態、家族構成、住所、財産、所得等に関する情報であって、特定の個人が識別され得るもの」に該当する。そこで、以下、本件請求に係る行政文書の存在に関する情報が、条例第9条第1号の「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報に該当することについて述べる。

(1)本件決定1について

ア 地方公務員法守秘義務違反等について

大阪府公立学校事務職員は、地方公務員法第34条により、法律に特別の定めがある場合を除き、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない義務を負うものである。地方公務員法第29条第1項により、職員が地方公務員法に違反する行為を行った場合は、任命権者が当該職員を懲戒処分することができることになっている。

ここで、地方公務員法の違反に関し、任命権者による調査を受けたという事実は、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、過去の不名誉な経歴に関する情報であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当するということができるところ、本件請求1のうち「A氏の地方公務員法守秘義務違反等、カラ出張による不当な出張費の支給の調査の内容と決裁書」に対応する文書は、特定の府職員が地方公務員法の違反に関し、任命権者による調査を受けていたということを前提に作成、取得される文書である。

したがって、本件請求1のうち「A氏の地方公務員法守秘義務違反等、カラ出張による不当な出張費の支給の調査の内容と決裁書」に対応する文書が存在しているか否かを答えるだけで条例第9条第1号の情報を公開することとなるので、その存否を明らかにせずに、公開請求を拒否したものである。

イ 「カラ出張による不当な出張費の支給」について

大阪府公立学校事務職員が出張した場合は、職員の旅費に関する条例第34条により、当該職員に対し、旅費が支給される。この出張は、任命権者である実施機関の委任を受けた学校長の発する旅行命令簿によって行われなければならないとされている(同条例第4条第1項)。

本請求にいう「カラ出張」とは、不正に旅費の支給を得ることを目的に、正規若しくは虚偽の手段により旅行命令を受けた職員が当該出張を行わないことと考えられる。

「カラ出張」を行った職員の行為は、刑法上の罪に当たる可能性があるほか、地方公務員法第32条に定める法令及び上司の職務上の命令に従う義務に違反する可能性がある不祥事であり、任命権者は、地方公務員法第29条第1項により、当該職員を懲戒処分することができるものである。このような「カラ出張」に関し、任命権者による調査を受けたという事実は、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、過去の不名誉な経歴に関する情報であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当するということができるところ、本件請求1のうち「A氏の地方公務員法守秘義務違反等、カラ出張による不当な出張費の支給の調査の内容と決裁書」に対応する文書は、特定の府職員が「カラ出張」に関し任命権者による調査を受けていたことを前提に作成、取得される文書である。

また、職員が懲戒処分(又は服務上の措置)を受けたという事実は、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、過去の不名誉な経歴に関する情報であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当するということができるところ、この「カラ出張」について任命権者が行う調査は、当該職員が不正行為を行ったかどうかを調査するものであり、この調査の存在により、当該職員に対する懲戒処分(又は服務上の措置)の存在が推測されることとなるものである。

以上により、本件請求1のうち「A氏の地方公務員法守秘義務違反等、カラ出張による不当な出張費の支給の調査の内容と決裁書」に対応する文書が存在しているか否かを答えるだけで条例第9条第1号の情報を公開することとなるので、その存否を明らかにせずに、公開請求を拒否したものである。

(2)本件決定2について

「給与」とは、勤務に対する「給料」のほかに「手当」を含めたものを指すが、職員の給与は条例に基づいて支給されなければならないものである。本請求にいう「不当給与」とは、職員が勤務することなく給料を得ることや不正な届出により手当を受けることと考えられる。

ここで、職員が「不当給与」を受けたという事実は、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、過去の不名誉な経歴に関する情報であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当するということができるところ、本件請求1のうち「不当給与の返還されたか判る書類、フロッピーディスク等その他決裁書」に対応する文書は、特定の府職員が「不当給与」を得ていたことを前提に作成、取得される文書である。

また、職員がこの「不当給与」を受けるなどの不正行為を行った場合には、当該職員に対し、懲戒処分(又は給与上の措置)をすることができる。職員が懲戒処分(又は給与上の措置)を受けたという事実は、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、過去の不名誉な経歴に関する情報であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当するということができるところ、この「不当給与」を受けたという事実の存在により、当該職員に対する懲戒処分(又は給与上の措置)の存在が推測されることとなるものである。

以上により、本件請求1のうち「不当給与の返還されたか判る書類、フロッピーディスク等その他決裁書」に対応する文書が存在しているか否かを答えるだけで条例第9条第1号の情報を公開することとなるので、その存否を明らかにせずに、公開請求を拒否したものである。

(3)本件決定3について

本請求でいう「不当給与」とは職員が勤務することなく、給料を得ることや不正な届出により手当を受けることと考えられる。

ここで、職員が「不当給与」を受けたという事実は、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、過去の不名誉な経歴に関する情報であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当するということができるところ、本件請求2に対応する文書は、特定の府職員が「不当給与」を得ていたことを前提に作成、取得される文書である。

また、職員がこの「不当給与」を受けるような行為を行った場合は、地方公務員法第29条第1項により、任命権者は当該職員を懲戒処分することができることになっている。

ここで、職員が「不当給与」に関し、任命権者による調査を受けたという事実は、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、過去の不名誉な経歴に関する情報であり、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当するということができるところ、本件請求2に対応する文書は、特定の府職員が「不当給与」に関し、任命権者による調査を受けていたということを前提に作成、取得される文書である。

以上により、本件請求2に対応する文書が存在しているか否かを答えるだけで、条例第9条第1号の情報を公開することとなるので、その存否を明らかにせず、公開請求を拒否したものである。

2 公益上の理由による公開について

異議申立人は、条例第11条に規定する公益上の理由による公開を求めている。条例第11条の「公益上特に必要があると認められるとき」とは、本件においては条例第9条第1号によって保護される利益と公益上の必要性とを個別具体的に比較衡量し、公益上特に公開する必要があると認められる場合にのみ公開することができるものである。本件各請求に係る行政文書の存在の有無に関する情報は、上記のとおり、条例第9条第1号に該当する情報である。実施機関に対しては、個人のプライバシーに関する情報は一旦公開されると当該個人に回復困難な損害を及ぼすことに十分配慮し、個人の権利利益を不当に侵害することのないよう、特に慎重に取り扱う責務が課せられている。仮に特定の府職員に請求人が主張・想定しているような違法行為があったとしても、個人のプライバシーを最大限保護するという条例の理念に照らせば、それを上回る「公益上特に必要がある」とは認められない。

第六 審査会の判断理由

1 条例の基本的な考え方について

行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより、「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保するとともに、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府民の府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。

このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では、公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。

このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けるとともに、第12条において、公開請求に係る文書の存否を答えるだけで、これら適用除外事項に該当する情報を明らかにすることになる場合には、当該公開請求を拒否することができる旨定めているのであり、実施機関は、請求された情報がこれらの規定に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならないのである。

2 本件各決定についての具体的判断及び理由

実施機関は、本件各請求に係る行政文書は、当該文書があるかどうかを答えるだけで条例第9条第1号に該当する情報を公開することになり、条例第12条に該当すると主張しているので、検討したところ、以下のとおりである。

(1)条例第9条第1号について

条例は、その前文で、府の保有する情報は公開を原則としつつ、併せて、個人のプライバシーに関する情報は最大限に保護する旨を宣言している。また、第5条において、個人のプライバシーに関する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定している。

本号は、このような趣旨を受けて、個人のプライバシーに関する情報の公開禁止について定めたものである。

同号は、

ア 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報であって、

イ 特定の個人が識別され得るもののうち、

ウ 一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる

情報が記録された行政文書については公開してはならないと定めている。

そして、「個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等に関する情報」とは、個人のプライバシーに関する情報を例示したものであり、「特定の個人が識別され得る」情報とは、当該情報のみによって直接特定の個人が識別される場合に加えて、容易に入手し得る他の情報と結びつけることによって特定の個人が識別され得る場合を含むと解される。

また、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報とは、社会通念上、他人に知られることを望まないものをいうと解される。

(2)条例第12条について

本条は、「公開請求に対し、当該公開請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、第10条第1項各号(第8条第1項各号又は第9条各号の規定により公開しない情報)又は第2項各号(第8条第2項各号又は第9条各号の規定により公開しない情報)に掲げる情報を公開することとなるときは、」当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該公開請求を拒否することができる旨規定している。

本条による公開請求の拒否は、公開請求に係る行政文書が存在するか否かも明らかにしないというものであり、安易な運用は行政文書公開制度の趣旨を損なうことになりかねないが、公開請求に係る行政文書の存否が明らかになることによる権利利益の侵害や事務執行の支障等が具体的かつ客観的に認められる場合には、本条によって公開請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否することができるものである。

(3)本件各請求に係る行政文書の存否を答えることにより明らかとなる情報と条例第9条第1号該当性について

ア 本件決定1について

本件請求1に係る行政文書のうち本件決定1の対象となった部分は、「A氏の地方公務員法守秘義務違反等、カラ出張による不当な出張費の支給の調査の内容と決裁書」である。

これらの行政文書は、いずれも、特定の職員が地方公務員法第34条の守秘義務に違反した、又はカラ出張による不当な出張費の支給を受けたとの嫌疑をもたれ、実施機関による調査が行われたことを前提に作成される文書であり、その存否を答えることにより、特定の職員が地方公務員法第34条の守秘義務に違反した、又はカラ出張による不当な出張費の支給を受けたとの嫌疑をもたれたということが明らかとなる。特定の職員がこのような法律違反又は不正行為の嫌疑を受けたという情報は、個人の不名誉な経歴に関する情報であって、特定の個人が識別され得るものであり、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当すると認められる。

したがって、これらの行政文書が存在しているか否かを答えるだけで条例第9条第1号の情報を公開することとなるので、実施機関が、本件決定1において、条例第12条の規定に基づき、請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否したことは妥当である。

イ 本件決定2について

本件請求1に係る行政文書のうち本件決定2の対象となった部分は、「不当給与の返還されたか判る書類、フロッピーディスク等その他決裁書」である。この部分の記載そのものは、「A氏」という特定がなされていないが、行政文書公開請求書の記載の体裁及び異議申立人の主張内容からすると、「A氏の不当給与の返還されたか判る書類、フロッピーディスク等その他決裁書」を請求する趣旨であると認められる。

これらの行政文書は、いずれも、特定の職員が「不当給与」を受けたことを前提として作成され得るものであり、その存否を答えることにより、特定の職員が「不当給与」を受けたということが明らかとなる。ここで「不当給与」とは、職員が勤務することなく給料を得ることや不正な届出により手当を受けることと考えられるが、特定の職員がこのような「不当給与」を受けたという情報は、個人の不名誉な経歴に関する情報であって、特定の個人が識別され得るものであり、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当すると認められる。

したがって、これらの行政文書が存在しているか否かを答えるだけで条例第9条第1号の情報を公開することとなるので、実施機関が、本件決定2において、条例第12条の規定に基づき、請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否したことは妥当である。

ウ 本件決定3について

本件決定3の対象となった本件請求2に係る行政文書は、「A氏の法律違反等に係わらず、昇格で約2年6カ月間に約5万6千円を不当に給与を得ていた調査の内容と決裁書」である。

これらの行政文書は、いずれも、特定の職員が法律違反等を犯したにもかかわらず、昇格で約2年6ヶ月間に約5万6千円を不当に給与を得ていたとの嫌疑をもたれ、実施機関による調査が行われたことを前提に作成される文書であり、その存否を答えることにより、特定の職員が法律違反等を犯し、かつ、昇格で不当に給与を得ていたとの嫌疑をもたれたということが明らかとなる。特定の職員がこのような法律違反等の嫌疑を受けたという情報は、個人の不名誉な経歴に関する情報であって、特定の個人が識別され得るものであり、たとえ公務員の身分を有する個人に関する情報といえども、「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められる」情報として、条例第9条第1号に該当すると認められる。

したがって、これらの行政文書が存在しているか否かを答えるだけで条例第9条第1号の情報を公開することとなるので、実施機関が、本件決定3において、条例第12条の規定に基づき、請求に係る行政文書の存否を明らかにすることなく公開請求を拒否したことは妥当である。

3 公益上の理由による公開について

異議申立人は、職員Aによる違法行為、不当行為等を主張し、条例第11条第2項に規定する公益上の理由による公開を求めているので、検討したところ、以下のとおりである。

条例第8条及び第9条に規定する公開原則の適用除外事項に該当する情報であっても、個別具体的な場合においては、公開することに優越的な公益が認められる場合があり得るところであり、このような場合には、実施機関の高度の行政的判断により、公開することが合理的である。

本条は、このような観点から、公益上の理由による公開について定めたものであり、第2項においては、公開請求に係る行政文書に条例第9条第1号に掲げる情報が記録されている場合であっても、「公益上特に必要があると認めるとき」は、請求者に対し、当該行政文書の全部又は一部を公開することができる旨規定している。本項の「公益上特に必要があると認めるとき」とは、第9条第1号の規定によって保護される個人のプライバシー保護の利益と公益上の公開の必要性とを個別具体的に比較衡量し、公益上特に公開する必要があると認められる場合をいうと解され、そのような場合には、本項に基づいて、当該情報を公開することができるものである。

しかしながら、条例は、一方で、第5条において、実施機関は、条例の解釈及び運用に当たっては、条例第9条第1号に規定する情報をみだりに公にすることのないよう最大限の配慮をしなければならない旨規定しており、実施機関が、本項の規定により行政文書を公開しようとする場合にも、第11条第3項の規定により、大阪府個人情報保護条例の趣旨を勘案し、個人の権利利益が適正に保障されるよう特段の配慮をしなければならないとされている。

以上のことからすると、本項の「公益上特に必要があると認めるとき」に該当して行政文書を公開できる場合とは、具体的には、災害時等における人の生命、身体、財産等に対する重大な被害の発生を防止するため当該情報を公開することが必要不可欠であるなど、基本的人権に関わる個人のプライバシー保護の利益に匹敵する特段の事情、必要性が現に存する場合に限られると解すべきであり、本件において、異議申立人が主張する事情のみをもって、公益上特に本件各請求に係る行政文書を公開する必要があるとは認められず、本件各請求に係る行政文書を、条例第11条第2項の規定に基づき、公開すべきであるとはいえないものである。

4 審査の進行について

(略)

5 結 論

 以上のとおりであるから、本件異議申立てには理由がなく、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。

このページの作成所属
府民文化部 府政情報室情報公開課 情報公開グループ

ここまで本文です。


ホーム > 府政運営・市町村 > 府政情報 > 大阪府の情報公開制度のご案内 > 大阪府情報公開審査会答申(大公審答申第104号)