第45回大阪府在日外国人施策有識者会議 議事録概要

更新日:2019年11月28日

(と き)平成31年3月18日月曜日 午前10時から12時
(ところ)大阪赤十字会館 301会議室

(議事)
1.大阪府の在日外国人施策について
2.新たな外国人材受入れ制度に伴う施策について

(出席委員)7名
河合 大輔(公益財団法人箕面市国際交流協会 事業課長)
佐藤 潤一(大阪産業大学国際学部教授)
中井 伊都子(甲南大学法学部教授)
野中 モニカ(天理大学国際学部准教授・ポルトガル語通訳案内士)
朴 君愛(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター 上席研究員)
ペエ 薫(弁護士)*ペエは、亠に裴の亠を取る
彭 飛(京都外国語大学外国語学部教授)

(欠席委員)3名
斎藤 ネリーサ(フィリピンコミュニティ連絡会 アドバイザー)
トラン ティ アン ホン(ベトナム語通訳)
山ノ内 裕子(関西大学文学部教授)

(配付資料)
資料    「大阪府在日外国人施策有識者会議設置要綱」 [Wordファイル/30KB]
資料    「大阪府在日外国人施策有識者会議の委員名簿」 [Excelファイル/29KB]
資料1-1「大阪府在日外国人施策の実施状況(平成30年度版)」
 ・表紙 [Wordファイル/27KB]
 ・目次 [Wordファイル/42KB]
 ・関連施策一覧 [Wordファイル/130KB]
 ・資料1「大阪府の国籍別在留外国人数」 [Excelファイル/18KB]
 ・資料2「大阪府の市町村別在留外国人数」 [Excelファイル/15KB]
 ・資料3「大阪府の国籍別在留外国人数の推移」 [Excelファイル/21KB]
 ・資料4「全国の国籍別在留外国人数及び割合」、資料5「全国の国籍別在留外国人数の推移」 [Excelファイル/27KB]
 ・資料6「大阪府外国人数相談コーナー実績集計」 [Excelファイル/14KB]
資料1-2「大阪府における在日外国人施策の体系」 [Excelファイル/47KB]
資料1-3-1「委員からの質問及び回答(1)」 [Wordファイル/19KB]
資料1-3-2「委員からの質問及び回答(2)」 [Wordファイル/19KB]
資料1-3-3「委員からの質問及び回答(3)」 [Wordファイル/21KB]
資料2-1新たな外国人材の受入れに向けて [その他のファイル/194KB]
資料2-2「『外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策』(法務省)を受けての課題提起」 [Wordファイル/19KB]
資料2-3「新たな外国人材の受入れに向けたワンストップ相談窓口の整備」 [Wordファイル/354KB]
参考資料1「庁内出席所属一覧」 [Wordファイル/17KB]
参考資料2「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(概要)」 [PDFファイル/907KB]

(会議概要)
1.開会
2.人権局長挨拶
3.議事
(1)大阪府の在日外国人施策について
【主な発言内容】<●…委員(座長含む)、○…大阪府(事務局及び関係所属)>
○ 大阪府における在日外国人施策の体系について説明(資料1-2のとおり)
● 委員から質問の趣旨について説明(資料1-3-1のとおり)
○ 大阪府から回答(同上)
● 委員から質問の趣旨について説明(資料1-3-2のとおり)
○ 大阪府から回答(同上)
● 委員から質問の趣旨について説明(資料1-3-3のとおり)
○ 大阪府から回答(同上)

●今、ベトナムから来られる方が全国的に急激に増えていっている中、ベトナム語通訳者が不足している状況がある。行政関連の機関でも、地域の中でベトナム語での相談が増えているにもかかわらず、ベトナム語で対応できる相談員を配置しているところが非常に限られている。一方、日本にはこの数十年間にベトナムから来た方、ベトナムにルーツを持った方がたくさん住むようになった。いわゆるインドネシア難民として来た方々と、その子どもたち、家族の方々が住んできたにもかかわらず、ベトナム語通訳者がいないということはどういうことだろうと考えざるをえない。
 ベトナムだけではなく、移民の子どもたちでは、1世は母語ができるが日本語の習得に苦労し、2世は日本語が第一言語となる一方で、親の母語を聞くことはできるけれども、話すことや読み書きができないといった問題が共通して見られるかと思う。質問1のところで、アイデンティティと本名ということがあったが、母語や母文化に対しても、尊重する、あるいは学ぶ機会を提供していくことが、子ども個人個人の人権を保障していくだけではなく、これからの共生社会を作っていく上での社会的な課題であり、大切な社会的な資源となるという視点が必要ではないか。
 カナダでは先行的に、多文化共生のいろいろな社会制度や施策が行われてきた歴史があるが、バイリンガル教育の世界的権威であるカミンズは、そういった観点で、外国人にルーツを持つ子どもたちの母語や母文化は、私たちの社会にとって社会資源として位置付けられるべきものであり、それを保障していく必要があると言っている。大阪では、民族学級などいろんな形で取り組んできた歴史があるので、そういったことを新しい時代の中で継承し、活かしていくことを進めていただきたい。
●ベトナムの方が急増ということで、その対策は来年度の大きな課題の一つ。最近新聞でマイナス的なニュースが多いが、いい話もある。この会議の委員にもベトナムの方がいるので、いい話を聞きたい。
●資料2−1の11ページの「外国語による大阪府ホームページでの情報発信」に、予算があまり配当されてない。多くのウェブサイトでは、多言語対応と言いつつ、グーグル翻訳などの機械的な翻訳対応になっており、全く意味のないものが多く、何を言っているか全然わからないパターンも多い。多言語対応する際、少なくとも主要な情報については、機械に頼らず、きちんと翻訳をする人に予算を出して、正確な翻訳をしておかないと、せっかく対応という形にしてもあまり意味がない。
 多言語対応のページはスマートフォンでアクセスすると、どこを見ていいかわからない。アクセス状況によるのかもしれないが、「大阪府」と検索して出てきたページでは、どこをクリックしていいかわからない。気軽に検索できる情報については、ウェブサイトにアクセスする人は皆、スマートフォンに頼っており、ほとんどの人がPCを必ずしも持っていない。自分の子供や、自分の教育している課程の中でも、小中高大みんなパソコンをほとんど持っておらず、キーボードを使えない人が非常に増えてきている。皆スマートフォンに頼っているため、そちらのページの方に少し意識して対応していただければと懸念しているところ。
 多言語対応について、もちろん直接相談窓口の通訳等で対応することも大事であるが、ウェブ等でアクセスできる状況がある程度しっかりしていれば、逆に言えば人員の方に対応する内容・支援の策定等を、もう少し工夫するなどの検討をしていただきたい。
●先ほど教育の中でも、「外国籍」という表現がたくさん出てきたが、昨今、国籍は日本であるが、ミックスルーツの子供たちも増えてきている。その中では例えば、母親が外国籍で、教育、学校との情報が不足しているという例も聞くため、ぜひ「外国籍」という国籍だけではなく、もう少し寛大に見ていただきたい。
 例えば、日本語指導が必要な児童生徒の中には、必ずしも外国籍の児童生徒だけではない現実もある。日本国籍ではありながらも、そういった課題というのは文科省等の調査等にも出ているため、国籍という枠組みだけに囚われることのない、ミックスルーツであるとか、そういったルーツの中での見方にしていただきたい。
●私が申し上げたいのは2つで、1つは大阪府にできるだけたくさん、いわゆる外国籍の人、外国の文化を持った人達をまずは採用してほしい。どれだけ今おられるかわからないが、こういった有識者会議の情報交換でも、なかなか情報が瞬時に伝わってこない。外国出身者や外国の文化を持った人達を、人口の割合くらいでとりあえず採用していただきたい。
 もう1つは、NPO・民間団体との連絡網を持っていただき、そのようなところからも情報を集めていただければ、瞬時にいろんな情報が入ってくるはず。
 例えば、私は大阪総領事館の事実上の相談を受けている。最近、インバウンドが大阪へは200万人来ており、あれだけ韓国と日本とがごたごた揉めているが、一般人はほとんど関係がなく、日本に関心があり、特に東京より大阪が面白いといった人が多く、ミナミを歩けば中国語や韓国語があちこちから飛んでくる。そういったところでは、交通事故や飲み屋で喧嘩、騙されたなど必ず問題が起き、情報がどんどんうちに来る。そういった情報が、いろいろなNPOにたくさんあるはず。
 私の配偶者が所属する団体では、多文化共生の取り組みをやっているので、いろいろな情報が入ってくると聞いている。例えば、外国人のインバウンドの旅行者が、日本の子供達を可愛いなと思って声を掛けると、不審者が子供にちょっかいをかけたと大きなニュースになる。そのような情報は、これに限らず大阪府、大阪市にたくさんある。NPOや民間団体と連携すると、本当に新鮮な情報がそれこそ無料で入ってくるし、むしろそのようなところはどんどん大阪府を使いたいと、いろいろなことをやってくれる。そのようなネットワークを作って活用することは、いわゆる公権力の行使に関わらなければ、いくらでもできるはずだし、すぐに実現可能なはず。
 日本社会は島国だという意識があり、日本の人々が外国人を嫌う理由は十分わかるが、要は慣れていないだけである。明治維新以降、なかなか外国人を受け入れてこなかった。ただ、それではダメだということで、一時的な滞在者は今だけだったらと受け入れ、定住してくる人は嫌、さっさと帰ってくれるのが一番いいという発想。しかし、現実社会では、外国人労働者の力がなければ、日本の大企業のみならず、農業も介護も全てアウトだから渋々勧誘する。しかし、受入れ体制が全然できていない。とにかく、外国人の採用と、NPOとのネットワーク、この2つは早急に実現していただきたい。
●様々な施策の中で研修が、成果がはっきりと見えるわけではないが、非常に地道で重要な施策だと思う。たとえば、資料2−1の33ページに、庁内で様々な人権研修をやってくださっているが、数字が出ていないため、どれくらいの方が出席したのかということはあまりわからない。内部のこととはいえ、人数を見える化し、その人数に対してどういう風にしていきたいのか、多いのか少ないのか、さらに、新任課長等の参加率はこれくらいまで上げなければならないとか、具体的な数値や目標値を立て、方向性を打ち出していただけるとよりわかりやすいと思う。
 35ページの教職員に対する研修も、わりと多い人数を集めてやってくださっているが、この人数をどうしていくのか、これでいいのか、あるいは別の模索を、回数を割るなりして、きめ細かくやっていく等の政策につなげていただきたい。啓発、研修は非常に大事なことだと思う。

(2)新たな外国人材の受入れ制度に伴う施策について
「新たな外国人材の受入れに向けて」
〇今般、新たな在留資格として、特定技能という資格が創設され、法律上はこの4月から制度がスタートする。また、特定技能の在留資格が認められる分野については、外国人により人材の確保を図るべき産業上の分野として、14分野が指定されている。例えば厚労省所管であれば、介護やビルクリーニング、経産省所管であれば、いわゆる製造業、国交省所管であれば、建設や宿泊、農水省所管であれば、漁業や外食業といった計14分野になる。
 これらの分野の技能水準については、所管省庁で定める試験等で確認される。また、この14分野について、向こう5年間の受入見込数は全国で約34万5千人となっている。この34万5千人という数は、それぞれの分野において、生産性向上の取り組みや処遇改善、高齢者、就業促進等による追加的な国内人材の確保によってもなお不足が見込まれる数を算出した数になっている。
 各都道府県への具体的な割り振り数はまだ示されてないが、今後、府内でも相当数の外国人材の受入れが予想される。また、受入れにあたっては、雇用面・生活面で様々な課題があるため、国の動きなども踏まえつつ、府としての対応の検討が喫緊の課題であると認識している。
 このような国の動きを踏まえ、大阪における円滑な受け入れ環境整備に向けて、全庁を挙げて対応するため、関係課の参画による庁内のPTを立ち上げるべく、現在、庁内の調整を行っているところ。具体的な検討内容についても、まだ案の段階ではあるが、例えば「府内在住外国人に対する行政サービスの現状把握」、「新制度下における受入分野、受入数の企業意向調査」、「新たに発生する課題の洗い出し」、「国機関・経済界との連携の検討」などを考えている。年度内に、担当者レベルの準備会を開催して、このような内容について周知し、4月以降正式にPTを立ち上げたいと考えている。これに加え、府市連携による受入体制の整備に向けた新規事業として、官民連携による総合的な調査の実施やワンストップ窓口の整備・運営なども行っていく。
 円滑な受入れと環境整備に向けた検討を行う前段階として、現場の実情等の実態把握を行いたいと考えている。府域で活動される経済団体・業界団体の協力を得ながら、府と大阪市が連携し、専門機関による委託調査なども実施することとしている。想定される調査内容としては、特定産業分野に属する企業の意向調査、個別ヒアリングやその他受入れに向けた課題に関する調査として、「府内外国人集住地域についての調査」や「仲介事業者の実態についての調査」、「外国人集住都市等の先進事例に関する調査」などを考えている。これらについては、庁内PTでの意見も聞きながら具体的な調査内容を固めていく。集約した調査結果を踏まえて、「受入体制の整備に向けた検討」や「課題解決に向けた施策の推進」、「国への要望」などに反映していく。
 国では外国人材の適正・円滑な受入促進に向けた取り組みとともに、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備を推進するため、総額211億円の総合的対応策をとりまとめている。参考資料2は国の資料になるが、総合的対応策による支援メニュー概要が記載されている。既存の取り組みや既存の取り組みの拡充、あるいは新規事業など、各省庁の取り組みをまとめた内容となっている。例えば、生活者としての外国人に対する支援では(1)暮らしやすい地域社会づくりの欄にあるように、ワンストップ相談窓口の整備運営についても、国の支援策を活用している。また(2)生活サービス環境の改善等では、1の医療・保健・福祉サービスの提供環境の整備等において、電話通訳や多言語翻訳システムの利用促進、外国人患者が安心して受診できる体制整備などがある。その他、(3)円滑なコミュニケーションの実現や、(4)外国人児童生徒等の教育等の充実、(5)留学生の就職等の支援、(6)適正な労働環境等の確保、(7)社会保険への加入促進等が挙げられている。また、外国人材の適正・円滑な受入れの促進に向けた取り組みとして、(1)悪質な仲介事業者等の排除や、(2)海外における日本語教育基盤の充実、新たな在留管理体制の構築としては、(1)在留資格手続の円滑化・迅速化、また、(2)在留管理基盤の強化では、新たに出入国在留管理庁が創設される。
 国からの情報もまだ十分ではない状況であるが、府としても、これから具体的な取り組みを進めるべく、走りながら準備を進めている状況。国の動向も踏まえつつ、市町村・経済界とも連携して、雇用・生活面の課題解決にしっかり取り組みながら、誰もが安心して働き暮らせる環境を整備していきたいと考えている。

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(法務省)を受けての課題提起
●今回の新たな在留資格の創設、総合的対応策については、これを議論する前に、現状の技能実習制度の問題にみられるような制度の建前と実態との乖離や、その中で起こっているいろいろな人権侵害など、たくさん議論すべきことがあると思うが、そういったことについては、本日の問題提起においては触れていない。私が地域で、いろいろな組織の方々と一緒に動いている中で、気になったことを書き出したものにすぎないため、委員の皆さんからもご意見をいただけたらと思う。
 まず、1「総合相談センターと地域との連携について」について、この総合的対応策の中で、ワンストップセンターを設置することが大きく報道もされ、まず始まっていく事業の柱かと思うが、問題提起したいポイントとしては、外国人市民の生活の中で発生する問題は地域の中にあって、その中での対応が最終的に求められていくことに、どのように対応していけるかという懸念である。
 これまでも、大阪府国際交流財団では、相談事業を行っており、非常に多言語で対応されている。何よりも、制度に関する情報の蓄積が本当に素晴らしい。箕面市国際交流協会では、年間300件ほどの外国人市民からの相談に対応をしているが、在留資格などの制度に関する情報を提供する際に、大阪府国際交流財団に「こういうケースの場合、制度上はどうなりますか」という相談をさせてもらい、瞬時に的確な情報をいただき、感謝している。私たちはその情報をもとに、地域の中でそのケースに対応し、相談者がきちんと進んでいけるよう他機関とも連携しながら支援のコーディネート、ソーシャルワークを行っている。ただ、府内の各自治体を見ると行政、あるいは国際交流協会などによる外国人市民を対象にした生活相談の事業については、実施していない自治体も多く、実施していても情報提供に限っているというところが多い。そうなると外国人の方は緊急の事態になっても自分で相談先に行く必要がある。そもそも、日本の行政窓口に相談に行くということは外国人市民にとって非常にハードルが高い。市役所で通訳がついているところは非常に限られており、情報提供を行っても、当事者だけでは解決できない面がある。
 一方で、例えば、日本語教室のボランティア、あるいは学校の先生など、地域で外国人市民の生活上の相談に日々、直面している方々が外国人市民の日々の相談に対応している実態がある。これは仕事として、専門家としてやっているわけではない。親身になるあまり個人で問題を抱え込んでしまったり、非常に苦労されていたりということが各所で見受けられている。こうした方々が地域の中で行政機関と連携し、相談者が福祉制度等と適切につながっていく仕組みが必要だ。そのためには、府の情報センターの機能と各地域内での多文化ソーシャルワークの体制、これを総合的に実現していくような仕組みをぜひ考えていただきたい。もう少し具体的に言うと、大阪府の中をいくつかのエリアに区分し、各エリアにそういったコーディネートを行う多文化ソーシャルワーカーを配置できないか。
 また、ワンストップセンターの事業は現状、都道府県と政令指定都市と集住都市を対象としているが、そうなると大阪市内にワンストップセンターが2つ設置されることになる。これでは、大阪市外の在住者には利用しにくい。このあたりも含めて、府全体の仕組みをどのように考えておられるかということについての課題提起である。
 次に日本語教育についてだが、大阪では各地域で市民がボランティアで外国人市民の日本語学習支援をしてきたという歴史がある。それぞれの地域で、ニーズに合ったいろいろな学習支援のあり方、グループの作り方があり、全国的にも先進的な取り組みがたくさんある。一方で最近では、技能実習生をはじめとして地域日本語教室への参加者が増加している状況がある。また、学習者のニーズも、日本で定住して仕事をしたいという方、技能実習生で3年で帰国予定だがその間に日本語能力検定を取りたいという方、技術者として就労しているが、会社が日本語指導を十分にしないため、業務報告書の書き方を教えてほしいということで来られる方、また短期で滞在している旅行者など、非常に多岐にわたっている。こうした多様なニーズが全てボランティアの人たちの手に委ねられており、その中でも苦労しながら対応している状況がある。そういった教室の実態を把握し、サポートするための総合的な計画・施策が必要になっている。
 現在、大阪府は日本語教室の実態調査として、それぞれの教室の運営体制、支援者の人数、学習者の背景などについての調査を行っているが、日本語教室がない場所で、外国人市民が増えているという可能性もある。つまり、外国人市民の実態、潜在的な学習ニーズと、日本語教室の実態は合っているのか等の検討を含めて、今後の総合的な計画が必要なのではないか。
 3点目の、学校現場における日本語教育についてだが、各自治体に在籍する日本語指導が必要な生徒の数に応じて、日本語指導を担当する教員として児童生徒支援加配が配置されている。しかし、少数点在地域では加配教員が配置されないため、日本語指導や初期の適応指導などが各自治体や学校の判断に任されている。放課後に教員や地域のボランティアの方々が試行錯誤しながら対応する。あるいはほとんど支援を受けられないまま教室に置かれているという状況もある。こうした地域による格差を今後どうしていくのか、課題提起したい。
 4点目、企業責任と行政、市民との連携について。先ほど介護についての大阪府の取り組みを教えていただいたが、その他の領域でも外国人市民を生活者として、働き手として、受け入れようという流れとなっている。そうした方々が生活をする中で、いろいろな課題が発生する。仕事の中でも、日本語の不自由さを感じたときにどうしたらいいのか。これは、今回の法律をめぐる中で、企業にも責任をとってもらうというような議論があったが、一体それはどのような形で本当に実現されるのか、まだ不透明だ。地域の日本語教室の学習希望者がさらに増加する可能性がある。業務報告書の書き方を教えてほしいという学習ニーズが地域のボランティアに寄せられたり、あるいは、病院に行きたいが言葉が通じないなど、そういったときに誰がどのように対応するのか。これも、日本語教室のボランティアが、時間を割いて同行している事例も聞く。大阪府内のある地域でも、大手メーカーが外国人技術者を受け入れているが、この方々の日本語学習に市民のボランティアが一生懸命対応しているので、企業の方にお伝えし、企業側からもサポートをしていただきたいと話をしているが、なかなか対応が冷たい。「母国で日本語指導を受けてから来日していますから、問題ありません。」など、実態とは違う返答で終わってしまう。
 今後、外国人労働者の受入れが進む中で、各企業と地域との連携が必要となってくると考えるが、大阪府として、基本的な方向性、あるいは望ましい事例を集め、推進していくような取り組みをぜひご検討いただきたい。
 最後、多文化共生施策を統括する部局の必要性について。本日の資料では、PTについての記載がある。実際に業務を行う上では、それぞれの部局で政策を進めていくことが必要だと思うが、国際や人権、教育の分野ごとに、外国人市民に関する施策がばらばらに存在している。それぞれが、それぞれにやっていくということでは、対応がしきれなくなってくるのではないか。具体的に言うと、例えば、日本語教室の総合的な計画と、ワンストップの相談センターを府内の全体を網羅する形でどのように作っていくのかということを、ばらばらに検討していても、ちぐはぐなことになるように思う。相談センターと日本語教育を受けられる拠点を一体的に実現した方が、利用する外国人市民にとっては非常に利用しやすいし、ニーズを把握する上でも、非常に効率的であると思う。
 大阪府では、これまでにすでに各部局で、インドシナ難民の方々や中国帰国者の方々、在日コリアンの方々と一緒に作り上げてきた先進的な施策が、いろいろあると思う。これまでの良かったこと、悪かったことを含めて、今日の状況の中であらためて検証を行い、総合的な計画としてぜひ施策を実施していただければと思う。

〇これまで識字・日本語学習に関わる計画等については、大阪府識字施策推進指針を平成5年に策定し、17年に主体的に発言できるコミュニケーション能力を身につけることを盛り込み、指針の改定を行ってきた。直近では、28年の3月に、大阪識字・日本語協議会で、大阪府内における識字・日本語学習活動促進のための課題を整理し、報告書にまとめ、この報告書をもとに大阪府をはじめとした各団体で、識字・日本語学習を充実するための施策を実施してきたところ。
 調査については、識字日本語教室に対しては、毎年状況調査等を行っており、平成25年度と29年に詳細調査を行っている。25年と29年の比較では、学習者数がこの間2割増えているのに対し、支援者数が1割の増加である。学びたいという方が増えていることは我々承知しているところであるが、支援者がやはり足りない。支援者の育成が大事であると認識している。
 そういった課題がある中で、日本語教育の充実のために、文化庁は予算をつけているところ。これに対して、地域教育振興課としても、事業申請をしている。
 引き続き、国の事業で使えるものは使いながら、府内の識字・日本語教室の課題に応えられるような取り組みを進めていきたい。

「新たな外国人材の受入れに向けたワンストップ相談窓口の整備」
〇国の「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」の一つとして、法務省の方で外国人の一元的な相談窓口の整備に向け、外国人受入環境整備交付金を設置した。平成30年度補正で10億円、31年度当初で10億円ということで、交付については、対象が都道府県、指定都市、外国人が集住する市町村。大阪府、大阪市、堺市、あと集住する市町村として、国の交付金の定義が外国人の住民の方々が1万人以上の市町村、又は、5千人以上でかつ、住民人口に占める割合が2.0%以上の市町村になる。府では、1万人以上ということで東大阪市、あと5千人以上かつ2.0%ということで八尾市が該当している。
 市町村については、この交付金を活用して窓口を整備していくとのこと。府においても、この交付金を活用し、大阪府国際交流財団において、ワンストップ相談窓口の開設として、来年度当初予算で2千万円を予算計上している。内訳は、国が1千万、府が1千万という形になっている。現在の外国人情報コーナーを拡充するかたちで考えている。拡充の内容については、対応言語を現在9言語で対応しているが、来年度からネパール語とインドネシア語の2言語を追加し、11言語で対応を考えている。
 相談時間についても、今回この制度自身が、外国人労働者の受入れに伴うところもあるため、外国人労働者の相談しやすいような相談時間の拡充を考えている。現在は、月曜から金曜日の9時から17時30分であるが、来年度からは週2日については、20時までということで、夜間の相談も対応する。また、月に2回、日曜日に相談窓口をオープンし、相談対応を考えている。それに伴い、相談員等も拡充して対応する。
 また、30年度、今回の補正予算で、府で国の交付金を活用して相談窓口の整備を行う。現在は相談窓口が1つしかないが、3つに相談窓口を増やし、通訳翻訳機器、パソコン等を購入することで約857万7千円を予算計上し、先月、国へ交付申請を行った。今年度中に、相談室の増築工事等を行う予定。
 今後の市町村との連携について、現在府内11市しか相談窓口を設置していないが、OFIXの方でも、市町村の相談窓口の設置を支援するということで、府内の自治体と合同で相談会等を実施している。引き続き、市町村での相談窓口設置に向け取り組んでいきたい。
 あわせて、大学等との連携では、留学生相談ということで、大学等のイベントにあわせて、出張でブースを設け、相談窓口を設置したり、また、企業の合同就職説明会等にも参加し、相談窓口を設置して、留学生の相談等の対応をしているところ。
 市町村等の相談員のスキルアップということでは、OFIXと大阪府内の地域国際化協会とでネットワーク会議を設置し、窓口の担当者間で知識共有、相談事例についての情報交換等をしている。今後も、市町村との連携を密にしていく必要がある。
 今回、労働者の受入れということもあるため、これまであまりしてこなかった企業との連携ということも考えていく必要がある。PRということで考えると、OFIXで相談をやっていることについて、知っている方は知っているが、まだまだ認知度が低いため、PRについても、来年度もっと強化していきたいと思う。今回の外国人材受入れ制度は、これから始まることなので、課題が発生すれば、関係機関等とも連携して対応していきたい。

【意見交換等】
●PTを立ち上げられるときに、いわゆる調査する主体となる外国人材というものを、ぜひ入れるといいと思う。調査の対象に、現場のニーズを一番よく把握しているNPO等が入っているかどうかわからないが、入れてあげたらいいのではないか。
 もうひとつは、ワンストップシステムや組織を作る時に、NPOがどうなって、現場にどういうニーズがあるかを把握し、それに対して具体的にどういう解決方法をしているかということの一種の支援が、この制度設計に必ず役立つと思う。
 例えば、いろいろな外国籍の方たちのそれぞれの問題が、どういうルートで流れて解決されているか、もしくは解決されずに流されているかなどの現場をまず把握し、それに応じた組織設計をしないと、作ったものの誰も利用しないということになりかねないため、注意していただきたい。
●このような有識者会議は本当にいい機会なため、留学生の受入れの経験を参考にしながら、ぜひ整備して受け皿を整備してほしいと思う。
●NPO・NGOが外国人の相談に関わっているが、なぜ行政にも窓口があるのに、そちらに沢山の人達が行くかについて考えてほしい。日本語での情報がまず先にくる行政機関に対するハードルの高さや外国の方々の信頼など行政との語学的な距離は、私たちが思っているより大きい。NPO・NGOの多くが厳しい財政状況で運営していて、行政がなかなか解決できないニーズがそこにあるということなので、むしろそういったNPO、NGOを支援するような形も含めてNPO、NGOと連携をしていただきたいと思う。
 外国人のシングルマザーやいくつかの相談機関にインタビューに行ったが、福祉関係の行政機関で、そのような人たちの置かれている状況を理解した対応ができていないというケースを聞いた。税金は、外国人も日本人も平等に同じシステムで捉えているにもかかわらず、そのような無知がある。また、こんなに大変になっているなら国に帰ったらというような対応もあり、外国人の方はそういう選択もあると分かっているが、帰れない事情があるから、なんとかしてくれと相談をしている。相談員の資質が非常に大事になっていると思う。
 こうしたプロジェクトをするとき、ただシステムを作るだけではなく、効果的に、所期の目的を果たすような人材を是非活用していただきたい。その中には、外国人の当事者の方もいるはずだ。形があり、見れる日本人にはない経験や視点があるなど、とても貴重な存在であると思う。
●外国人を世話する存在や地域の非常に特化した組織等、こうした受け皿整備は、企業よりも一番大事なことではないか。
●委員がおっしゃった「人材が生活者である」ということは、実際その通りだと思う。労働者や仕事に関する人を受け入れるということではなく、外国の方々を住人として受け入れるということであれば、新しい課題ではないと思う。それぞれ生活していくなかで、日々の課題というのは同じだと思うし、予算があるから新しく何かをするということではなく、これまでのたくさんあった課題のなかで考えていけたらなと思う。同じく住民になり、生活者ということである。
 ワンストップ相談窓口のことで気になったのが、別の市民会議で、ある委員の方から、「最近の外国の方々は、SNSやネット活用で、様々な情報を日々探している。提供している情報に関しては追いかけている」という話が出たが、情報提供のみなのか。それぞれ課題を抱えておられる方は、課題を解決してほしいと相談をする。以前、相談員として活動していたとき、本当に課題を抱えている方は相談の時間帯には来られなかった。さらに、情報を提供し、どこどこに行ってくださいというだけでは、なかなか課題解決につながらないケースもあり、情報提供が独り歩きすると、課題解決までには至らないという懸念があるため、すでに住民としていらっしゃる外国の方々、新しく住民となる方々にとって、良い形での体制というのも大事であると思う。
●国の政策なので仕方ないが、そもそも外国人材という言い方が非常に気になって仕方ない。材料ではないし、好き勝手にできる相手ではない。国に合わせて使わないといけないのかもしれないが、そもそも「人材」といった便利に使えるものではない。人なので、ご担当する方は、生活者という視点だけは常に意識してやっていただきたい。
 日本語を拡充するというのも大事かもしれないが、対応する母語として、朝鮮、中国、英語などの言語についての学びを、実際に対応する全ての職員が多少なりともすることも本当は必要だと思う。
 イギリスやオーストラリアは、小学校3年くらいから外国語を選んで勉強できる学校があり、小さいときから他の言語を話す人達が身近にいるんだよと。実際いるわけですから。外国語が母語である人達に対して日本語を教えるだけではなく、そういう言語や文化を学んでいくことで、初めて多文化共生がある。日本語教育を強くやることも大事ではあるが、いろいろと工夫が必要だと思う。
●温かく迎え入れるためにいろんな工夫の必要があるのではないかと思う。日本生まれ日本育ちの外国籍の方や留学生、あるいは国際結婚して大阪に住んでいる方、また観光客など、大阪府も国際化が進んでいるけれども、どう対応していくか本当に重要な課題。その中で大阪であたたかく暮らして迎え入れる、そんな施策が必要かと思う。

以上

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画グループ

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