第40回人権啓発詩・読書感想文入選作品 読書感想文の部門【中学校(中学部)の部】 P.56

更新日:2022年3月31日

「黒い雨」を読んで                                  堺市立津久野中学校 3年 亀岡 真衣

 私は最初「黒い雨」という題名を見て、戦争を体験して流れた涙がどす黒い感情から生まれたものだったからそういう表現をしたのかなと思いました。最近学校の英語の授業で原爆の勉強をしたところだったので興味がわいて、この本で読書感想文を書きたいと感じました。
 まず、この本の著者は戦争経験者で、本の中では広島の原爆についてそのときの状況をリアルに心情も交えて著しています。主人公の視点でほとんどが書かれていますが、被爆者への偏見をはらすため自分の娘の戦時中の日記を書き写すという形で娘から見た戦争についても書かれています。
 私はこの本を読んで想像以上の気持ち悪さに衝撃を受けました。回りくどかったり間接的であったりする表現が少なくて、見たまま感じたままを直接書き表しているので様子がはっきり伝わってきました。小学生のときにお話をしに来てくださった戦争経験者のどの方よりも強く印象に残って、ハンマーで殴られている様でした。特に主人公が会う人々の惨状をあらわしているところの印象が強かったです。「頬が大きく脹れすぎて巾着のようにだらんと垂らし、両手を幽霊のように前に出して歩いている女」や「両手の甲の皮も剝げて垂れている」といった、実際に見たことがない私たちでも想像できるような表現のし方で、「だらり」「だらん」というような擬態語がそのおぞましさを際立たせているように感じました。今ではありえないことがたくさん起こっていて何ともいえない怖さをこんなに分かりやすく表現できるんだとおどろきました。
 この本を読むまで私は戦争と言われても非日常なものなので「何か怖いもの」ぐらいにしか想像できませんでした。私は戦争で亡くなられた人々の数の多さは聞いたことがあっても、そこにいた一人一人の思いやもっと具体的な痛みや苦しみについて何も知らなかったんだということに気づかされました。爆弾が落とされた所には大人も子どももいて、友達もいて、家族もいたはずです。それが一瞬で消え去ってしまうのはあまりにも苦しすぎると思います。その苦しみが伝えられることなく無くなっていくのもまた怖いことなのではないかと感じました。この本を読んでいると、あまりにもあっけなく人々が死んでいくので人間の弱さとおろかさがひしひしと伝わってきます。人の命を奪い人に命を奪わせた戦争が世界から一刻もはやく無くなってほしいと思いました。主人公は町に死人があふれたとき「恐怖を通りこして脈は安定している」と言っていました。私は本当にそんなことがあるのか不思議に思いました。もし私が主人公の視点だったら、そんなに冷静ではいられないのではないかと思います。つい先ほどまでは当たり前にあったものが壊れていくと感情も壊れていってしまうのでしょうか。それを見た軍のえらい人たちはどう感じたのでしょうか。なぜ戦争が世界からなくならないのかわかりません。
 私たちが今後同じ間違いを起こさないようにするにはどうしたら良いのでしょうか。私は人々が戦争について理解することが何よりも大切だと思います。戦争をするのはいけないことだというのは世の中の大半の人が理解していると思いますが、実際に体験した人は今では本当に少なくなっています。私は「黒い雨」を読んで、ショックは受けましたが戦争の痛々しさを体験談から知ることができました。小学校で自分の経験したことを話してくださる方も年々減っていくと思います。その中で、実際には戦争を経験していなくても後々に伝え継いでいかなければいけないということがよく分かりました。「黒い雨」という題名は決して大袈裟ではなくて、原爆による影響で本当に黒い雨が降っていたことも分かりました。戦争を「こわいもの」「悪いもの」で終わらせず、もっと調べたい、知りたいと思える人が増えれば二度と戦争は起こらないと思います。

「黒い雨」 
著 井伏 鱒二
新潮社

 

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

ここまで本文です。


ホーム > 人権・男女共同参画 > 人権 > 教材・啓発冊子の紹介 > 第40回人権啓発詩・読書感想文入選作品 読書感想文の部門【中学校(中学部)の部】 P.56