第39回人権啓発詩・読書感想文入選作品 読書感想文の部門【中学校(中学部)の部】 P.62

更新日:令和3年3月25日

『ろう者の祈り心の声に気づいてほしい』を読んで             大阪府立生野聴覚支援学校中学部 2年 中井 美佑

 「心の声に気づいてほしい」。図書館でこのサブタイトルを見たとき、何か共感のようなものを覚えた。気づいたら私はこの本を手に取っていた。本を開いてみると、本文から一部抜かれた文章が書いてあった。そこには、
「ろう者の皆さんは何も特別なことをしてほしいと言っているのではないのです。みんなと仲良く生きていきたいと思っているだけなのです。」
と書かれていた。まさにその通りだと思った。私たちのようなろう者は、確かに普通の人とは違う。しかし、私たちは耳が不自由なだけであって、それ以外のことは全て健聴者と同じなのだ。本に書いているように、ろう者はみんなと仲良く、平和で幸せな生活を送って生きていくだけで構わないと思っている。その思いは私も同じ。差別のない、みんな平等な世界があったらどんなにいいことだろう。
 この本を読んで印象に残ったところがある。そのページはNPO法人「デフサポートおおさか」の稲葉通太さんについての人生が書かれているページだ。私は小学六年生の頃からデフサポートおおさかに通っている。私がパワーポイントに興味を持ったのも、稲葉先生のおかげだ。いつも明るく色々なことを教えてくれる。稲葉先生は小さいころ、事故によって聴力を失ったと聞いたことがあるが、そのあとの中学、高校生活に関しては聞いたことがなかった。この本を読んでとても驚きそして尊敬した。それは中学生活を楽しんでいた時の頃、稲葉先生は
「自分は死ぬまで聞こえない。なら聴者の五倍、十倍頑張ろう」
と考えたことについてだ。聴覚障がいを抱えているという現実を逃げずに受け止めて、そして目標を立てて頑張る。私は中学生でこの考え方をすることができるのはすごいことだと感動した。稲葉先生は、ろう者でありながらも決して諦めずに自分の人生と向き合っているのだなあと思った。稲葉先生が通っていた中学校は、人権教育が進んでいたとある。先生に情報保障をしてほしいと相談した時に稲葉先生は無理かもしれないと覚悟して、
「口を見てもわからないから、できたら紙に書いてほしい」と言ったそうだ。勇気があるなあと思った。
 私は小学生のとき、地域の小学校に一日だけ交流をしに行ったことがある。その時に受けた授業では、先生が何を言っているのかわからなかった。私は「紙に書いてほしい」と言う勇気がなかった。だから、稲葉先生はとても強いと思う。
 その先生は、
「友だちと机をくっつけよ。一週間ずつかわりばんこに、先生の指示や友だちの話を書かせるからな」
と言ったのだ。さらに、その先生は願いを聞いてくれた上に友だちと仲良くできるように、と考えてくれていた。稲葉先生はその案のおかげで色々な人と話せた。このような先生が身の回りにいたら、きっとろう者は救われるのではないだろうか。
 また、稲葉先生は聴者の皆さんに向けて、
「助けてあげたいではなくて、友だちになりたい、話したいというところから接してくださいませんか。ろう者は、ケンカができる関係を作りたいと思っているんです。」
と伝えた。助けてあげる、という目線ではなくて、ろう者も聴者とも、平等な関係を作ってほしいと願っていることがとてもよくわかる。
 私たちのようなろう者は、ろう者が安心して手話を使えるような環境や、友達、自分の障がいをわかっていてくれる社会を求めている。ただ求めているだけではなく、私たちも何か活動していかないと何も変わらないままだと思う。まずはろう者がいること、そしてろう者には誰かの支えが必要だということ、それらの理解を得たいということを伝えていかなければいけない。
 最後に、この本からろう者は努力を忘れずそして人とつながることを恐れずに常に前を向いて進んでいくことを学んだ。私は今、中学生だ。まだ社会人ではないから、社会人にしかわからない苦労がきっとあると思う。落ち込むこともあるだろうし、傷つくこともあると思う。だが、そんな時はこの本を読み返して、力をもらうつもりだ。本の中のろう者の方々に。


 『ろう者の祈り 心の声に気づいてほしい』
著 中島 隆
朝日新聞出版


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府民文化部 人権局人権企画課 教育・啓発グループ

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