不動産取引における土地調査問題研究会報告書

更新日:平成22年5月19日

法令の検討について
 三業界が行う「土地差別調査」については、発覚以来、大阪府個人情報保護条例を適用して指導を行ってきた。こうした差別行為に対しては「法的な規制が必要である」と考えられる。今後、さらに厳しく規制等を行うとともに、再発を防止するための方策を検討する必要がある。以下、大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例、大阪府個人情報保護条例の解釈と運用、宅地建物取引業法の条件のそれぞれについて検討し、その方向性を示す。

□大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例

 規制対象に新たに三業界を加え、罰則を適用することについての可否を検討した。
・興信所・探偵社業者の差別身元調査(以下「差別身元調査」という)は、他人の依頼を受けて特定の人の身元を調べるのに対し、「土地調査」は、当該地にマンション等を建設する際の採算性などを検討するため、当該建設予定の周辺地状況(物件情報や地域特性)を調べるものである。両調査は調査目的、調査対象などが異なる。
・「差別身元調査」は、個人調査を業とする業者が、結婚や就職等にあたって、いわゆる同和地区出身者かどうかの調査を行うことにより、特定個人に重大な権利利益の侵害をもたらすものであるため、懲役や罰金などの厳しい罰則規定を設けている。これに対して、「土地差別調査」は部落差別につながるものであるが、特定個人がいわゆる同和地区出身者かどうかを調査するものではないため、罰則規定との関係も検討する必要がある。

 このことから、同条例において新たに三業界を対象に加え、同様の罰則を適用することは困難であるが、大阪府個人情報保護条例に基づく厳格な対処や、今後、検討される業界団体の自主規制などの取り組みを進めることにより、「土地差別調査」に対するより適切な規制が可能になるものと考えられる。


□大阪府個人情報保護条例の運用について

 旧同和対策事業対象地域(以下「同和地区」という。)の所在地名は、「個人情報」であり、かつ「センシティブ情報」に該当するため、特に慎重な取り扱いが要請される。 
 とりわけ、「土地差別調査」は差別につながるものであるため、同条例第47条及び事業者指針に抵触するものであり、許されない行為である。従って、条例第47条違反、センシティブ情報を慎重に取り扱っていないとして、事業者を指導することができ、さらに、不適正な取扱いが認められる場合は、説明・資料提出要求や勧告等が可能となる。
 今後とも、この取り扱いに反する事業者に対しては、この考えに基づき厳格に対処する一方で、府内の行為に限定されるという条例の限界があるため、国に対しても個人情報保護法の運用のあり方について要望する。
 個人情報の取り扱いについて、大阪府個人情報保護条例や事業者指針から導かれる考え
方を以下に示す。

《運用の考え方》

 a.個人情報の収集について
個人情報の収集は、事業者の正当な事業の範囲内であらかじめ個人情報を取り扱う
目的を明確にし、その目的を達成する範囲内で行うことが求められている。(事業者指針)

「同和地区」の所在地名は、先のとおり個人情報に該当し、かつ、センシティブ情報にあたるため、特に慎重な取扱いが求められる。「土地調査」にあたって、その土地が「同和地区」かどうかを調査することは、部落差別を助長し個人の権利利益を侵害するおそれがあることから、センシティブ情報の取扱に関する条例第47条及び事業者指針に抵触するものであり、許されない調査である。

b.個人情報の利用又は提供について
個人情報の利用又は提供は、原則として、収集したときの目的の範囲内で行うことができると定められている。(事業者指針)
このため、収集する意図のなかった「同和地区」の所在地名が調査票等に含まれていた場合は、利用してはならず、他者に提供してはならない。

c.個人情報の適正な管理について
個人情報は、取り扱う事業の目的を達成するために必要な範囲で、正確かつ最新の状態に保つよう努めるとともに、漏えい、滅失及び損傷の防止その他の個人情報の適切な管理のために必要な措置を講ずることとされている。(事業者指針)
このため、現に保有している調査報告書やデータベース等に「同和地区」の所在地名の情報が含まれている場合は、削除するなど適正に管理することが必要である。
なお、不適正な取扱いがあった場合は、行政は事業者に対し資料の提出等を求め、個人情報の適正な取扱いについて是正指導等を行うものとする。

d.その他
条例の指導対象となる事業者は、大阪府内で「個人情報の不適正な取扱い」を行った全国すべての事業者におよぶ。

(参考)
○大阪府個人情報保護条例第47条(事業者の責務)
 事業者は、個人情報の保護の重要性を認識し、個人情報の取扱いに当たっては、個人の権利利益を侵害することのないよう必要な措置を講ずるとともに、個人情報の保護に関する府の施策に協力する責務を有する。
2 事業者は、地祇に掲げる個人情報については、個人の権利利益を侵害することのないよう特に慎重に取り扱う責務を有する。
 一 思想、信仰、信条その他の心身に関する基本的な個人情報
 二 社会的差別の原因となるおそれのある個人情報
○「個人情報の不適正な取扱い」の判断基準
(1)個人情報を違法・不正な手段により収集し、(2)適正な管理を怠り、(3)又は正当な理由なく目的外に利用・提供することにより、(4)個人の権利利益に侵害を与えている(おそれのある)場合をいい、具体的には、個別の事案ごとに取り扱われる個人情報の内容、形態、個人の権利利益の侵害の程度等を勘案して判断されるものである。
※(1)から(3)のいずれかに該当することにより、(4)の個人の権利利益に侵害を与えている場合
○「社会的差別の原因となるおそれのある個人情報」の取扱基準(事業者指針より)
「社会的差別の原因となるおそれのある個人情報」には、人権・氏族に関する情報や旧同和対策事業対象地域に居住し、又は居住していたこと、その他その地域の出身であることに関する個人情報が該当すると考えられ、詳細な本籍地に関する情報も、この情報に該当する場合があります。(中略)
府の実施機関においては、これらの「センシティブ情報」は、原則収集禁止としています。事業者においては、業種や業務が多様であるため、一律的な規定はできませんが、いずれの事業者においても慎重な取扱いが要請されます。

□宅建業免許への条件を付すこと等について

 将来のマンション開発計画の検討段階時に行われる土地調査は、宅建業に含まれないことは既に述べたとおりである。
 ここでは、部落差別につながる「取引の対象となる物件がいわゆる同和地区にあるかどうかを調査したり、教える」行為を規制するため、免許に一律に業法第3条の2に定める条件を付すこと及び業法に基づく監督処分基準において行政指導の対象とすることについて検討した。
 
a.業法第3条の2について
 業法第3条の2は、暴力団の参入規制と免許更新期間の延長(3年から5年へ)に伴う業の適正な運営並びに宅地及び建物の取引の公正を確保することを目的に、平成7年の改正により新たに付け加えられた。
 どのような場合にどのような条件を付すかは、個々具体の事例に即して判断する必要があるが、国土交通省の通達の例示によれば、
イ 免許換え又は更新により免許を受ける者のうち、宅地建物取引業に係る取引実績が乏しい者に対し、「免許直後一年の事業年度における宅地建物取引業の取引の状況に関する報告書を当該事業年度の終了後に提出すること。」を条件として付する。
ロ 免許の更新に当たって、従前の免許の有効期間中に役員等が暴力団の構成員となった事実がある者に対して、「暴力団の構成員を役員等としないこと」を条件として付する。
が挙げられている。
 また、付した条件の履行を確保する観点から、当該条件に違反した者については、免許権者は業法第66条第2項の規定に基づきその免許を取り消すことができることとされている。

◇宅地建物取引業法
(免許の条件)
第3条の2 国土交通大臣又は都道府県知事は、前条第1項の免許(同条第3項の免許の更新を含む。第25条第6項を除き、以下同じ。)に条件を付し、及びこれを変更することができる。
2 前項の条件は、宅地建物取引業の適正な運営並びに宅地及び建物の取引の公正を確保するため必要な最小限度のものに限り、かつ、当該免許を受ける者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。

b.一律に免許に条件を付すことについて
 一律に免許に条件を付すことについて、複数の法律家にも見解を求め検討した。
 検討結果は以下のとおりである。
(1)条件は、あくまで個別的に判断して付すべきものであり、条件が一律に付されればそれは、要件となってしまう。
(2)法以外の要件を付けるのは、自治体では無理があり、法で定めるべきものである。
(3)差別行為をしないという条件を、大臣免許業者や他の府県の免許業者に付けていない中で、一律に大阪府の業者だけに付け、義務を課すのは比例原則、平等原則に反する。
 また、全ての業者の免許更新時に条件を付すには5年を要し問題解決に向けた方策としての即効性に乏しいなどのことから、一律に免許に条件を付すことは困難であるとの意見があった。
 一方、今般発覚した差別的な「土地調査」は、(1)業法第3条の2制定時には想定されておらず、(2)業法が法の目的として「業務の適正な運営の確保」を掲げていることから、差別的な「土地調査」を宅建業の範囲に含め条件を付す対象とすべきであるとの意見もあった。
 以上の点を総合的に踏まえて、さらに検討されることが望まれる。

c.業法に基づく監督処分基準において行政指導の対象とすることについて
 「免許に条件を付すこと」以外の規制手段として、業法に基づく監督処分の基準において行政指導の対象とすることについて検討した。
 大阪府では、「監督処分基準」は現在内規として運用しているが、パブリックコメントを経て公開することを前提に、「監督処分基準」中に『知事は、業者が、「取引の対象となる物件が同和地区にあるかどうかを調査したり、教えること」を行った場合は、必要な指導、助言及び勧告を行うことができる。』と定め、これに違反した業者には必要な行政指導を行うこととし、これに従わない場合には免許更新時に必要な条件を付すこととする。
 こうした取り組みは他府県には見られず、「指導監督基準」として公開することにより、問題解決に向けた方策として抑止力と即効性に富み、また、大阪府内で宅建業を営む大臣免許業者、他府県免許業者の違反行為を指導することも可能となり、実効性が確保できる。
 しかし、大臣免許業者等が行政指導に従わない場合には、免許に条件を付すことができない、などの課題が残されている。

◇行政手続法
(処分の基準)
第12条 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。
2 行政庁は、処分基準を定めるに当たっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画グループ

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