不動産取引における土地調査問題研究会報告書

更新日:平成22年5月19日

5 調査結果から見えてくる課題と今後の方向性について

(1)調査結果から見えてくる課題

 業界における人権意識の希薄化

□業界ルールの未整備
 「土地調査」の基本的な流れをみると、大半の不動産会社は、将来のマンション開発計画の検討段階時に、候補地周辺の他社マンションの需給動向や価格帯、さらには地域特性(地域の評価、イメージ)などの情報を入手するため、土地調査報告書の作成を広告会社に依頼する。そして、広告会社はさらにリサーチ会社に調査委託しているパターンであった。また、多くの広告会社は、不動産会社から無償で「土地調査」を受託し、調査内容で他社と競うことにより、販売広告を優位に受注しようとする。そして、リサーチ会社もこれに呼応する形で、広告会社のニーズに応えるべく「土地調査」を行っている。このように、三業界は密接な関係のもとで「土地調査」がシステム的に実施されていた。
 「土地調査」自体は、正当な企業活動であり問題のあるものではないが、この調査報告書の中に、差別的な表現を用いてその地域を低く評価していたものがみられた。

 このような「土地差別調査」が行われるようになった背景について、あるリサーチ会社のヒアリング調査では、「東京から大阪に進出した当時、大阪で土地調査をする場合は同和地区の存在を調査し、報告する必要がある」ことを聞いた。そして、「実際に、同和地区内のファミリー向けマンションの契約がキャンセルになったり、府民、業者による同和地区の問い合わせ事案も発生していたことから、実感として調査の必要性を感じた」と答えている。
 それ以後においても、「地域性の評価を指示されたわけではないが、同和地区があれば報告しなければならないと思っていた。」、「後々のことを考えると、同和地区かどうかを調査したほうが無難である。」、「業界内にはあうんの呼吸がある。」などのリサーチ会社の意見にみられるように、「土地差別調査」が漫然と続けられたことがわかる。
 一方、広告会社や不動産会社など、「土地調査」の報告書を受け取る側においても、リサーチ会社に対して、「土地差別調査」は差別につながり行ってはならないという指摘や、報告書に記載された問題表現の是正などをすることもなかった。

 業界団体としての認識は、当研究会の中でも述べられたように、「担当者が報告書を見ながら問題があるとは気づかなかったケース、気づきながらそのままにしていたケースがあったが、どちらにしても人権意識が低かったと言わざるを得ない」との意見や、「地域特性に不適切な表現がある報告書を開発業者が漫然と受け取っていたことが大変問題であったと認識している」といった意見にみられるように、人権意識の低さについて認識し、反省している姿勢が見られた。
 三業界全体として、「土地差別調査」に対して無批判のまま受け入れようとする姿勢が見られた。これまでの三業界における取組姿勢が、差別を助長してきたことも踏まえ、それぞれの業界において「土地差別調査をしない、させない」といった明確なルールの確立が求められる。
あわせて、業界団体に加入していない事業者については、行政や業界団体としての一定の支援が求められる。

□社内における人権推進体制、人権研修の不備
 ヒアリング調査から、「地域下位地域」等の問題表現については、「土地調査」を主要な業務とするすべてのリサーチ会社は、それが「同和地区であるとの認識はあった」と答えている。また、広告会社では、「土地調査」の業務を多く扱っている事業者ほど、経験則に基づき認識は高い傾向がみられた。不動産業界については、価格面の検討を重視しており、問題表現が記載されている地域特性には関心がなく、その認識がなかったとの意見で大半であったが、「同和地区との認識を持っていたが特に改善などの指摘はしなかった」との意見もみられた。
 このような社内での問題表現の発見は、複数人によるチェック体制が整っているほど、その「気づき」が増すが、ヒアリング調査によれば、社内の組織的なチェック体制は、各業界を通じて「上司まであげることなく、担当者レベルで報告書を見ているだけであり、問題表現との認識は持たなかった」、また、「問題表現を会社全体でチェックする組織的体制は不備であった」という意見が多くみられた。このことから、社内でのチェック体制の改善が求められる。

 また、社内におけるチェック体制の充実を図るためには、人権啓発の要となる人材の育成が不可欠である。この点、不動産業界は平成18年に「宅地建物取引業人権推進指導員制度」を創設しており、当人権推進指導員は、社内で人権に関する研修や教育、的確なアドバイスなどを行うとともに、従業員に対して必要な知識を習得させることにより、社内の人権啓発体制の推進に重要な役割を担っている。
 ただし、平成21年9、10月に大阪府住宅まちづくり部が大阪府内の宅建業者を対象に実施した、「宅地建物取引業者に関する人権問題実態調査」によれば、「人権推進指導員はいない」業者の割合は79.5%、また、「人権推進指導員制度を知らない」業者の割合は64.3%といずれも高い割合を示しており、制度の一層の定着が望まれる。
 今後は、取り組みの充実・強化を図るとともに、リサーチ業界や広告業界に対して、その有するノウハウやスキルを積極的に提供し、協力していくことが求められる。

 また、リサーチ業界や広告業界については、このような指導員制度がないため、まずは社内における人権啓発の要となるべき人材の育成に取り組み、社内の人権啓発に向けた推進体制づくりに取り組むことが急務の課題である。

 人権研修の実施状況については、アンケート調査結果からは、リサーチ業界や広告業界は不動産業界(大手デベロッパー)に比べ低い傾向にある。
 社内および社外の人権研修の受講によって、様々な人権問題に対する見識を深めていくことができるが、三業界においては、このような人権研修の意義を踏まえ、人権研修の実施を喫緊の課題と受け止め、全力をあげて取り組まなければならない。その際は、人権研修などが一過性のものではない継続性を担保できる仕組みづくりが重要である。

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画グループ

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