不動産取引における土地調査問題研究会報告書

更新日:平成22年4月20日

土地調査報告書における差別の実態
□問題表現の実態

 大阪府・大阪市が入手した報告書では「在日外国人が多く住んでいるため評価の低い地域」、「同和問題に関わってくる地域、同和地区」といった表現が見られたが、アンケートで同様の表現があったかどうかを聞いたところ、そのような直接的な表現はほとんどなかったが、「地域下位地域」や「不人気地域」などの間接的表現が一定見られた。
リサーチ会社5社(20%)、広告会社21社(49%)、不動産会社14社(32%)が問題表現があったと回答しており、リサーチ会社から問題表現を含む報告書が広がっていることがわかる。

【アンケート結果】※重複回答有
−報告書に下記のような表現があったか。−
◆リサーチ会社(対象25社)
下記のような表現はない:20社(80%)
人気のない評価の低い学校区:4社(16%)
地域下位地域:4社(16%)
不人気地域:2社(8%)
敬遠されるエリア:2社(8%)
類似表現:2社(8%)
→一般生活者の認識では他の地域と比べるとイメージスコアが低い地域など
同和問題に関わってくる地域、同和地区:1社(4%)
問題のある地域:1社(4%)
大変厳しいエリア:1社(4%)
在日外国人が多く住んでいるため評価の低い地域:1社(4%)
解放会館や墓地などが目立ち、地元では敬遠される地域:1社(4%)
嫌悪施設が集まるイメージの低いエリア:1社(4%)
精神病院や障害者施設が点在し評価の低いエリア:1社(4%)
◆広告会社(対象43社)
下記のような表現はない:22社(51%)
地域下位地域:10社(23%)
不人気地域:10社(23%)
人気のない評価の低い学校区:9社(21%)
類似表現:6社(14%)
→ランク落ちゾーン、土地ぐらいの低いエリア、住宅イメージが高くない、解放会館があるなど人気が薄いなど
敬遠されるエリア:4社(9%)
問題のある地域:4社(9%)
大変厳しいエリア:4社(9%)
在日外国人が多く住んでいるため評価の低い地域:2社(5%)
解放会館や墓地などが目立ち、地元では敬遠される地域:2社(5%)
嫌悪施設が集まるイメージの低いエリア:2社(5%)
精神病院や障害者施設が点在し評価の低いエリア:1社(2%)
同和問題に関わってくる地域、同和地区:1社(2%)
◆不動産会社
「問題のある地域」「敬遠されるエリア」「下位地域」「人気が低い○○学校区」「同和地区」「コリアタウン」等の表現及びその地域を特定する地図等が含まれている:14社(32%)

【入手した土地調査報告書からの抜粋】
高評価の例
・大型スーパー隣接で利便性が高い。住宅地として評価が高い
・▲▲小は120年の歴史を誇る伝統校で市内でも上位の人気を誇る
・都市機能の集積する利便性の高さから最も評価が高い
・中心市街であり、市内では求心性、地域レベルが高くマンション立地としては高評価
・整った町並みが評価されており、住宅イメージは比較的高い
低評価の例
〔直接的表現〕
・〇〇地域は三大同和地区の一つとされ・・・
・〇〇地域は半島系の被差別部落であり・・・
・○○小学校区は率直に同和問題に関わってくる地域となるのだが・・・
・このあたりは行政から同和地区指定を受けている地域はなく、これが逆に優遇政策から外れていることにより、スラム化している要因でもあるようだ。
〔間接的表現〕
・〇〇地域は地域下位地域であり(従って学校区も劣る)、田園、農住、事業所混在地域であり、全体のレベルが落ちるという状況
・〇〇駅より南方の地域は地域下位地域がらみの地域等で構成され、必ずしも地域イメージは良くなく、地域レベルも高くなく、住宅・マンション立地のポテンシャルは低い
・駅南でも、東側の〇〇小、〇〇中は、市内でも人気に劣る学区(同地区内にある雇用住宅にベトナム系住民が多い事などから)として知られる
・治安の悪さ、一部問題のある地域(○○1から2丁目)が含まれていることから、評価は低く、低位ポジションという位置づけ
・デリケートな問題を含むエリアがあり、取扱いには注意を要する
・デリケートな問題を抱えている○○町の地域イメージの悪さもあり、エリアの人気・評価は低め
・解放会館や墓地などが目立ち、地元では敬遠されるエリア
・地域性がネックとなるエリアを含むため、学校人気は低い
・地元でも有名な問題のあるエリアとして敬遠されており、学区人気も低い
・大規模な市営住宅が立ち並ぶ最も地域性の低いエリア
【解説】
○ヒアリング調査でも、リサーチ会社の5社が問題表現を使用したことを把握しており、一部のリサーチ会社が中心となって広がっていった実態が明らかとなった。広告会社については、21社が問題表現を使用していたが、ヒアリング調査の結果、問題表現を含む報告書を多く取り扱っていたのは、6から7社に絞られた。

□問題表現が記載されるまでの経緯、背景

 府民等の忌避意識を背景として、マンション建設時の土地調査において、業界内の一部企業にこれらの所在を確認する慣習が存在した。近年は人権意識の高まりの中、直接的な表現を避けているものの間接的な表現が使用され続け、各業界における一部企業では一定の認識を持ちながらも、改善に向けた取組みをしてこなかった。

【ヒアリング結果】
◆リサーチ会社
・オイルショック以降、昭和50年代にマンションが大衆化し、マンションを同和地区に建ててみたら様子が違うことがわかった。戸建てや大規模マンションでは大丈夫であったが、小規模ほど客の動きがおかしい、キャンセルが多いということがわかり、経験的に同和地区では売れないことがわかってきた。
・大阪に進出してきたときに、周り(不動産会社、広告代理店)から同和地区の報告が必要であると聞いたことから、そういうものと思い込んでしまい、このような報告を続けていた。
・1990年代は差別的な表現は少なかった。広告代理店でも調査部があり社内で調査していた。 差別表現を注意する人もいた。2000年以降、予算・人員上社内で調査することが難しくなり、外注体制が確立され、緊張感がなくなり、差別表現を使い回していた。
・平成14年以降、クライアントからの指摘もあり直接的表現から間接的表現に変えた。
◆広告会社
・以前、マンションの売行きが悪くなったときから同和地区のことを調べるようになった。
・同和地区が物件価格に与える影響は多少あると思う。売りにくくなると思っていた。
・大阪に来たときに物件が同和地区周辺にあるならマイナス要素になると聞いたことがある。
◆不動産会社
・80年代は直接的な表現が入っていた可能性が濃い。

【解説】
○例えば、いわゆる「地域下位地域」が何を示すのかについて、その表現を初めて使用したとされるリサーチ会社のA社にヒアリングを行ったところ、「当該表現はいわゆる同和地区のことであるとの情報が独り歩きしているが、当初はいわば記号的な言葉で使用したものであり、差別用語とは考えていない。例えば工場地帯もその地域になりうる」との意見であった。しかし、その後A社においても、いわゆる同和地区という意味で使用していた実態が明らかとなっている。
○一方、東京から大阪に進出したリサーチ会社のB社へのヒアリングでは、進出時、他業者から、大阪ではいわゆる同和地区の存在を調査し、報告する必要があることを聞いた。例えば、同和地区内のファミリー向けマンションでのキャンセルの多発や、府民、業者による同和地区の問い合わせ事案も多く発生していることを背景として、大阪で土地調査をする際には、同和地区などの情報は必須の項目であるという認識を持ったとされる。当初は、ストレートに同和地区と表現していたが、7年ほど前からクライアント等からの指摘もあり、「同和地区」の隠語として「問題のある地域」「危険な地域」などの間接的な表現を使用し始めた。
○このような経緯を経て、リサーチ業界、広告業界、不動産業界の一部企業の間では、問題表現がいわゆる同和地区との認識を持ちつつも、改善しようとする取組みをせず、業界内の慣習として定着していったと考えられる。改善しようとする積極的な取組みも行われてこなかった。

□問題表現を含む調査報告書の必要性

 問題表現を含む調査報告書の必要性については、リサーチ会社は「不要」と「必要」がほぼ拮抗、広告会社は「不要」が「必要」を10ポイント上回ったが、現時点においても、なお必要であると考えている企業が多いことが明らかとなった。
問題表現を含む報告書が差別につながると考えるのが、リサーチ会社53%、広告会社63%と過半数を超えるが、今なお必要と考えている企業も5割弱存在する。リサーチ会社や広告会社が「顧客から質問される場合があり調べる」や「調査の結果、わかったことは報告する必要がある」との回答にあるように、受託関係の中で一定の必要性が生じていることは伺える。
ヒアリングからは、リサーチ会社や広告会社は「同和地区の報告は必要だ」と認識していたとの意見がある一方、不動産会社は「同和地区の有無で判断することはない」との意見が多かった。

【アンケート結果】
−このような表現の報告は必要だと思うか。−
◆リサーチ会社(対象91社)※重複回答有
このような報告は不要:39社(43%)
このような報告は必要:20社(22%)
顧客から質問される場合があり調べる:13社(14%)
調査の結果、わかったことは報告:11社(12%)
土地購入(計画実施)の判断の参考:8社(9%)
販売価格の参考とする:6社(7%)
販売層(顧客ターゲット)を絞り込むため:3社(3%)
よくわからない:20社(22%)
その他:18社(20%)
◆広告会社(対象102社)※重複回答有
このような報告は不要:56社(55%)
このような報告は必要:26社(25%)
調査の結果、わかったことは報告:15社(15%)
顧客から質問される場合があり調べる:13社(13%)
土地購入(計画実施)の判断の参考:6社(6%)
販売層(顧客ターゲット)を絞り込むため:3社(3%)
販売価格の参考とする:0社
よくわからない:14社(14%)
その他:8社(8%)

◆不動産会社(対象52社)          
・候補地及び周辺地域の評判・イメージ
「重要で必要」:18社(35%)「重要性は低いが必要」:10社(19%)「重要性は低く無くてもよい」:24社(46%)
・候補地を校区とする小・中学校の評判
「重要で必要」:10社(19%)「重要性は低いが必要」:12社(23%)「重要性は低く無くてもよい」:30社(58%)
・小・中学校区における同和地区の所在
「重要で必要」:0社 「重要性は低いが必要」:1社(2%)「重要性は低く無くてもよい」:51社(98%)
・小・中学校区における外国人居住状況
「重要で必要」:0社 「重要性は低いが必要」:1社(2%)「重要性は低く無くてもよい」:51社(98%)                    
・小・中学校区における公営住宅の所在
「重要で必要」:0社 「重要性は低いが必要」:1社(2%)「重要性は低く無くてもよい」:51社(98%)  

【ヒアリング結果】
◆リサーチ会社
・地域性の評価を指示されたわけではないが、同和地区があれば報告しなければならないと思っていた。
・同和地区のことを知らずに報告したら、同和地区があるのにこの値段では無理だと突き返されたことがある。
・同和地区情報は売行きに関係すると思い、必要だと認識していた。
・地元の人は同和地区を意識し、マンションを買わない。不動産業者も腰が引けている。そういうときは広いエリアに広告できるよう大きなマンションにしようと提案する。
・広告代理店どおしの競争で、レポートの内容・表現がより詳しくなり、エスカレートしたのではないか。
・安い価格を提案しても、報告書の表現を見れば同和地区の存在がわかることから聞かれることもない。クライアントも認識しており、あうんの呼吸でやっている。
・大阪に来たときに、物件が同和地区周辺にあるならマイナス要素になると聞いたことがある。
・不動産会社は同和地区情報は必要ないと言っているそうだが、本当は必要だと思っている。三業種の構造がおかしい。
◆広告会社
・デベロッパーから同和地区を調べてほしいとの指示はなくても、同和地区のことを記述するのが当たり前になって、麻痺していたのではないか。
・リサーチ会社は、報告に同和地区のことを加味しないと、クライアントからバカにされると思い、マイナス情報を報告していたと思う。
・用地取得後の調査なので、同和問題などはすでにクリアされていると思っている。
・不動産業者から同和地区を有する校区だからファミリー層のキャンセルが多いと聞いたことがあるので、報告する必要があると思っていた。デベロッパーから同和地区の情報は不要だと言われたことがない。
・ファミリー層に買ってほしいので、同和地区を含めた校区情報が必要になると思っていた。デベロッパーも同じ思いだと思う。
・同和地区があると価格にも影響すると思っていた。
・広告代理店と調査会社はあうんの呼吸でやり取りしている。
・過去の物件の売行きの悪い意味を積み上げると同和地区があるからだろうと推測できた。
・同和地区が物件価格に与える影響は多少あると思う。売りにくくなると思っていた。
・デベロッパーは同和地区のこともわかった上で物件を建てている。不動産のプロである。
・同和地区情報を求めているわけではないが結果的にマイナス情報として入り込んでいた。
・同和地区等が物件価格に影響するというような表現はあまりに主観的であり、無用な調査である。
・報告書の差別的表現は推測であり、検証しようがない情報なので、不要である。
・同和地区の存在が物件価格に影響するとは思っていない。総合的に判断する。
・同和地区の物件であっても、即日完売することもある。駅前であれば若い人に売れる。
◆不動産会社
・同和地区を避けたいという客の意識があることから、同和地区はマイナスの判断材料の一つになっていた。価格面を考える材料になっていた。値引きもあったと思う。
・同和地区か否かは知りたい情報ではない。良いところを引き出すので悪い情報は必要ない。
・そういう地域があろうとなかろうと関係ない。どうすれば売れるかを考える。
・価格は周辺物件と比較して決めるものであり、同和地区があるからといって、価格が下がるとは思っていない。同和地区の有無で判断したことは一度もない。
・同和地区など土地のせいで開発を止めるようなことはない。
・同和地区の存在が物件価格に影響するとは思っていない。総合的に判断する。
・物件価格はほぼすでに決めており、広告代理店からのレポートにより、価格を微調整している。
【解説】
○不要と答えた企業について、「当該調査を行っている企業」、「差別的な表現があった企業」、「当該調査を行っていない企業」のそれぞれの割合を見てみると、リサーチ会社では、「当該調査を行っている企業」の約5割、「差別的な表現があった企業」の約4割、「当該調査を行っていない企業」の約4割が不要と答えている。同様に広告会社では、「当該調査を行っている企業」の約6割、「差別的な表現があった企業」の約5割、「当該調査を行っていない企業」の約5割が不要と答えている。
○マンション開発を行っている不動産会社は、いわゆる同和地区や外国人居住状況に関する情報は必要とは考えておらず、ヒアリングにおいてもこれらの情報提供を依頼した不動産会社は見られなかった。しかし、候補地及び周辺地域の評判・イメージである地域特性については、過半数が「必要」と答えている。
○「必要」が調査ニーズとなる場合には、リサーチ会社や広告会社への調査依頼につながる可能性がある。これは、リサーチ会社や広告会社が顧客から質問されるため調べる必要があると回答していることと重なり合う。そして、この地域特性の中に現れる問題表現がいわゆる同和地区等と結びつくことが大きな問題となっているのである。
○問題表現を含む報告書が「差別につながる」と考えるのが、リサーチ会社53%、広告会社63%と過半数を超えている一方で、今なお2割程度のリサーチ会社や広告会社は、問題表現を含めて報告する必要があると答えている。理由としては、「顧客から質問される場合があり調べる」や「調査の結果、わかったことは報告する必要がある」が多く、ヒアリングからも同様の意見が見られる。今もって、マイナス情報については確認しておくべきという慣習が一部企業で根強いことが伺える。

このページの作成所属
府民文化部 人権局人権擁護課 人権・同和企画グループ

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